#4171 数Ⅲ開始10日目で青チャート50頁消化:育ち方 Jan. 24, 2020 [51. 数学のセンス]
<最終更新情報>
1/25 1:40 青チャートH26年版とR2年版の比較追記60頁増加。
1/26 8:20 標準問題で脳をあまり使わない、難易度の高い問題へパワーを温存しておくの進研模試数学得点9割越えのポイント
高校2年生のO君が数Ⅲを始めたのは、1月13日からである。
塾用教材のシリウスには複素平面を扱ったものがないので、「青チャート数Ⅲ」を使うことに決めていた。複素平面の世界では、掛け算は偏角(角度)の足し算、割り算は偏角の引き算、累乗計算は回転を表すことを計算規則とそれを図に描いて説明してから、オイラーの公式を黒板に書いた。
e^iΘ=cosΘ+isinΘ
T:「複素関数では超越数eの累乗が三角関数で表されるんだ、まるでアリスの「ワンダーランド」だね。」
O:「不思議ですねエ」
T:Θをπ(Pi)に書き換えてみるよ。
e^iπ=cosπ+isinπ
T:「右辺は数Ⅱで三角関数が出てきたから、どうなる?」
O:「-1です」
e^iπ=-1
T:「ネイピア数eと円周率πはどちらも超越数で、無限小数だが、それが純虚数iという指揮者が現れたとたんにシンプルな整数-1に化けてしまう。わたしはとっても美しいと感じるが、O君の目にはどう映っている?」
O:「美しいと思います」
T:「なーんだ、ちゃんと感動できる、なのに短歌や俳句には美しさを感じない(笑)」
O:「… m(_ _)m」
10分間ほどそういう対話をしてから、青チャート数Ⅲ問題集を開始した。昨日は1月23日だから11日目である。どこまで進んだか尋ねたら青チャート数Ⅲの50頁辺りをやっていた。複素数は82頁あるから、月末には終わりそうだ。どういうわけか、数Ⅲに入ったとたんに加速している。
O:「複素数、面白くてやめられないんです(笑)」
指数関数が三角関数で表現できる(等式の左辺が指数関数、右辺が三角関数)ということは、これら両方の式が、共通のものに還元できるということを示している。それが、無限級数である。数Ⅲでは初歩的なものだけが出てくる。好い専門書があるから、そちらに目を通してみたらいい。『πとeの話』という本だ。
『オイラーの贈り物』も素晴らしい本である。数学好きな生徒は買っておいたらいい、いつか読むことになる。世の中には数学が大好きなんて人間はあんまりいないから、絶版になる可能性がある。
小5のとき、正月明けから塾へ来た。数か月で6年生の問題集を終わり、シリウスシリーズで中学数学の勉強を始めた。シリウスはそれぞれの章にコンパクトに数題例題があるだけ、あとはひたすら難易度の高い問題集を解く。演習方式の問題集である。問題量が多いので、全問題をやらせるのは数学が「よくできる」程度では無理、だから様子を見ながらやらせたのだが、大丈夫だった。「よくできる」の上を走った。
中3の途中から数Ⅰを始めた。そして数Ⅱと数B、この2冊がとんでもなく分厚い。章の終わりには難関校の受験問題が並んでいる。問題数は青チャートの10倍はあるだろう。数Ⅱの問題集と解答集は、B5版の大型で277頁と557頁、数Bは209頁と335頁ある。全問題やり切ることになる。面白かったのか、ベクトルと数列はさっさと終わって得意分野にしてしまった。いま、積分の受験問題過去問が並んだところをやっているから、まもなく数Ⅱも終了する。
はやく数Ⅲをはじめたくて、週2時間の塾の数学授業のうち、1時間を数Ⅲに充てている。青チャート数Ⅲは451頁(H26年度版)あるが、4か月くらいで消化しそうな勢いである。問題量が少ないので、トレーニング不足が心配だから、例題を全部やるとか、別解も全部やって練習量不足を補わないといけないのだろう。何か問題集を探しておいたほうがよさそうだ。標準問題は脳を使わなくても解けるくらいにしておけば共通一次9割の得点が可能になる。今月受験した進研模試で3度目の9割越えになるだろうから、そのあたりの感触が生徒にはすでにある。テストの際に難易度の高い問題に対処するには、標準問題で脳を使わないほうが余力をもって対処できることが実感できる。その余力が感じられないときには9割超にならないからだ。
