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#3702 四月学力テスト平均点推計のためのデータ補足③:解説 Feb. 23, 2018 [71.データに基づく教育論議]

 <#3701の7表の解説編>

 11月と2月の学力テストは百点満点、4月以降は60点満点。
 スタートの2016年11月のデータから見ましょう。
 11月学力テストは国語と社会と数学の三科目に顕著な差が認められます、B校のほうが圧倒的に高いのです。理科と英語は僅差といってよいでしょう。2月に学力テストでも、同様の傾向がはっきり表れています。四月以降から様子が変わります。C中の国語担当の先生が記述式問題の解き方の指導に力を入れたからだと思います。「論トレ」方式で記述式問題攻略演習をおやりになったようだ。
 国語の点差は9.7点と10.8点、平均点で10点の違いは大きい。大学生の時にゼミの市倉宏佑先生(哲学)が、同じ商学部の商業学科と会計学科で一般教養の哲学の試験の平均点に10点の差があるとおっしゃっていたのを思い出しました。この点差が「読み・書き」の両スキルにかかわるものなら、四月以降も点差は縮まらないはず、そうではなく教え方の問題なら、10点差は縮めることができるし、やり方次第で逆転も可能ということになります。実際に国語は僅差ですが、C校のほうが点数が高くなりました。

 数学はどうなっているでしょう?背景色を黄色にしてあるのでご覧いただきたい。例外なくB中の点数がよいが、B中の数学の平均点は釧路市内の13校でと比べると最下位レベル、別海町の中学校よりもかなり低いし、中標津の中学校に比べても同じくらい低い。つまり根室管内のほかの地域の市街化地域の中学校でみても最底辺である。
  その釧路ですら算数・数学教育に危機感を抱いており、市議会で激しい論戦が戦わされている。元市議会議長の月田さんが自身のブログでそのことを取り上げている。彼は「釧路の教育を考える会」副会長であり超党派の釧路市議会基礎学力問題研究議員連盟を結成し、「基礎学力保障条例」を市議会で制定した立役者である。
  金安潤子市議、2013年に「地域に飛び出す公務員アウォード」を受賞した大越拓也議員が教育問題で奮闘している。市議会の丁々発止の論戦は教育問題への釧路の人々の関心の深さをあらわしている。
*「算数・数学が弱い」

第4「131回 研究議いん算数・数学が弱い


http://blog.livedoor.jp/gekko946/archives/51856675.html

 1月に実施された模試の点数が両校ともに大幅にアップ(B中8.4点、C中9.4点)しているが、計算問題と短文章問題の「大問1」に超簡単な問題が多かったからと思われる。最初の問題は「6-7=」である。C中は全員が正解したそうだ。3題だけ難易度の高い問題があった。面積に関する相似比の問題と2次関数と距離・時間・速度の問題だったかな。平行四辺形の中にできる三角形に関する面積の相似比の問題は、比のままで解かずに、底辺をa、高さをhとして文字式で計算すると代数的操作だけでシンプルに解くことができる。この3題の問題にすべて正解した生徒は両校で1名のみ、C中の学年トップである。1題だけ階級値を計算する簡単な問題をミスした。C中は45点が2位、41点超はこの二人だけ、20点以下が半数(31人/58人)を超えている。B中は50点台はゼロで40点台が3名のみ、20点以下が48.2%(27人/56人)。

 20点以下の層は少数や分数の四則演算のチェックをしたほうがいい。半数程度(つまり全体の25%)は問題ありと思う。チェックポイントは、
①計算の仕組みへの理解
②計算の正確度
③計算速度

