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#2882 ソードアートオンライン007 マザーズロザリオ Nov. 26, 2014 [44. 本を読む]

 生徒たちがどういう本を読んでいるのか興味があって、借りて読んでいる。SAOは最初に009-014の6冊を読み、その次に001-006、そして015、一昨日007を読了した。合計14冊読んだ。生徒たちはゲームに関連する小説が好きなようだ。

 粗筋はネットで検索すれば見つかるから、とりあげない。007ではバーチャル上の世界で殺されてもリセットして生き返ることができる。ゲームの世界での死がBMI(ブレイン・マシン・インターフェイス)を介して現実の死につながる以前の話とは緊張感が違う。
 難病(先天性AIDS)のユウキという女の子がでてくるが、医療用のメディキュボイド(高性能フルダイブ型のBMI)を装備したベッドで寝たきりになっている。24時間×数年間ゲームの中で動き回っているのでソードスキルが他のプレイヤーとは比較にならないほど上がっており、キリトもアスナも勝負して負けてしまう。キリトは勝負したときにユウキのソードスキルの背後にあるものに気づいてしまう、それを勝負の途中の接近戦のときにユウキに話し直後に負けたのである。キリトの勘は当たっていた。
 著者は先天性エイズの症状の進行を詳細に記述している。ネットや著作物で調べたのだろう。わたしは先天性AIDSについて知識がないが、説得力のある病状が書きこまれていた。
 命の問題について、面白い洞察が書かれていた、これにははっと驚いた、慧眼である。命は遺伝子を運ぶだけでなく心や精神を運んでいるという。

「命には、四種類の塩基によって伝えられる遺伝情報だけでなく、実態のない記憶、精神、魂を運ぶ機能だってあるということになる。ミ-ム、模倣子といったあいまいな概念ではなく、いつか遠い未来、精神そのものを純粋に記録できる媒体が出現することがあれば、もしかしたらそれこそがこの人間という不完全な生命の自滅を防ぐたったひとつの鍵となるのではないか―。」 291ページ

 その通りだと思う。人が死んでもその人の生き方や心のもち方、精神などは生きている者に受け継がれていくから、命が記憶や精神、魂を運ぶものであることはうなずける。日本人は縄文時代以来1.2万年も日本列島で暮らしてきたが、そこで生まれて消えていった数十億人分の集合的な魂を私たちは受け継いでいる。個々の命がそうした集合的な魂の欠片(かけら)でもあるのだ。
 人間の記憶や精神を収納できる記憶素子が009で登場する、一辺の長さが5cmの立方体の記憶素子、ライト・キューブだ。そして数万人分のライトキューブが量子コンピュータのネットワーク・サーバの記憶素子として自由にインターフェイスしている。
 バーチャル世界に生まれさまざまな経験を積んで身体と精神の成長を遂げたライト・キューブは現実の世界の人間の魂と変るところがない。その消滅は命の消滅を意味する。
 その反面、命が量子コンピュータの記憶素子であるライトキューブにデジタルデータとして保存されるがゆえに、アドミニストレータからみると無限にその生命を生き返らせることが可能になる。システム・アドミニストレータは神のごとき存在になる。魂の複製をライトキューブにストアしておくことで、何度死んでも生き返えらせることができる。米軍が軍事利用をたくらみ、海洋上に浮かぶ実験施設を襲うというのが015だ。

<未来のビジョン>
 #2784でCPUの速度進化を試算したら百年経たぬうちに量子コンピュータを凌駕する速度が実現するらしいことがわかった。現状の2億倍もの計算速度のコンピュータが家庭で使えるようになる。もちろんそれに対応する記憶素子も生まれていると考えていいのだろう。SAOで考えているBMIは脳内の処理系が電気信号だけではないのでとてもムリがありそうなのが救いだ。しかし、そこを解決しさえすればSAOの想定する世界への扉が開くことになる。自分を人間だと思う「鉄腕アトム」もアリだ。人間の魂はライトキューブに代替され、論理的に見れば人類は命という観点から見る限り存在理由がなくなる。それでも人類はコンピュータ速度を上げ、記憶素子の容量拡大にまい進することをやめられない。大きな儲けにつながるからだ。人間は欲望を抑制しない限り、百年後には自らの存在理由を消滅させてしまう、そういう世界をSAOは描いて見せてくれるかもしれない。
 わたしはこのシリーズを読んでいてなにか既視感を感じてしまう、そう小学生のころに鉄腕アトムを読み始めたときに感じたものと似たような感覚がしているのである。高速道路や曲線の多用された自動車、あれは旧型のフォルクスワーゲンそっくりだった。百万馬力の原子力エンジンを搭載した人型ロボットが開発されていないところが違っている。しかし、米軍もそれを支える軍需産業も四足歩行型戦闘ロボットや偵察用や戦闘用などさまざまなタイプの無人機開発に血眼になっており、次々と新製品が開発され、テストを兼ねて現実の戦場に投入されつつある。

<使われている語彙のレベル>
 漫画の原作という匂いの強い本だ。少年向け、精神年齢的には中学生が対象の本だろう。ませた中学生には少し物足りないかもしれない。ルビが振ってあるので中学生には読みやすい。使われている語彙は先天性AIDS症候群に関わる専門用語以外はあんまり幅が広くないから、中高生の語彙力拡張という点から評価すると高い点数はつけられない。良質の漫画の本と並ぶエンターティンメント(娯楽)本だ。挿絵は小学生向きの絵のようで、小説から創りあげたイメージとはだいぶ違うから、アニメで見たいと思わない。文字のいいところは、イメージを自分で創り上げることができるところにある。そういう意味では、文章や言葉からイメージを創り上げるトレーニングになる。本を余り読まない中高生にトレーニング教材として推奨できる。(笑)

<余談-1>
 『奴隷区-2』も3日前に読んだ。3冊目で終わりのようだが、どう終わらせるのか想像がつかない。この本もゲームだ。SCM(スレーブ・コントロール・メソッド)という機器を口中にセットしてゲームに勝つと相手を奴隷にできるというもの。2冊目ではこの機器を開発した人物が登場する。
 このシリーズは、登場人物にホストやキャバクラ嬢や風俗店経営者が出てくるので当然セックス描写ありだが、どぎついものではない。
 作者はよほど面倒くさかったのか、登場人物の苗字に東京23区名を当てている。中央さん、杉並ルシエさん、練馬さん、品川さん、板橋さん、新宿さん、渋谷シヲリさん、目黒さん・・・おかしくて笑えた。あ、全然別系統苗字のゼロという人物が登場しているし、ズシオウ丸という人語を理解できる犬もいた。それぞれキャラクターがとっても個性的で数の多いのがこの本の特徴だ。


*#2784 百年後のコンピュータの性能 Aug. 22, 2014 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-08-22

 #2779 『ソードアートオンライン 9 』:量子コンピュータ・オンラインゲームと心  Aug. 17, 2014 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-08-17-1

 #2804 『ソードアート・オンライン14』  Sep. 12, 2014 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-09-13

 #2820 『奴隷区 僕と23人の奴隷①』岡田伸一著 Sep. 29, 2014 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-09-28-1

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