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#2494 (2) 根室管内版解説 : RC-2, RC-3 <例証:データの限界>  Nov. 14, 2013 [69.H25全国学力テスト・データ分析]

 RC-2は根室管内版499頁に掲載されている2番目のレーダーチャート「小学校全体」である。全体が見渡せるいいチャートだからURLをクリックして、じっくりと眺めてください。

http://www.dokyoi.pref.hokkaido.lg.jp/hk/gky/gks/h25chosa/14_nemuro.pdf

 RC-2(the 2nd radar chart)には、①根室管内版、②北海道全体、③秋田県の数値が全国平均値を100としてプロットされている。レーダチャートをコピーできないので、数値を表に戻してみた。「情熱空間」は釧路管内版のRCをコピーして貼り付けているから、何か方法(あるいはツール)があるのだろう。



 <小学校>

RC-2

[  ]内は都道府県データに基く根室管内の偏差値(全国:100)
  根室管内北海道秋田県
国語A話すこと・聞くこと104.6104.6131.5
[37.8]書くこと92.394.5120.8
 読むこと101.8100.7119.3
 伝統的な言語文化と国語の特質に関する事項95.596.6113.7
国語B話すこと・聞くこと95.595.7112.2
[48.0]書くこと87.292.2122.4
 読むこと88.993.7122.1
 伝統的な言語文化と国語の特質に関する事項88.695.5116.9
算数A数と計算95.397.0107.7
[33.8]量と測定98.195.9107.6
 図形92.897.1110.6
 数量関係97.698.0104.1
算数B数と計算84.190.1127.7
[28.3]量と測定87.991.6113.9
 図形96.297.5104.3
 数量関係87.191.3117.1
16項目平均93.395.8115.7
偏差値37.0 36.4
<中学校>RC-3
(全国:100)
  根室管内北海道秋田県
国語A話すこと・聞くこと97.9100.4105.8
[41.6]書くこと91.698.8113.5
 読むこと96.199.1106.0
 伝統的な言語文化と国語の特質に関する事項97.999.5107.0
国語B書くこと92.398.2114.4
[45.3]読むこと92.097.9110.0
 伝統的な言語文化と国語の特質に関する事項94.199.7115.5
数学A数と式96.796.7107.8
[38.0]図形92.998.1108.5
 関数96.199.0108.0
 資料の活用90.499.4109.6
数学B数と式79.190.4113.9
[40.8]図形98.098.7108.3
 関数87.394.8113.0
 資料の活用88.296.0121.6
15項目平均86.991.7103.9
偏差値41.445.1 



<第一の限界>
 全国平均値を基準として根室管内、北海道、秋田県が百分率で表されている。いままでの表との違いは、たとえば「国語A」が違った分類がなされていることである。この分類では都道府県別データのデータの公表がないので、科目単位(4科目)でまとめてみるしかしかたがない。ここが第一番目の限界である。
(各都道府県教委が公表しているデータを検索して計算すればやれるのかもしれないが、わたしの手に余る)

 根室管内のデータが全国データの90%未満のものを緑色で表示した。小学校では6項目で国語Bが3項目そして算数Bが2項目であるのに対して、中学校では数学Bの3項目のみ。中学校では改善されているようにみえている。全国偏差値でみても、小学校37.0⇒中学校41.4だから、全国的な位置はしっかり上がっている。中学受験のない地域は小学生の学力が相対的に低いのではないだろうか。したがって、小学生の内に勉強に目覚める生徒が少ないが、中学生になると高校入試を意識して家庭学習に力が入るというような事情が背景にあるようだ。


<第二の限界:例証>
 まず全体を概観してみたい。小学校のRC-2にある比率16項目の単純平均値は93.3であり、RC-3の中学校の15項目の単純平均値の86.9よりも高いが、偏差値で見ると逆になっている。小学校が37で中学校の41.4よりもかなり低い。
 このことから、科目別比率では全国的な位置がどれほどであるのかについての判断ができないことがわかる。

 全体はそうだが、では科目別に見たらどうなのか?
 小学校のデータを科目別に根室管内の比率を集計して単純平均値を算出し、偏差値と並べて見ると、次のようになっている。
      (RC-2)
          全国100  偏差値
 国語A 98.6%    37.8
 国語B 90.1%   48.0
 算数A 96.0%   33.8
 算数B 88.8%   28.3
           93.3%     37.0         


 全国平均を100とした比率で、国語Aはマイナス1.4%、国語Bマイナス9.9よりもずっとよいのに、偏差値では逆になっている。根室管内で問題のあるのは、国語B よりも国語Aの方である。
 ここでも全国平均値で根室管内データを除した比率で判断すると、データを読み間違えることになる。
 データの分布を考慮しない絶対値による比率データではこのように判断を誤るケースがしばしばあることがわかる。

 同様にして、国語Aの中の項目である「書くこと 87.2%」と「読むこと 88.9%」はどちらのほうがより問題が深刻なのだろう?データの散らばりが不明だから、まったくわからないということになる。見かけ上の百分比では、全国平均値よりいいのか悪いのかしか判断できないことがお分かりいただけただろう、じつにもったいない。
 全国平均値に対する比ではなくて、標準偏差をゲージに使えば、細目間でどれがほんとうに問題なのかが誰の目にも明らかになる。計算はいたって簡単である。

 小学校の都道府県別・科目別標準偏差値表を参考に供したい。国語Aと国語Bでは標準偏差に2倍の開きがあるから、このような現象が起きうるのである。

小学校
 設問数正答数平均値標準偏差
国語A1811.4 0.506617
国語B104.9 0.253559
算数A1914.7 0.353756
算数B137.6 0.355673



