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#3387 高2 Further Reading 1 を読む  Aug. 6, 2016 [49.3 高校英語教科書を読む]

 正午の気温は26.1度、南南西の風5.1m/sec、涼しげに風が吹いている、根室の夏は最高、日本一涼しい!

 高2の生徒が教科書の Lesson 10 を終了して、木曜日(8/4)に付録の短編小説 'A Retrieved Reformation' を読み始めた。これは二つある短編小説の内の最初のもの。2年の教科書をあと2回で読み終わり、3年の教科書を3~4ヶ月間かけて読み切る予定だ。そのころには、長文への苦手意識が消滅して英文に慣れ、長文問題は得点源に変わっているだろう。
 この特訓をはじめたのは学校祭(7月初旬)が終わってから。1ヶ月間ほど読んでいるので、生徒が読めていないところがだいたい見当がつくようになってきた。文構造が多少複雑なものと熟語が苦手なようだから、そこに焦点を絞った解説をすればよい。テーマによっては周辺知識の解説も重要である。
 引っかかるところは共通しているだろうから、長文が苦手だと思っている高校生の役に立つことを願っている。

 156~158ページまで、7箇所引っかかった、そのうち質問があったのは(1)を除く6箇所。

(1) He was a big man, and famous for his skill at solving very difficult and important cases.

(2) He was the only person who knew how Jimmy did the job.

(3) People with safes full of money were glad to hear that Ben Price was at work trying to arrest Mr. Valentine.

(4) Jimmy Valentine looked into her eys, forgot at once what he was and became another man.

(5) Jimmy saw a boy playing on the steps of the bank and began asking him questions about the town.

(6) The clerk was so impressed by Jimmy's clothes and manner that he kindly gave him as much information about the town as he could.

(7) "Mr. Spencer" told the hotel clerk that he would like to stay in the town for a few days and look over the situation.

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  最初の文は質問がなかった。カンマがあるのとないのとではどのような違いがでるのだろう?そんなことがわたしは気になる。「カンマの用法」なんてものは関係代名詞の非制限用法にしか出てこない。「, and」用法なんてことを説明している受験参考書はない、だから、受験勉強としては必要ないのだろう。でも、...気になるから、俎板(まないた)に載せるのでお付き合いいただきたい。

 He was a big man and [he was] famous for his skill

 カンマなしでandでつながれていたら、「ビッグマンでかつ有名だった」ということ、これら二つは同格である。 ではカンマがある本文の意図するところはいずこにありや?
  カンマありの文を見よう。

 He was a big man, and famous for his skill

 カンマは本来「区切り」を表している。カンマで切れているから、同格ではない、後ろに続く節は前の名詞句 'a big man' の補足説明である、これが英語の語彙配列に関する一般原則のひとつ
 大学受験英語で唯一カンマのある文が採り上げられているのは関係代名詞の非制限用法である。関係節はカンマの直前にある名詞句の補足説明になっているから、同じ用法だと理解してよい。次のような訳文が適切だろう。

「彼はガタイの大きな男で、むずかしい重大事件を解決する能力があることを誰もが知っていた」

  and以下は付加情報である。

 his skill at solving very difficult and important cases

 at 以下の前置詞句は直前の名詞句 his skill の補足説明であるら、これも語彙配列の一般原則に従っている。
 ちょっと手の込んだ文である。
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 2番目の文は生徒から質問があった。how 以下の文意がつかめなかった。
(2) He was the only person who knew how Jimmy did the job.

 onlyがついたら、関係代名詞はthatだと習ったのではないか。『表現のための 実践ロイヤル英文法』270ページ「128c that が比較的好まれる場合」の項に次のように書いてある。

「次のような場合にはthatがよく用いられるが、thatでなくてもよい。 ①先行詞に最上級、first、only、best などがついているとき」

 whoでもthatでもよいのである。江川泰一郎『英文法解説』でも同じ扱いである。学校の定期テストの問題に、onlyの場合は関係代名詞はthatでなければバツにする先生がいるかもしれない。いたら、「thatでなくてもよい」のですと言おう。それは単なる勘違いなのだから。

 さて、意味を明瞭につかむために文を三つに分解してみよう。

① He was the only person (彼が唯一の人)
② He knew somthing (彼は何かを知っている)
③ how did Jimmy do the job. (ジミーが仕事をどのようにやるか)

 「彼(ベン)はジミーの手口を知っている唯一の人間だった」

 ③の文はシンプルセンテンスではないが、意味をつかむためにはここまでで充分、必要以上に分解する必要はない。
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 三番目の文は、構文が少し複雑である。動詞がたくさん使われているが、本動詞はどれ?文を見るときには、主語は何か、本動詞は何か、そしてその動詞は「現在か過去か」「進行相か完了相か」「能動態か受動態か」「仮定法かそうでないか」、これらのことを常にチェックしながら読もう。

(3) People (with safes full of money) were glad to hear that Ben Price was at work trying to arrest Mr. Valentine.

