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#4275 「青チャート数Ⅲ制覇」:5か月と7日間 June 24, 2020 [51. 数学のセンス]

 他の人の参考になるだろう。医学部受験の生徒は1月14日から「青チャート数Ⅲ」の問題を解き始めた。例題を読み、片っ端から問題を解いていくスタイルである。数学の偏差値が70でも消化不良を起こすのでお勧めできない勉強法だ。能力に応じた勉強法をとるのがいい、この生徒にはこのスタイルがふさわしかっただけ。6/21に総合問題を残して、全問解き終わった。総合問題は受験直前の「ご馳走」である、いまやる必要はないというのは本人の判断。

 この生徒は小学5年生の1月から弊塾へ通い始めた。(45年前の)首都圏なら小学4年生からが標準的なスタート、1年と9か月遅れてスタートしたことになる。理系に秀でる生徒はしばしば国語力に弱点がある。この生徒も文学作品に感動するところが概してすくないから、放っておいたら文学作品をほとんど読まぬ。仕方がないので国語力の底上げのために良書を選んで5年間にわたって日本語音読トレーニングをやった。語彙力強化のために音読テクストとして選んだ17冊の本のリストを末尾に貼り付けておく。

 最初から1年9か月の遅れを意識して、それをカバーするために、シリウス・シリーズを使って、予習方式で数学の勉強を6年と5か月間やり続けてきた。コンパクトな解説だけでやり方を理解し、すぐに問題を解くことに慣れてしまった。他の生徒にはこんな無茶なやり方をさせない。
(根室では医学部進学希望の生徒を5年生の四月から一人だけ教えたことがあるが、中学1年の終わりには3年生用のシリウスを半分消化していた。英語は中学生になってから教えたが、堰を切ったように1年生用の問題集は3か月で終わった。1年次の終わりまでに3年間分消化してしまった。並行して音読用のCDのついた教材を選んでやらせた。3月に突然親の転勤が決まって転校したので、その後どうなったか知らない。OR君は昨年大学受験だったはず。シリウスのコンパクトな解説を独力で読ませて予習方式で全問やらせたのは過去二人だけ。)

 シリウスに比べると「青チャート数Ⅲ」は断然例題が多く、演習問題数が少ない(1割程度?)から、この程度の問題集なら今まで通り、例題を読んで理解し、次いで演習問題をやり通せると判断した。
 月曜日(6/22)から「大学への数学1対1対応」シリーズ6冊にチャレンジし始めている。これは自分で情報収集して選んだ問題集である。ときどきエレガントな解法が提示されているので、そういう問題をピックアップしてランダムにやるつもりのようだ。問題の難易度も解法も「青チャート数Ⅲ」をやったあとにふさわしいレベルである。

 最後は先生のサポートなしに、単独で勉強できるような学習スタイルを身につけること、それが理想と思っている。問題集の選択も、仕上げに関しては自分で選んだ、それでいい。

 数Ⅲのスタートと同時、英作文も1/14日からメール配信方式で「英作文千本ノック」を始めた。季節が廻(めぐ)り、なんとなく気が向いてしまった。(笑)

 必要な時期が来れば、自然に必要なことが始まってしまうのは、季節廻りのようなもの。生徒がハラリのSapiensを坦々と精読して読みの力を蓄えているうちに、教えている私の方では書きのトレーニングをはじめたいという欲求が蕾となってジッと開花を待っていた。「英作文千本ノック」は偶然に数Ⅲと同時のスタートとなった。「青チャート数Ⅲ」のスタートは生徒が自分で決めた。河合塾の冬季特訓から戻って塾へ来た日から始めたのである。その日にわたしは用意していた英作文問題をメールでかれに送った。数学と英語、生徒と先生、二重の意味で「啐啄同時であった。

