#3519 数学の授業時間数を増やせ!:B中学校とC中学校2年生学力テストデータ比較 Mar.8, 2017 [71.データに基づく教育論議]
<更新情報>
3月8日午前11時15分 <結論>追記
<修理記録>3月10日午後
内容:11月28日のC中のテストデータは学力テストではなくて2学期期末テストです、B中はOKです。削除して数字を出しなおして、本文を書き改めます、少しお待ちください。(3/10午後4時半)
午後5時、表は修正済み
午後5時10分、本文数値修正完了
今回は#3517「授業進捗管理の陥穽」の続編である。B中とC中の1年間の学力テストデータを比較することで見えてくるものがある。たとえば、B中の学力向上策とその成果や「読み・書き・計算」という基礎学力三要素が学力の伸び代に大きく影響するということなど。
整理したデータをご覧いただこう。
2016年度 | 2年生 | 学力テスト学年平均点の推移 | ||||
C中2年 | ||||||
科目 | 4月13日 | 8月26日 | 11月9日 | 2月2日 | sum | average |
国語 | 47.8 | 55.4 | 53.0 | 59.10 | 215.3 | 53.8 |
社会 | 41.8 | 35.7 | 40.7 | 36.60 | 154.8 | 38.7 |
数学 | 30.0 | 37.9 | 30.3 | 36.80 | 135.0 | 33.8 |
理科 | 49.4 | 43.9 | 45.8 | 38.30 | 177.4 | 44.4 |
英語 | 56.5 | 52.5 | 50.0 | 47.00 | 206.0 | 51.5 |
五科目計 | 225.5 | 225.4 | 219.8 | 217.80 | 888.5 | 222.1 |
B中2年 | ||||||
科目 | 4月13日 | 8月26日 | 11月9日 | 2月2日 | sum | average |
国語 | 58.2 | 62.7 | 69.90 | 190.8 | 63.6 | |
社会 | 36.4 | 51.4 | 47.30 | 135.1 | 45.0 | |
数学 | 34.8 | 43.1 | 51.30 | 129.2 | 43.1 | |
理科 | 46.5 | 42.6 | 36.90 | 126.0 | 42.0 | |
英語 | 49.1 | 46.4 | 44.90 | 140.4 | 46.8 | |
五科目計 | 225.0 | 0 | 246.2 | 250.30 | 721.5 | 240.5 |
B中とC中は国語の平均点に大きな開きがある。「読み・書き」の基本三技能のうち2つがB中の生徒のほうが高いと見ていいのだろう。この2技能は数学の文章題の読解にも関係してくるから数学の点数にも年間平均値で見て
B中の数学の点数が、回を追うごとにアップしている。これは年間105時間の割り当てに対して、15時間増やしたことが関係している。そして毎回授業のときに前回の復習を入れるという工夫の相乗効果と見てよい。何より授業時間数増量という「物量」が決定的に大事な要素だということ。1年間でこれだけ学力テストの平均点を上げる先生は珍しい。15年間データを見ているが数学でははじめてみた。4月の学力テストでは、C中が30点、B中が34.8点で差が4.8点だが、2月の学力テストではそれぞれ36.8点、51.3点、差が14.5へと大きく開いた。
年度末テスト前に確率の章を半分しかやれなかったことはミスだが、点数アップの工夫と努力は評価すべきだ。B中の来年の課題は2月中に教科書を全部終了し、復習を入れることだろう。
C中の数学の平均点の低迷は、この学年の生徒たちの「読み・書き・計算」能力が低いことや、工夫が足りなかったことが関係しているように見える。「読み・書き・計算」の基本技能に問題のある生徒が多い場合には、授業時間数を増やすというのは効果のある対策である。「特別活動」35時間、「総合学習」70時間から20時間ほど振り替えたら学力下位層の半数を救えるのではないか?
