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#2325 次の原発事故のために(3):Tyroid cancer hits 12 kids in Fukushima: Jun. 8, 2013 [74.高校・大学生のためのJT記事]

 新聞記事を読んでも内容がいまいちよくわからないと思っていたら、ジャパンタイムズが6月6日の一面トップに「福島で甲状腺癌患者が12人」という見出しでわかりやすい記事(共同通信が配信)を載せてくれた。
 12の甲状腺癌と15名の甲状腺癌の疑いアリという診断が2011年度と2012年度の2年に渡ってどのように決定されたのか、数値と経緯が詳細に明らかになっている。診断アルゴリズムについては記事には解説がないので、ebisuが付け加える。
 高校生と大学生は原文をながめてから、後の解説を読んでほしい。原文を読むのが面倒な大人は、原文の後につけた解説へどうぞ。


6月6日付けジャパンタイムズ1面記事
http://www.japantimes.co.jp/news/2013/06/05/national/fukushima-survey-lists-12-confirmed-15-suspected-thyroid-cancer-cases/
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Thyroid cancer found in 12 minors in Fukushima

Kyodo

An ongoing study on the impact of radiation on Fukushima residents from the crippled atomic power plant has found 12 minors with confirmed thyroid cancer diagnoses, up from three in a report in February, with 15 other suspected cases, up from seven, researchers announced Wednesday.

(2)  The figures were taken from about 174,000 people aged 18 or younger whose initial thyroid screening results have been confirmed.

(3)  Researchers at Fukushima Medical University, which has been taking the leading role in the study, have said they do not believe the most recent cases are related to the nuclear crisis.

(4)  They point out that thyroid cancer cases were not found among children hit by the 1986 Chernobyl nuclear accident until four to five years later.

(5)  The prefecture’s thyroid screenings target 360,000 people who were aged 18 or younger when the March 2011 mega-quake and tsunami triggered the meltdown crisis at Tokyo Electric Power Co.’s Fukushima No. 1 nuclear plant.

(6)  The initial-phase checks looked at lumps and other possible thyroid cancer symptoms and categorized possible cases into four groups depending on the degree of seriousness. Those in the two most serious groups were picked for secondary exams.

(7)  In fiscal 2011, after confirming test results from about 40,000 minors, the prefecture sent 205 for secondary testing. Of the 205, seven were diagnosed with thyroid cancer, four came out with suspected cases, and another had surgery but the tumor was found to be benign.

(8)  In fiscal 2012, of about 134,000 minors with confirmed initial screening results, the prefecture sent 935 to secondary testing. Among them, five were confirmed with thyroid cancer, while there were 11 suspected cases.

(9)  In the Chernobyl catastrophe, thyroid cancer was reported in more than 6,000 children. The U.N. Scientific Committee attributed many of the cases to consumption of milk contaminated with radioactive iodine immediately after the crisis started.

(10)  Last month, U.N. scientists assessing the health impact of the Fukushima nuclear crisis said the radiation dose for residents in the region was much lower than Chernobyl and that they do not expect to see any increase in cancer in the future.

(11)  Among those aged 10 to 14 in Japan, thyroid cancer strikes about 1 to 2 in a million.



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【 解 説 】

(1) 未成年の甲状腺癌が12人と甲状腺癌が疑われるもの15症例が見つかっている。2月には3例だったから9症例増えたことになる。

 minors:未成年

(2) この数字は18歳以下(原発事故発生当時18歳以下=現在未成年)の17.4万人の甲状腺癌スクリーニング検査の結果確認されたものである。

 17.4万人の内訳は(7)と(8)をみるとわかる。2011年度に4万人、2012年度に13.4万人のスクリーニング検査(合計17.4万人)をしている。
 スクリーニング検査の後に確定診断がつく二次検査をやって確定診断を下すが、2011年度に7名の甲状腺癌と4人の甲状腺癌疑いアリがあきらかになり、2012年度に5人の甲状腺癌と11人の甲状腺癌の疑いアリが出た。合計甲状腺癌が12症例、甲状腺癌疑いアリが15名である。

  甲状腺癌の疑いアリという症例が案外多い。これは検査をやる技術者のスキルにも左右される。私は二十年ほど前に東北大学医学部出身の病理医T先生からパソコンに保存してある病理組織画像の中から百枚ほどピックアップして見せていただいたことがある。判断に迷う病理組織画像はたしかにあるが、たくさんの検体を診ることでスキルが上がり、癌なのかそうではないのか判断がつくようになるものであることを知った。検査する人間のスキルの差が診断結果に影響するのである。甲状腺癌の疑いアリの症例は細胞診検査のスキルの高い技術者がチェックすべきだろう。そうすると甲状腺癌の診断が何割か増えることが予測される。