 週に4日間、1回に5-10題問題を消化している。NHK英会話教材を利用した問題と解説になっている。認知言語学で用いられているイメージ・スキマーを利用した大西泰斗先生の解説はなかなか楽しいし、言語理論としても最新のものだ。英作文トレーニングを通してこういう最新の理論に触れるということが大切なのである。構造言語学の大御所であるチョムスキーの生成変形文法理論をつかって解説をしている。ハラリ「Sapiens」を11か月間読んでいるから、「読み」と「書き」の両輪が揃って相乗効果が出ている
 昨日、第78回目をやった。問題数は550題くらいになっているだろう。最近は8割くらいの正解率までアップしている。夜の10時ころにメールで問題文を配信すると、翌日それをやって塾へ来る。問題演習を始める前に英作文の答えをチェックし、解説を行う。時間は10-15分間ですむ、これが週に4回だから、普通に授業でやったら2時間を超えるだろう。じつに効率的なのだ。
 NHK英会話テキストがベースだから、慣用句がふんだんに出てくるし、それに加えてイメージ・スキマーと生成変形分法がベースになった解説だから、目から鱗が落ちるようなことがちょくちょく起きる。「千本ノック」をしてから、模試のリスニングの得点が8-9割にアップしたと副次効果に喜んでいる。
 Sapiensの朗読音源でリスニングトレーニングを3か月間ほどやれば、リスニング力は飛躍的に伸びる。共通試験レベルでは不要だが、やれるときにやっておいた方がいい。将来どこで、どんな風に役に立つかわからないが、それが人生の岐路で強力な武器になるときがいつかきっとやってくる。

 東京で勉学し、そしていくつか業種を変えて本社経営管理部門で仕事する企業人として人生の半分近くを過ごしたから、複数分野の高度なスキルをもつメリットがよくわかる。

(この生徒は高校生になってから英検を初めて受験している。いきなり準2級を受験して高得点でクリア、次の英検で2級を受験しこれもハイスコアでクリアした。あれからかなり力がアップしてるので準一級の問題集を2周したら、合格できるレベルだろう。大学共通試験の英語が民間の試験に置き換わるというので必要な英検2級を受験しただけ。本人は「もう英検は必要ない」と言っている。)

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<6. 日本語音読トレーニング:国語力が学力の基礎>
 最後に、日本語音読トレーニングで5年間に読破した本のリストを挙げておく。件(くだん)の生徒は高1で日本語音読トレーニングは終了している。17冊、レベルを上げながら、たっぷりやった。
 生徒と交代で輪読するし、速度を変えて読むので、スキルス胃癌を患い胃と胆嚢を全摘出したわたしには、体力への負荷が大きい。だから、この2年間は本気でやろうという生徒にだけ対応している。休みの水曜日に日本語音読トレーニングを充てていた。昨年は1時間でへとへと。寄る年波には勝てません、年々体力が落ちてます。でも、まだがんばれます。(笑)


〈日本語音読リスト〉…
*#3726 
日本語音読トレーニングのススメ:低下する学力に抗して Apr. 18,2018
https://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2018-04-18-1

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<7. 国語力アップのための音読トレーニング >
 中2のトップクラスのある生徒の国語力を上げるために、いままで音読指導をしてきた。読んだ本のリストを書き出してみると、
○『声に出して読みたい日本語』
○『声に出して読みたい日本語②』
○『声に出して読みたい日本語③』
○『坊ちゃん』夏目漱石

○『羅生門』芥川龍之介
○『走れメロス』太宰治
○『銀河鉄道の夜』宮沢賢治
 『五重塔』幸田露伴
 『山月記』中島敦
●『読書力』斉藤隆
●『国家の品格』藤原正彦
●『すらすら読める風姿花伝・原文対訳』世阿弥著・林望現代語訳
●『日本人は何を考えてきたのか』斉藤隆

『語彙力こそが教養である』斉藤隆
●『日本人の誇り』藤原正彦(数学者)

◎『福翁自伝』福沢諭吉
◎『近代日本150年 科学技術総力戦体制の破綻』山本義隆(物理学者)

