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#4037 これって秋刀魚漁獲規制になるの?July 19, 2019 [8. 時事評論]

 太平洋上での秋刀魚の資源管理を話し合う国際会議が行われていたが、55万トンで妥結したと関係者が喜んでいた。国や地域ごとの漁獲規制は来年協議するらしい。55万トンというのは昨年実績を10万トン上回っており、すなおに受け取れば、昨年実績を超える割り当てなら、「規制」ではない、単なる現状追認。なんだかよくわからない話だ。関係者が自分たちの仕事を自画自賛しているだけ。お金かけて大々的に国際会議をしているのだから、何か成果を謳わないわけにはいかぬのだろう。根室の言葉で書くと「みったくなし」だ。このような量の漁獲割り当てを10年も続けたら秋刀魚資源はアウトだ。
 漁獲割り当てで一番困難な仕事は、地域ごと国ごとの割り当てである。うまくいかなけらば、資源が枯渇する、ぜひ合意にこぎつけてもらいたい。

 こちらは本物のグッドニュース。根室水産試験場が根室湾で紅鮭養殖の実証試験に入ったと北海道新聞に載っていた。
 根室の母ちゃんたちは鮭の飯寿司を作る人が多いが、その材料に使われるのは紅い色の濃い紅鮭である、根室では「ベニ」という。ベニを使うとじつにおいしい飯寿司ができる。この数年紅(ベニ)が1本8000円に高騰しているので、ベニの飯寿司をつくるのはやめたという人が増えてきた。10本も使ったら紅だけで8万円だ。10年もこういう状態が続くと、飯寿司づくりに必要な発酵管理技術が世代を超えて伝承できなくなる。根室水産試験場の紅鮭養殖が実証試験段階へ移行した、この先様々な課題が浮かんでくるだろうが、ぜひ突破して養殖を成功させてもらいたい。たくさんの市民が紅鮭の漁獲量が増えることを期待している。

 若い人たちに蟹・イカ・鯖などの根室の水産資源枯渇がどのように起きたのか知っていることを書き残しておく。
 60年前には脚を広げると1m50㎝もあるようなタラバガニがたくさん獲れた。カニ缶詰の加工技術も高くて、根室市に4工場あった日本合同罐詰の製品が欧州まで輸出されていた。昔だってタラバガ二は超高級品だ、値段が高かった。ところが獲りすぎて、根室半島沿岸で資源が枯渇してしまった。儲かる資源から枯渇が始まる。いまあんなに大きなタラバカニがあったら、10万円くらいするだろう。関節の棒肉を一つ食べただけでお腹の足しになった。そういうカニが昭和30年代の中ころまで、根室の子どもたちはおやつ代わりに、そして夜食に食べられた。わたしもたくさん食べた、だから、いま小さい蟹を食べたいと思わぬ。

 船とソナーや漁具の性能が上がれば、資源を枯渇させるほど獲りつくすのは簡単なことだ。最盛期には獲りすぎて罐詰に加工できずに海へ捨てていた。60年前には大型の冷凍設備がなかったからだ。だから、余った蟹は缶詰工場で仕事している人たちへ配られた。棄てるよりはみんなで食べたほうがいい、持ち帰って食べてもらったほうがいい、もったいないからだ。小さなものは海へ捨てていた。資源が枯渇するわけだ。競争で乱獲したのだから。
 昨年の実績を上回る55万トンの秋刀魚漁獲枠なんてことを10年もやったらどういうことになるか想像がつく。秋刀魚はタラバガニの二の舞となる。

 5年前には東京へ送るのに大型の秋刀魚を選ぶと、200g/尾あったが、昨年は140gが大型である。普通のサイズが120gになった。とっくに資源枯渇化のサインがでている。現在の漁獲枠を続けたら秋刀魚も主力資源の座から滑り落ちてしまう。

 昭和30年代半ばころに、イカがひと箱(木箱)で200円なんてことがあったが、スルメイカも資源量が激減して枯渇しかかっている。根室の港にスルメイカが水揚げされること自体が少なくなった。生徒が水産資源の話をしたので、昭和30年代前半のころの鯖のことを伝えた。
 根室に最初に信号がついたのは、大地みらい信金本店前(元緑菓子店・酒井理髪店前の交差点)である。夏の朝、花咲港に鯖が水揚げされると、サバの水煮罐詰用の原料として根室港に配置された工場へトラックで運ばれる。あさ、7時ころに信号で鯖を満載したトラックがブレーキを掛けると、荷台から鯖が滑り落ちる、運転手は「ゴメン、拾って食べてください!」車窓からそういって信号が変わるとともに工場へ向かう。拾っている暇はないのである。30㎝を超える丸々太った鯖が黒いアスファルトで跳ねている。近所の人たちがボールやバケツをもってでてきて、5-6尾ずつ持って帰る。その日はサバの味噌煮、塩焼きがふんだんに食べられた。活きがよいからとってもおいしかった。そんな大型の鯖は花咲港に一尾も上がらなくなった。魚屋でも見かけることはない、ちっちゃいほっそりした鯖ばかりだ。

 羅臼昆布は資源管理が徹底していて、資源が枯渇していない。出汁昆布としての品質は全国一で値段が高いから、高級料亭や出汁に気を遣って羅臼昆布を使うラーメン店ぐらいにしか出回らない。羅臼昆布の出汁は濁らない。一般の消費者にが手に入れるのはなかなか困難だ。
 資源管理を徹底したら、次の世代も、その次の世代も食うのに困らぬことは羅臼昆布が教えてくれている。秋刀魚がどうなるのか、蟹・イカ・鯖などの水産資源を枯渇させてきた水産業の前線都市として、根室市は世界に向かって言うべきことがありそうだ。
 北太平洋上で秋刀魚の漁獲をしている国全部(日本、台湾、韓国、中国)がこのままでは根室市と同じ運命に陥る。漁法、船、機械、ソナーの性能が上がって、資源を採りつくすのは60年前よりもずっと容易になっている。



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