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#4174 Sapiens: p.20, 21 Feb.2, 2020 [44-3. 原書講読講座 Sapiens]

 授業内容が全部採録できたらいいのだが、そうもいかないので、毎回重要と思われるトピックスをいくつか選んで紹介している。
 成績トップの高校2年生が対象の授業だが、内容は見たとおりだから、難関大学院入試を予定している大学生の受験勉強用にも役に立つ。わたしが大学生のときには外書講読でこういうレベルの解説は期待すべくもなかった。大学行きたかったけど、事情があって行けなかった人もハラリのSapiensを買って、弊ブログで勉強してもらいたい。前置きはこれくらいにして、本論に入ろう。

 中高生には見慣れた構文だが、使われ方がハラリ流、うっかりすると見落とす。前にも出てきたから、慣れたようで、今回は「so…that」を見落とさなかった。高校の教科書では「…」の部分が7つの単語で構成されている文はみたことがないが、”Sapiens”ではすでに数回出てきている。あまり長いので、最初は面食らって、生徒と一緒に大笑いした。

 20ページ、第一段落から。
<20.1> Over the past 10,000 years, Homo sapiens has grown so accustomed to being the only human spices that it's hard for us to coceive of any other possibility.  Our lack of brothers and sisters makes it to imagine that we are the epitome of creation, and that a chasm separates us from the rest of the animal kingdom.

 こんなに間が長いと、アイスパンが狭いとsoがあったことを忘れそうになるものです。(笑) 慣れです。一文に一気に目を通してしまう癖をつけよう。単語一つ一つに目が行ってしまうと、見落としがちになります。
  epitome(発音は"イピタミ")を電子辞書を引いて「権化」と訳してしまったことが隘路へ誘うことになった。かれはシャープの電子辞書搭載のジーニアスを引いている、ここでは「典型」と訳さないと日本語として意味が通じない。ピンとこないときは、辞書をよく読む。紙の辞書はそういう作業に威力を発揮します。スクロールしなくても見えますから。(典型という訳語はスクロールしなくても、隣に並んで見えてました。)
 こういうときは英英辞典を引くと、なーんだそうかということが多いもの。CALDには、次のように簡単に書いてあり、間違えようがありません。電子辞書にはいくつか英英辞典が載っています。
epitome:the epitome of sth  the typical or highest example of stated quality, as shown by a particular person or thing.

 epitomeに定冠詞がついています。「創造物の典型」とは人類のこと、それは書き手と読み手の間で了解事項ですから、theがつけられています。

 二つ目の文は使役のmakeが動詞として使われており、主語は人ではなく「こと」の英語特有の表現で、どう訳したらいいのか質問がありました。
「こういうときはどうするんだっけ?」と質問を投げ返しました。
「ああ、そうか、主語を副詞句に訳せばいいんだ」
「(デニソワ、フローレンシス、ネアンデルタールなどの)兄弟姉妹を欠いているので...」と柴田さんもそうしてますね。ふだん、繰り返し言っても、知っているという段階で、身についた知識となっていません。こういうふうに具体的な英文になんども出くわすことで慣れてきます。だから、たくさん読まなければいけません。
 もう一つ。"a chasm separates us from the rest of the animal kingdom"の文の意味が分からないというのがありました。文脈が読めてなかった様子。chasm(キャザム)は「深く大きな割れ目」ですが、この文が読めなかった原因は"the rest of the animal kingdom(「animal kingdom」は生物分類学上の用語で「動物界」と訳します。)、その中でも、"the rest"の定冠詞の意味がつかめなかったからです。「動物界の残りの部分」というのは、「(人間以外の)残りの動物界」です。ちなみに、サピエンスやデニソワ、ネアンデルタールなどのヒト種以外の残りの部分ということ。書き手は定冠詞でメッセージを送ってきてます、定冠詞の重要さが理解できるでしょう。リスニングでも定冠詞の聞き落としたら、どういうことになるかわかりますね。とくに強調しない限りは、弱音になってしまうので、注意深く聴かないといけないということ。音読トレーニングで定冠詞theの弱音を徹底的に真似してみればいいのです。
 文構造は案外簡単です。
①Our lack of brothers and sisters makes it to imagine
②that we are the epitome of creation 
③that a chasm separates us from the rest of the animal kingdom.

 imagineの目的語が②と③の二つのthat節です。並列に並んでますから、andでつないでます。


「過去1万年の間に、ホモ・サピエンスは唯一の人類種であることにすっかり慣れてしまったので、わたしたちはそれ以外の可能性について思いを巡らせるのが難しい。わたしたちは進化上の兄弟姉妹を欠いているので、自分たちこそが万物の霊長であり、ヒト以外の動物界とは大きく隔てられていると、つい思いがちになる」…柴田訳


 ついでだから、生物学分類をおさらいしておきます。分類階層のトップから順次下位分類へと下っていきます。
 domain(ドメイン)⇒kingdom(界:動物界、植物界、菌界)⇒phylm/division(門)⇒class(鋼)⇒order(目)⇒family(科)⇒genus(属)⇒species(種)
 専門用語はしっかり定義を捕まえておきましょう。

<20.2>Whether Sapiens are to blame or , no sooner had they arived at new location than the native population became extinct.

 この文は、hadが倒置されているので、仮定法の文だと思い込んだよう。19頁にそういう特殊な構文が出てきたからだろう。#4172から該当箇所を引用しておく。
Imagine how things might have turned out had the Nenaderthals or Denisovans survived alongside Homo Sapiens.

