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#3019 株価と経済:立教大山口義行教授の論 Apr. 8, 2015 [91.経済]

 4月7日の日経平均は19640.54円で、もうすぐ2万円に手が届きそうな勢いである。「株価は経済の鏡である」と言われているが、日経平均は経済の鏡になっているだろうかというのが、3/30NHKラジオ番組「社会の見方わたしの視点」での山口義行教授(立教大学経済学部教授、専門は金融論)の論点であった。

 日経平均(日経225)とは東証1部上場企業1700社の内の225社の平均株価であるが、この指標に経済の実態が映し出されているだろうか?山口教授は三つの論点を挙げた。

(1)日経平均はきわめて少数の企業の株価の動きを反映している。
  上場企業株3500社の内の225社の平均であり、株価の高い上位20社の構成率が50%を超える。わずか上位4社で構成率20%である。
 論より証拠、二つ事例を挙げていた。
 3月8日に315円アップしたが、1/3の112円はファーストリテイリングの値上がりによる。
 3月15日に263円アップしたが、約半分はファナックの値上がりによる。
 このように1社の株価の動向で日経平均が大きく動く。

(2)最近の日経平均は官制相場ではないかとの声が多い。
 売買の7割は外人投資家だったが、1月と2月は売り込んでいるのに株価が上がっている。買い手は信託銀行であるが、GPIF(年金機構)が信託銀行に買い注文を出している。公的なお金が入ると日経平均は上がるが、これでは経済の実態を反映しているとは言いがたい。

(3)日経平均は輸出関連企業が多いから円安メリットが大きい。ところが多くの企業は円安による原料高、仕入コスト高で業績が悪化している。
 マスコミは日経平均が上がっていると経済が良くなっていると報道しがちだが、それは事実と違っている。多くの企業が仕入コストアップや電気料金、ガス料金、ガソリン価格の上昇で採算を悪化させている。

 マスコミは経済の現場を取材すべきだし、政府は経済政策が事実上の株価対策みたいにならないように実態を見据えた政策運営をすべきだというのが、山口教授の主張である。

<ebisuの辛口コメント:株価暴落リスク増大>
 わたしは山口教授の論点にもう一つ付け加えたい。基金140兆円の半分70兆円が内外の株式市場に投じられつつある、GPIFは保有国債を売却して株式を購入する。売られた国債は結果として日銀が購入しているから、実質的にはGPIFを介して日銀が株式買い付けをしているようなものだ。株式も国債も市場機能が麻痺して官制相場になっている、市場の調節作用は失われているから市場で突然に何が起きても不思議ではない。
 基本的なことが忘れられている、GPIFが年金支払いのために保有株式を売却するときが数年後に来る。数兆円単位で保有株式の売却を始めたときに株式市場は暴落することになる。相場はピーク時の1/3~1/5になるのが通例であるから、年金基金に大きな毀損が生ずる。これはほとんど避けようがない。原資が減るから年金支払いへも大きな影響が出る。
 国民の皆さん、そして保守政治家を自称する諸君、このままでは年金基金に大きな穴が開いてしまうが、御身大事とこのまま見過ごしていいのかね。

 大部分の企業が円安によるコストアップで業績が悪化している。アベノミクスが何を引き起こしつつあるかはすでに明らか。経済音痴の首相、そして無責任な発言を繰り返した経済政策ブレーン(浜田宏一東大名誉教授)のコンビによるアベノミクスがこれからさらにどれほどの災厄を引き起こすのか、しっかり目を開いて結果をみたらいい。
 人口減少時代に経済成長をいつまでも唱え、公的資金と投入してまでも株価を吊り上げて政権延命を図る浅ましさには、あきれてものが言えぬ。
 内部から強い批判が出てきて当然だと思うが、出てこないところをみると、自民党は昔とちっとも変わっていないのか?少子高齢化で人口減少時代に突入し、経済成長ではなく経済縮小へと大きく変わてしまっている。時代と経済政策のギャップが安倍政権になって急拡大しているから、どこかでカタストロフィーが起きるが、それがいつかはだれにもわからない。東北大震災のように突然日本を襲う、それは自然災害ではなく、現政権によって人為的に引き起こされる災害である。日本経済と国民の生活は致命的なダメージを受け、どん底から再生することになる。智慧と決断があれば人為的な災害は防ぐことができる。
 地方選挙が始まったが、中標津も根室も道会議員は現職が告示と同時に無投票当選が決定、地方は人材が枯渇してしまって対立候補すら出現せず、まったく変わりようがない。選挙制度はあっても選挙民は選びようがない。国債や株式相場と同じで、ここでも市場原理(競争原理)が失われている。
 



*#2935 『資本論』と経済学(1):「目次」 Jan. 25, 2015 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-01-25

 #2936 『資本論』と経済学(2):「1.経済現象と日本の国益」 Jan. 26, 2015 http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-01-26

