#4131 Sapiens: page 11 Nov. 23, 2019 [44-3. 原書講読講座 Sapiens]
今週のSapiens講読授業から…
とりあげる文の見通しをよくするために、この段落の冒頭部分をまず紹介する。
<10.3> Women paid extra. An upright gait required narrower hips, constricting the birth canal -- and this just when babies' heads were getting bigger and bigger. Death in children birth became a major hazard for human femailes.
直立歩行のために女が支払った代償は細い腰、狭い産道、そしてますます大きくなる赤ん坊の頭部。こうして出産時に死のリスクが高くなるのは避けがたいものになった。
問題は次の文である。
<11.1> Women who gave birth earlier, when the infant's brain and head were still relatively small and supple, fared better and lived to have more children. Natural selection cosequently favoured earlier births. And indeed compared to other animals, humans are born prematurely, when many of their vital systems are still underdeveloped. A colt can trot shortly after birth ; a kitten leaves its mother to forage on its own when it is just a few weeks old. Human babies are helpless, dependent for many years on their elders for substance, protection and education.
猿人が直立歩行するようになったのは400万年以上以前の話である。ヒト属の出現が250万年前、gave birthはそんな古い時代の話である。直立歩行することで、ヒトのメスは体形が変わり出産に困難を抱えるようになった。二足歩行で手が自由になることで掌の筋肉や神経系が発達して胎児の脳が大きくなり、出産にさらなる負荷と生命のリスクが加わる。
生徒はearlierが何を指すのか迷ったのだが、earlierは時間の前後関係を表しているから、後続のwhen節以下がその補足説明だと理解したらいい。"prematurely, when"の箇所も同じである。
省略された箇所を補うと、次のような文になる。
Women who gave birth earlier (than other animals)
earlierを具体的に補足説明する節をつなげるためにカッコ内の句が省略された。意味の塊ごとに理解しろと言ってあるので、確認したら、ちゃんと読み取れている。
(1) Women who gave birth earlier,
(2) when the infant's brain and head were still relatively small and supple
(3) (women) fared better (than she gave birth later)
(4) (women) lived to have more children
(1)女は早く子供を産んだ
(2)胎児の脳と頭蓋はまだ比較的小さくてやわらかい
(3)女は(遅く出産する)よりするりと子どもを産む
(4)女は生きながらえ、その結果たくさんの子どもをもつ
とりあげる文の見通しをよくするために、この段落の冒頭部分をまず紹介する。
<10.3> Women paid extra. An upright gait required narrower hips, constricting the birth canal -- and this just when babies' heads were getting bigger and bigger. Death in children birth became a major hazard for human femailes.
直立歩行のために女が支払った代償は細い腰、狭い産道、そしてますます大きくなる赤ん坊の頭部。こうして出産時に死のリスクが高くなるのは避けがたいものになった。
問題は次の文である。
<11.1> Women who gave birth earlier, when the infant's brain and head were still relatively small and supple, fared better and lived to have more children. Natural selection cosequently favoured earlier births. And indeed compared to other animals, humans are born prematurely, when many of their vital systems are still underdeveloped. A colt can trot shortly after birth ; a kitten leaves its mother to forage on its own when it is just a few weeks old. Human babies are helpless, dependent for many years on their elders for substance, protection and education.
