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旭山動物園と旭川市の経済・財政 [26. 地域医療・経済・財政]

  2,008年4月16日   ebisu-blog#169 
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 テレビで旭山動物園をとりあげていた。
 年間入場者数307万人で国立上野動物園の350万人に次ぐ。最近、料金を580円から800円に値上げした。以前の料金だと年間17.4億円の売上である。改定料金で300万人の入場者があれば24億円の売上となり、6.6億円の増収が期待できる。20億円や30億円の投資をしても数年で回収できそうである。

 問題は料金値上げによって入場者数が何%減少するのか、そして老朽化が始まる10年後に現在の三分の二(年間200万人)の入場者数が死守できるのかということだろう。北海道全体の子供の数は10年後どれほど減っているのだろう。根室市は今のままの傾向が続けば出生数が半減する。300万人の大半は北海道の子供と保護者だろう。

 05年、06年と2年続いて黒字だそうだ。設備投資が続いたこともあり、現在26億円の借金を抱えており、返済が終わるのは19年後だという。子供の人口減少速度が大きいから、それまで年間300万人の入場者数が確保できることは考えにくい。事業拡大は割りと簡単にできるが、バランスを維持しながら縮小するのは難しい。たいてい判断が遅れて大手術になり血を流すことになる。

 タクシー運転手やホテル、レストランにも取材していたが、通過型観光に組み入れられており、地元旭川を潤すようにはなっていないらしい。他のところからバスで動物園まで来て、またバスで次の観光地へと向かう。道東観光などに組み入れられて旭川市内での宿泊がほとんどないから、宿泊型観光には役立っていないとどの業界の人も口をそろえる。市長へのインタビューでも市の経済にプラスの影響はほとんどないという結論だった。どうやったら市の経済活性化につなげられるのか模索中という。

 毎年、新しい施設を作り、リピータを増やす努力をしている。国立上野動物園に追いつき追い越せと、現場関係者の号令が聞こえそうだ。テレビでも頻繁に取り上げられ、話題を提供している。職員は一生懸命に仕事をしている。
 狼と鹿を同じゾーンに囲い、金網で仕切って見せる施設が建設中だという。何匹もの狼を広い場所で見られる動物園は日本にはない。次々と新しいアイデアが生まれ、実行に移され、入場者記録を塗り替えてさぞ満足だろう。その一方で、新しい施設でまた十億円を超える借金が増えるだろう。維持費も跳ね上がる。どんな施設も適切なメンテナンスが必要で、いろいろな施設を増設すればするほど、固定費である維持費も膨らみ続ける。関係者は10年後20年後の旭山動物園の姿を考えているのだろうか?

 夕張市が一時同じような感じではなかったのだろうか。箱物をどんどん増やし、観光客は増える。北海道では他に例がない映画のイベントも軌道に乗せ、関係者は創造的で満足のいく仕事をしていたのだろうと想像する。

 人口35.6万人の旭川市に、年間300万人を超える観光客を呼び込むような動物園が本当に必要なのだろうか。少し冷静に考えれば、異常なことではないのだろうか。
 設備投資が回収できる20年後まで、年間300万人の入場者が確保できるのだろうか?誰のための、何のための動物園だろうか。今一度原点に戻って考えるべきではないのだろうか。旭川市民や道民主体の施設なら、適正規模があるはずだ。むやみな拡大をしないということも事業の将来を誤らない大切な勇気である。

 事業は拡大期が一番危ない。拡大することが自己目的になったときに、転落が始まる。
 入場者数は、旭川の人口の2~3倍程度が適正ではないだろうか。そこまで減少してもやっていけるような範囲に設備投資を押さえるべきだ。
 旭山動物園が夕張市の石炭博物館のような箱物群と同じ運命をたどらないことを祈る。
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