(3) 福島医大の研究者がこの調査研究を指揮しており、これらの症例は福島原発事故によるものではないと述べている。

 この記事を書いた記者は、福島医大の調査研究者はこう言っているが、他には違うことを主張しているドクターがいるということを暗にほのめかしている。そもそも福島医大の原発事故放射能の健康被害に関する調査研究にはさまざまな批判があるので、それを踏まえた上でこの担当記者は記事を書いているのである。
 福島医大には原発事故による放射能の健康被害についての研究を取り仕切るために、長崎医大の山下俊一氏を予算増額というお土産をつけて副学長で送り込んだ。文科省は当初福島医大に調査研究を任せるのに不安があったのだろう。自衛隊のヘリコプターで赴任するという派手な登場のしかたであったが、本年4月1日付で長崎医大に復職した。その理由は明らかになっていないがさまざまな噂が流れている。
 調査研究方針については何も変わっていないようだから、福島医大は原子力村の村民と認められたようだ。チェルノブイリとは違って、福島第一原発事故による甲状腺癌増加の兆候はないという。その根拠は(4)で明らかになるが、この記事を書いた記者ばかりでなくebisuにも科学的な研究姿勢を欠いた戯言にしか聞こえない。

(4) 1986年のチェルノブイリ原発事故では、事故後4~5年で甲状腺癌が多発しており、それまで発生がないので、福島原発事故後2年で発生した12症例は原発事故とは関係がないというのがかれらの論拠である。

 この現象からは福島第一原発事故でチェルノブイリを上回る放射性ヨウ素が放出されたという仮説が成り立つが、国連科学委員会はその量をチェルノブイリの60分の1と前提している。
 原発3基が次々にメルトダウンを起こし大爆発しているのに、何の検証もなしにチェルノブイリの60分の1ということを前提に報告書を書く姿勢に驚かざるをえない。おそらく東京電力の資料に基いて計算したのだろう。
 メルトダウンした燃料が現在どういう状態になっているのかすら判明しておらず、MOX燃料を使っていた3号機にいたっては爆発の様相がまったく知らされていない。
 ビデオ映像で流れた限りではオレンジ色の閃光が走り、爆発直後に空から大きなコンクリートの塊がバラバラと落ちてくるのが認められたが、敷地内に降ってきたそれらのカタマリを除去したはずだが写真すら発表されていない。3号炉の爆発は他の原子炉建屋の爆発とはあきらかに様相が異なるのである。大きなコンクリートの塊は格納容器の上部だろう。
 MOX燃料を使用している原子炉格納容器が爆発で吹っ飛んだという前提で計算したら放出放射能の量はまったく異なるのではないか?それは2年で12名の未成年の甲状腺癌の発生とピタリと符合するのではないか、恐ろしい話しである。福島第一原発周辺の市町村はいま壮大な人体実験場と化している。

【福島では甲状腺癌の患者が速いペースで増えている可能性が・・・】(桜井ジャーナルより抜粋)
http://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/201306060000/
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 アーニー・ガンダーセンの『福島第一原発』によると、福島第1原発で漏洩した量はチェルノブイリ原発事故の2〜5倍に達する可能性があるという。甲状腺癌の発生が早くても不思議ではない。ということは、20年後、30年後には、ほかの癌や奇形だけでなく、心臓病や免疫の低下、脳神経への影響なども深刻な事態になるということだ。
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(5) 福島県はスクリーニング検査を原発事故当時18歳以下だった36万人に実施する。

 まだ、17.4万人分が終わったに過ぎない。このあと18.6万人のスクリーニング検査が行われなければならないから、想定される甲状腺癌は2倍になるのだろう。36万人の未成年のスクリーニングが完了するまであと2年かかりそうだ。
 原発からの距離や当時ふりそそいだ放射性ヨウ素の分布図を重ね合わせれば、もっと確かな推計ができるはずだから、爆発後3ヶ月間居住した地域の原発からの距離や36万人全体の甲状腺癌発症数の推計値を公表すべきだ。それらの推計値とスクリーニングや確定診断結果を付き合わせることで、いろんなことが明らかになるだろう。もちろん急いでとるべき対策もハッキリしてくる。
 そういうことをやらずに、データだけとっているのはなんとも不気味だ。何のためにやっているのだろう、まるで広島長崎の被曝直後に入ってきた駐留米軍の放射能被曝調査・研究のようだ。
 福島第一原発事故による放射能健康被害の全貌を国民には明らかにしたくないという強い意思が働いているように感じる。

(6) 第一段階はしこりを診ることや他の甲状腺癌の症状を診る、次いで重症の度合いに応じて四つのグループに分類し、重い症例2グループに二次検査を実施した。

(7) 2011年度には、4万人の未成年者の確認検査の後で205人分の検体を(検査機関へ)送った。そのうちの7人が甲状腺癌、4例が甲状腺癌の疑いアリと診断された。ほかに手術をした症例があるが、良性腫瘍だった。

(8) 2012年度、スクリーニング検査をした13.4万人の未成年者のうち福島県は935人分の検体を検査機関へ送って二次検査している。その中から5人が甲状腺癌、11人が甲状腺癌の疑いアリと診断されている。