<初歩的な統計学的解説>
 データの分布の状態、つまり「ばらつき」統計学用語では「分散」やその正の平方根である「標準偏差」で測度しないと、項目相互の比較ができない。
 これは統計学では初歩的な知識に属する。その初歩的な知識だけをもって、ebisuはこれらのレーダチャートからは根室管内が全国平均値よりもどのくらい上か下かしか判断できない、科目相互の比較はできないと断言できる。
 そしてまた次のようにも言うことができる。組み替えられた細目で示されたデータに関する標準偏差が提供されれば、ずいぶんと有益な情報が取り出せると。宝の山の前に佇みながら、足が動かぬような心持がしている。

 「管内版」には何枚ものRCが描かれており、重要な情報を読み手に与えてくれるかに見えるが、初等統計学的にはきわめて問題の多いチャートになっているといわざるをえぬ。

 ebisuは1978年9月に産業用エレクトロニクス輸入商社に中途入社して、73年に変動相場制になってから会社の業績が為替相場の影響を受けて赤字と黒字を繰り返し財務安定性と収益性が著しく損なわれていたので、科学技術用プログラマブル計算機HP67とHP97を使って、経営改革のためのシステムを作るために経営分析をしていた。その折に、5つのディメンションで合計25項目のゲージをもつレーダーチャートを開発・作成していたが、各項目のゲージには作成したモデルの基礎データを線形回帰分析して得たデータから標準偏差を利用していた。だから、北海道教育委員会のRCのような問題は回避できていた。パソコンがまだオモチャの領域だった35年も前のことである。

 ebisuは提供されたRCから有用な情報を読み取りたいのだが、手が届かないもどかしさを感じている。

 小学校と同じように中学校のほうも百分比と偏差値を並べてみよう。
      (RC-3)
          全国100  偏差値
 国語A 95.9%    41.6
 国語B 92.8%   45.3
 数学A 94.0%   38.0
 数学B 88.2%   40.8
           86.9%     41.4    

  国語Aと国語Bとの間に、比率と偏差値の逆転現象がある。数学AとBとの間にも同様に逆転現象が見られる。
 全国平均値よりは低いとはいいうるが、さらに内訳項目に分け入ってコメントすることができない。「分散」や標準偏差データがないから判断できないのである。

*参考データ

中学校・都道府県別標準偏差
国語A0.5850354006
国語B0.2007617317
数学A0.9499695696
数学B0.4964257073  

 RC-3でも、やはり問題が発生している科目相互には標準偏差に大きな開きがあることが確認できる。国語Aの標準偏差は国語Bの2.9倍あり、数学Bの標準偏差は数学Aの1.9倍あるから、細目別の標準偏差がないと全国レベルでの位置がわからない。データの標準偏差を公表してくれたら、ずいぶんと有益な情報となるだろう。すくなくとも、初等統計学的な問題はクリアできる。


<文科省と北海道教育委員会へのお願い>
  政治的な配慮から無理なことは重々承知しているが、それでも文科省と北海道教育委員会へお願いがある。全国の児童・生徒と保護者のために、そしてこの国の未来のために、各データの基本統計量を公開してもらいたい。

 基本統計量とは、
 
 ■ データ数
 ■ 合計値
 ■ 平均値
 ■ データの範囲
 ■ 中央値
 ■ 分散
 ■ 標準偏差

 以上の5項目である。

<よしなしこと>
 50歳前後の人たちは、中学3年生のときに統計を習っているから、意味がおわかりだろう。45歳以下の人たちは中学校で習っていないから、こうした初歩的な統計学の基礎知識がないかもしれない。
 高校「数C」には出てくるが高校生の80%は履修していないだろう。大学の教養課程で統計学を学んだ人には常識の範囲に属する。中学校で標準偏差と大学受験で広く使われている偏差値の概念とEXCELでの計算方法についてくらいは学習指導要領に入れていい。40年前には中学校の学習指導要領に入っていたのだから。

RC-2とRC-3については、その利用に二つの限界があること、そしてそれが極めて重大であることを初等統計学的に指摘しうるが、ほかのレーダチャートについては大きな問題がないように感じている。生活習慣のように、学力の全国順位に間接的に影響する項目は全国平均値を基準値とした比率データで不都合はなく、そのまま利用できる。各々のレーダチャートを取り上げたところでその有用性と利用の仕方について私見を述べたい。人物評価と同じで、欠点も長所もあるから、誤解のないように物をいうのはむずかしい。読んだ皆さんが、独断と偏見があると判断したら、コメント欄でその旨ご指摘いただければ幸いである。)

 小欲知足、けっして浮利を追い求めてはならぬ
 仕事は正直に誠実に、そして渾身の力でやるに限る




*#2529 根室市教委の仕事振り(3):「確かな学力向上に関する取組方針」 Dec. 15, 2013 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-12-15

 #2528 根室市教委の仕事ぶり(2):「全国学力・学習状況調査の結果報告」 Dec. 15, 2013 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-12-14-1

 #2527 根室市教委の仕事ぶり(1):教育に関する評価報告書 Dec. 14, 2013 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-12-14

 #2526 根室は学力テスト結果非公表 :学力向上の抵抗勢力は誰だ Dec. 13, 20
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-12-13

 #2500 11月7日 中学1・2年生 学力テストの結果  Nov. 17, 2013 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-11-17-1

 #2499 個別指導と戦略思考 Nov. 17, 2013 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-11-17

 #2498 中学校 英語授業進捗管理の実態 Nov. 16, 2013 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-11-16-3

 #2405 中学数学の先生たち、授業進度管理は大丈夫ですか?  Sep. 12, 2013 
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 #2093 教員の質向上はどうやる?⇒ "Educating educators" Sep. 25, 2012 
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