 #2937 『資本論』と経済学(3):「円安はいいことか?80⇒120円/$の威力」 Jan. 27, 2015 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-01-27

 #2938 『資本論』と経済学(4) : 「経済学とは?」 Jan. 27, 2015 http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-01-27-1

 #2939 『資本論』と経済学(5) : 「『資本論』の章別編成」 Jan. 27, 2015  
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 #2941 『資本論』と経済学(6) : 「マルクス著作の出版年表」 Jan. 29, 2015   
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 #2942 『資本論』と経済学(7) : 「デカルト/科学の方法四つの規則」 Jan. 29, 2015
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 #2943 『資本論』と経済学(8) : 「ユークリッド『原論」 Jan. 29, 2015   
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 #2945 『資本論』と経済学(10) : 「プルードン「系列の弁証法」 Jan. 29, 2015    
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 #2947 『資本論』と経済学(11) : 「労働観を時間座標系においてみる」 Jan. 29, 2015     
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 #2950 『資本論』と経済学(13) : マルクス経済学の体系構成法 Jan. 31, 2015
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 #2951 『資本論』と経済学(14) : 「マルクスの労働観と日本人の仕事観」 Jan. 31, 2015
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 #2952 『資本論』と経済学(15) : 「ヨーロッパ労働観⇔と日本の仕事観」 Feb.1, 2015
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 #2953 『資本論』と経済学(16):「仕事がキツイ!に潜む心(仕事観)の問題」 Feb.1, 2015 http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-02-01

 #2955 『資本論』と経済学(17):「要領の悪いものほど忙しいとぼやく」 Feb.3, 2015
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 #2958 『資本論』と経済学(18):「教育の職人」 Feb. 5, 2015
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 #2960 『資本論』と経済学(19):「日本経済の未来」 Feb. 6, 2015
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 #2961 『資本論』と経済学(20):「経済成長の天井 山田久氏の論」 Feb. 7, 2015
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 #2964 『資本論』と経済学(21):「過剰富裕化論」 Feb. 8, 2015 
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 #2966 『資本論』と経済学(22):「相対的貧困率上昇と富裕層増大」 Feb. 9, 2015
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 #2967 『資本論』と経済学(23):「ピケティの空想的所得再分配論」 Feb. 10, 2015
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 #2971 『資本論』と経済学(25):「村落共同体と税:自由民と農奴について」 Feb. 12, 2015
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 #2972 『資本論』と経済学(26):「文部科学大臣下村博文「教育再生案」について」 Feb. 13, 2015
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 #2973 『資本論』と経済学(27):「注-1~5」 Feb. 13, 2015
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 #2974 『資本論』と経済学(28):「注ー6」と主要文献リスト Feb. 14, 2015  http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-02-13-1

 #3015 人工知能の開発が人類滅亡をもたらすホーキング博士(資本論と経済学-補遺1) Apr. 2, 2015
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コメント 2

相川始

こんばんは。ebisuさん。

株で景気がよく感じているのはごく一部だけ。
大半の庶民は、給料も上がらず、物価高に苦しんでいる。

今のセカイは、一生懸命仕事をしても将来に希望を持つことができないのが現実。
童話アリとキリギリスでは、一生懸命仕事をアリが冬を生き残るが、今の世の中、キリギリスが優遇され、アリは報われずに終わります。
さらに最近のアリとキリギリスでは、最後の結末が変わっています。まさに今の時代を表している結末になっています。
興味があれば読んでみてください。

昔は、一生懸命仕事してれば誰かが見てるということを言われましたが、今は要領が良い人間だけが優遇されるようになったから、若い人は楽して儲けよう考えてしまう。

若者よ。
仕事中なのに四六時中ネットばかりしている人間もいるが、そんなキリギリスな人生では成長しないぞ。
仕事に楽を求めたら、未来はない。
by 相川始 (2015-04-08 21:46) 

ebisu

相川さんこんばんは

>さらに最近のアリとキリギリスでは、最後の結末が変わっています。まさに今の時代を表している結末になっています。
>興味があれば読んでみてください。

もとのイソップ寓話ではアリとセミだったのですね。セミは夏の間は歌い続けています。
もとの結末はアリは食べ物を分けるのを拒否するのですね。「夏の間歌っていたのだから、冬には踊っていなさい」と。

ここから、さらに、セミが言うんですね。
『歌うべき歌は、歌いつくした。私の亡骸を食べて、生きのびればいい。』

すごい結末です、わたしはセミの生き方が好きになりそうです。

勉強になりました、ありがとうございます。

アリとキリギリスのお話、関連URL

http://copywriterseyes.hatenablog.jp/entry/2013/09/13/222022

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%AA%E3%81%A8%E3%82%AD%E3%83%AA%E3%82%AE%E3%83%AA%E3%82%B9

by ebisu (2015-04-08 22:40) 

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