 スクリーニング検査は首のところの触診と超音波検査だろう。福島県の未成年者43%から嚢胞や結節が見つかっている。これは超音波検査をしなければ判断がつかないから、スクリーニング検査は超音波検査ということだ。では二次検査はなんだろう、確定診断となっているから、細胞診検査だ。注射器で穿刺して結節部位の細胞を採取し顕微鏡で検査する。確定診断だから熟練技術の必要な検査である。

(9) チェルノブイリでは6000人以上の子どもたちが甲状腺癌を発症している。放射性ヨウ素で汚染された牛乳を飲んでいたからだ。

 福島県下の子どもたちは高濃度汚染された牛乳は飲んでいないだろう。しかし学校給食で汚染された農作物が供されている。放射能のチリを吸い込み今日も内部被曝を重ねている。肺に取り込まれた放射性物質は体外へ排出されないから、肺胞にくっついたまま放射能を出し続ける。

 ネットで検索したら、甲状腺癌の手術をした若い女の子の手術跡の写真がでてきた。きれいな白い首に真一文字に傷跡が残っていた。ウクライナやロシアやベラルーシュの医者の技術レベルは低いようだ。甲状腺専門病院が東京青山にあり、ここで手術をすると手術跡はほとんど残らない。伊藤病院である。わたしは三十数年前に前に手術をした人を見ている。甲状腺疾患患者は圧倒的に女性が多い。

(10) 先月(5月)、福島第一原発事故の健康への影響を評価作業をしている国連の科学者たちは福島第一原発周辺地域に住んでいる住民はチェルノブイリに比べて被曝放射線量が少ない、それゆえ将来癌が増える心配はないと語っている。

 彼らは福島第一原発事故で放出された放射能がチェルノブイリの60分の1という前提で結論を出している。
 原子炉3基が次々とメルトダウンを起こし、大爆発したにもかかわらず、チェルノブイリの60分の1しか放射性物質が放出されなかったというのである。日本側が提示したデータに基いてそう判断したのだろう。ほとんどが東京電力が提供してデータだ。これが、同規模だとしたら、あるいはチェルノブイリ以上の放射性ヨウ素が爆発で飛び散ったとしたら、結論はまったく異なるものになる。
 福島はチェルノブイリの拡大再生産になる。甲状腺癌の発症が1万人を超えるようなことに3年後になる可能性がある。
 放射能は遺伝子を傷害するから、奇形や遺伝子が傷害されることによって起きるあらゆる病気が引き起こされる。白血病、ダウン症、脊椎二分裂症、無脳症、あらゆるタイプの癌・・・

(11) 10~14歳の甲状腺癌の日本国内の罹患率は百万人に1~2人である。

 平成22年度の国勢調査データを検索して集計してみたら0~14歳の階層は1646万人(総人口1億2805万人)であるから、小児甲状腺癌は日本全国で16~32人という推計が成り立つ。福島県の0~14歳の人口は276,069人であるから、小児癌の自然発生数は0.27人ということになる。40倍もの甲状腺癌症例が出ているのにそれでもなお福島第一原発事故とは関係がないと主張するのはなぜ?甲状腺癌の疑いアリの症例を含めると100倍である。

 共同通信社の記者は最後の段落で杜撰な国連科学委員会の結論に強い疑義を呈している。
 日本の大手新聞記事は文科系の記者が書くせいか、数字の扱いが非常にルーズである。前回と前々回の記事のなかに引用があるので比べてお読みいただきたい。
 

  原子力規制委員会は原発から半径5km以内の地域住民に医師による説明をしたあとにヨード剤を配布し、副作用を監視するというガイドラインを最近作成した。しかし、地域住民の避難についてのガイドラインは示されていないから、相変わらず原子力規制委員会は原子力村の忠実な村民であるようだ。原子力規制委員会にはこれまで原発に反対してきた京大助教の小出氏のような物理学者を過半数を超えて任命すべきだ。そういう体制ならわたしたち国民は安心できる。

 放射性ヨウ素の半減期間は8日だから、原発事故後3ヶ月たてば放射性ヨウ素の残留量は2000分の1になる。子どもたちの緊急避難体制を確立しておくことが如何に大切かがこの数字からわかる。未成年者の甲状腺癌の大量発生は防ぐことができるのだ。12名の甲状腺癌、これから1万人を超えるかもしれない福島第一原発事故被災者の甲状腺癌は人災といわねばならぬ。

 放射性セシウムは半減期が30年と長い。百分の一になるのに百年かかるから、こどもたちを原発半径80kmから退避させるべきだろう。成長期の子どもたちや妊婦のお腹にいる胎児は細胞分裂が激しいから放射能への感受性が高く、細胞分裂時に遺伝子に瑕がつきやすいから、大人よりもずっと危ないのである。やさしい心を取り戻そう。


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*「【東電】の【お仕事】・・・【元・TEPCO下請け会社の平社員】はミタ!!」
http://tada-de-english.blog.so-net.ne.jp/2013-08-24

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 #2387 次の原発事故のために(8):トリチウムの問題 Aug. 29, 2013
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 #2390 サンマのI-131の濃度から放射能汚染水の大量流出は分かっていた Sep. 1, 2013 
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