(○印は、ふつうの学力の小学生と中学生の一部の音読トレーニング教材として使用していた。●印の本はふつうの学力の中学生の音読トレーニング教材として授業で使用した実績がある。◎は大学生でも語彙力上級者レベルにふさわしいテクストである。平均的な語彙力の大学生には手が届かぬ。
 音読トレーニング授業はボランティアで実施、ずっと強制だったが、2年前から希望者のみに限定している。本気でやる気にならないと効果が小さいので、お互いに時間の無駄。)

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コメント 6

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数ⅠA、数ⅡBのシリウス全問、青チャートの巻末の総合問題以外を解いてきた生徒にとって、「大学への数学1対1対応」は易しい過ぎるよう気がします。(あくまで今まで使用してきた完成度が分からないので、ブログ記事からの推測です)

志望校の数学の過去問に挑戦して、今まで使用した問題集で通用するのか、通用しないのか等を分析して夏の指針にしてもよいのではと思います。
by お名前(必須) (2020-06-28 14:57) 

ebisu

具体的なサジェッションどうもありがとうございます。

本人はエレガントな解法のものをピックアップしてやってます。
「易しい問題はやる必要ないからパスして、シリウスには載っていなかったようなエレガントな解法を説明した問題があるので、ピックアップしてやります。」
やるのは全問ではないので、6冊2か月あれば修了してしまうと思います。

『1対1対応』を選んだ理由の一つは、複素平面をしっかりやっておきたいからでしょうね。青チャートだけでは心もとない。

問題集は物理や化学を含めて、先輩などから情報収集して選んでいます。生徒の成長を実感。

大学への数学シリーズは絶版になっていますが、この生徒は2年前に全部そろえています。

相談があれば、4冊ほどエレガントな解法の載っている問題集があるので紹介はしますが必要ないでしょうね。物理や化学の好い問題集、自分で使ってみて教えてくれます。面白い生徒です。

面白そうな問題集があれば、具体名を書いていただければ、生徒に伝えます。
by ebisu (2020-06-28 16:09) 

ebisu

完成度についてお尋ねでしたね。進研模試の問題では正答率9割を超え、わからない問題がゼロのことが数回ありましたね。
シリウスでも青チャートでも、解説読んだらすぐに問題演習してきたので、理解度が大きいのです。ほとんども問題を答えを参照しないで解いてしまいます。
コンパクトな解説を読んだだけで、演習問題が独力で解けてしまいます。だから、青チャート数Ⅲも例題に限定する必要なし、全問題チャレンジでした。質問は数Ⅲでは10回もあったでしょうか。
数学に関してはもう塾へ来る必要はないのです。問題解きながら、わたしと雑談してストレスを解消しているようです。
by ebisu (2020-06-28 16:20) 

SEVEN

医学部受験生向けというわけではないですが、数学のいい問題集を紹介します。

①やさしい理系数学(河合出版)
別解が豊富だが、本の題名とは異なり、難易度が高い。入試標準レベルが仕上がった上で1問1問じっくり解いて思考力を伸ばす問題集。大手予備校の「ハイレベル」の名前が付く講座と同じ難易度。

②国公立標準問題集CanPass(駿台文庫)
問題の考え方が詳しい。難易度は地方国公立大から大都市圏の国公立大(医学部専用問題を除く)2次試験レベル。
最大の特徴は減点される部分を詳しく解説し、減点されない答案作りを学べる。


by SEVEN (2020-07-04 21:57) 

ebisu

SEVENさん

河合と駿台それぞれ一つずつ、バランスの良い選択ですね。
生徒に伝えます。
どうもありがとうございます。
by ebisu (2020-07-04 23:12) 

ebisu

SEVENさん

生徒にあなたがススメてくれた問題集を紹介しました。①の本は知っていました。内容も。(笑)
②の本は知らなかったようで、取り寄せて中を見てからやるかどうか決めたいと言ってました。

役にたったようです、ありがとうございます。
by ebisu (2020-07-06 23:54) 

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