 「特殊構文」ありきで文を眺めると、柳の下に幽霊を見ることになる。二匹目のドジョウはいなかった。できるだけ先入見を外して英文を読む習慣を育みたい。数学でも、問題が解けないときは、角度を変えて問題を眺めるために先入見を外すことが必要になる。
 今回のケースは、倒置でも、たんなる過去完了の文、no soonerを強調するための倒置を外してみたらよくわかる。語順が普段と違うと、混乱するのはしかたがない、でも慣れてくると、瞬時にシンプル・センテンスに置き換えながら読めるようになる。とても簡単な文なのだ。でも、「no sooner」の意味文章上の位置には注意が必要である。'no sooner' は動詞のarrivedを修飾していることは意味を考えるとわかる。これって、文法問題で出題されたら、正答率が低いだろう。構文丸暗記してるか、意味が読み取れないと、thanの直前に入れてしまうだろう。

  they had no sooner arrived at new location than the native population became extinct.

 soonの項をジーニアス(4版)で引いてみた。


no sooner ... than:…:するとすぐに(…する)(1)通例 no sooner の節が過去完了時制、thanの節が過去時制である。 (2)しばしば意外さを含意する
 例文:No sooner had he gotten home than it stopped raining.(彼が家に帰るとすぐに雨が止んだ)
 =He had no sooner got home than it stopped raining.
   =As soon as he had got home, it stopped raining.  ...ジーニアス4版より

 ここでは、no sooner は「(雨が止むのに比べて)ちょっとの間も置くことなく」という意味で、比較の対象がthan以下の文だ。副詞句を文頭にもって来るというのはよくあるケースだが、助動詞がそれに続くということはあまり見ない。この副詞句が動詞を修飾しているからだろうか。ちょっと遊んでみたい。
  I'll be back soon. (すぐに戻ります)
  It will soon be dinner time.(もうすぐ夕食時です)
 どちらの文もジーニアスから。最初のものは通常の副詞句で文末が定位置、時間を表す補足説明です。英語語順での「S+V+Place+Time」のTimeに関する情報です。「戻って来るよ、すぐにね」
 2番目は動詞を修飾した例です。

「サピエンスに責めを負わせるべきかどうかはともかく、彼らが新しい土地に到着するたびに、先住の人々はたちまち滅び去った。」…芝田訳
 
 the native populationをわたしは「元々いた人たち」と訳出した、翻訳者の柴田さんは「先住の人々」と訳している。学術書的な香りが微かに漂う内容の本だから、語彙の選び方に気を使っているのだろう。

<20.3> What was the Sapiens' secret of success? How did we manage settle so rapidly in so many distant and ecologically differnt habitats? How did we push all other human speces into oblivion? Why coudn't even the strong, brainy, dold-proof Neanderthals survive our onslaught? The debate continues to rage.  The most likly answer is the very thing that makes the debate possible: Homo sapiens coquered the world thanks above all to its unique language.

  なかなか、興味深い内容ではある。太字の箇所は辞書を引いてもらいたい。debateに定冠詞theがついているのは、ずっと議論になっている「交雑説」と「交代説」のことだから。theをちゃんと理解していないと
、わけがわからなくなることがあるので、定冠詞にはご用心。冠詞類については英作文でも、高校教科書の読破でも、いつもうるさく言ってきているが、まだ、ピンとこない部分がある様子。理解が進んでいるから、読書量が増えれば自然にわかるようになる、もうすこしだろう。

「サピエンスの成功の秘密は何だったのか?わたしたちはどうやって、これほど多くの、遠くて生態学的に異なる生息環境に、これほど速く移り住むことができたのか?わたしたちはどうやって他の人類種をすべて忘却の彼方へ追いやったのか?なぜ強靭で、大きな脳をもち、寒さに強いネアンデルタールたちでさえ、わたしたちの猛攻撃を生き延びられなかったのか?激しい議論はいまなお尽きないが、最も有力な答えは、その議論を可能にしているものに他ならない。すなわち、ホモ・サピエンスが世界を征服できたのは、何よりも、その比類なき言語のお陰ではなかろうか。」…芝田訳

*人類の遺伝子に残っているネアンデルタール人の遺伝子の痕跡に関する最新の研究成果
 交雑は双方向だった。ネアンデルタール人の遺伝子の中にも現生人類の遺伝子が交雑によって取り込まれていた。20万年前にアフリカを出発し、さまざまに交雑を繰り返して、6万年前に東アフリカへ戻ってきた。だから、6万年前の東アフリカの現生人類の遺伝子の中に、ネアンデルタール人由来のものがあるということが分かった。
https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/20/020300072/?ST=m_news&P=3

<余談>
 7月27日からハラリの本を読み始めて、”Part One The Cogniteve Revolution"(第一部認知革命」),

"1. An animal of No Significance"(第一章「唯一生き延びた人類種」)を読み終え、文字数にして高校3年の教科書の分量を少し超えた。半年かかった。ノートに自分のやった和訳を書かせている。対象化するという作業が大切なのだ。いいところも悪いところもそのまま文章になって現れるから、どう直したのかが後で検討できる。スキルが育つということはそうしたことの積み重ねである。量よりも質を重視した読みを3か月後も続けているのだろうか、さて次の半年でどれくらい読めるのだろう?高校教科書で2年間分読めたらいいか。ブレイクスルーがきっとどこかで起きる。

 難関大学の2次試験問題には、難易度の高い文章を精読させるような設問がでるから、カメさんの歩みでしっかり読むしかない。前後関係でわかるところは、辞書をあまり引かずに、どんどん読み飛ばしたほうが読書の楽しみがある、日本語の本だってそうしている、なんだかもったいない。



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