猿人が直立歩行するようになったのは400万年以上以前の話である。ヒト属の出現が250万年前、gave birthはそんな古い時代の話である。直立歩行することで、ヒトのメスは体形が変わり出産に困難を抱えるようになった。二足歩行で手が自由になることで掌の筋肉や神経系が発達して胎児の脳が大きくなり、出産にさらなる負荷と生命のリスクが加わる。
生徒はearlierが何を指すのか迷ったのだが、earlierは時間の前後関係を表しているから、後続のwhen節以下がその補足説明だと理解したらいい。"prematurely, when"の箇所も同じである。
省略された箇所を補うと、次のような文になる。
Women who gave birth earlier (than other animals)
earlierを具体的に補足説明する節をつなげるためにカッコ内の句が省略された。意味の塊ごとに理解しろと言ってあるので、確認したら、ちゃんと読み取れている。
(1) Women who gave birth earlier,
(2) when the infant's brain and head were still relatively small and supple
(3) (women) fared better (than she gave birth later)
(4) (women) lived to have more children
(1)女は早く子供を産んだ
(2)胎児の脳と頭蓋はまだ比較的小さくてやわらかい
(3)女は(遅く出産する)よりするりと子どもを産む
(4)女は生きながらえ、その結果たくさんの子どもをもつ
"lived to have more children" この部分の訳で手間取る高校生が少なくないだろう。liveは「生きながらえる」、to以下は「結果」に訳す。不定詞の副詞的用法で「結果」に訳すものはあまり出てこないから、選択肢として頭の片隅に置いておいた方がいい。前後関係から判断がつく。
「胎児の脳と頭蓋がまだ小さくて柔らかいうちに子どもを産む女は、遅い女に比べてすんなりと子どもが産めて、そして生きながらえ、たくさんの子どもをもつ」
出産が遅くなればなるほど、胎児は母体の中で成長して、脳が大きくなり、頭部は固く大きくなるから、出産時に母子ともに死んでしまう確率が上がる。だから、比較的早いうちに産んだ女が生き残り、たくさんの子どもをもつことになった。それが自然選択Natural selectionである。
部分にこだわらずに、理解できない箇所があっても段落全体を読んでみよう。何か抽象的なことやわかりづらいことを書いたら、後続の文で補足説明をするというのが「作文の作法」であるから、先を読めばわかることが多い。引っかかったら、そこを離れて段落全体に目を通して流れをつかみ、それから意味を考えたら、ロジカルに読める。earlierも後続ののwhen以下の節の補足説明なしに理解ははなはだむずかしい。
fareは「料金」で覚えている人が多いだろう、ここでは動詞だ。fareを動詞で使っている文をわたしは初めて見た。稀な用例のようだ。こういうときは素直に辞書を引こう。もちろん前後関係で文意が読めてしまう人はそのかぎりではない。
fare:v (正式・まれ)It fares well with her. ([人にとって]事が運ぶ[いく]) 彼女はうまくやっている。
「脳と頭が小さくてすんなり事が運ぶ」というのは、頭がひしゃげながら、スルンと出てくること。betterと比較級が使われているのは、長く母親の体内にとどまっているよりもすんなりということ。現代だって、妊娠してから実家へ帰って上げ膳据え膳で楽していると、体重が増えて、胎児も大きくなってしまう。初産で4000gを超えたら命の危険がある難産になる。3000gくらいにコントロールするのが胎児も母親も生命のリスクが小さくてよい。妊婦は妊娠後期になったら、体重増加を小さくするように注意したらいい。
妊婦の体重増加はBMI値が標準なら、7-10㎏である。詳しいことは次のサイトを参照してください。
*https://192abc.com/15344
eldersは年長者がいいだろう。大人ばかりでなくて、年長の兄弟や周りにいる子どもたちも含んでいる。大人だけならadultsと書くだろう。書き手は言葉を選んで書いている。
「赤ん坊の脳と頭がまだ比較的小さく柔軟な、早い段階で出産した女性のほうが、無事に生きながらえて子どもを産む率が高かった。その結果、自然選択によって早期の出産が優遇された。そして実際、他の動物と比べてん弦は、生命の維持に必要なシステムの多くが未発達な、未熟な段階で生まれる。子馬は誕生後まもなく駆け回れる。子猫は生後数週間で母親のもとを離れ、単独で食べ物を探し回る。それに引き換えヒトの赤ん坊は自分では何もできず、何年にもわたって年長者に頼り、食べ物や保護、教育を与えてもらう必要がある」柴田訳
周辺知識があまりない分野の英文を文脈を追いながら読むのはなかなかしんどい。でもこうして1冊読めば、必要な知識が蓄積されていくから、ハラリの”Homo Deus”を読むときにはずいぶん楽になるだろう。たぶん、日本語の文章の読解力強化にもなっている、言語が違っても読解力は一緒だから。
<スラッシュ・リーディングについて>
”Sapiense”くらいの難易度の本になると、スラッシュ・リーディングといっても、そもそもスラッシュをどこにいれていいのかわかりにくいところが出てくる。瞬時に省略部分を補って読めなければ、適切なところへスラッシュを入れられないし、入れてみたところで、スラッシュで区切られ、ばらばらにされた文を、論理的な整合性を産み出して統合するなんてことは容易な技ではない。高校教科書程度の難易度の読み物なら有効だろう。
意味がつかめてから、トレーニング用に読む場合は、スラッシュ・リーディングは効果が大きい。
