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#5020 技術の伝承:有人深海探査艇の例 Jul. 22, 2023 [A.6 仕事]

 米国の五人乗りの有人深海探査艇事故が報じられらのは6/22のことでした。

 日本には1890年建造の有人深海探査艇「しんかい6500」があります。世界で2番目に深いところを探査できる友人潜水艇です。
 これが、二つの技術が失われたために、もう造れないのです。溶接技術者がいません。1平方センチメートル当たり1トンの圧力に耐えて溶接部分から水漏れを起こさない技術は当時世界最高水準です。「しんかい」を建造したときの溶接工はとっくに現役を退いています。仕事がなかったために技術伝承がなされませんでした。

 帝人とSRLの臨床治験検査・データ管理の合弁会社の立ち上げと経営を任されたことがあります。1996年11月下旬のことでした。帝人本社から定年退職をした社員の方と一緒に仕事しましたが、そのIさんが、「国内で繊維の製造工場を作る技術がもうないのです」、そうおっしゃいました。帝人は海外へ工場移転をしたので、工場建設技術も海外へ流出してしまいました。国内で繊維工場を建設し、稼働させた技術者たちは、最後の工場建設から30年以上たったので、一人も残っていないというのです。
 30年工場をつくらなければ、繊維製品工場の建設と稼働に関する技術は伝承できずに、消滅してしまうということでした。

 伊勢神宮には式年遷宮というのがあり、20年に一度お社の建て替えが行われます。20代で参加した人たちが、20年後に40代で、お社の建造の主力を担います。60代で棟梁としてお社建造の全般を差配します。こうして1300年間、お社の建築技術が伝承されてきました。
 金剛組という神社・仏閣を建造できる企業がありますが、この企業は日本最古の企業で、578年の創建されて約1500年の歴史を持っています。もちろん世界最古の企業です。木組みの技術伝承が1445年間連綿となされてきています。

 日本にはさまざまな職人がおり、名工の数も少なくありませんが、仕事がなければ技術の伝承が途絶えてしまいます
 貴重な技術伝承のために、有人深海探査艇ぐらいは、20年に一度の割合で、新しい船を国費で造っていいのではないでしょうか?

 玉鋼の製造もそういう技術の一つです。さまざまな分野で、名工の技術伝承が途絶えようとしています。国はどのような技術が途絶えようとしているのか、それが途絶えたときに、どのような不都合が起きるのか調査し、残さなければならない技術を選別して、技術伝承がなされるように配慮すべきなのでしょう。技術立国を今後も維持しようと思うなら、そうした国家戦略が必要です。



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