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#3502 労働生産性向上の果実はどこへ? Feb. 9, 2017 [91.経済]

 #3499でドイツの就業者一人当たり労働生産性と日本のそれを比べた。ドイツの方が労働生産性が高いということになっているが、働き方が異なるので、直接数字を比べるのは問題があることは理由を挙げて述べた。
 #3499で採りあげた就業者一人当たり労働生産性に関する数字を見て考えてもらいたい。

 2016年 832万円
 2011年 784万円
 差し引き  48万円 

 就業者一人当たり所得がいくらなのかネットで検索したが見つからないので、数字を仮定する。この5年間で年収が30万円低下したと仮定するとどういう結論になるのだろう。

 勤労者一人当たりの所得は非正規雇用割合が増えれば低下する。非正規雇用の賃金は正規雇用の4割ほどしかない。ドイツの派遣社員はたったの100万人だそうで、正規雇用に比べて6割の給与水準だ。
 非正規雇用割合は年々増大し、2011年で36%、2017年現在40%ほどにもなっているだろう。非正規雇用割合が増えていけば勤労者の一人当たり平均所得が低下していくのは当然である。

 このデータから労働分配率の計算をしてみよう。

 2011年: 430万円÷784万円=54.8%
 2016年: 400万円÷832万円=48.1%

 産出した付加価値に対して支払われる人件費割合が労働分配率だ。
 生産性上昇分で48万円、非正規雇用割合の増大で30万円が勤労者の財布からどこかへ飛んでいった。その結果、5年間で労働分配率が6.7%も低下した。
 行き先ははっきりしている。企業の内部留保とこの20年ほどで倍以上になった役員報酬、そして株主への配当である。

 日本の伝統的な商道徳は「売り手よし、買い手よし、世間よしの三方よし」である。経営者と株主がよくて従業員が悪いというのは日本の伝統的な商道徳とは真っ向から対立する。日本の経営者は頭のネジがおかしくなってしまったのではないか。自分たちの役員報酬は2倍に上げて、非正規割合を拡大して人件費を削ることに邁進している。大企業の経営者たちは強欲でエゴの強い人間が当たり前になってしまったようだ。こんなことを30年も続けたら経済社会はおかしくなるし、地道な経済成長もできなくなる。価値観が変わってしまえば「人財」育成も困難になってしまう。

 安倍首相が声高に賃上げを叫ぶ一方で、労働分配率が下がり続ける。やるべきことはごまかしの経済成長や労働規制の緩和ではなく、経済規模(GDP)を縮小し非正規雇用割合を減らすことだろう。
 経済成長ができないものだから、政府予算を膨らませて見かけ上のGDPを増やすことに汲々としている。2016年のGDPの内100兆円が政府予算支出によるものだ。赤字財政をやめたらGDPは50兆円低下し、経済成長率は10%ほども低下する。人口縮小時代に入っているのだから、GDPが減少するのも経済がマイナス成長になるのも当たり前のことで、それをそのまま受け入れたらよいのである。
 政府支出はGDPに含まれる、だから経済成長を三本の矢の一つに挙げている安倍政権は見かけ上の経済成長率をプラスにしたくて予算を膨張させ続けている。これが亡国の道でなくてなんだろう。

 口先だけ、ごまかしの多い安倍総理に替わりうる、穏健で健全な保守政治家の台頭を望む。


*#3499 ドイツと日本:生産性比較 Feb. 6, 2017
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2017-02-06


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