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#4415 医大の小論文問題:問題はなかなか優れもの Dec. 2, 2020 [65.a 成績上位層にかかわる問題]

<最終更新情報>12/2午後6時

 生徒が小論文テストと面接試験を受けてきた。小論文の問題文を見せてくれたので思い出しながら書いてみたい。
 新型コロナ感染に関わる人権侵害がテーマになっていた。北海道新聞電子版からの引用で、B5判で1枚半。感染者や医療従事者への差別やイジメの具体的な事例が5つくらいは上がっていたようだが、問1はそれらの事例を200字で書くこと。要約力を見ている、優先順位付けして、さらに自分の言葉でまとめろということ。
 問題の2番目は、自分の見解を600字で述べよというもの。道東地域推薦枠(この枠での応募は初めての事例になった、ようするにこの枠を利用できる学力の高校生が道東には稀なのだろう)だから、地域医療を将来担うという視点から自分の見解を述べよということ。題意をちゃんとつかんで答えたらいい。
 ふだんから生徒の家庭でそういうことが話題に上ってるし、このご時世だから感染症に関わるテーマが出題されることも面接トレーニングを担当してくれた高校の先生の予測の範囲内だった。生徒は新型コロナに関してもPCR検査に関してもある程度学術的な専門知識をもっている。

 この生徒は数学の問題を解きながら、「雑談」できるという特技がある。授業のときにそういうことを繰り返しやっていると、脳は負荷を感じなくなる、慣れてしまうのだ。こうした脳の使い方が一つの鋳型になって便利に利用できるようになる。脳がマルチタスク処理に慣れてしまったので、地域医療問題やCOVID-19については「雑談」のテーマにときどき挙げている。感染症や検査方法、検査データの分析について新しい情報があれば、紹介している。もちろんそれに対する意見交換が続いて生ずる。録音して聴いたら、大人と高校生の会話には聞こえないだろう。
 勉強を教えるだけでは、大きな問題をいくつも抱えている根室の地域医療を将来担えない。根室が抱えている地域医療問題はずいぶんこじれてしまっているから、問題点を共有し具体的な解決策も一緒に考えておいて、実行する時期が来たら速やかにやればいい。大きな問題は三つ+アルファ。常勤医が足りない、年間赤字額が17億円、療養病床がゼロ、そしてその背景には市議会も市長も市役所幹部職員も医療への関心が小さいという問題がある。知識と智慧と経験の不足で問題をどうやったら解決できるのかわからないのである。30年たってもその状況は変わらないだろう。だから、そういう閉塞状況を壊す仕掛けがいる。長期戦略が必要なのだ。根室高校から現役で国公立大学医学部へ進学する生徒を何人も出すことも長期目標の一つだ。いまいくつかのことに手を付けておかねば30年後は根室の地域医療から中核病院が消えていることすら可能性の一つに上がる。ふるさと納税制度がなくなれば一般会計から赤字の穴埋めができなくなるから、5年で経営破綻あるいは入院病棟の閉鎖や診療科縮小をせざるをえなくなるのである。病気になっても釧路へ通院しなければ専門的な医療が受けられないという困った事態が現れる。いまでもそういう事態は一部で起きているが、それが拡大するということ。現状の診療科が半分になったときのことを想像してもらいたい。内科・小児科・外科・整形外科・産婦人科・眼科・皮膚科・透析・麻酔、これだけあるが半分になったら病院の機能はまるで違ってくる。入院病棟も半分しか維持できない。そういう最悪の事態を根室の責任ある大人たちは議論すらしていないのだ。
 どういう手を打てばこうした最悪の事態を回避できるのか、問題を理解出来て、具体的な地域医療策を推し進めることができる人材を育てることがニムオロ塾の役割のひとつだ。うまくいくかどうかは分からぬ、だが、自分にやれることはやりぬくのみだ。そのために古里に35年ぶりに戻ってきた。

