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後置形容詞の扱い:中3学力テストの後 [62. 授業風景]

後置形容詞の扱い:中3学力テストの後

 今回も空飛ぶ教室の授業に取材した。青い目をした3人組が主人公の授業(フィクション)である。
 現実の世界では中3の学力テストが終わった。光洋中学だけが来週である。
 Susie、Alice、Lisaは時間10分前に来た。Lisaがテスト問題をもってきた。

「さあ、どこができなかったのか、次はどうすれば正解できるのか、きちんとおさらいしておかないとな、解説するぞ」
「先生、まずいよ、光洋中学がいるから」
 Lisaからクレームだ。
「忘れてた来週だったな。ズルすることになるから解説しないでおこう」
 光洋中学の生徒がにんまりして肯く。
「みたいだろう?」
 Lisaがテスト用紙をひらひらさせて言う。おふざけだ。言われた生徒があきれて笑っている。英語の得意な生徒だ。俺には必要ないんだよという顔をしている。

 教科書のプログラム7には関係代名詞が出てくるので、そこをやろうかと思ったが、学校祭の準備で4人休んでいるので急遽予定を変更し、「分詞」のところをやることにした。現在分詞や過去分詞が形容詞として修飾される名詞の後に出てくる。分詞が前置詞句や目的語を引き連れている場合は必ず後置される。文法用語ではこうした形容(修飾)のしかたを「後置形容詞」と呼ぶ。
 教科書が一昨年から新しくなったが、扱いは同じだ。関係代名詞の前に出てくる。おかしな順序だと思う。
 テキストに出てくる後置形容詞は生成変形文法の観点からは、「関係代名詞+be動詞」の省略されたものだからである。当然、関係代名詞をやってからでないと、文の説明ができない。中学校の先生たちも困っているのではないだろうか?
 プログラム6にたしかこういう文例が記載されていた筈だ。
 I stayed a house built in 1907.

 この文は変形文法では次のようなsimple sentencesに分解する。
 ①I stayed a house.
  ②It was build in 1907.
 これが関係代名詞でつなぎ合わされ、つぎのような複文となる。
 ③I stayed at a house (which was) built in 1907.
  そして、括弧の中が省略されて最初の複文ができあがる。「関係代名詞+be動詞」には「省略deletion」規則が適用になって、表層構造には表れない。
 関係代名詞を教えてから、後置形容詞を教えたほうが分かりやすいと思うのだが、教科書はそうしていない。理由が分からない。

 空飛ぶ教室の授業に戻ろう。こういうことを文例を挙げて黒板に書いて簡便な説明を始めたら、Susieが言いだした。
「修飾ってなんだ?さっぱりわからない?」

 形容詞は通常は名詞の前に置くのだが、この場合は後ろにおく、それゆえ機能上「後置形容詞」と呼ばれている。前から修飾するのではなく、後ろから修飾するという説明を聴いて、Susieは質問をした。
 以前にも2度ほど説明したが、そのときにも同じことを言っていた。国文法の授業をきちんと聞いていないから、「修飾」や「修飾語」、「形容詞」などの文法用語が理解できない。形容詞が名詞を修飾する事例を日本語の名詞句とそれを英語に置き換えた名詞句を対置して説明をする。分かるまで何度でも繰り返し説明する「根気」が必要だ。日本語の文法知識は英語でも重要であることが理解できるだろう。日本語はあらゆる科目の基礎であるとはこういうことからもわかるだろう。小学校では英語よりももっと日本語をきちんと教えてほしいと言うのは、こういうところからきている。だから、わたしは小学生に英語は教えていない。きちんとした日本語、きれいな日本語を徹底的に教えておきたいと思っている。そういう日本語を小学生の内に仕込まないと、あとあと後遺症が出てくる。帰国子女も教えた経験から言って、小学生で両方こなせる子どもは20人に一人いるだろうか。会話はできるが、ほとんどが日本語が駄目になってしまう。そして英語の能力は母国語である日本語以上には伸びない。当然のことだろう。
AliceがSusieにこうだべさと説明し始めた。横で聞いていたAliceは飲み込みがよい。数学のときもそうだ。すぐに要点を理解して説明してあげている。この生徒はきちんと勉強すればいくらでも伸びる。いままで勉強しなかっただけだ。
 今日はSusieに焦点を絞る。質問に答えながら、次々と問題をやらせる。わからなければヒントをだす。1ページやるうちに、飲み込めてきたようだ。
「先生、これできそうだから、いわないで!」
「よしやってみろ」
 いい反応である。今日はいけそうだ。顔を上げた。
「先生、これでいいのかな」
「できてるじゃないか、正解だよ」
「やった!できた、できた・・・やっぱ私、英語のほうが好きだな」
 こんちくしょうめ、だからもっと問題をみろというんだ。やればできるくせにはじめからあきらめて努力をしない、いや、できない生徒がいる。どういうきっかけを用意すればいいのか、考えていてもはじまらない。ぶっつけで臨機応変にやってみるしかない。Susieにはこの手でもLisaには別の手が必要だ。同じ手が通用しないところが、教育の醍醐味のひとつだろう。
 Susieは賑やかな生徒だ。喜怒哀楽がすぐにしぐさにでた。掌を上に挙げてぶつけるしぐさをする。
 こういう瞬間、生徒はいい顔をする。ちょっと嬉しそうな、照れくさそうな、興奮して顔がほんのり赤らむ。
「数学だって問題文をよく読めばできる、いつも注意深く読んでいない。そのくせ問題文を見ただけで「わかんない!」って叫んでいる。英語も数学もまず問題文をよく読んで理解することだ。そうしたら解ける問題が一気に増える。先生の言うことを信じて、しばらくの間、素直にやってみることだ。」


