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GM: Why bankruptcy could be best scenario [91.経済]

GM: Why bankruptcy could be best scenario 

  ブログのタイトルに11月14日付ジャパンタイムズ紙11面"oberseas stocks finance"頁の見出しを借用した。GMが経営破綻の危機を伝えるこの記事は、ワシントンポスト紙からの転載であり、Kendra Marr とSholnn Freeman両名の共同執筆記事である。

 国内の状況も見ておこう。対比することで米国自動車産業の窮地がよくわかる。16日付け日経新聞の一面の見出しは「乗用車 国内生産1000万台割れ」「今年度5年ぶり減 下期に急減速」「大手8社、70万台減産、1万人削減」とある。2008年度の乗用車の国内生産は前年実績に対して3%減だそうだ。来年度の減産見通しは載っていない。どのメーカーも来年度の生産・販売計画が立てられない状態に陥っているのではないだろうか。

 さて、GMの経営危機については2度ブログで採り上げた。その後、新聞でも記事が特集されたり社説で採り上げられているので紹介しておこう。
 標題は疑問符がないので、「なぜ倒産が最善のシナリオなのだろうか、そうではないだろう」という反語表現と捉えるべきだろう。本文記事は米国経済への甚大な影響を懸念している。
 GMの運転資金枯渇について言及があり、事態の逼迫を告げている。

 Without a loan, GM is in danger of running out of cash. It is going through $2.3 billion a month, up from $1 billion a month earlier this year.
(借入ができなければ、GMは資金ショートの危機を迎える。年度当初は月に10億ドルだったのが、現在は月に23億ドルの現預金を使い果たしている)
 
 第三四半期の赤字が大きかったことに加えて、10月の北米売上が対前年比45%減でさらに資金不足が加速しているようだ。9月末で599億ドルだった債務超過額は年度末には700億ドルに達する。来期の見通しはさらに暗く、これでは銀行が金を貸せるはずがない。したがって、政府援助がなければ倒産する。
 その政府援助も資金の貸付か資本増強だが、金融機関でない、しかも債務超過会社であるGMへの資本増強は実質国有化ということになる。通常、債務超過会社へは90%あるいは100%の減資をしてからでないと増資できない。国有化に国民はノーというだろうから、つなぎ資金の供給が精一杯だ。
 GMが倒産した場合の影響についてもこの記事は言及している。

 A failure at GM, Which represents about half of the U.S. auto industry, could eliminate 2.5 million jobs and $125 billion in personal income in the first year, according to report published lastweek by the Center for Automotive Research.
  In three years, the government's tax loss could total more than $108.1 billion.
(先週発売された自動車リサーチセンター誌によれば、米国自動車産業の半分を占めるGMの経営破綻によって250万人が失業し、倒産後の1年間に1250億ドルの個人所得が失われ、税収は3年間で合計1081億ドル減少するだろう)

 記事の終わりのほうで筆者は経営破綻は事業の清算を意味しない、改革・再編(リオーガニゼーション)を意味するのだと説明している。GMは破産申請の瀬戸際まで追い詰められているが、250万人の失業が妥当な数字だとしたら、米国経済に与える経営破綻の影響は計り知れない。しかし、この推計値には疑問があるので別の記事を採り上げる。

 今日届いた15日付ジャパンタイムズの社説がGMを採り上げている。見出しは次のようになっている。
 "Hard times for U.S. automakers"(米国自動車工業にとって困難な時代)

 金曜日に第3四半期42億ドルの営業損失を発表しているが、事態はさらに悪化し、現預金の減少で資金繰りが逼迫し、経営破たん寸前であると書かれている。

 On Friday, GM announced a $4.2 billion operating loss in the third quarter, as its cash reserves fell from $11 billion to $16 billion. In a blunt warning to law makers, the auto giant said those reserves were dangerously close to the $11 billion to $16 billion minimum required to keep the business going.

 事業継続には最低限110~160億ドルの現金が必要で、そのラインに近づいている。社説はGMが倒産したら250万人の仕事がなくなるとワシントンポスト紙と同じ主張をしている。その一方で、統計専門家たちが先週公表した推計も載せている。彼らは以前の推計値を下方修正し、24万人が職を失うとしている。社説によると、他にも17万9千人が失業するとか、300万人が失業するとかさまざまな推計値が発表されており、確かなことは分かっていないようだ。推計の根拠を確認しなければどれが妥当な数字なのか判断できない。字数制限がきつい新聞記事の弱点である。

 巷間いろいろなデータがいろいろな機関から公表されるが、その根拠をみないと判断がつかないという好例である。前提条件をどのように組み立て、そのような推計を行ったのか、残念ながら両方の記事からは明らかではない。所詮新聞記事では字数の関係から無理ということだろう。必要なら専門誌を読むしかない。たとえば、総務省人口統計局発表の人口データ統計があるが、さっぱりあたらない。どれほど推計ロジックが精緻でも、前提条件が現実離れしていたら推計値も現実離れしたものとなる。
 
 わたしの見解はこうである。GMはまもなく破綻申請せざるをえない。ブッシュがつなぎ融資を決定しても700億ドルもの債務超過を解消するわけにはいかない。著しい社会的不公正となるからである。つなぎ融資をしたところで来期の赤字はさらに膨らむ。オバマが全米自動車労働組合と何か約束があったとしても救える限度をとっくに超えている。国家戦略上重要な産業だから、つなぎ融資はするだろうが不良債権化する。
 長期的な原油高騰を予測して、燃費のよい小型車開発やハイブリッド車の開発を怠ってきたGMの経営陣が愚かだったということだ。あとは破綻処理だけが残されている。
 民間事業は先を予測して手を早く打たないと、破綻処理するしかなくなる。会社の規模や事業規模の大小に関係がない。さらに言えば民も官も同じである。
 大は800兆円の国債残高を抱える日本の国家財政から、わが町の病院事業、小中学校統廃合、市の財政まで、他人事ではない。

 2008年11月16日 ebisu-blog#402
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