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First farms may have averted ice age (2) #766 Oct.21, 2009 [18. global warming]

《生成文法的アプローチ:チョムスキーとデカルト》
 First farms may have averted ice age

 Rise in greenhouse gases coincided with agriculture; cooling trend halted
 David A. Farhenthold

   Has climate change been around as long as the pyramids? It is an odd-sounding idea, because the problem is usually assumed to be a modern one, the product of a world created by the Industrial Revolution and powered by high-polluting fossile fuels.
   But a professor emeritus at the University od Verginia has suggested that people began altering the climate thousands of years ago as primitive farmers burnes forests and build rice paddies from which methane bubbles. The practices produced enough greenhouse gases, he says, to warm the world by half a degree Celsius or more.
   Othe scientist, houwever, have said the idea is deeply flawed and might be used to dampenmodern alarms over climate change.
   Understanding the debate requires a tour through polar ice sheets, the farming habits of 5000-year-old Europeans and trapped air bubles more ancient than Rome.

  1000年単位でCO2やメタン濃度、土地利用率、地球人口がどのように変化したのか、過去12000年間の推移を表すグラフが載っている。説明文だけ紹介しておく。

"Atricultural impact, then and now"
"A university of Vieginia scientist theorizes that slash-and burn farming methods began reversing carbon dioxicide trends more than 8,000 years ago, that rice farming boosted methane releases."

 さて、意味の通る日本語になっただろうか?
 2回目の今日はアンダーラインの文章で遊びながら、最初の文に日本語訳をつけてみたい。こういうときの手順を高校生にもわかりやすいように開示する。
 <1.肯定文に変換する>
  (1)Climate dhange has been around as long as the pyramids.

 <2.二つのsimple sentencesに分解する>
  (2) Climate change has been long.
   (3) The pyramids have been long.

  <3.現在完了を現在形に直す>
   (4) Climate change is long.(気候変動は長い)
   (5) The pyramids are long.(ピラミッドは長い)

  <4.二つの文を同等比較でつなぐ>
  (6) Climate change is as long as the pyramids (are long).
    (気候変動はピラミッドと同じくらい長い)
 <5.現在完了の文に変換する>
  (7) Climate change has been as long as the pyramids.
   (現在まで続いている気候変動はピラミッドと同じくらい歴史的に長い)

  <6."aroundおおよそ"を入れる>
  (8) Climate change has been around as long as pyramids.
   (現在まで続く気候変動はおおよそピラミッドほどの歴史がある)
   ここにaroundを入れたのは、ピラミッドの建設時期が不明だからだろうか。クフのピラミッドは4500年前に建造されたという説と、ピラミッドの形に現された数値と構造と星座の関係から10000年ほども前に建造されたという説がある。はっきりしないのである。筆者はおそらくそのあたりを斟酌してaroundを挟んだのだろうか。それとも4500年前という説を採用し、8000年前の焼き畑農業や5000年前の水田耕作による稲作との時間比較のラフさを補完するためにaroundという語を入れたのだろうか。その辺りの解釈はいかようにも可能だから、読み手の勝手である。

   <7.疑問変換する>
  (9) Has climate change has been around as long as pyramids?
  これで、元の文が復元できた。

  日本語訳:
  現在まで続く気候変動はおおよそピラミッドほどの歴史があるのだろうか?そのような問は奇妙に聞こえるかもしれない、というのはこの厄介な問題は大方は現代的な問題であるという前提で取り扱われているからである。(すなわち)それは18世紀産業革命によって作り出された世界の産物であり、化石燃料の大量消費による汚染によって動力を与えられた世界の産物であるからである。

《生成文法的アプローチ:チョムスキーとデカルト》
 意味は分解した深層構造deep structure = simple sentencesにあるから、意味がわからなければ「下向」=分解してみることだ。そして表層構造surface structureまで「上向の旅」をすればいい。
 採り上げた文章は文法工程指数はあまり高くはないものである。しかし、一般に文法工程指数が高くなればなるほど、文章の密度が大きくなり、表層構造は理解しがたくなるという事実はある。
 生成文法によれば文章の意味は深層構造にある。わたしたちは最初の文を深層構造にまで分解して解釈を試みた。最初の文はこれで終わりである。ここさえきちんとつかめば後の文章の理解は簡単だ。
 これは生成文法的なアプローチである。他にもアプローチの仕方はある。生成文法的手続きを厳密にやると煩瑣でわずらわしい。英文の意味を解釈するだけなら、目的を外さない範囲で簡便に用いることだ。
 元々はチョムスキーの普遍文法が源泉であるが、その著作はほとんど翻訳がない。人工知能や自動翻訳にも利用されている理論であるが、複数の言語に関する知識とコンピュータに関する知識の両方がないと読むのはたいへんだ。だから、翻訳者がなかなか現れないのだろうと推察する。
 デカルトは『方法序説』の中で科学の方法論に関する興味深い四つの規則を提唱している。この規則は生成文法と組み合わせることで英文解釈の武器となる。
 「第2は、わたくしが検討する難問の一つ一つを、できるだけ多くの、しかも問題をよりよく解くために必要なだけの小部分に分解すること」
 「第3は、わたしの思考を順序に従って導くこと。そこでは、もっとも単純で最も認識しやすいものから始めて、少しずつ、階段を昇るようにして、もっとも複雑なものの認識にまで昇っていき、自然のままでは互いに前後の順序がつかないものの間にさえも順序を想定して進むこと」

