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#2316 袋叩きの橋下大阪市長 :やるならトコトンやれ  May 31, 2013 [74.高校・大学生のためのJT記事]

 橋下大阪市長の問責決議案が賛成多数で可決されるかと思ったら、維新の会の松井幹事長から問責決議なら議会解散か出直し選挙だとすごまれて、問責決議案は否決されてしまった。橋下氏と維新の会はなかなか喧嘩の仕方がお上手である。問責決議をしようと思った与党(自民党)は完敗だった。

  橋下大阪市長(維新の会共同代表)は従軍慰安婦問題で発言(失言?)を続けて、韓国や中国ばかりでなく米国からも集中砲火のごとき非難を浴びている。それにもかかわらず、臆せず外人記者クラブで2時間半も自説を述べた点は褒めておきたい。
 しかし、不用意な点もある。2週間前にぶら下がり記者会見で突然はじまった慰安婦問題に関する彼の発言がどのような英語に翻訳されて伝わるのか、考えていたのだろうか?考えていなかったとしたら、幼すぎる。

 アドリブでのぶら下がり記者会見が橋下氏の得意技であるが、それが災いしたとみていいのだろう。従軍慰安婦問題はぶら下がり記者会見で論ずるべきテーマではなかった。石原慎太郎共同代表も論文を書けばいいと苦言ともとれる発言をしている。

 なぜ海外のメディアが騒ぐのか、その理由は発言がどのような英語に「翻訳」されて発信されたのかをみたらわかるだろうから具体例を拾ってみたい。

 最初は見出しの解説から。
 ヘッダー(見出し)の"looks to~"は「~するように見える」ということ。lookは外見がそう見えるというのが本来の意味である。だから、「橋下氏は性奴隷非難をそらそうとしているようにみえる」ということ。集まった海外の記者たちの目には言い逃れをするような小ズルイ人間に映っている(look)ので、そうした記者の印象を伝える単語が選択されている。

「彼が心の中でどう思っているかは別にして、その行動や発言からは非難をそらそうとしているようにしかみえぬ」
というのが、ジャパンタイムズの見出しを書いた人の伝えたかったイメージ。lookという単語の選択にはにはそうした思いが込められている。

 言語というものは書き手が頭の中に抱いたイメージをその人の語彙の中から特定の単語を選び出して、その言語のルールに従って配列し伝えるもの。したがって、受け手が同じイメージを頭の中に描けたらそれで伝わったことになる。受け取ったA言語でのイメージを他の言語Bで表現(翻訳)するのは、B言語の作文センスの領域に属する。
 原文のニュアンスを伝えようとすればするほど、翻訳文は解説的たらざるをえず長くなる傾向がある。

 この記事の解説を載せている面白いサイトを見つけた。見出しで使われているlookの解釈が少し異なるが小さなことは気にしない、面白いからお読みいただきたい。
*「社会人のための英語回路構築トレーニング自習帖」
http://www.eigo-akahige.com/
http://www.eigo-akahige.com/archives/1779768.html

 個々の単語の解説はそちらをお読みいただくとして、どのような英語に翻訳されているのかをいくつか拾って解説してみたい。

(1)より
the world should also address similar human rights violations against females in other conflict zones

 これは橋下氏の発言部分である。「他の紛争地域でなされている女性に対する類似の人権侵害にも言及すべきだ」
 
 彼は戦場で兵士によるレイプや兵士相手のビジネスベースの管理売春と軍隊が間接的に関与した売春宿(慰安所)を同一の女性に対する人権侵害事象とみなしているのだが、無理がある。
 ビジネスベースの売春宿を兵士個人が利用するしないは、個人のモラルの問題ではあっても、政府や軍隊組織の問題ではないという形式論理をもち出されたら無力である。そうした形式論理を打ち砕く用意がなくてはならないが、2時間半を費やしてもそうした発言がなかったようだ。
 米軍兵士のフーゾクの利用を沖縄米軍司令官に勧めたのは個人ベースのフーゾク施設利用と組織がらみの利用を混同しているからではないのか?こういう発言を繰り返すと非常識な人間だと受け取られる。事が重大だから問題の整理をきちんとしたほうがいい。
 
(2)から
the firestorm he sparked with his earlier remarks that the comfort women system was “necessary” during the war, using the Japanese euphemism for the system of sexual servitude involving women and girls forced to work in military brothels.
 