 どれが主文の主語と動詞なのかの判断がつけば、簡単である。慣れないとすぐにはわからないから、たくさん読んで慣れよう。

① People were glad to hear something
② Ben Price was at work trying to arrest Mr. Valentine.

 ようするに、「人々が何かを聞いて歓んだ」というだけの文である。括弧でくくった前置詞句を文に書き直すと、
 People have safes. (人々は金庫をもっている)
  They(safes) are full of money. (金庫にはお金がびっしり詰まっている)
 at work [which is] trying to arrest Mr. Valentine

 主語は「金庫の中にお金をびっしり溜め込んでいる人たち」
 「ベン・プライスがバレンタインを逮捕しようと仕事に取り掛かっていると聞いて、金庫にびっしりお金を溜め込んでいる金持ちたちはよろこんだ。」

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 意味がつかめない、つまり、シーンが具体的にイメージできないという質問があった。こういう小説を読むときには、シーンがありありと脳内に再生されていなければ理解したとは言えない

(4) Jimmy Valentine looked into her eys, forgot at once what he was and became another man.

 言葉からイメージをつむぎ出せたら、いい場面なのである。この短編小説のタイトルの解釈にも関わる重要なシーンだ。構文的には難しいことは何にもないし、わからない語彙もひとつもないだろう。
 「A, B and C」という構造の単純な重文である。起こった順番そのままに並んでいるだけだから、脳内にイメージができるか否かが勝負の文だ。素直に読んだらいい。
 
① Jimmy Valentain looked into her eyes. (JVは彼女の瞳を覗き込んだ)
② He forgot at once something. (彼はすぐに何かを忘れた)
③ what was he? (彼がどんな仕事をしていたのか)
④ He became another man. (彼は別の人間になった)

 ②の at once は forgot を修飾する副詞である。「瞳を見た瞬間に忘れた」という意味だ。3番目の文が理解できなかったのだろうと推測する。中1で出てくる簡単な文が、こうして埋め込み文で使われると形に惑わされて知っているはずの情報と結びつかない。

 What is he? (彼は何者?=彼の職業は何?)
  Who is he? (彼は誰?⇒個人的な関係は?)

 「ジミーはアナベルに一目惚れしたのだ。恋の力は偉大だ、それまで金庫破りを生業にしてきたが、その技術を頭の中から棄て去って、別の人間になったのである。アナベルに出遭った瞬間の出来事だった。」

 ジミーはアナベルに一目ぼれして、それまでの金庫破りという生業をやめたのであるが、それは改心したからではなく、恋心からだった。作者はこの元金庫破りがすでに改心していることを金庫に閉じ込められた少女を救う場面で示す。金庫破りのジミーはすでに過去のものであり、そこにいるのは別の人間、ラルフ・スペンサーである。ジミーを追っていた探偵のせりふがにくい。短編の題名は含意が深くお洒落だ。生徒はこのタイトルからどういう日本語をつむぎだすのか、楽しみだ。

    A Retrieved Reformation

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 文脈を読みそこなったので、playing の適切な訳語が思い浮かばなかったようだ。

(5) Jimmy saw a boy playing on the steps of the bank and began asking him questions about the town.

 重文構造で最初の文はSVOC、第5文型である。「少年が遊んでいるのを見た」後の文は第3文型なのだが、beganの目的語にaskingという4文型動詞が使われている。動名詞句が目的語になっている。

① Jimmy saw a boy playing on the steps of the bank
①-1 a boy [who is] playing on the steps of the bank
② [Jimmy] began asking him questions about the town
②-1 Jimmy asked the boy questions about the town

  「主格の関係代名詞+be動詞」は省略されるから、名詞を修飾している分詞句が後続する形になる。play the guiter, play soccer, play with dhildren, play a role, etc
 子どもの世界ではplayは「戯れる」がコアイメージであるが、大人の世界ではときに違う意味合いを帯びる。playboy, playgirl は恋の駆け引きの好きな男と女を表す。ここでは a boy と書いてあるから、「戯れる」でいい。
 ②のhimは a boy を指している。

「アナベルの父親の経営する銀行の正面玄関の階段のところで少年が遊んでいるのを見とめると、その少年に町についていくつか尋ねた。」

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 この文も意味がわからないと質問のあった。代名詞が多用されているので、「彼が」「彼に」「彼は」と訳したのでは、訳した生徒自身も意味がつかめない。

(6) The clerk was so impressed by Jimmy's clothes and manner that he kindly gave him as much information about the town as he could.