 
C中の生徒は11月実施の学力テスト総合Cで、平均点が10.9点、最低点を記録してしまった。百点満点では16点が平均点ということ。事態の深刻さが理解できるだろう。影響は理科の計算問題にも及んでいる。理科の先生は生徒に少数や分数計算のやり方から教えなければならない、そしてそうしているから、B中よりもC中の生徒のほうが理科の点数が高い。
 どちらの学校の生徒も、小学校の算数指導に問題があったと考えるしかありません学2年生で「逆九九」の暗唱トレーニングを学校でやっていないとか、少数や分数の四則演算、なかでも除算のトレーニング量が不足しているとか、そういいう類の基本的な欠陥が見つかるはず
 小学校の授業で「逆九九」をやらない先生が多いが、除算の商を立てるときに逆九九ができないと、計算速度が半分程度に落ちる、そして苦手意識が芽生える。小4までは算数が嫌いではなかった生徒たちに苦手意識が生まれる。文章問題でも、そういう計算をしなければならない問題はパスしてしまう。文章題への取り組み意欲が失われるのである。「文章題が苦手」という生徒は多いが、案外こういうところに原因が潜んでいる
 小学校の先生は「読み・書き・そろばん(計算)」トレーニング時間をもっと増やしてもらいたい。保護者も家庭でやらせてほしい。できたら、計算のやり方でわからないところを子どもに教えてもらいたい。少数や分数の四則演算くらいなら、8割のお母さんやお父さんたちが教えられるだろう。小学生への家庭学習の躾は親の責任である
 両校の生徒たちが親になったときに少数や分数の四則演算を子どもに教えることができるのは6割を切るだろう。いまはうろ覚えでなんとかなっても、子どもが小学校に入るころには計算の仕組みを忘れてしまう人も少なくないからだ。
 学校の数学担当の先生たちは、生徒が入学してきたら、「3桁×3桁」の乗算、「3桁÷2桁」の除算、分数や小数の四則計算問題を百題45分間でやらせて記録をつけて、その後の学力テストの点数との相関をみてもらいたい。EXCELで簡単に線形回帰できるからぜひやってみてほしい。計算問題の点数と、学力テストの点数に強い正の相関が現れるはず。短期間の計算トレーニングをやれば、生徒たちの得点は線形回帰の予測した値よりも高いところに出てくるだろう。そういう目的をはっきりした短期特訓の成果を計測することができる。


<生徒たちの計算速度格差はどれくらい?>
 3年前に中1の生徒たちの計算速度を計測したことがある。わずか5人ほどだったが、トップとビリには30:1の差があった。計算速度の遅い生徒は、同じ問題量をこなすのに早い生徒の30倍時間がかかる。実際にはそんなに勉強時間が取れないから、2年生3年生になるにつれて、数学の学力差がお話にならないほど拡大していく。今後の議論のために計算速度をPQRの3群に分けておく。P群を基準速度1、Q群は1/2、R群は1/3。例に出した30:1の生徒をXとYとすると、Xは速度2、Yは速度1/15である。計算速度は読書速度よりも格差が大きい。
 計算の速い生徒ほど精度も高くなる傾向があるから、数学担当の先生は新入生が入学してきたら計算問題を百題ほどやらせてチェックしておいたほうがよい。計算速度と読書速度の3×3マトリックス表でグループ分けして教え方を変えると効果の高い指導ができる。


<生徒たちの音読の速度差はどれくらい?>
 本をよく読む生徒は速度が大きい、慣れるからだろう。音読トレーニングをもう十数年やっているが、3:1くらいの差がある。遅い生徒は、読めない漢字があるとか、見たことのない語彙がでてくるとか、ひらがなが続いてどこで区切ったらよいかわからないくなるとか、縦書きの本なら下まで読み進む前に次の行の先読みができないとか、様々な理由で何度もつっかえ、元に戻って読み直しをするから文意が理解がなかなかできないし、文脈はほとんど読めない。中学生では速く読める生徒ほど正確に読んでいると考えてよい。速度の速い順にABCと3郡に分け、A群を基準速度1と仮定し、B群は1/2、C群を1/3とすると、文意や文脈の理解はB群が1/4、C群は1/9に落ちるだろう。A群の生徒たちはじつに軽快に学習を進めることができるから、本を読んでもテストをしても楽しいだろう。C群は読んでもわからないから、本を読む習慣が育たずいつまでも漫画や「離乳食」程度のレベルの読書にとどまる。
 文章言葉は普段生徒たちが会話で使う語彙群とは量がまるで異なる。ふだんの会話に必要なのは千語たらずだが、大人の本を読むには語彙が2万程度は最低限必要になる。
 本を読む習慣のない生徒は本が読めない、なぜかというと語彙が貧弱だから日本語語彙は本を読むことで蓄積される、そして音と漢字が脳内で結びつかないと意味が理解できない語彙力不足で授業を聞いても理解できない生徒が25%いるというのは、最近の国立情報学研究所の調査であるが、根室の市街化地域の中学生は3割を超えているだろう
 児童書まではお母さんが一緒に読んであげているケースが多い、しかしそこから歯ごたえのある大人の本への橋渡しができるお母さんは1割以下だろう。小学校の学校の先生も中学校の国語の先生も大人の本への橋渡し役を果たしていない。だから、歯ごたえのある大人の本が読める生徒、あるいは読んでいる生徒は本が好きな1割ぐらいだろう多くは児童書レベルで読書習慣が切れている。高校生になってもアニメのノベライズものを読みふけることになる。大人が離乳食を主食にしているようなもの、自力で読書レベルを上げることができない。社会人になったときに、仕事で必要な資格を取るには、専門書を独力で読み、「問題集を説かなくてはならないが、そういうことに大きな困難を感じるようになってしまう。必要な資格が獲れなければ、その企業にとっては要らない人になる。
 また、業務報告書や客先への仕事上の書類、さまざまな社内文書を書くことになるが、児童書レベルの語彙では、教養の程度が疑われる。書いた文書で「仕事のできないやつ」と判断される、ごまかしようがないのである。できなければ、できる人へ仕事が回る。仕事がこなせなければボーナスが人より少なくなり、しまいには会社を辞めざるをえなくなる。たかが「読み書きそろばん」、されどその威力は大きい