the comfort women system :従軍慰安婦制度
the Japanese euphemism for the system of sexual servitude:セックス強制労働システムでは露骨すぎるので日本語による婉曲表現(が慰安婦制度)
women and girls forced to work in military brothels:婦女子が軍の(が管轄する)売春宿で働くことを余儀なくされた

brothel:a place where men go and pay to have sex with prostitutes (CALDより)
「男達が売春婦とセックスするために行き、お金を支払うところ=(売春宿)」

 従軍慰安婦は「性奴隷」や「売春宿」と同義であり、それに軍隊や政府が直接的・間接的に関与していることが問題なのである。従軍慰安婦とか慰安所というあいまいな日本語を使っているが、英語になったときにはそうしたあいまいさが剥ぎ取られて、直截的な物言いになっていることは承知しておくべきだ。


(9)  Given the harsh conditions there and lack of freedom, media and scholars have described the victims as sex slaves.

そこ(慰安所)では過酷な(労働)条件の下で自由を欠いていた、メデイアや学者は(そうした自由のない状態で働かされていた彼女達を)性奴隷の被害者として描いている。」


(13)  Scholars say, for example, that Nazi Germany had a similar brothel system during the war, and many U.S. soldiers used brothels prepared by the Japanese government specifically for the Allied Occupation forces.

「複数の学者が次のように主張している。たとえば、ナチスドイツには戦時中に似たような売春宿のシステムがあったし、占領軍にために日本政府が特別に用意した売春宿を多くの米兵が利用した」

(16)  But Hashimoto, apparently trying to distance himself from them, repeatedly argued Japan should issue a straightforward apology for the misery of the comfort women now, saying the Japanese army and government “did (get) involved” in running and managing brothels.

「日本軍と政府は慰安所の運営と管理に関与していたと橋下氏は述べている」

 橋下氏自身が売春宿(慰安所)の運営と管理に日本軍と政府が関与していたと述べている。学者はそういうことを軍隊や政府がやったのは、日本とナチスドイツだけだと言っている、だから日本は特殊な例外と指弾されているのである。
 戦勝国兵士による婦女子のレイプを防ぐために慰安所が必要だったと主張するしかないのだろうが、そこまではっきりいう覚悟をもってからこの問題に発言すべきなのだろう。
 強制連行が事実かどうかは証言者が生きているうちに調べればいい。多くは「日本軍の兵士の月給が10円の時代に300円の新聞広告」に応募した人たちか、斡旋業者に集められた人たちである。喰うにも困る時代のこと、日本だって飢饉で農村の娘達が売られていくということがあった。1936年(昭和11年)の2.26事件はそういう時代背景から起きている。自分たちのふるさとに育った女の子たちが食うために売られていくという状況に対する義憤があったことは朝鮮だって日本だって同じだろう。そういう現実も義憤もその時代状況の中で考えるべきだ。いまの時代感覚で批判するのは無理がある。


 橋下大阪市長(日本維新の会共同代表)の発した言葉が具体例で引いたような英語に翻訳されて世界中に伝えられている。日本人の受け止め方とはずいぶんとニュアンスが異なる。文化の相違も影響が大きい。海外への発信は文化の違いを意識しなくてはいけない。
 売春宿の運営や管理に軍隊や政府が関与したことが問われているのだが、橋下氏は理解できていないように見える。戦時中の兵士による市民の大量殺人やレイプが問題になることはあるが、それは世界各地でなされてきたことである。軍隊や政府が組織的に売春宿の運営や管理にかかわったことが世界中から異常にみられていることに気がつくべきだ。
 その上で、なぜ政府や軍隊が間接的に関与する必要があったのかを堂々と言えばいい。これがなかったときにどういう状態になっていたのかを仮定するだけで理由の正当性を主張できる。
 むごい話しだがもっと大きなむごい話しをしなくてすむような手段であったという見方もあるだろう。お金が目当てで飛び込んだ婦女子も少なくなかっただろう。そういう職業はいまだって世界中にある。
 本当のところは、軍隊の規律維持のため、占領地の市民のレイプを減らすための措置でもあったのだが、そうした配慮をした軍隊や政府はこの記事を読む限りでは、ナチスドイツと日本以外にはなかったということになる。
 戦時中の韓国では、日本軍人の給与の30倍もの高給での慰安婦募集広告の記録が残っている。これは日本軍が出したものではない、斡旋業者がいくつもあったことは事実だ。また、女性に支払われた報酬も当時の経済事情を考えると法外である。このような高給を提示したら食べるのに窮していた時代だからいくらでも集まっただろう。当時の朝鮮、大韓帝国は日本よりずっと貧乏だったのである。