 面接のほうはいかにも医大らしい訊き方だった。「どういう医師になりたいのか?」と問われた。生徒の答えは専門分野をもった総合臨床医である。クリニックは地域中核病院と棲み分けがきちんとできなければ、患者に適切な治療の機会を提供できない。専門用語では病診連携(病院と診療所の連携)という。自分の専門外は市立根室病院や釧路市立病院、釧路労災病院、釧路日赤病院などの地域中核病院へ、そして北大や旭川医大とも意思疎通をしておかなくてはならない。MRIやCTは市立根室病院で撮影をやり、画像分析は自分で読にさらに出身大学の専門医へ念のために確認してもらう。これが通常の流れ、読影に見落としがあってはいけないからだ。自分の専門外の病気は適切な病院と医師をピックアップして紹介状を書いて患者を回さないといけない。
(わたしは左目の視力が急に落ちて、メガネが合わなくなり、昨年3月に東京へ行ったときに聖蹟桜ヶ丘のアートマンに入っているメガネ屋さんで視力測定をしてもらった。急速な視力低下が起きたようだから、目の病気の可能性、白内障の可能性があるのでいま作っても無駄、先に眼科医の診察を受けることを勧められて、すぐに家の近所にある眼科医へ行ったら、白内障の診断。根室に戻りかかりつけ医の岡田先生に相談すると、根室市立病院の眼科大谷先生に紹介状を書いてくれた。同じ大学の後輩で腕がいいと薦めてくれた。昨年7月末に手術、お陰様でよく見えます。今年の3月に聖跡桜ケ丘のメガネ屋さんで同じ人に白内障の手術を受けた旨伝え、メガネを作ってもらいました。)
 入院治療が終われば、また地元で長期治療や経過観察ということになる。診療分野ごとにどの病院にどういうレベルのスキルを有したドクターがいるのかを熟知している必要がある。どの病院を紹介されるかは、ときに患者にとっては命にかかわる問題となる。135ベッドの小規模病院である市立根室病院でカバーできる専門診療科は少ない。たとえば、脳疾患は釧路の孝仁会病院がいい。根室で手術はできない。
 面白かったのは「リモート医療が根室ではなぜ導入が進まないのか?」という質問である。どんな意見を言うのか好奇心から出た質問だろう。これには二つの問題がある。一つは病院側の受け入れ体制と医師のリモート医療への関心の薄さである。もう一つは根室市役所側の問題だ。そういう問題へ好奇心をもって取り組む幹部職員がいない、だから必要な知識もない。
 こういう問題を解決するには、将来、根室市の医療政策に専門家として口をはさめるような立場を確保すること、そういう問題に関心のある人間を数人集めることだろう。あとはなんとかなる。ちゃんと自分の言葉で伝えたようだ。

 コミュニケーション能力の高い生徒だから、大人に対する敬語をしっかり使い分けて真摯に質問に答えたようだ。3人の面接官も納得がいっただろう。大人に対する言葉使いは友達に対するものと普段から使い分けている。論争になっても言葉は崩れない。高校で一度だけ、自分の意見を通すために5人の先生を相手に堂々と議論したことがある、普通の大人は言葉遣いにも、論理的な述べ方にもびっくりするだろう。小6のときから日本語音読トレーニングでレベルを上げながら良質の本を選んで十数冊読んできた。(笑)
 なぜ根室には医師が行きたがらないのかという質問もあったようだ。子どもの教育の問題が一番大きいが、それは提出済みの書類に書いたから、都会は愉しいところが多いと答えたそうだ。ゴルフに行けるし買い物が便利、本屋も大きい店がある、映画館もあるしレストランもオシャレなところがいくつもある等々。きれいなお姉ちゃんのいる店も多いとまでは言わない。ドクターも例外ではないから、他の職種と同様にスケベな男が多いのはあたりまえ。生徒も親に連れられてさまざまなドクターたちを見ているので、実例も知っている。

 あとは大学共通試験で90%越えを目指して坦々と勉強するだけ。昨日から定期試験が始まっているが、一昨日も昨日もZ会の物理の問題を解いていた。

 念のために、試験に落ちたらどうするつもりか訊いた。札幌の河合塾が化学の先生に素晴らしい人がいるので、そちらを考えているという。そんなことを言うので、けしかけてみた。東京の駿台予備校には全国から俊英が集まってくるので、全国トップレベルがどの程度か体験しておくのもいい。北海道の予備校では集まる生徒のレベルは高が知れている。道内の医大へ進学するならなおさら、全国レベルのトップグループの実力を測って、自分の実力を全国基準で確認しておく機会をもちたい。頑固だから、わたしの言うことなんか聞きゃしないよ。札幌を選ぶだろう、それでいい。他人の意見には耳は傾けても、自分の考えと判断で行くべき道を選択する、大人ってそういうもの。もう子どもではない、しっかり育ったことを祝福すべきだろう。小5の1月からだった、長い付き合いだった。あと数か月でさようならだ。名残惜しくもあり、成長を眺めていられたことがうれしくもある。
 どこを選ぶかはたいした問題ではない、本人次第、そしてそんな悩みは6割以上の確率で、杞憂になる。
 合否発表は大学入試共通試験の成績を医大側が確認してから、2月一般入試の合格発表の前になされるようだ。根室高校から国立医大への現役合格の実績はまだない。
 最後が一番大事だから、気を抜かずに今は坦々と勉強しろ。なんだかほっとした顔をしていた。


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