 この文は構文が多少複雑だが、難しいのはそこではなく、代名詞の多用にある。代名詞を代名詞のまま「彼」と訳出したのでは何がなんだかわからない。英語は代名詞で置き換えることになっているからそうなのであって、日本語に置き換えるときは原則としてもとの名詞を意識しろと生徒には普段から指示している。代名詞は元の名詞を日本語訳に当てはめるようにさせているのだが、それができなければ訳は完成しない。
 ここで登場する人物は二人だけ、元金庫破りのジミー(ラルフと別名を使っている)とホテルのクラークである。
 so~that の解説は不要だろう。as 以下はどれだけ kindly かの程度を表す補足説明である。「as~as」文だから、これも受験参考書の範囲だ。

 he kindly gave him as much information about the town as he could [give him].

  代名詞を識別するために、[ ]書きで元の名詞を挿入すれば文意は簡単だ。

 The clerk was so impressed by Jimmy's clothes and manner that he[the clerk] kindly gave him[Jimmy] as much information about the town as he[the clerk] could.

「ホテルの客室係りはジミーの身なりとマナーのよさに魅了されて、自分が知っているこの町の情報を全部ジミーに話した。」

 日本語の小説をたくさん読んでいる生徒は、こういうときに文脈の読み方が適切だ。濫読期を経験している生徒は、代名詞が指示している名詞を混乱なく理解できることが多い。「文脈把握力」は母語で書かれた文章を多読することで磨かれる能力である。読書量の多寡が文脈把握力を決定している。受験勉強のみでは、英文を読む能力は高(たか)が知れているということ

 クラークがフロントマンか客室係かはわたしにはわからない。ホテルの規模にもよるだろう。客の身なりやマナーで値踏みして、相応の部屋を勧める。そういうプロから見ても、ジミーはちゃんとした身なりで育ちのよさそうな青年に見えた。だから、クラークは警戒心を解除して自分の知りうるこの町の情報を洗いざらいジミーに話したのである。怪しげなところがちょっとでも見えたら、ホテルのクラークがそういう情報を見知らぬ客に与えるはずがない。もし何かあれば自分の信用が根こそぎ失われる。ジミーの身なりとマナーはクラークの警戒心を完全に解除するほど板についていたと作者は言いたいのだろう。
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 次の文も質問があった。look over の意味がわからないという。生徒は電子辞書を利用しているが、紙の辞書はもっていない。近頃こういう生徒がほとんどである。中学校の授業で英和辞典を使わないから、こういう弊害が出る。高校生になるといきなり電子辞書を使い始める。電子辞書では熟語が引けないと生徒は言うが、使い方を知らないだけか、引き方が面倒なだけだろう。

(7) "Mr. Spencer" told the hotel clerk that he[Mr. Spencer] would like to stay in the town for a few days and look over the situation.

 Mr. Spencer が the clerk に言った。

 "Mr. Spencer", the hotel clerk told him[Spencer] that he[Jimmy] would like to ... 

  over の意味、空間的な位置関係がわかれば、lookと組み合わせることで、意味は推測がつく。overは「上を覆っている」「何か障害物があってその向こう側」「高いところから見下ろす」というのがコア・イメージだ。lookと組み合わされて、「高いところから見る⇒調べる」と意味に推測がつけられるようになればいい。ここでは look over the situation だから前置詞である。定冠詞がついているから、「数日滞在して、ホテルのある町の状況をつぶさに調査したい」という意味だ。

「Mr.スペンサーはホテル・クラークに次のように言った。数日間滞在してこの町の状況をつぶさに調査したい。」

 HN「後志のおじさん」は、冠詞類や前置詞・副詞をネイティブ並に使いこなせるようにという、遠大な目標を立てて、修行をいまも怠らない「英語の達人」である。動詞のコアイメージだけでなく、前置詞や副詞が示す空間的な位置関係のイメージとそれが動詞と組み合わさって派生してくる「句動詞」の意味もネイティブ並に理解する修行を積んでいる。そういう努力は高校生だってして悪いわけがない、いや若い人ほど効率的に習得すべきだ。
 夏休みだから、田中茂範著『わかる 覚える 使える 英単語ネットワーク 前置詞・編』に目を通してみたらいい。数冊類書があるが1冊だけを選べといわれたらこれ。日本語にない機能である冠詞についても一冊読んでおきたい。冠詞を解説した本は数冊もっているが、これといったものがない。

 紙の辞書はその項目の全体が一覧できるので便利だし熟語を引くのも簡単。電子辞書は不便なところもある。
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<文の構造のおさらい>
(1) 重文
(2) 埋め込み文×2
(3) 名詞修飾語(前置詞句)、hearの目的語が節構造となっている。
   熟語のat work は「仕事中」
(4) 重文+埋め込み文
(5) 主語の倒置と代名詞の多用+重文
  熟語 look over

 最初の内は、ノートに書いて、必要な程度にシンプル・センテンス(あるいはシンプル・センテンスへといたる途中の文)に分解して文意をつかんだらよい。慣れてくれば、頭から読んでも、自動的にシンプル・センテンスに分解しながら読めるようになる。数をこなして慣れることが大事だ。
 慣れてきたら、英文を頭から読み、先読みしながら、英語を英語のイメージのまま理解するようにステップ・アップすればよい。



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