わが町の医療の現状と展望(1) [26. 地域医療・経済・財政]
2,007年12月27日 ebisu-blog#033
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12月8日付けebisu-blog#016「根室の財政と教育の現状」と題して、わがふるさとの医療の現状について若干触れた。今後、十年で根室の老齢化は急速に進む。医療ニーズも大きく変わりつつある。現状はどうなのか、そしてわが町の医療はどうあるべきなのか、具体的で現実的な政策はありうるのか、などについて考えてみたい。
数日前に、首都圏のある県の医療行政トップであるK氏から、傘下の県立7病院に関する現状と改革の方向を提案した資料が届いた。K氏が講演会用に作成した資料である。ぱらぱらめくって、暇ができる都度眺めている。よくまとまっていてる。それだけに、読んで、うーんと唸ってしまった。
わが町の現状を考える場合にも、参考になるので一部を抜粋しながら紹介したい。デカルトの科学の方法第2規則(分析の規則)、「第2は私が検討する難問の一つ一つを、できるだけ多くの、しかも問題を寄りよく解くために必要なだけの小部分に分解すること」、に倣って、問題を分割してシリーズで検討してみようと思う。
新臨床研修制度の影響についてK氏の資料を見てみる。リストされた東京都とその県にある14の大学病院のうち、臨床研修医が定員を満たしているのは東京医科歯科大学、東京大学、慶応大学の3校のみである。全国的に知名度の高い大学が14校リストされているが、定員を満たしているのは3校のみ、首都圏ですら、この現状である。このほかに、新制度導入前後の新人医師の大学病院選択割合が載っている表がある。北海道は、導入前は76%であり、導入後は33%である。半減している。北海道を希望する医師が半減した。
わが町の市立病院へ医師を派遣している旭川医大も厳しい現状だろう。医大側が派遣医師数を減らさざるをえない事情がみえてくる。医大本院の診療体制が崩壊しかねないのである。わたしは釧路医師会病院に通院しているが、旭川医大はここからも派遣医師を減らしている。消化器内科の専門医で、副院長のT先生が本院へ戻られた。いい先生だ。若手の、成長著しい外科医G先生は3月に神奈川県の病院へ移られるようだ。
釧路医師会病院は医師数の減少に伴い、今年3月から救急医療の受け入れ担当日を減らし、釧路の救急医療体制は危機的状況にある。
組織というのは強い自己防衛機能をもっており、危機の際にはそれが自動的に発動されるものだ。当然、どこの大学も本院の診療体制維持を優先する。
この点から考えると、旭川医大が現状よりも派遣医師数を増やしてくれることは期待できない。ほかの大学に要請しても、派遣先からすら引き揚げざるをえない現状では、新規の派遣に応じる余裕があるはずがない。現状の派遣先から引き揚げて派遣するか、本院の医師を派遣するかの選択肢しかないのであり、どちらも現実的な可能性はゼロに等しい。だから、そのような活動に人とお金を使ってもほとんど意味がない。札幌医大や北大に要請していると市側は説明しているが、現実的には意味がない活動であると言わざるをえない。
K氏の資料から、道内の大学病院への医師増員要請は現実的な解決策とはなりえないことがわかる。では、どうすれば必要とされる医師数を確保できるのか。即効薬はない。しかし、根室だからこそできる策はある。首都圏では不可能でも根室では可能な策はある。ただし、長期的な政策で20年間はどうにもならない。それでも20年先を見て、現実的な手を打つべきである。次回はその長期的な具体策を考えてみたい。
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