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はなざかり [57. 塾長の教育論]

2,008年2月19日   ebisu-blog#095
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 ウィンビーという英会話スクールが3月に開講するらしい。このところ3回チラシがはいってきた。外人の先生が教えるという。授業料は小学生以下が週1回で8085円、中学生が9135円、高校生が9975円だそうである。1回当たりの授業時間数は書いていなかった。(チラシより)
 ウェイクフィールド英語数学教室のチラシが昨日入った。いつもよりも2週間早い。ウィンビーを意識したのだろうか。英語は幼児・小学生コースが5000円/月、中学生週2回で5000円/月、高校生週2回6000円/月である。数学も幼児教室がないだけで授業料は英語と同額だ。一回あたりの時間数がこれも記載がない。チラシによればずいぶん楽しい塾のようだ。楽しい授業は、反面騒がしい授業でもある。向く人と向かない人がいるとは生徒の評である。「友達に誘われていってみたけれど、私には向かない、嫌だ」、もちろん向いた生徒もたくさんいる。個性の違う塾で自然に棲み分けができている。
 一昨年、なくなったあかね塾は3科目9000円だった。根室で一番授業料の安い塾だった。これはこれでポリシーのはっきりした特徴のある塾のようだった。たくさん生徒がいたらしい。授業料が安い塾も、経済が衰退し続けている根室の町には必要である。授業料が安いということが、根室では重要なファクターのようにもみえる。
 これも生徒の話だが、つくし幼稚園がやっている学習塾は、先生が二人で丁寧に教えているという。しかし、受け入れ人数に制限があり「有力者の紹介」がないと入れないとのことだ。真偽のほどは確認していない。もし関心があれば、人の噂を鵜呑みにせず自分で出かけて確かめてみることだ。一昨年くらいから始めたと記憶している。
 生徒がもっている情報はなかなか多い。真偽のほどは定かではないから、必要のある人は確かめられたい。

 新生児出生数を見ると平成8年の350人から平成17年の250人へと10年間で約100人減少している。10年前の中3は500人いたとも聞く。20年で半減したようだ。幼稚園が学習塾へと変身しようとするのも、生徒の減少が背景にあるのかもしれない。先生も場所も余ってくる。こうした現実を踏まえて、子供たちを対象としたビジネスは大きな曲がり角を曲がりつつあり、それぞれが工夫を凝らし、百花繚乱の趣を呈している。

 そもそも万人に向く塾はありえない。ニムオロ塾も15%くらい向かない人が出る。中学生になっても自宅学習の習慣がまったくない生徒がその典型である。せっかく塾で学習しても、翌週までまったく復習しないから忘れてしまっている。これでは知識が蓄積されない。人間の脳は忘れるようにできている。だから家庭で復習をして、知識を定着させる努力が要る。復習してこないと当然授業内容がわからなくなり、授業中に集中力を欠く。そしてお喋りが始まる。何度か注意をする。それでもやめられない生徒もいる。授業中に私語が多いと休塾を勧告することもある。他の人へ迷惑となるからだ。

 ニムオロ塾の授業は楽しいとは限らない。問題演習中心の授業だから、自ら勉強しない人には向かない。小学生はやる気を引き出すのも塾長の役目だから、少々騒ぐのも元気があってよしとする。しかし、中学生はそうは行かない。半分大人として扱う。教室に入ってきたら、元気な声で挨拶をする。出て行くときも大きな声で挨拶をする。それができない生徒は容赦なく退塾だ。もっとも、言ってもできない生徒は一人もいなかった。

 4月から授業料と授業時間を少し変更する。小学生は1回80分・月8回の授業とする。算数だけ教えてきたが、中学生の英語を教えるときに日本語の文法用語が理解できていない生徒がいることに気がついた。日本語文法を中心に読解力のトレーニングをする「日本語読解力アップトレーニング」授業を四月から開講する。だから通常の国語の授業とは少し違う。英語は中学生からで充分だ。中学3年生になったら、小学生で英語をやったものとそうでないものとの差がないからである。逆に成績が真ん中以下の生徒は、小学校で英語はやらないほうがよいと考えている。中学1年生の2学期から成績の下がる生徒がかなりの割合でいるからである。理由ははっきりしている。小学校で英語の勉強をするような時間があるなら、名著を読み漁ったほうが百倍も精神的成長の糧になるだろう。日本人としてのアイデンティティは美しい日本語のテキストを音読することで培われる。日本語がしっかりするまでは外国語をやらせてはいけないと確信している。数学の応用力の低下を見ても、問題文の読解力が足りないことが影響している。日本語の読解力は国語、社会科、理科、数学などすべての科目の基礎をなしている。ニムオロ塾の小学生の授業料は日本語読解力アップトレーニングと算数がそれぞれ5000円だ。

