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#1141 ブカツ指導について Aug. 1, 2010 [57. 塾長の教育論]

 久々の塾長の教育論、採り上げるテーマは「ブカツ指導」である。

 根室の小中学校はブカツがとても盛んである。そして普段でも6時半までのところが多く、休日ともなると「ニブレン」と称して5時間のトレーニングに励む。
 時間がやたら長い。長時間のブカツが意味のない、副作用の大きなものであることに、指導している人たちがまったく気がついていないように見える。論議の材料を投げるから、一度冷静に考えてもらいたい。
 反論の自由は保障するので、異論のある人はコメント欄へ書きこまれよ。

 昨夜書いたブログ#1140で柏陵中学校の吹奏楽部の金賞受賞と全道大会出場を伝えた。彼女たちが急成長したのは、いたずらに長い時間を費やしたからではない。技術が上の市民バンドや自衛隊のバンドに教えを請うたからだろう。彼女たちは習ったとおりに練習を繰り返して技術を修得した。自信に満ちた声で「先生、金賞とってくるからね」と三人がそれぞれに言い切った。技術が上がったことを実感できたからこそ言いえたのだろう。裏付けのある自信は好結果を生む。

 昔の話である。根室高校に明大ラグビー部で選手をしていた先生が赴任してきた。チャンスと思った生徒数人がラグビー同好会をつくった。もちろん当時私も協力した。1年の同好会活動のあとすぐにクラブに昇格させてやると友人に約束してけしかけた。そしてその通りに実行した。
 顧問となったM先生(あだ名は「ドモヤス」(テレビの人気番組からの命名)、新卒で赴任してきたいい先生だった)は明大のメニューを高校生の体力に合わせてほとんどそのままやったのだろう。またたくまに強豪校へ駆け上ってしまった。大学ラグビー強豪校の選手経験者がブカツ顧問になるとあっという間に強いチームが出来上がる。

 では、中学時代しかブカツ経験のない者が中学のブカツを指導するとどうなるか。技術的には生徒とドングリの背比べの域を出ない。頭の使い方を知らない顧問がいい成果を出そうとすれば、長時間練習させるしか手がない。これは指導理論を無視したあきれた指導法で、「指導」とすらいえない代物だろう。根室のブカツの実態はほとんどがこれ。やった経験のないブカツ顧問を引き受けて途方にくれている顧問もいるだろう。

【ブカツ後遺症は社会人になってから出る】
 長時間の効果の低い練習は後遺症がある。社会人になっても、困ると効果のほとんどないトレーニングをしようとする。ただ意味なく頑張るだけ。しかも効果はない。
 頭を使わないトレーニングを繰り返したために、それが習慣になって、しまいには個人の性格にまでなってしまったからだ。
 こういう人間ばかりを社員で雇った会社は伸びないどころか、民間会社なら早晩つぶれる。民間会社では要らない人材である。
 なんということだろう、一生懸命にやった結果がとんでもないことになる。毎日繰り返すことをおろそかにしてはいけない。それが習慣になり性格を創りあげてしまうからだ。タバコを考えても悪い生活習慣をやめることはなかなかできないものだ。ましてや性格にまでなったものを変えることはほとんど不可能である。よほどのきっかけやショックがない限り改めることができない。

【経験のない先生にできること】
 高校、大学でのブカツの経験のない先生が顧問をするとできることは限られる。自分で技術指導できなければ外部の指導者との交流機会をつくることだ。柏陵中吹奏楽部がやったように。市民バンドや自衛隊のバンドとの交流機会をセッティングすればいい。彼らが短い時間で効果的な技術指導をしてくれる。あとは指導されたとおりに、熱心に繰り返し練習をすれば、演奏技術は上がる。
 根高女子バレー部が小樽へ合宿に行く。全道から10校100人余が集まり、試合やバレー教室を開くという。根室からは部員7名の参加だ。普段は2チームに分かれて試合形式の練習すらできない。生徒数減小は高校のブカツにも影響している(小中学校はもっと深刻だから市教委は学校統廃合を急ぐべきだ)。
 先輩の誰が企画して始めたのか、あるいは顧問の先生の企画だろうか?おそらく効果が高い。
 運動や演奏はきちんとした指導理論で導けば、思春期=成長期の子供たちの能力は飛躍的に伸びる。大人はそういう機会を提供すればいい。経験のないブカツを担当する先生に求められているのはマネジメント能力である。それだけでも立派な指導者として十分やっていける
 優秀な先生は経験がなくても、マネジメントをしっかりやり、短い時間で子供たちの能力を適確に伸ばす。そういう指導法を経験した子供たちは、頭を使ってマネジメントすることの大切さを自然に身につけてしまうだろう。大人になっても何か格段に飛躍する必要のあるときには、ブカツの経験が役に立つことになる。優秀な管理職や役員あるいは経営者に育つ。
 経験のない先生だからこそ工夫の余地が生まれる。その工夫を通して子供たちに伝えられることがある。仕事のマネジメントの大切さを身をもって教えられるだろう。先生のそういう後姿から子供たちは多くのことを学ぶだろう。