 昭和30年代の初めころまではセックスに関する考え方、風俗がいまとはまるで異なっていたことも考慮する必要がある。日本と朝鮮は古代から兄弟姉妹のようなもの、こうした風俗に関することも共通部分が多かったのではないだろうか。
 ピントこないだろうから盆踊りと日本古典文学を挙げておこう。盆踊りは年に一度の乱交の場だった、そういうおおらかな性風俗を庶民が伝えてきた日本はキリスト教国とはかなり異質な性風俗の伝統を有している。
 日本の古典文学はおおらかな恋愛(=セックス)話で溢れている。年頃になれば経済的な後ろ盾を求めて、誰かの世話になるというのは当たり前のことだった。『源氏物語』には貴族の恋愛だけでなく、その使用人たちがおおらかに睦みあうシーンがいくつか書き込まれている。
 いずれにしろ風俗や文化論にまで入り込むややこしい話しだから、慰安婦問題を取り上げたいのなら、本を一冊書いて意見を公表したらいい。橋下氏は公人としての立場を省みるべきだろう。

 ものごとには限度というものがある。ぶら下がり記者会見で話題にしていいものと、ダメなものがある。限界がわかっただろうから、これからは何でもかんでもぶら下がり記者会見で応えるのはやめにしたらいい。弁舌がたくみな者は己の弁舌には細心の注意を払うべきだ。得意技にこそ大きなリスクが潜んでいることを知るべきだ。
 だが、慰安婦問題はトコトンやってみたらいい、孤立を恐れるな、怯むな、たとえ世界中の世論を敵に回しても果敢に戦え。
 いわゆる「歴史認識」と「慰安婦問題」は事実確認をしたあと、どういう視角で歴史的事実をとらえるのかで、見える光景や個々の事象の意味が違ってくる。

(追記:安倍政権は従来の歴史認識を踏襲するというコメントを6月1日に出した。政権奪取前は従軍慰安婦問題は「強制連行の証拠がない」と言っていたのに・・・あ~ぁ、周りを見ながらその都度言を変えるあさましさ・・・、安倍氏はすたこら逃げ出したが、きつい状況になったときにこそ人間の真価がでるもの。)

【参考英文記事】5月28日付けジャパンタイムズ1面トップから
http://www.japantimes.co.jp/news/2013/05/28/national/hashimoto-looks-to-deflect-sex-slave-blame/
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Hashimoto looks to deflect sex slave blame

Besieged mayor blasts press, says other armies also abused females

by Reiji Yoshida

Staff Writer

(1)  Japan’s wartime “comfort women” military brothel system can never be “condoned” or “justified” but the world should also address similar human rights violations against females in other conflict zones, Osaka Mayor Toru Hashimoto argued Monday in front of foreign reporters.

(2)  Hashimoto, co-leader of Nippon Ishin no Kai (Japan Restoration Party), held the press conference to salvage his and his party’s fortunes amid the firestorm he sparked with his earlier remarks that the comfort women system was “necessary” during the war, using the Japanese euphemism for the system of sexual servitude involving women and girls forced to work in military brothels.

(3)  “I never condoned the use of comfort women. I place the greatest importance on the dignity of the human rights of women,” Hashimoto said in a marathon speech at the Foreign Correspondents’ Club of Japan in Chiyoda Ward, Tokyo.

(4)  Hashimoto blamed the media for using only excerpts of his remarks at a daily press briefing earlier this month and taking his words out of context when they issued reports worldwide that “resulted in misunderstanding of the remarks,” something he called “extremely regrettable.”

(5)  Facing a 300-plus-strong foreign, domestic and freelance journalist contingent, Hashimoto did not apologize for his earlier remarks that the “comfort women (system) was necessary in order to provide relaxation for those brave soldiers who had been in the line of fire.”

(6)  He insisted he didn’t mean to say that he considered it necessary for the armed forces to use women, but that the forces believed this was necessary.

(7)  Hashimoto meanwhile admitted the Imperial Japanese Army and administrative authorities had a “certain involvement” in running the wartime “comfort stations” in the 1930s and ’40s.

(8)  He also said the army and government should be held responsible for the misery suffered by the females forced to provide sex at the brothels.