 中学生は、数学と英語、授業時間は90分・8回/月だ。日本語トレーニングは英語の授業時間を20分延長して行う。この音読トレーニング(三色ボールペンで線を引く=斉藤メソッド)は2年前からやっていることだ。テキストは新書版から選んでいる。中1『読書力』斉藤孝中2『国家の品格』藤原正彦中3『風姿花伝』世阿弥・林望訳&解説を今年は使った。4月からは『日本語の磨き方』林望を使おうかと思う。林望さんの書く文章は日本語の品がよいからだ。生徒にはできるだけ質のよいものを選んで読ませたい。国際的な場で活躍する人がでるかもしれない。中高生の内に読書に親しみ、日本語の古典をきちんと読んでいたほうがよい。4月からの授業料は月8回15000円。いま来ている生徒の授業料は据え置く。

 高校生対象の授業は受験と就職に焦点を絞っている。都会に出て働いても、互角以上に戦える学力をつけることを目差している。
 授業料は、数学4回・英語8回、計月12回で15000円である。授業時間は1回90分。英語が8回になっているのは英字新聞をテキストに使う時事英語授業超高校レベルなので、英文法をきちんとやらないと理解できないからである。4年前から海外留学先の語学研修所で使う中級レベル英文法問題集を使用している。レベルは大学生。380ページほどの全文英語で書かれた問題集である。つまり、月4回は時事英語授業を受けるための無料補習授業という位置づけにしてある。大学レベルの英字新聞をテキストに使った授業の効果を最大限に引き出すための工夫である。受験問題の長文など英字新聞記事に較べると、絵本と『ぼっちゃん』ほどの差がある。圧倒的な英文読解力をつけて入試に臨むためには英字新聞をテキストにした授業が大きな効果をもつ。受験レベルはネイティヴの中2レベルといわれているが、高級紙である英字新聞の記事はネイティヴの大卒の大人のレベルである。ニムオロ塾ではレベルの高い良質な教材を使うことを心がけている。英字新聞にはゴシップ紙のタブロイド版と高級紙があり、読者層が違う。
 
 高校生向けの日商簿記検定受験講座は月4回7000円(90分授業)である。中学3年生のN君が2月24日の日商簿記検定試験2級に合格するかどうか。根室に専門学校がないから、そういうレベルの授業を学習塾が提供することにしたから、授業内容は専門学校レベル


 お稽古事の英会話スクールあり、さわがしくも楽しい英語塾あり、あまり楽しくもないニムオロ塾あり。根室の子供たちの選択肢がひろがった。結構なことである。
 授業料もそれぞれ書いたとおり。地元の塾としては、ニムオロ塾の授業料が高い。消化速度の大きい生徒(いわゆるできる生徒)あるいは小さい生徒には個別指導をしている、そのため受け入れる人数を増やせないという事情がある。小学生ではクラス8人以下、中学生では12~15人までが個別指導の限界。このあたりの人数になると、90分間連続で生徒からの質問の答えっぱなしになる。高校生なら30人でも個別指導できる。生徒2対教師1の個人指導の技の限界がどこなのか5年間試行して来てようやく見えてきた。中学生だと12~15人である。低学年ほど生活(学習)習慣に問題のある生徒が多いので、教える人数は絞らざるを得ない。逆も真であり、高校生なら30人でも個別指導できる。
 個別指導を主体にしているから、授業料に比例して授業内容のグレードが高い塾となっている。授業中に同じ質問に3度応えて説明することもある。10人を超えるとほとんど質問の連続で、90分間途切れることがないときもある。問題演習中心に進め、個別の質問を次々に捌いているうちに授業が終わる場合が多い。だから、速度の大きい生徒は中3で大学レベルの英語を学ぶことになる。学習速度が高速になるほど生徒の質問が減ってくる傾向がある。速度が遅いほどいたるところで疑問にぶつかってしまい、質問が多くなる。最初は質問できなかった生徒も、徐々に慣れてくる。質問の出ない生徒には、こちらから質問することも多い。コミュニケーション主体の授業である。