 哲学的には、「還元論」である。その適用範囲を間違えない限り、実に有効な方法だ。ニュートン力学がある範囲内で有効であるのと類似した意味で有効である。
 中高生が数学の問題を解く場合にも応用できるし、ひとつの経済学体系をつくる場合ですら指針になりうる。マルクスの『資本論』はユークリッドの『原論』に似た厳密なる演繹的体系といえるが、デカルトの方法論(2)と(3)に忠実であるとも言える。

《その他雑感》
 "world"はひとつだから"the world"、"the sun"や"the moon"、"the earth"と同じで必ず定冠詞のtheがつくと習った生徒は多いだろう。
 だから、"a world"という所も注意したい。"the world"とはなっていない。書き手が18世紀以降の世界を一塊のものとして捉えているから"a world"となっている。18世紀後半に始まった産業革命や重工業主体の20世紀第2次産業革命、自動車の普及やたくさんの火力発電所の稼動等によって大量に化石燃料が消費され、大気中にCO2が放出された、そういう世界をまとめてひとつの「世界」としてそれ以前の世界に対置して考えているから、"a world"となっている。
 ついでにもうすこしこの問題を敷衍しておきたい。高校生はwaterは物質名詞だから複数形はないと教えられただろう。しかしwatersはある。日本の経済水域、ロシアの経済水域と言うときの水域という言葉はwatersで表現される。
 要は話し手や書き手がどのような状態を頭の中で想像しているかで決まってくるのだ。定冠詞や不定冠詞、複数形はそれぞれに意味が違う。頭の中に想像していることを伝える手段が言語である。形が違えば意味が異なるのだ。伝えたいことは無限だから、どんな形もあるのだ。
 学校文法は役に立つが、あるところからはそれから離れないと高度な文章は読めない。会話が少々できたくらいで高度な文章が読めるはずがないことは日本語も英語も変わらないのだ。だから、高校生は岩波新書や中公新書レベルの本を20冊は読んで欲しい。できればもっと難解な哲学書や専門書にもチャレンジして読解力をつけて欲しい。
 中身の濃い文章は、それを読むトレーニングなしには意味を正しく読み取ることができない。私が会話重視の英語教育を危ぶむ理由のひとつはこういうことにある。ネイティブの中学生ぐらいの会話能力が大半の日本人にほんとうに必要なのだろうか?
 仕事で必要だった英語は短時間で大量の文書を読み、専門的な観点から要点を誤りなく抜き出して適切な判断をし、速やかに処理することだった。そういう観点からわたしは英語を教えている。

 話しを元に戻そう。筆者は人類が焼き畑農業を始める前までをひとつの世界として捉え、稲作農業が盛んになった時代をもう一つの世界と考えているようだ。そして産業革命以後の世界をそれらに対置したからa worldという表現を使うことになった。
 この假説の提唱者であるウィリアム・ラディマンによれば、12000年前から8000年前までの4000年間はCO2濃度が低下して地球は寒冷化に向かっていた。極地の氷床に閉じ込められている「泡」の分析から二酸化炭素濃度を析出してその推移をグラフにし、線形回帰分析をしたのだろう。そのままだったら氷河期が来ていたはずだというのである。
 ところがおおよそ8000年位前からいくつかの地域で焼き畑農業が行われるようになり、大気中のCO2濃度が上昇しだした。その後、中国で5000年ほど前から稲作が行われ、水田から大量のメタンガスが放出され、大気中のメタン濃度が上がった。いまでは大気中のメタン濃度は5000年前の3.1倍になっている。メタンの温室効果はCO2の24倍ある。
 そして産業革命と20世紀の化石燃料大量消費によってさらに加速的に大気中のCO2が増えた。
 8000年間のCO2濃度とメタン濃度の上昇から、地球は温暖化している可能性があるという假説である。もちろん、この假説を「面白いけれど、たぶんちがっている」と否定する科学者もいる。有力な新仮説登場で、ホットな温暖化論争になっているのである。

《ジャパン・タイムズを利用する時事英語授業》
 着想がユニークで面白い記事なので、最近時事英語授業で扱った。科学的な論争に慣れておくと、一つの説を相対的に眺めることができるようになる。
 相対的なものの見方に慣れてくると、オウム真理教の信者や他のカルト、そして新興宗教に見られるように、一つの説を絶対視して他の説に非寛容になるとか、他の説を知ろうともしないかたくなな態度に陥ることがない。若い時代にさまざまな本を読むことは、これから出現するかもしれない「新型インフルエンザ=排他的な新興宗教」に対する「ワクチン=予防薬」の役割を果たしてくれることが期待できる。
 わたしは自分の生徒たちがオウムの信者たちのようになることを望まない。だから、地球温暖化に関する論争を含むさまざまな論争や経済などの解説記事を時事英語の授業のテキストに採り上げて相対的なものの見方を実践的に鍛えるトレーニングをしている

 理論Aに対してAの論拠のひとつひとつを検証して推論に過ぎないと否定もできる。Aに対して別の理論Bを対置して否定できればなお説得力が増す。さて、この説への批判派は説得力のある理論Bを対置できるだろうか?継続して同じテーマの英字新聞記事を追いかけるのはこのような面白さがある。


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