シリウスでコンパクトな説明のみで、問題を片っ端から解いてきたので、青チャートは例題が多いので簡単に見えているのだろう。数分間、例題を眺めて理解すると、例題を見ながら、問題を解いている。
でも、数Ⅲは奥が深いし、キリがないから、わずか451頁の青チャートでどこまで迫れるか、まあ、やれるところまでやってみたらいい。やればやるほど課題がたくさん見えてくるのが数Ⅲだろう。高校数学を超える範囲はネットで検索したらいい。そのあたりをどこまで調べるかが鍵になる。1日は24時間しかないから、どこかで切り上げないといけない。もどかしいだろうな。時間がいくらあっても、好奇心を充足できないもどかしさ。
学校の授業はペースが遅いし、簡単なことしかやらないので彼にはストレスである。だから、中学生の時から、数学の授業時間中にシリウスを広げて問題を解いていた。数学の先生に理解してもらうまで、トラブルはあった。高校でも、同じスタイルで授業時間を過ごしているが、もうトラブルにはならない。高校生は自主的・自律的に学習するのが基本だから、学校の指導方針とも齟齬はない。遅い授業を無理強いしたら、能力のある子どもたちが旬の時期に学力を飛躍的に伸ばす芽を摘んでしまう。学校が出す一律の宿題も不要だ。進研模試で数学90点以上の生徒に、数学の宿題を無理強いしないでもらいたい、学習の妨げになる。中学校の学力テストで数学90点超の生徒も同じことだ。どこの学校でも、遅くて難易度を下げた授業をせざるを得ないなら、能力の高い生徒は放っておいてもらいたい。
100人に一人はこういうレベルの生徒がいるが、学校の授業の速度や扱う問題の難易度が能力に合わない、だから、放っておいてもらうのが一番いいのである。授業中、難易度の高い問題を解くのに熱中しているだけなのだから。
いままで、難易度の高い問題集シリウスシリーズを使って独力でコンパクトな解説を読み、問題を解いてきた、そのスタイルが、数Ⅲになって大きな効果を発揮している。どういう学習スタイルを身に着けさせるかが大事なのだ。数Ⅲになって消化速度が加速している。複素数の計算には、数列のさまざまなタイプの特性方程式が絡む複合問題があるが、数Bで大量の問題を解いているので、スーッと通り抜けてしまう。複素数の問題を解くことが、ベクトルの復習になっている。だから、数Ⅲの勉強を徹底すると数Ⅱや数Bの復習になってしまう。80%は実数の範囲で慣れ親しんだ操作を複素平面上でおさらいするだけだから、簡単なのである。数Ⅲの微分積分も計算トレーニングだから、慣れたらいいだけ。シリウスで5年間半端ではない問題量を消化してきたのが、数Ⅲの学習速度を加速しているように見える。
数Ⅱと数Bを始めたときから1時間以上考えてもわからない問題だけ質問するように伝えた。それまでは10分ほど考えてわからなければ質問していた。簡単に質問を繰り返すと、塾長への依存心が強くなる、依存心を育ててはいけない、自立心の芽を摘むことになる。そうせざるを得ない生徒もいるから、生徒の能力に応じてで分けて指導している、個別指導の利点である。たま~に、シビアな質問を投げてくる。「1時間考えたけど、この問題わかりませんでした」「一晩考えたけどわからない」、その場で即答できればするし、できなければ調べて確認して翌日解説するようにしている。
たいがい、とってもいい質問なのだ。数Ⅱだったかな、「解答を見てもここがわからない」というので、即答できず、わたしも納得がいかないので、Grapesというグラフソフトとプログラマブル科学技術用計算機HP-35を使って確認したら、解答集にミスが見つかった。わからないことを考え抜いた末に「わかりません」と言えるところがすごいのだ。解答を見て覚えてしまってもいいのである。でも、数学は深く理解しておかないと伸びしろがなくなる、O君は自分をごまかさない。