 ニムオロ塾は上場企業3社で経営管理やシステム開発畑を中心にさまざまな仕事を経験した塾長が、現在の企業がどのような人材を求めているかを理解した上で、そうしたニーズに合致した人材を育てるために創設した私塾である。だから、授業はすべて塾長が教える。人を使ってクラスを増やすという考えはまったくもたない。根室で都会の一流講師を揃えることは採算的に不可能だということもある。
 パソコンでそうした欠点を補う育英塾もある。パソコンに教育を任せることはある面、危険が伴う。これは企業で働いた経験のない塾経営者には理解できないだろう。現実の社会の中で管理職になって仕事を任され、その重圧でノイローゼになる者達のなんと多いことか。なった途端にドロップアウトする。それを防ぐ手立てはコミュニケーションを重視する伝統的な私塾形式の授業しかない。社会人になってからの副作用まで考えた授業をすべきだが、企業で働いたことのない塾経営者や学校教師にはそうしたことが理解できないだろう。体験していないからだ。
 パソコンが教育をするわけではない。それはたんなるツールんひとつに過ぎない。たくさんあるおかずの一つである。だから大手進学塾はナマの授業を柱(主食)に据えて、脇役(おかずのひとつ)としてパソコン利用している。パソコンが主役になるわけではない。便利なツールには危険も伴うという例のひとつである。
 
同じ理由で百枡計算で有名になった陰山方式も危うい。陰山先生は憶えるだけの教育の弊害を知らないようだ。社会人になってから大きな副作用が予想される。社会人になった子供たちを見ていないから、あんな危険なやり方を副作用を防ぐ処方もせずに提唱できる。計算トレーニングには算盤のほうが遥かに優れている。副作用は一切ない。副作用に強いものはいずれ長い時間をかけて消えていく運命にある。本当に優れた方法だけが伝統的な文化として定着していく。算盤は世界に誇る日本の伝統文化である。算盤塾が衰退するのに伴い、日本の子供たちの基礎計算能力が低下した。基礎計算力の低下は、数学の能力全般に影響を及ぼしている。PISAの結果を見ても続落を続け、数学的応用力は2006年度ついに世界10位に転落してしまった。
 私塾は400年を越える伝統をもつ。明治維新にも大きな影響を与えた吉田松陰の松下村塾。医学分野では緒方洪庵の適塾、関孝和など優秀な数学者を排出した背景にも私塾がある。明治維新の学制も私塾が学校へ看板を架け替えたようなものである。世界中を見渡しても、江戸時代に私塾が3万もあった国は日本以外にどこにもない。誇るべき日本の伝統文化である。日本人は暇になると、知的な遊びで時間を潰す習性のある国民らしい。1300年の伝統を持つ短歌、芭蕉で完成を見た俳句、川柳など暇を潰す知的なツールには枚挙に暇がない。縄文時代が労働時間が一番短かったといわれているが、縄文土器の文様の美しさをみても合点がいく。暇な時間を知的な遊びや作業で埋めていくというのは、おそらく、1万年の長きにわたって培ってきた日本人の文化的な伝統なのだろう。

 子供の性格に合う塾か?どのような学習習慣を育みたいのか?どのような生活習慣を育みたいのか?によって塾の選択が異なる。どの塾が一番よいということはない。それぞれに個性的な塾があり、どのような物差しを当てるかで価値判断が異なる。
 何を重視して塾を選ぶべきかはスポンサーである親が何より自分の子供の将来をよくよく考えて決定すべきだろう。独自色の強い特徴のある個性的な塾が根室の町にはある。

 根室の学習塾の教師も事情をよく見ると、市立病院の医師不足の状況に似ている。これだけ人口が少ないと、駿台予備校代ゼミ河合塾などの大手一流予備校は教室を置いてくれない。中央から遠く離れている、人口が少ないということは、子供たちの学習環境に多大な影響を与えている。地元の大人が何とかするしかない。
 そういう意味では、それぞれの塾が個性的に競い合う現在の状況は喜ばしい


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クラブナビ

根室の英語教室に通っていた経験のある者です

地域の産業活性にはまず,まずすそ野といわれる若年層の学力が不可欠です
受験用に組み込まれた学力も必要ですが,人間力を養う機会と経験が重要です

その点では老若男女の密着度が高い根室はまだまだ余力があると考えます
規模に見合った発展を信じ,これからもまい進することをお祈りいたします
by クラブナビ (2009-01-02 23:47) 

ebisu

コメントありがとう。
根室で英語教室に通ったことがあると書いてあるから根室の人ですね。高校を卒業して故郷を離れ、もう社会人かもしれませんね。
わたしたち塾経営者は、やる気と可能性を秘めた子どもたちに少し手を貸すことができるだけです。生徒はいずれは社会人となり、何かの仕事に就く。
そのときに生き抜く力となるような教育ができれば幸いです。そのために教えるほうも年々歳々努力する。それができなくなったと感じたら廃業です。
さて、新年の授業は明日から、生徒の元気な顔をみるのが楽しみです。

by ebisu (2009-01-05 00:38) 

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