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日経平均1089円暴落(欧米経済学の破綻) [A4. 経済学ノート]

日経平均1089円暴落
 
 リーマンブラザーズ経営破綻の報が9月15日世界中を駆け巡り、翌16日日経平均は605.04円下げて、11609.72円で引けた。
 その後10月8日東証株価は暴落し、14日に1171.14円暴騰、今日(16日)また1089.02円(日経平均)下げ、8458.45円で引けた。ニューヨークダウも733.08$下げて8577.91$となっている。

 テレビだったか、リーマンブラザーズの社員の平均給与が4500万円だと報じていた。野村証券がアジア部門を買ったようだが、給与保証をしたとも報じられている。にわかには信じがたいニュースだ。数十億円の年俸の役員を含めた平均だから、せいぜい三分の二だろうが、日本の会社に比べても法外に高い水準である。サブプライムローンで低所得層を詐欺同然の商売で破産に追いやるような商いをして高額の報酬を手にしていた彼ら・彼女らに同情心はわきづらい。職業選択の自由は同時に責任も伴う。

 しかし、そのような些事はどうでもいい。地球環境を維持し、経済社会を持続可能なものにするために労働はどうあるべきか。経済活動はどうあるべきかということが問われなければならない時代となった。
 地球環境を崩壊させるほどの生産力を手に入れた人類は、自制なしには生き延びられない。それが問題である。

 日本人は真面目に仕事をすると言われる。「陰日なたのない仕事ぶり」が美しいことは日本人なら誰しもが肯ける価値観である。「ひたすら自分の技術を磨きよい仕事をする」ということも同じだ。長年知っている大工さんもそういう仕事ぶりだ。普通の仕事に美的感覚がともなうところも日本人に共通する感覚だろう。昭和天皇のビリヤードコーチだった吉岡先生がビリヤード台のラシャを交換する仕事を何時間も何度も見る機会があったが、学ぶ事の多いいい仕事ぶりだった。先生には比べるべくもないが、わたしもそういう価値観で仕事をしてきた。日本人のかなりの部分がそういう仕事の仕方をしている。こうした日本人が共通にもつ価値観はどこから来ているのだろう。

 日本にはあらゆる職種に職人がおり、名人と呼ばれる人がいる。宮大工、船大工、大工、建具師、木工家具、大工、左官、桶職人、・・・物づくりには必ずと言っていいほど特別な技能をもつ職人がいる。そして職人の道具は「自分持ち」である。優れた職人の手になる優れた道具は使い手自らの手入れを必要とする。人の道具で仕事はできない。すくなくとも仕事の道具からの疎外は職人にはない。
 工場ですらラインで働く者たちの創意工夫でいろいろな改善が日常茶飯事に行われている。創意工夫して働くこと自体が喜びなのだと思わざるを得ない。
 こうして考えてみると、日本人には労働とは他から強制されてやるものという考えが希薄であるか、ないのである。日本人が考える本来の労働、いや仕事を呼んだほうがよさそうだが、強制されてやると言う感覚がない。この点がヨーロッパの農奴の労働や工場労働者の労働と際立った対照を見せている。

 今回、東京やNYで株が乱高下しているのは、サブプライムローンに関わる金融派生商品が腐ってしまったからである。低所得層を狙い撃ちにするこのローンの販売は詐欺行為である。こうした「仕事」は犯罪であり、日本人が伝統的に考える労働=仕事とは異質のものである。
 見方を変えれば、農奴の労働を基礎におく欧米経済学が破綻したとも言える。スミスもマルクスも近代経済学も共に沈んだ。日本人の労働観=仕事観を基礎においた新しい経済学が創られねばならない。

 日本人の労働観は刀鍛冶の仕事に典型的に表れている身体を清め禊をしてから仕事をする、あるいは「させていただく」のである。仕事に高度な技能と神聖性がまとわりついている。人を騙す行為は「穢れ」である。それゆえ日本では「表の世界」ではサブプライムローンはありえない。「穢れ」仕事はアンダーグラウンドの世界である。5年のステップ償還すら自己破産者が多いことからとっくの昔に「表社会」では禁止されている(その一方でシステム金融などが「裏社会」ではびこっているのも事実である)。
 日本人が仕事に対して感じる神聖性とかモラルが欧米にあれば、サブプライムローン問題は生じなかったのではないだろうか。輸出すべきは優秀な日本製品ではなくて、労働=仕事に関する神聖性や商いのモラルではないのか?

 日本には欧米にないモラルがある。商行為や仕事にそれが色濃く反映していることは事実だ。それがどこから来て、今どのように変わりつつあるのか、興味の尽きないテーマではある。

 2008年10月17日 ebisu-blog#359
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