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#2699 残業代をゼロにする"ホワイトカラーエグゼンプション"① June 6, 2014 [A.6 仕事]

 産業競争力会議をいうのがあるようだ。そこでホワイトカラーエグゼンプションを検討しているという。理由は生産性を上げることで競争力を強化しようということのようだ。残業代を支払わなければ産業の競争力が強化できるのだろうか?

 言葉の定義からみよう。

 exemption: permission to ignore something  such as a rule, obligation, or payment
   ・・・Macmillan English Dictionary for advanced learners

  兵役「免除」や税金の「控除」をあらわす言葉のようだ。「法や義務あるいは支払のようなものを無効にするもの」だから、徳政令も含む概念なのだろう。ようするに一部の法規制を無効にすることをいう。

 white-color exemptionとはホワイトカラーに限定された法規制(労働基準法)解除ということ、「労働時間規制適用免除制度」という訳語が充てられている。
 免除されて誰が得をするのだろう?残業代を支払わずにすむのだから雇用者側あるいは株主が得するように見えるが長期的に考えるとそうではない。

 残業代を支払わないことがどうして生産性向上につながるのかがわたしには理解できない。高度な専門職については労働時間ではなく成果で給料を支払うというのがいままでとは違うところだ。成果の客観的な評価はとてもむずかしい。よほどの人格者でなければ、自分の好みが評価に大きく反映するものだ。きらいなやつの評価は低くなるから、大方は評価者であるボスにゴマをする者を増やすことになる。
 管理職については管理職手当てがついており残業代は支払われないから、一般職の者たちが対象ということになる。管理職が7時頃に帰宅して、能力の高い一般社員が給料も安いのにタダ働きで終電間際まで仕事をするわけがない。難易度の高いいい仕事を次々にやらせることで優秀な人材を育てることができるが、タダ働きではそうした機会をなくすことになる。

 5/28MSNニュース
http://sankei.jp.msn.com/economy/news/140528/biz14052809220035-n1.htm
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政府の産業競争力会議が進める労働規制の見直しで、労働時間規制を適用しない「ホワイトカラー・エグゼンプション」の対象職種を限定する方向で検討していることが、27日わかった。

 労働者が仕事を自らの裁量で調整や管理ができる企画部門の会社員や金融機関のファンドマネジャーなどの一部の専門職を対象とする。28日の競争力会議で民間議員が提案する。

 民間議員の提案では、労働者側に一定の裁量がある専門性の高い職種に限定して、本人の同意を前提に導入を可能とする一方で、小売店での販売職やトラックの運転手などは対象外とするとしている。労働時間と成果の関係に応じて対象職種を線引きし、労働者側から懸念されている、なし崩し的な導入を防ぐ狙いがある。

 また、長時間労働を防ぐために、労働時間の上限や休暇の最低限の取得日数といった労働者の健康管理を行う仕組みも併せて導入。長時間労働を強要するなどの悪質な企業への指導や罰則も強化する。
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 わたしは20代後半から産業用エレクトロニクスの輸入商社で、「高度な専門職」に該当する仕事を五年間やっていたことがある。中途入社したての三年間で為替変動に左右される業績を為替変動から切り離す仕組みを営業課長のEさんとつくった。そのほかに利益を拡大する仕組みをいくつかつくり、システム化もした。役員中心の6つの委員会に属して仕事のほとんどは単独でやり遂げた。
 もし、あの三年間にホワイトカラー・イグゼンプションが実施されたいたら、バカバカしくなっただろう。週に3日間は終電近くまで残業し、土日のいずれかは10時間ほども書斎に閉じこもってシステム関係や管理会計や経営管理関係の専門書を読み漁った。時代の先端を駆け続けるには日本で出版された本ではとても間に合わず、米国で出版された最新の専門書を何冊も読まざるをえなかった。利益管理の統合システムを実現するにはそれぐらいの負荷がかかった。売上高経常利益率は平均して10%程度あがった。その仕組みのあるおかげで、その会社は後に店頭公開を果たした。
 臨床検査会社へ転職してから、東証二部への上場準備で統合システムのサブシステムである会計システムを担当したが、監査会社から派遣されていた会計システム担当の公認会計士を外すことに同意した。200万円/月支払っていたのだが、技術レベルが低いので困っていたら当時の課長が提案してきた。Ⅱの部に適合する会計システムと支払管理システムの仕様書を3週間ほどで書き上げ、1週間漏れやミスがないかチェックしていた。予算システム、原価計算システム、購買在庫管理システム、販売会計システムとのインターフェイス仕様書は3日間で書き上げた。着手9ヶ月でシステムは2ヶ月の並行ランを含めて無事に本稼動した。会計分野の専門知識とシステム技術レベルの低いものがやったら2年かけてもトラブル続出だっただろう。1984年のことだ。担当してくれたNCDのSE二人もこの分野では一流だった。
 会計とシステム両方の高度な専門知識を有する技術レベルの高い一般職はたまにいるし、仕事に恵まれた少数の者が会社の利益構造を劇的に変える。そういう修業時代を潜り抜けて、赤字会社を高収益の黒字会社へ転換できる強い経営者が育つ。複数の分野の専門知識が必要な困難な仕事がなければ人は育たぬ。

 能力が群を抜いて高い平社員に残業代を支払わずに働くことを強要したら、成果は出ないし、優秀な社員を育てられない。タダ働きしろというなら、だったらまず管理職や役員がやってみろということになるし、ばかばかしくてそんなことを言う会社への忠誠心は失われる。
 こんなものを制度化したら、日本企業から活力が失われ、人材が育たなくなる。亡国の制度導入が始まろうとしている。どうして安倍政権は頓珍漢な政策ばかりとりあげるのだろう?いいと思ってやっているのだろうが、経済や仕事音痴も度がすぎている。

 森永卓郎氏が6/6日の朝のNHKラジオ番組「ビジネス展望」で標記についてめずらしく実務に即した正統な解説していたので、続編「~②」を書こうと思う。

*#2699 残業代をゼロにする"ホワイトカラーエグゼンプション"① June 6, 2014 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-06-06

 #2701 残業代をゼロにする"ホワイトカラーエグゼンプション"② June 9, 2014  
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-06-08

 #2702 残業代をゼロにする"ホワイトカラーエグゼンプション"③:公務員は別扱い June 10, 2014   
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-06-10

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