2月学力テストデータでみると、C中は30点以下が50人中20人(40%)が30点以下である。B中は56人中9人(16.1%)のみ。高校なら30点以下は赤点、高校統廃合で根室高校1校になるから、そういう生徒が全員根室高校へ合格できる。根室高校の数学の授業レベル低下は避けようがない。12年前には1月21日から1年生は授業で数Ⅱを開始していたが、今年の1年生はまだ数Ⅰをやっている。すでにレベル低下は起きており、それがもう一段後退するということ。
4月と2月の学力テストデータを比較することで、さらにはっきりするものがある。
4月13日 | C中対B中比較 | ||
科目 | C中 | B中 | 差 |
国語 | 47.8 | 58.2 | 10.4 |
社会 | 41.8 | 36.4 | -5.4 |
数学 | 30.0 | 34.8 | 4.8 |
理科 | 49.4 | 46.5 | -2.9 |
英語 | 56.5 | 49.1 | -7.4 |
五科目計 | 225.5 | 225.0 | -0.5 |
2月2日 | C中対B中比較 | ||
科目 | C中 | B中 | 差 |
国語 | 59.10 | 69.90 | 10.8 |
社会 | 36.60 | 47.30 | 10.7 |
数学 | 36.80 | 51.30 | 14.5 |
理科 | 38.30 | 36.90 | -1.4 |
英語 | 47.00 | 44.90 | -2.1 |
五科目計 | 217.80 | 250.30 | 32.5 |
<年平均値比較> | |||
科目 | C中 | B中 | 差 |
国語 | 53.83 | 63.60 | 9.8 |
社会 | 38.70 | 45.03 | 6.3 |
数学 | 33.75 | 43.07 | 9.3 |
理科 | 44.35 | 42.00 | -2.4 |
英語 | 51.50 | 46.80 | -4.7 |
五科目計 | 222.13 | 240.50 | 18.4 |
4月の学力テストでは、B中のほうが平均点の高かったのは国語と数学だけだった。五科目合計点では差が1点未満だ。ところが2月の学力テストではB中のほうが高い科目が3科目に増えた。理科と英語はB中の追い上げがあり、差が縮まっている。数学の差が4.8点から14.5点に拡大した。
年間平均点比較では、国語の差が
これらの結果から、「読み・書き・計算」の基礎技能の高い方が学力テストの平均点が高くなると共に、点数の伸び代が大きいことが言えそうだ。そして、数学の配当時間数を年間15時間増やすことは、数学の平均点アップに有効だということも言える。
「読み・書き・計算」能力が低いというのは、国語指導の力量の差が反映していることのほかに、C中の同じ学区の小学校に問題があることを示唆している。根室市教育長は元花咲小学校長のようだから、このデータをみてマネジメント上の責任を感じるのではないか。校長の仕事には権限と責任が伴っている。今度は教育長としてこのデータを生かす政策を立案して実行に移してもらいたい。
花咲小学校は道東では歴史が一番古い、わたしの母校でもある。当時は1学年6クラス360人、全校生徒数は約2000人。ここ数年新入生が30人前後のようだ。このような規模の学校では、校長は職員室に机を置いてマネジメントするのが当然だ。「校長室」は「応接室」に変えたらよい。
< 学力上位層の枯渇現象 >
どちらの学校も五科目合計点で450点超の生徒は一人しかいない。400-450点の階層がゼロである。五科目合計点が400点というのは高学力層には入らない。高校で受ける進研模試で偏差値48相当である。
どちらの中学校も学力上位層の枯渇現象が起きている。
< 結論 >
データを並べて論じて最後に気がついたが、B中学校は年度当初から学力向上戦略があったと考えられる。初任2年目の教科担当だけで数学の年間配当時間数を15時間も増やせるわけがないから、教頭や校長が一緒になって取り組んだのだろう。
B中もC中も教頭は数学を教えていた先生、数学の学力向上に取り組むには好都合だ。来年これら2校がどのような学力向上戦略を立案しどれほどの成果を挙げるか注目したい。
同じ学区の小学校に変化が現れるだろうか?「読み・書き・計算」能力が低いままだと、中学校の先生たちがたいへんだ。国語と算数の時間数増量を含めて具体的な取り組みを望む。