 Aliceは、となりの二人の質問とわたしの説明を聴きながら、学力テストの問題を一生懸命におさらいしていた。Lisaは英語が嫌いで、まだ問題文をよく見ようとしない。何度も「わかんない、できない」を連発していた。あまり教えすぎると答えを書くだけで、勉強にならない。
「不規則動詞65個、必ず練習して来いよ」
 練習プリントを渡した。50書けない生徒はこの3人だけだ。部活だと基本練習をさぼって試合に勝てないことを十分承知しているのに、勉強になると別だとまだ思っているようだ。同じだ、勉強も基本トレーニングを怠る者の成績が上がるはずがないのである。
 時間はどんどんなくなっている。Aliceは一生懸命に努力しているように見える。Susieは変わりそうだ。Lisaもそろそろ変身してほしい。どの生徒も潜在能力はこんなものではない。どうやったら引き出せるか、引き出すか。

 男子生徒が「分詞」の英作文問題をやっていた。つかえていたので、ヒントをだす。
「英文はまず主語と述語が来る。問題文の頭(主語)と最後(述語)を英語に直して並べて書け、そしてそれから考えろ。主語と述語が英語になれば次は目的語だ。場所と時間に関する単語は後ろにつける。並び替えの問題ならこれでほとんどが正解できる。」
 主語と述語を英語に置き換えられたら、取っ掛かりができる。主語と動詞が大切なのは日本語と変わらない。英語は並びが異なるだけである。

 もくもくと問題を消化している生徒もいる。「分詞」が終わったので、「関係代名詞」の章をやるように指示した。最近入塾したが、学習速度の大きい生徒である。1時間半で6ページ問題を解き切っていた。受験問題集が終わったら、慶応高校や早稲田高等学院、桐朋高校などの入試問題をやらせてみたい。個別指導だから、生徒ごとに違う教材を扱えるのはメリットだ。個別指導授業に慣れておいてよかったと思う。
 この生徒は書く速度が通常の2倍はある。よく観察してみると比較的小さい字で力を抜いて書いている。問題集に書き込まずにノートに文章語と書いている。これが理想だ。つかえた問題に指定した印がついていないので、つけるように指示しておく。それにしても粒のそろったきれいな字で男子生徒にしては珍しい。頭の回転速度と字を書く速度にバランスがとれている。質問が出ないので2度ほどやっているところを解説した。
 授業が終わってから、
「質問はなかったのか?」
「解答見れば、わかりました」
「解答見てもなおわからないところはなかったのだろうか?」
「・・・」
「そういうところを質問していいんだ。適切な質問ができると言うのは大事なことだ。そして勉強すれば疑問がわくというのが自然な姿だ。素直に疑問を口に出していいんだ、一緒に考えるから。疑問がなかったわけではないだろう?」
「はい」
「次回の授業から、質問をしてみよう。いいね。今日の授業はこれで終わりだ。さようなら。」
「先生、さようなら」

 2008年10月18日 ebisu-blog#363
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