<H26年版とR2年版の比較>
青チャートの平成26年版は451頁、2020(R2)年版は511頁ある。60頁増えたのだが、本の厚さはぴったり同じであるから、その分だけ上質の紙を使って調整したということか。解答集の方は451⇒487頁だから、36頁増である。解答・解説がいくぶんかコンパクトになったということ。厚さは5㎜ほど薄くなっているから、だいぶ紙質が改善されたようだ。その分、本体値段が1771円から1960円へアップしている。複素平面がH26年版では54頁までだが、R2年版は82頁まで。複素平面だけで28頁増えている。中を見たら、大学数学へ一歩踏み込んでいる。どおりで増加分の半分が複素平面の章に集中しているわけだ。
<英語の学習法>
いま、ハラリの”Sapiens”を読んでいる。夏の終わりころから始めた。O君は河合塾の冬季特訓で採り上げた東大過去問の方が楽だと言ってる。そろそろ速度アップし手もいい時期だと伝えたら、難易度の高い大学入試問題は段落中の難易度の高い文(生成文法でいうと文法工程指数の高い文が多い)を突いて出題するから、現在の精読(英文を書きとり、訳文も普段使っている言葉で書く)をまだしばらく続けたいとのこと。
知らない単語が1ページに10個あっても、段落ごとのロジックを追って粗筋は外さずにすでに読めるレベルに達しているはず、なかなか慎重だ。彼にとって読書の楽しみは、いまは難易度の高い文をよく読むこと。いい加減な読みでもいいから、速い読み方をになれたら、ずっと楽しくなれる。生徒にとっては、サピエンスは内容が面白いので楽しいのである。(笑)
はっきりしないところだけ辞書を使って調べ、考えたらいいのだが、3月いっぱいまでこのペースかな。
ところで、先週からメール方式で英作文トレーニングを始めた。月火木金の四日間、毎日5-8題、英作文問題を作成して送信している。翌日、授業の前に5分間ほどチェックと「対話」で作文トレーニングができる。とりあえず1か月やって、難易度調整しながら、どの程度の問題が適しているか観察している。
英語が苦手な高2の生徒5人へも送信を始めた。NHKラジオ英会話レベルの英作文問題だから彼らには難易度が高すぎるが、解説を丁寧にやればいいだけ。昨日、二人が、生徒会室で他の塾へ通っている生徒を巻き込んで、一緒に作業してきた。勉強しどころ満載である。「身になる英作文トレーニング」は、やはり、5-10分程度の解説で十分やれることがわかった。予想通り解説を丁寧にやればいいだけ。高1の生徒には中3レベルの英作文から始めたほうが良さそうなので、来月から開始するつもりだ。半年も続けたら、500題、解答解説付きだから「立派な英作文問題集」が一冊できあがる。(笑)
リスニングはいくつか教材を挙げて、家でやるようにいっているが、やりかたが大事なので、個別にチェックしていく。10分前後の音源で、視点を変えて百回も2百回3百回も、ひたすら繰り返して音読トレーニングすることが効果が大きい。ちゃんとやれば、文章の中で使われるhurtとheartが聞いた瞬間にだれでも聞き分けられるようになるよ。やりかたは、学校の先生や塾の先生に指導を受けたほうがいい。
<余談:育ち方>
「育ち方」と書いたのは、わたしが「育てた」わけではなくて、生徒が己の好奇心の赴くままに勉強して、勝手に育ったてしまったというのが実感だからである。好奇心をくすぐることぐらいは繰り返しやっている、塾長の役割なんて、それぐらいなもんだよ。(笑)