(9)  Given the harsh conditions there and lack of freedom, media and scholars have described the victims as sex slaves.

(10)  Hashimoto argued the world should not single out just Japan or associate only this country with the simple shorthand that it exploited “sex slaves.”

(11)  Females were sexually violated during World War II by U.S., British, French, German and Soviet soldiers, including women serving in “private-sector brothels,” where many females were presumably abductees or human trafficking victims, Hashimoto argued.

(12)  Hashimoto appeared to be trying to deflect the harsh global spotlight cast on Japan’s comfort women system by insisting the forces of other parts of the world also engaged in sex-related crimes and used brothels.

(13)  Scholars say, for example, that Nazi Germany had a similar brothel system during the war, and many U.S. soldiers used brothels prepared by the Japanese government specifically for the Allied Occupation forces.

(14)  “Japan’s system was bad. But use of private (brothels) was similarly bad, because in such private-sector facilities, too, human trafficking (was) taking place,” Hashimoto claimed.

(15)  Many right-leaning Japanese politicians and scholars often try to play down the culpability of the Imperial army and the government in running the comfort stations, arguing that private brokers were the ones who “recruited” the females via various ways, including human trafficking and possibly kidnapping.

(16)  But Hashimoto, apparently trying to distance himself from them, repeatedly argued Japan should issue a straightforward apology for the misery of the comfort women now, saying the Japanese army and government “did (get) involved” in running and managing brothels.

(17)  Hashimoto also retracted and apologized for his earlier recommendation that U.S. service members in Okinawa make use of sex establishments to prevent sexual crimes in the prefecture.

(18)  “I understand that my remark could be construed as an insult to the U.S. forces and to the American people, and therefore was inappropriate,” he said. Whether Monday’s briefing helps reboot the popularity of Hashimoto and his party remains uncertain.



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 ここには取り上げられていないが、沖縄米軍を訪問した際の発言はさらにきわどい。これは日本語としてもペケだろう。
「もっとフーゾクを利用してほしい」
これを橋下氏は「風営法のいうところの風俗産業のことを言った、合法的なものであって(売春のような)非合法なものをいったのではない」と軌道修正しているが、これは詭弁である。
 日本人が「フーゾク」というとき、風営法でいうところの風俗産業のことをいっている人はいないだろう。風営法は飲食店やパチンコ店が含まれている。これらはいわゆる「フーゾク」ではない。日本人が「フーゾク」と言えば、それは売春あるいは性的サービスをする営業形態をさすから、沖縄での米軍司令官への要請を新聞報道は正しく伝えたことになる。オフィシャルな訪問なのに橋下氏は発言に公人としての自覚と思慮が足りなかった。

【高校生や大学生そして若い大人たちへ】
 日本の古典文学をたくさん読もう。行間を読み、いまとはまるで異なる日本の伝統的性風俗はきちんと知っておいたほうがいい。興味のある人は、民俗学の本も読むといい。日本人のおおらかさにびっくり仰天、面白い、楽しい。
 セックスは豊穣と結びつくから神事と関わりが深い、エッチなことであると同時に神聖でもあるのが日本人のセックス観の根底にあるのだろう。天岩戸の故事にもそのおおらかさが現れている。太陽が隠れてしまって人間たちが困る。神に岩戸を開けさせるために巫女がしたことに、日本人なら腹を抱えて笑えるだろう。だから、そうした人間の楽しいそうな騒ぎが気になって天岩戸から太陽神が再び顔を出す。神聖なことだから、レイプはできるだけ減らしたい、そのために智慧を絞る。人が人を愛し心の底から喜べる神聖な行為がそれ。


*#2396 ヨーロッパと米国の性風俗事情(ジャパンタイムズ記事より) Sep. 4, 2013
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-09-05#favorite
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従軍慰安婦は"sex slave"と訳されて国際的な批判を浴びているが、それは歴史的事実と違っており、"sex worker"と訳すのが正しい。
 二つの記事にもsexをビジネスとして営む"sex worker"はでてくるが、彼女達は"sex slave"ではない。この二つの違いは欧米人から見ると決定的な違いなのである。そして、従軍慰安婦問題には重大な歴史的事実誤認があること、朝日新聞の誤報道がきっかけで始まったことをその経緯とともに黄文雄著『韓国人に伝えたい 日本と韓国の本当の歴史』から抜粋・引用して紹介する。
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