CD付音読トレーニング教材を使って注意深くシャドーイングすると、意味の塊を意識した音読ができるようになる。どこにスラッシュを入れるべきが音で判断がつくようになる。だから、Sapiensを読むのとCD付音読トレーニング教材でのトレーニングを併用すると相乗効果がある。やはり大きな声を出して読むのが基本だ。
前回は同時通訳のスキルを導入したKHシステムを紹介したので、今回は高校生向きの音読教材を紹介したい。8+8=16個のトピックスが教材になっている。高校生にはこのくらいの長さがちょうどいい。
bathsのthの音とその後のs音は、発音トレーニングをしていないとなかなか聞き取れないし、真似できません。そのあたりに自信がなければ、『ザ ジングルス 英語の発音86レベル』を使うといい。
「胎児の脳と頭蓋がまだ小さくて柔らかいうちに子どもを産む女は、遅い女に比べてすんなりと子どもが産めて、そして生きながらえ、たくさんの子どもをもつ」
出産が遅くなればなるほど、胎児は母体の中で成長して、脳が大きくなり、頭部は固く大きくなるから、出産時に母子ともに死んでしまう確率が上がる。だから、比較的早いうちに産んだ女が生き残り、たくさんの子どもをもつことになった。それが自然選択Natural selectionである。
部分にこだわらずに、理解できない箇所があっても段落全体を読んでみよう。何か抽象的なことやわかりづらいことを書いたら、後続の文で補足説明をするというのが「作文の作法」であるから、先を読めばわかることが多い。引っかかったら、そこを離れて段落全体に目を通して流れをつかみ、それから意味を考えたら、ロジカルに読める。earlierも後続ののwhen以下の節の補足説明なしに理解ははなはだむずかしい。
fareは「料金」で覚えている人が多いだろう、ここでは動詞だ。fareを動詞で使っている文をわたしは初めて見た。稀な用例のようだ。こういうときは素直に辞書を引こう。もちろん前後関係で文意が読めてしまう人はそのかぎりではない。
fare:v (正式・まれ)It fares well with her. ([人にとって]事が運ぶ[いく]) 彼女はうまくやっている。
「脳と頭が小さくてすんなり事が運ぶ」というのは、頭がひしゃげながら、スルンと出てくること。betterと比較級が使われているのは、長く母親の体内にとどまっているよりもすんなりということ。現代だって、妊娠してから実家へ帰って上げ膳据え膳で楽していると、体重が増えて、胎児も大きくなってしまう。初産で4000gを超えたら命の危険がある難産になる。3000gくらいにコントロールするのが胎児も母親も生命のリスクが小さくてよい。妊婦は妊娠後期になったら、体重増加を小さくするように注意したらいい。
妊婦の体重増加はBMI値が標準なら、7-10㎏である。詳しいことは次のサイトを参照してください。
*https://192abc.com/15344
eldersは年長者がいいだろう。大人ばかりでなくて、年長の兄弟や周りにいる子どもたちも含んでいる。大人だけならadultsと書くだろう。書き手は言葉を選んで書いている。
「赤ん坊の脳と頭がまだ比較的小さく柔軟な、早い段階で出産した女性のほうが、無事に生きながらえて子どもを産む率が高かった。その結果、自然選択によって早期の出産が優遇された。そして実際、他の動物と比べてん弦は、生命の維持に必要なシステムの多くが未発達な、未熟な段階で生まれる。子馬は誕生後まもなく駆け回れる。子猫は生後数週間で母親のもとを離れ、単独で食べ物を探し回る。それに引き換えヒトの赤ん坊は自分では何もできず、何年にもわたって年長者に頼り、食べ物や保護、教育を与えてもらう必要がある」柴田訳
周辺知識があまりない分野の英文を文脈を追いながら読むのはなかなかしんどい。でもこうして1冊読めば、必要な知識が蓄積されていくから、ハラリの”Homo Deus”を読むときにはずいぶん楽になるだろう。たぶん、日本語の文章の読解力強化にもなっている、言語が違っても読解力は一緒だから。
<スラッシュ・リーディングについて>
”Sapiense”くらいの難易度の本になると、スラッシュ・リーディングといっても、そもそもスラッシュをどこにいれていいのかわかりにくいところが出てくる。瞬時に省略部分を補って読めなければ、適切なところへスラッシュを入れられないし、入れてみたところで、スラッシュで区切られ、ばらばらにされた文を、論理的な整合性を産み出して統合するなんてことは容易な技ではない。高校教科書程度の難易度の読み物なら有効だろう。
意味がつかめてから、トレーニング用に読む場合は、スラッシュ・リーディングは効果が大きい。
CD付音読トレーニング教材を使って注意深くシャドーイングすると、意味の塊を意識した音読ができるようになる。どこにスラッシュを入れるべきが音で判断がつくようになる。だから、Sapiensを読むのとCD付音読トレーニング教材でのトレーニングを併用すると相乗効果がある。やはり大きな声を出して読むのが基本だ。
前回は同時通訳のスキルを導入したKHシステムを紹介したので、今回は高校生向きの音読教材を紹介したい。8+8=16個のトピックスが教材になっている。高校生にはこのくらいの長さがちょうどいい。
bathsのthの音とその後のs音は、発音トレーニングをしていないとなかなか聞き取れないし、真似できません。そのあたりに自信がなければ、『ザ ジングルス 英語の発音86レベル』を使うといい。
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Homo Deus: A Brief History of Tomorrow
- 作者: Yuval Noah Harari
- 出版社/メーカー: Vintage
- 発売日: 2017/03/23
- メディア: ペーパーバック
2019-11-23 11:43
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