このレベルの生徒は、いまでも1学年に3人くらいいるだろう。問題は「育ち方」である。根室市内の中学生1学年の生徒数は200人くらいである。わたしは2002年の11月に故郷に戻ってきて塾を開いたのだが、20年前ころには400人いたし、学力上位層は現在の5倍以上存在したから、上手に育てたら、毎年5-10人は医学部へ進学できるレベルの生徒がいたということ。もったいない。市立根室病院の常勤医は12人、医者がいなくて困っているのは、地域に学力の高い生徒がいても、育てそこなってきたということ。30年かける用意があるなら、医者は根室でいくらでも自給自足できる。これからだって、年に2人、医学部へ進学する生徒を育てられたら、30年間で60人である。3人に一人が、根室で10年間仕事してもらえたら、市立根室病院は常勤医不足なんてことはなくなる。そして、そういう教育環境が用意されたら、40代のドクターが根室で仕事するのに子どもの教育という大きな障害がなくなる。年収が高額だから、根室出身ではないドクターもいくらでも集まる。130ベッドの病院でも、日本で地域医療の分野で先端の病院になりうる。どういうビジョンで地域医療を運営し、それへ向けて人を育てるかということが大事なのだ。根室の地域医療問題を根底からひっくり返すにはこういう長期戦略が必要。
進度の遅い授業や学力を無視したつまらない一律の宿題の無理強いはやめてもらいたい。たとえば、学力テストで数学90点以上の生徒は宿題免除でいい。授業も聞きたかったら聞けばいいし、難易度の高い問題集を授業中にやってもいい、それくらいの寛容な指導をしよう。そういう環境を提供すれば、勝手に育っていく。学力の低い生徒は、一律の宿題を出したらいい。放課後補習への強制参加もやるべきだ。英語アレルギーの高2の5人の生徒たちですら、2時間10回の英語補習で全員アレルギー症状が消滅している。そして英作文トレーニングをやっているのだ。チャンスをあげたら、這い上がってくる、指導する側が適切な手を差し伸べてないだけ。放っておいたら、生徒はそのうちにあきらめてしまいます。
(良書を厳選した日本語音読トレーニングを4年間やった。15冊だったかな、最後の2冊は福沢諭吉『福翁自伝』や物理学者で東大全共闘元議長山本義隆『近代日本150年史 科学技術総力戦体制の破綻』。山本は長年にわたって駿台予備校の物理の先生でもある。O君は小6のときから厳選して音読トレーニングをしてきたから、論説文の読みが深くなった、並みの大学生では比較にならぬ。)
1/25 1:40 青チャートH26年版とR2年版の比較追記60頁増加。
1/26 8:20 標準問題で脳をあまり使わない、難易度の高い問題へパワーを温存しておくの進研模試数学得点9割越えのポイント
高校2年生のO君が数Ⅲを始めたのは、1月13日からである。
塾用教材のシリウスには複素平面を扱ったものがないので、「青チャート数Ⅲ」を使うことに決めていた。複素平面の世界では、掛け算は偏角(角度)の足し算、割り算は偏角の引き算、累乗計算は回転を表すことを計算規則とそれを図に描いて説明してから、オイラーの公式を黒板に書いた。
e^iΘ=cosΘ+isinΘ
T:「複素関数では超越数eの累乗が三角関数で表されるんだ、まるでアリスの「ワンダーランド」だね。」
O:「不思議ですねエ」
T:Θをπ(Pi)に書き換えてみるよ。
e^iπ=cosπ+isinπ
T:「右辺は数Ⅱで三角関数が出てきたから、どうなる?」
O:「-1です」
e^iπ=-1
T:「ネイピア数eと円周率πはどちらも超越数で、無限小数だが、それが純虚数iという指揮者が現れたとたんにシンプルな整数-1に化けてしまう。わたしはとっても美しいと感じるが、O君の目にはどう映っている?」
O:「美しいと思います」
T:「なーんだ、ちゃんと感動できる、なのに短歌や俳句には美しさを感じない(笑)」
O:「… m(_ _)m」
10分間ほどそういう対話をしてから、青チャート数Ⅲ問題集を開始した。昨日は1月23日だから11日目である。どこまで進んだか尋ねたら青チャート数Ⅲの50頁辺りをやっていた。複素数は82頁あるから、月末には終わりそうだ。どういうわけか、数Ⅲに入ったとたんに加速している。
O:「複素数、面白くてやめられないんです(笑)」
指数関数が三角関数で表現できる(等式の左辺が指数関数、右辺が三角関数)ということは、これら両方の式が、共通のものに還元できるということを示している。それが、無限級数である。数Ⅲでは初歩的なものだけが出てくる。好い専門書があるから、そちらに目を通してみたらいい。『πとeの話』という本だ。