 さて、まとめておこう。
①2年生後半から3年卒業まで1年半あるが、生徒の学力は家庭学習習慣の育成、学校の先生の教え方の工夫があれば、各教科10点(60点満点)くらいのアップは可能である。
②数学担当の先生は、ケタの多い乗除算や小数や分数の四則演算百題のテストプリントを作成して、新入生が入学してきたら1か月以内にやらせて記録をつけたらどうだろう?そして、70点以下の生徒には週3回、4週程度の計算教科特訓をしてやれば、小学校での積み残しの大半は解消できる。これだけで数学が苦手の生徒の9割(全体の約25%)が救える。残り1割はてまがかかってたいへんだが、根気よくやるしかない。
③良書を選んで、一斉音読指導を週に1度やることを検討してもらいたい。生徒の自主性に任せたら、アウトだ。読む本のレベルが上がらない。スマホが普及して生活時間を奪われているから、本を全く読まない生徒が増え続ける。
④小テストを繰り返し、記憶の定着をしてほしい。この方法で学力テストの平均点が他校よりも15-20点ほどつねに上回っていた理科の先生がいた。

 先生たちは授業ではそんなに忙しくない。半分は空き時間というのが中学校の実態だろう。だが、放課後や土日、部活で時間を大量に奪われているから、一定期間の計算特訓や放課後音読指導に時間を割くのが困難だろう。
 文武両道、学業優先を明確にして、部活の時間を減らし、効率的にやる工夫をしてもらいたい。これは学校長や市教委、そして保護者の協力がなければ乗り越えられない大きな壁である。
 長い時間だらだら部活をやればそれが習慣となり性格になってしまう。短い時間で効果を上げるのが企業人の常識だが、それを部活に持ち込んでもらいたい。長い時間やって地区大会ぐらいで優勝しても意味がない。ピッチャーなら肩やひじを痛めてしまう。バドならひざを痛める。身体が成長期にあるとき、トレーニングのし過ぎは危険をともなっている。骨の伸びに腱や筋肉が追い付かないのが成長期の特徴だから、特定の関節や腱や筋肉に無理をさせてはいけない。米国で週16時間を超えるトレーニングはケガのリスクを大きくするという学術論文があるそうだ。
 スポーツ庁がに部活のガイドラインが出している。
*https://mainichi.jp/articles/20180117/k00/00m/040/068000c
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骨子は「運動を週16時間以上するとけがのリスクが高まる」と指摘した米国の臨床スポーツ医学会の提言などスポーツ医科学の研究を踏まえ、中学校の休養日を平日1日以上、土日1日以上の週2日以上と設定。1日の活動時間は長くとも平日2時間、休日3時間程度とし、短時間で効果が得られる活動内容にするよう求めた。

運動部活動ガイドラインの骨子の概要
・休養日は週2日以上で、平日は1日以上、土日で1日以上
・夏休みなど長期休業中は部活動も長期の休養日を設ける

・1日の活動時間は平日2時間、休日3時間程度

・科学的トレーニングを導入し、短期間で効果が得られる活動にする

・スポーツクラブなどと連携し、地域のスポーツ環境整備を進める

・大会の統廃合を進め、学校が参加する大会数の上限を定める 

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 このガイドラインのうち一部は守られているが、守られていない項目もある。市教委や保護者にも周知徹底しておかないと、せっかく作ったガイドラインも有名無実になる。
 言うは易し、行うは難しだ、やるべきことははっきりしている、あとは職務権限を持ち関係している大人たちが自分の仕事の責任をどのように果たすかである。


 データを並べた、七面倒くさい今回のシリーズ記事を最後までお読みいただき、感謝申し上げます。


#3693 中3テスト比較①:3年生学年末テスト Feb. 14, 2018
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2018-02-14


 #3695 中3テスト比較②:2/2学力テスト編 Feb. 16, 2018
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2018-02-15-1


 #3699 四月の学力テストの五科目合計平均点予測:史上最低? Feb. 22, 2018
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2018-02-21-1

 #3700 四月学力テスト平均点推計のための補足データ① Feb. 23, 2018
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2018-02-22


 #3701 四月学力テスト平均点推計のための補足データ②:7つの表 Feb. 23, 2018
http:
//nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2018-02-24-1

 
#3702 四月学力テスト平均点推計のためのデータ補足③:解説 Feb. 23, 2018
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2018-02-24


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