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#4269 Sapiens(31st) : Page 42, 43 June 13, 2020 [44-3. 原書講読講座 Sapiens]

 昨日、6/12金曜日の授業から。
 42頁第2段落で出てくる副詞句の訳がやっかいだった。生徒からの質問がなければわたしも漫然と読み飛ばしてしまう。いい質問だ。

<42.2> ... If you tried to bunch together thousands of chimpanzees into Tiananmen Square, Wall Street, the Vatican or the headquarters of the United Nations, the result would be pandemonium. By contrast, Sapiens regularly gather by the thousands in such places. Together, they creat orderly patterns --- such as trade networks, mass celebrations and political institutions --- that they could never have created in isolation. The real deffernce between us and chimpanzees is the mythical glue that binds together large numbers of individuals, families and groups. This glue has mde us the masters of creation.


 ここが問題の箇所である。
 Together, they creat orderly patterns

 together:副詞 ともに、一緒に、協力して
 中学生の時から見慣れた単語だが、この副詞句は強調で文頭に置かれただけではない。カンマがついているところもしっかり確認しておきたい。カンマには意味がある。アンダーラインを引いたtogetherと呼応している。そちらは仮定法過去の文で、反実過去。

 2回目に現れたtogetherのほうは内容から推して単なる条件節ですから、必要なものを補って書き直すと、次のような文になる。
 If you try to bunch together thousands of [sapiens], they creat orderly patterns...


 「サピエンスを数千人集めたら、その行動は整然としたパターンを描く」と述べて、
そのあとに整然としたパターンの具体例が三つ示されている。貿易ネットワーク、集団での儀式、政治機関の三つである。


 Together, they creat orderly patterns

 したがって、この部分は「数千のサピエンスを集めたら、整然としたパターンを描く」と訳したらよいのだろう。
 柴田氏は前後関係からうまくつないだように見える、これもプロの翻訳家の技か。ハラリの言いたいところとはちょっとニュアンスが違うようにわたしには感じられる。「サピエンスが一緒になる」ことでは貿易のネットワークは生じない。ああ、ここは交易ではなくて現代の話だから貿易と訳すべきだ。ハラリの言わんとしていることは「数千人単位のサピエンスが集まり一団をなせば」ということ。数人や数十人や数百人単位の集団では現代の貿易ネットワークや集団での儀式、政治機関は生み出せない。数十人単位の集団行動ならネアンデルタール人でもやれたのだ。


もし、何千頭ものチンパンジーを天安門広場やウォール街、ヴァチカン宮殿、国連本部に集めようとしたら、大混乱になる。それとは対照的に、サピエンスはこうした場所に何千という単位でしばしば集まる。サピエンスは一緒になると、交易のネットワークや集団での祝典、政治機関といった、単独では決して生み出しようのなかった、整然としたパターンを生み出す。わたしたちとチンパンジーの真の違いは、多数の個体や家族、集団を結びつける神話という接着剤だ。この接着剤こそが、わたしたちを万物の支配者に仕立てたのだ。」柴田裕之訳 56頁

<43.0> How is it that we now have intercontinental missiles with nuclear warheads, whereas 30,000 years ago we had only sticks with flint spearheads? Physiologically, they has been no signeficant improvement in our tool-making capacity over the last 30,000years.

  この文をどう処理していいかわからないというので、itが何を指しているか訊いてみたら、that節という答えが返ってきた、ちゃんとわかっている。ではなぜ訳に戸惑ったのだろう?単に文が長いからではないだろうか。whereasという接続詞も使われているので、that節には2つの節があり、節同士の関係を読みそこなったからだ。
 しかし文構造は単純である。こういうときは基底文deep structureに書き直せば意味は簡単につかめる
  How is it? 「それはどういうことなのか?」「それはどうしたことだろう?」
 itという箱の中身は生徒自身が答えたようにthat節である。3万年前に火打石の穂先をつけた槍しかもっていなかったわたしたちが、今日大陸間弾道ミサイルをもっているのはどういうことなのか?生物学上、道具を作る能力において30,000年間に意味のある変化はなかった。なのにこれほどの差が生じているのはどうしたわけなのだろうというのが、ハラリの問題提起である。
 whereasは3万年前といまを比較しているから、そのまま対比的に訳せばいいだけ。訳語を知らなくても文脈で気がつく。つねに文脈を読みつつ読み進むのは日本語で書かれた本を読むときと同じである。この生徒は良質の日本語テクスト15冊を厳選して5年間の音読トレーニングをやり終えている。日本語テクストでできることが、英文ではまだできない。英語の本は1冊目、それも10か月かけてようやく43頁であるから無理もない。文章を読んで、普段使っている日本語レベルで訳文を書くトレーニングを続けているが、そろそろ卒業して、速度重視のスラッシュ・リーディングへ切り替えたい。精読トレーニングを100頁やれば景色が違ってくるし、文脈への反応もずっとよくなる。
 このサピエンスの朗読音源がamazonから出ているので、それを利用してリスニング・トレーニングをすることにしている。理解している英文を繰り返し音読することで頭から英文を理解できるようになる。相乗効果を狙っている。

 ハラリの視点はとってもユニークである。大陸間弾道ミサイルの開発や製造には数十万ものイベントがある。数十万もの単位のジョブ・イベントをPERTチャートに展開して仕事を進めなければならない。数十万人~百万人を超える人々が協調して仕事をしないとつくれない。それを可能にするのが「集団を結びつける神話という接着剤」であり、ネアンデルタールやそれ以前の人類がもてなかった能力なのである。その分岐点をハラリは「認知革命」と名付けた。

3万年前には燧石の穂先をつけた木の槍しかもっていなかったわたしたちが、今では核弾頭を搭載したミサイルをもっているのはどういうわけか?生理学的には、過去3万年間にわたしたちの道具作成能力には目立った進歩はなかった。」 柴田裕之訳



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