『オイラーの贈り物』も素晴らしい本である。数学好きな生徒は買っておいたらいい、いつか読むことになる。世の中には数学が大好きなんて人間はあんまりいないから、絶版になる可能性がある。
小5のとき、正月明けから塾へ来た。数か月で6年生の問題集を終わり、シリウスシリーズで中学数学の勉強を始めた。シリウスはそれぞれの章にコンパクトに数題例題があるだけ、あとはひたすら難易度の高い問題集を解く。演習方式の問題集である。問題量が多いので、全問題をやらせるのは数学が「よくできる」程度では無理、だから様子を見ながらやらせたのだが、大丈夫だった。「よくできる」の上を走った。
中3の途中から数Ⅰを始めた。そして数Ⅱと数B、この2冊がとんでもなく分厚い。章の終わりには難関校の受験問題が並んでいる。問題数は青チャートの10倍はあるだろう。数Ⅱの問題集と解答集は、B5版の大型で277頁と557頁、数Bは209頁と335頁ある。全問題やり切ることになる。面白かったのか、ベクトルと数列はさっさと終わって得意分野にしてしまった。いま、積分の受験問題過去問が並んだところをやっているから、まもなく数Ⅱも終了する。
はやく数Ⅲをはじめたくて、週2時間の塾の数学授業のうち、1時間を数Ⅲに充てている。青チャート数Ⅲは451頁(H26年度版)あるが、4か月くらいで消化しそうな勢いである。問題量が少ないので、トレーニング不足が心配だから、例題を全部やるとか、別解も全部やって練習量不足を補わないといけないのだろう。何か問題集を探しておいたほうがよさそうだ。標準問題は脳を使わなくても解けるくらいにしておけば共通一次9割の得点が可能になる。今月受験した進研模試で3度目の9割越えになるだろうから、そのあたりの感触が生徒にはすでにある。テストの際に難易度の高い問題に対処するには、標準問題で脳を使わないほうが余力をもって対処できることが実感できる。その余力が感じられないときには9割超にならないからだ。
シリウスでコンパクトな説明のみで、問題を片っ端から解いてきたので、青チャートは例題が多いので簡単に見えているのだろう。数分間、例題を眺めて理解すると、例題を見ながら、問題を解いている。
でも、数Ⅲは奥が深いし、キリがないから、わずか451頁の青チャートでどこまで迫れるか、まあ、やれるところまでやってみたらいい。やればやるほど課題がたくさん見えてくるのが数Ⅲだろう。高校数学を超える範囲はネットで検索したらいい。そのあたりをどこまで調べるかが鍵になる。1日は24時間しかないから、どこかで切り上げないといけない。もどかしいだろうな。時間がいくらあっても、好奇心を充足できないもどかしさ。
学校の授業はペースが遅いし、簡単なことしかやらないので彼にはストレスである。だから、中学生の時から、数学の授業時間中にシリウスを広げて問題を解いていた。数学の先生に理解してもらうまで、トラブルはあった。高校でも、同じスタイルで授業時間を過ごしているが、もうトラブルにはならない。高校生は自主的・自律的に学習するのが基本だから、学校の指導方針とも齟齬はない。遅い授業を無理強いしたら、能力のある子どもたちが旬の時期に学力を飛躍的に伸ばす芽を摘んでしまう。学校が出す一律の宿題も不要だ。進研模試で数学90点以上の生徒に、数学の宿題を無理強いしないでもらいたい、学習の妨げになる。中学校の学力テストで数学90点超の生徒も同じことだ。どこの学校でも、遅くて難易度を下げた授業をせざるを得ないなら、能力の高い生徒は放っておいてもらいたい。
100人に一人はこういうレベルの生徒がいるが、学校の授業の速度や扱う問題の難易度が能力に合わない、だから、放っておいてもらうのが一番いいのである。授業中、難易度の高い問題を解くのに熱中しているだけなのだから。