【指導理論と技術】
 指導理論や指導技術は選手経験のある者ならだれでもあるわけではない。まったく別だ。そういうことを意識してトレーニングしてきた小数の選手は独自のトレーニング理論をもっているものだ。3年間そういう人がブカツ顧問を担当すると子供たちの技術は飛躍的に高まる。全道でトップレベルなどオチャノコサイサイだろう。
 わたしはビリヤードのキャロムゲームに関しては国内トッププロの指導技術を知っている。もし、ビリヤードの国体があると仮定すれば、わたしは3年で国体出場チームを育てることができる。生徒の素質もあるから、素質のよい生徒に恵まれれば5年で全国優勝を狙えるチームに鍛え上げることができるだろう。
 世界アーティスティック・ビリヤード銀メダルの町田正を育てたお父さんに少しの間、セミプロクラスのトレーニングをしてもらったことがある。スリークッション・世界チャンピオンの小林先生にもノートに図面を描いて、疑問だった点をいくつか教えていただいた。昭和天皇のビリヤード・コーチだった吉岡先生の技術も目の前で何度も見る機会があった。
 町田先生や小林先生に教えていただいたことをまとめた研究ノートがある。町田先生のトレーニングメニューは非常にすぐれたものだ。これらをまとめたトレーニング・ノートにある通り練習を積めばアマチュア・チャンピオンクラスの技術は修得できるだろう。

【効果の薄いトレーニングの後遺症は大】
 運動の指導は指導理論の裏付けと経験がモノをいう世界だ。3年あれば結果は天と地ほども差が出る。むやみに長時間効果の薄いトレーニングを経験した生徒たちは、社会人になっても同じコトを繰り返す。仕事でそういうことを無意識にやってしまう。長時間のサービス残業を強要するような管理職、役員、経営者に見事に育つのである
 指導理論がわからないとか、経験がないときは外部の指導者を利用すればいい。無理をしてはいけない。技術が格段に上のグループとの交流機会をセッティングすればいい。それがブカツのマネジメントというものだ

 重要なことだから繰り返そう。ブカツ顧問の先生たちは、生徒にやたら長時間のトレーニングを強いてはいけない。そんなことをブカツで繰り返したらしたら、習慣となり、性格になってしまう。それは「教育」でもないし「指導」でもない。悪習慣を植え付けただけの結果に終わる。社会人になってからとんでもない後遺症が現れることまでよく考えてほしい

【余談】
 実は勉強の仕方にも似たようなことが言える。頭を使わない覚えるだけの受験勉強、パターン学習に過度に傾いた学習法は、悪習慣を植え付けるレベルの低いブカツよりもひどい後遺症が社会人になってから現れる。受験に成功した者ほど、そして「発症」が遅い者ほど重症となり、ときに精神疾患や自殺を引き起こしてしまう。
 短いスパンでしか生徒を見ていないとこうした傾向に気がつくことはない。つまり学校の先生のほとんどがこうしたことに気がついていない。予告編?いや、このテーマについては何度か書いている。
 ニムオロ塾ではこうした後遺症のでない勉強の仕方をさせている。ナマ授業、対話重視の指導にこだわるのはこうした後遺症を防ぐためである。手軽で便利なツールを使う指導法ほど危うい。格好をつけて言えば「企業戦士」としての二十数年の経験からの結論である。

*当ブログデータ
 7月末(979日)、累計アクセス数367,220、7月アクセス数28,687。


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ZAPPER

Jリーガーへの道を蹴ってお笑い芸人の道を選んだペナルティーのワッキーによると、
「その学校のサッカー部はそれはもう悲惨な状態でした。名古屋の洗練されたクラブチームのサッカーとはほど遠い、上下関係のとても厳しいスポ根サッカーをやっていました。訳のわからない伝統の後輩いじめの行事が頻繁に行われ、サッカーの練習とはまったく関係のない無駄な時間と神経を使う毎日でした」
とのことです。
その学校とは釧路の某中学校であります。この地の部活の指導者にぜひとも読んでいただきたいものです。
http://nobuchan.blog.shinobi.jp/Entry/3/
by ZAPPER (2010-08-02 09:09) 

ebisu

ZAPPERさん、「四方丸儲け」いい小話でした。

ブカツは担当する先生やそれを管轄する教育行政それぞれに言い分があるでしょう。
皆聞いてみたいものです。
一度、二度、三度とワイワイガヤガヤやりあえば、合意点が見出せる性質の問題です。

さて、釧路や根室のブカツを指導されている先生たちがやり方を変えてみる勇気をもてるかどうか。

私たちができることは具体的な情報を発信することのみ。
皆に考えてもらいましょう。
現場の先生たちの判断や教育行政の仕事です。

by ebisu (2010-08-02 22:38) 

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