*#3617 授業進捗管理の陥穽 Mar. 4, 2017
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2017-03-04
70% 20%
2017-03-08 00:21
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こちらも上位生の枯渇が深刻です。
私立・高専への進学組、当日欠席者と入学辞退者を見込むと、釧路湖陵は実質定員割れです。釧路江南もまた同じ。釧路北陽も同様で、最低点は釧路工業のそれを下回る見込みです。
ゆっくりていねいに分かりやすく。
釧根地域の中学校現場にはびこるその価値観こそが、上位生枯渇の原因なのだろうと思われます。
対して、釧路工業・釧路商業・釧路東はまさに激戦。上中位校は軒並み定員割れ。下位校は軒並み激戦。もう、はちゃめちゃです。
by ZAPPER (2017-03-09 11:32)
ZAPPERさん
テンポの鈍い授業に成績上位生はイライラしています。「そんなわかりきったこといつまでクダクダ説明してるんだ」とこころ中で叫んで、ストレスをためています。
難易度の低い問題しか扱わないことにも飽き飽きしているんです。
都会の進学校なら、1.5倍速、そして難易度の高い問題を授業で扱い、広い視野を獲得させます。
400-450点の階層がゼロでは私塾で学力上位層のクラス編成ができません。そういう塾は存在理由を失いなくなっていく。
12年前は400点以上の生徒が市街化地域の3校はそれぞれ10人を超えていました。いまでは400点以上が1人というのが珍しくなくなってきました。すごい変化です。
450点超の生徒が各学校に1-2人います。そういう生徒の学力をどこまで伸ばすかは、地域の未来に大きな影響があります。
ZAPPERさんがこの間書いていた、医師、道庁幹部職員はもとより、農業や漁業などの一次産業分野も生き残りのために高学力の人材を必要としています。
教育こそが町の礎(いしずえ)です。
まだ読んでいない方は、クリックしてお読みください。
*「学力上位層を輩出しなければならない理由」
http://blog.livedoor.jp/jounetsu_kuukan/archives/8759805.html
by ebisu (2017-03-09 12:14)
レベルの低い授業に飼い慣らされ、それによって「できる子(日本基準では普通の学力ですが…)」の芽をことごとく摘んでいること。
まさに公教育版・愚民化政策。
一体、いつになったら正気を取り戻すのでしょうか?
はっきり言います。
狂っています。
by ZAPPER (2017-03-09 20:00)
ZAPPERさん
長い目で見たら学校の授業のレベルが下がっているのでしょうね。根室高校を見るとよくわかります。最上位のガンマクラスは10年前は1/21から1年生は数Ⅱをプリントを使った授業でやっていました。
今年は3月になっても数Ⅱが始まりません。授業速度が低下しているだけでなく、準拠問題集のB問題の出題が減っています。数字も変えずにそのままの出題になってしまったのは、数学で落第させたくないからでしょう。数学担当の先生たちはみんな優しい心の持ち主のようです。
塾側も変わりました、15年前に比べると、中学生の数が55%ほどになっています。成績上位層を集めて一クラスなんて夢のまた夢、だから塾の方でも集団授業のレベルダウンが生じているのでしょう。
五科目400点を越える生徒は市街化地域の3中学校で3-6人程度しかいません。
もう個別指導塾で成績上位生に対応するしかありません。
ところで、12月に入塾した生徒が五科目合計点で2学期末試験に比べて130点アップ。数学がまだ返却されていませんが、90点前後は確実です。3ヶ月間毎週1度英語の補習をやりました。素直に指導どおりに努力できる生徒です。
こういう生徒が、学校の授業だけでは成績中位のまま伸びずに終わってしまうところが困った問題です。
こういう生徒に当たると、ニムオロ塾もなかなかやめられません。ふるさとの子どもたちの芽を伸ばすお手伝いができるのは幸せです。
明光義塾の新教室開校、もうすぐですね。少子化の進行と学力上位層の枯渇化で個別指導塾の役割が大きくなりつつあります。
by ebisu (2017-03-12 12:03)