いままで、難易度の高い問題集シリウスシリーズを使って独力でコンパクトな解説を読み、問題を解いてきた、そのスタイルが、数Ⅲになって大きな効果を発揮している。どういう学習スタイルを身に着けさせるかが大事なのだ。数Ⅲになって消化速度が加速している。複素数の計算には、数列のさまざまなタイプの特性方程式が絡む複合問題があるが、数Bで大量の問題を解いているので、スーッと通り抜けてしまう。複素数の問題を解くことが、ベクトルの復習になっている。だから、数Ⅲの勉強を徹底すると数Ⅱや数Bの復習になってしまう。80%は実数の範囲で慣れ親しんだ操作を複素平面上でおさらいするだけだから、簡単なのである。数Ⅲの微分積分も計算トレーニングだから、慣れたらいいだけ。シリウスで5年間半端ではない問題量を消化してきたのが、数Ⅲの学習速度を加速しているように見える。
数Ⅱと数Bを始めたときから1時間以上考えてもわからない問題だけ質問するように伝えた。それまでは10分ほど考えてわからなければ質問していた。簡単に質問を繰り返すと、塾長への依存心が強くなる、依存心を育ててはいけない、自立心の芽を摘むことになる。そうせざるを得ない生徒もいるから、生徒の能力に応じてで分けて指導している、個別指導の利点である。たま~に、シビアな質問を投げてくる。「1時間考えたけど、この問題わかりませんでした」「一晩考えたけどわからない」、その場で即答できればするし、できなければ調べて確認して翌日解説するようにしている。
たいがい、とってもいい質問なのだ。数Ⅱだったかな、「解答を見てもここがわからない」というので、即答できず、わたしも納得がいかないので、Grapesというグラフソフトとプログラマブル科学技術用計算機HP-35を使って確認したら、解答集にミスが見つかった。わからないことを考え抜いた末に「わかりません」と言えるところがすごいのだ。解答を見て覚えてしまってもいいのである。でも、数学は深く理解しておかないと伸びしろがなくなる、O君は自分をごまかさない。
<H26年版とR2年版の比較>
青チャートの平成26年版は451頁、2020(R2)年版は511頁ある。60頁増えたのだが、本の厚さはぴったり同じであるから、その分だけ上質の紙を使って調整したということか。解答集の方は451⇒487頁だから、36頁増である。解答・解説がいくぶんかコンパクトになったということ。厚さは5㎜ほど薄くなっているから、だいぶ紙質が改善されたようだ。その分、本体値段が1771円から1960円へアップしている。複素平面がH26年版では54頁までだが、R2年版は82頁まで。複素平面だけで28頁増えている。中を見たら、大学数学へ一歩踏み込んでいる。どおりで増加分の半分が複素平面の章に集中しているわけだ。
<英語の学習法>
いま、ハラリの”Sapiens”を読んでいる。夏の終わりころから始めた。O君は河合塾の冬季特訓で採り上げた東大過去問の方が楽だと言ってる。そろそろ速度アップし手もいい時期だと伝えたら、難易度の高い大学入試問題は段落中の難易度の高い文(生成文法でいうと文法工程指数の高い文が多い)を突いて出題するから、現在の精読(英文を書きとり、訳文も普段使っている言葉で書く)をまだしばらく続けたいとのこと。
知らない単語が1ページに10個あっても、段落ごとのロジックを追って粗筋は外さずにすでに読めるレベルに達しているはず、なかなか慎重だ。彼にとって読書の楽しみは、いまは難易度の高い文をよく読むこと。いい加減な読みでもいいから、速い読み方をになれたら、ずっと楽しくなれる。生徒にとっては、サピエンスは内容が面白いので楽しいのである。(笑)
はっきりしないところだけ辞書を使って調べ、考えたらいいのだが、3月いっぱいまでこのペースかな。
ところで、先週からメール方式で英作文トレーニングを始めた。月火木金の四日間、毎日5-8題、英作文問題を作成して送信している。翌日、授業の前に5分間ほどチェックと「対話」で作文トレーニングができる。とりあえず1か月やって、難易度調整しながら、どの程度の問題が適しているか観察している。
英語が苦手な高2の生徒5人へも送信を始めた。NHKラジオ英会話レベルの英作文問題だから彼らには難易度が高すぎるが、解説を丁寧にやればいいだけ。昨日、二人が、生徒会室で他の塾へ通っている生徒を巻き込んで、一緒に作業してきた。勉強しどころ満載である。「身になる英作文トレーニング」は、やはり、5-10分程度の解説で十分やれることがわかった。予想通り解説を丁寧にやればいいだけ。高1の生徒には中3レベルの英作文から始めたほうが良さそうなので、来月から開始するつもりだ。半年も続けたら、500題、解答解説付きだから「立派な英作文問題集」が一冊できあがる。(笑)
リスニングはいくつか教材を挙げて、家でやるようにいっているが、やりかたが大事なので、個別にチェックしていく。10分前後の音源で、視点を変えて百回も2百回3百回も、ひたすら繰り返して音読トレーニングすることが効果が大きい。ちゃんとやれば、文章の中で使われるhurtとheartが聞いた瞬間にだれでも聞き分けられるようになるよ。やりかたは、学校の先生や塾の先生に指導を受けたほうがいい。
<余談:育ち方>
「育ち方」と書いたのは、わたしが「育てた」わけではなくて、生徒が己の好奇心の赴くままに勉強して、勝手に育ったてしまったというのが実感だからである。好奇心をくすぐることぐらいは繰り返しやっている、塾長の役割なんて、それぐらいなもんだよ。(笑)
このレベルの生徒は、いまでも1学年に3人くらいいるだろう。問題は「育ち方」である。根室市内の中学生1学年の生徒数は200人くらいである。わたしは2002年の11月に故郷に戻ってきて塾を開いたのだが、20年前ころには400人いたし、学力上位層は現在の5倍以上存在したから、上手に育てたら、毎年5-10人は医学部へ進学できるレベルの生徒がいたということ。もったいない。市立根室病院の常勤医は12人、医者がいなくて困っているのは、地域に学力の高い生徒がいても、育てそこなってきたということ。30年かける用意があるなら、医者は根室でいくらでも自給自足できる。これからだって、年に2人、医学部へ進学する生徒を育てられたら、30年間で60人である。3人に一人が、根室で10年間仕事してもらえたら、市立根室病院は常勤医不足なんてことはなくなる。そして、そういう教育環境が用意されたら、40代のドクターが根室で仕事するのに子どもの教育という大きな障害がなくなる。年収が高額だから、根室出身ではないドクターもいくらでも集まる。130ベッドの病院でも、日本で地域医療の分野で先端の病院になりうる。どういうビジョンで地域医療を運営し、それへ向けて人を育てるかということが大事なのだ。根室の地域医療問題を根底からひっくり返すにはこういう長期戦略が必要。
進度の遅い授業や学力を無視したつまらない一律の宿題の無理強いはやめてもらいたい。たとえば、学力テストで数学90点以上の生徒は宿題免除でいい。授業も聞きたかったら聞けばいいし、難易度の高い問題集を授業中にやってもいい、それくらいの寛容な指導をしよう。そういう環境を提供すれば、勝手に育っていく。学力の低い生徒は、一律の宿題を出したらいい。放課後補習への強制参加もやるべきだ。英語アレルギーの高2の5人の生徒たちですら、2時間10回の英語補習で全員アレルギー症状が消滅している。そして英作文トレーニングをやっているのだ。チャンスをあげたら、這い上がってくる、指導する側が適切な手を差し伸べてないだけ。放っておいたら、生徒はそのうちにあきらめてしまいます。
(良書を厳選した日本語音読トレーニングを4年間やった。15冊だったかな、最後の2冊は福沢諭吉『福翁自伝』や物理学者で東大全共闘元議長山本義隆『近代日本150年史 科学技術総力戦体制の破綻』。山本は長年にわたって駿台予備校の物理の先生でもある。O君は小6のときから厳選して音読トレーニングをしてきたから、論説文の読みが深くなった、並みの大学生では比較にならぬ。)
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