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#1912 根室市 生活保護率が過去最高 不況が再就職阻む Apr. 20, 2012 [26. 地域医療・経済・財政]

 4月19日付の北海道新聞に標記の記事が載った。
 #1910で根室市の人口減少が加速しあと10年ほどで根室と中標津の人口逆転の可能性のあることを取り上げた。続く#1911では釧路根室管内の「域内循環」が縮小することで地域経済が衰退しつつあるという調査報告を取り上げた。
 そして今回は根室における生活保護率の増大(2年連続の記録更新)である。

 これら三つのことは相互に関連があるようだ。反省べき点は三つ。
 ①市政と地元経済界の長きに渡る馴れ合い構造(旧弊)が地元企業の経営改革を妨げ、釧根域外との競争力を奪ってしまった。
 ②長年にわたり「生きる力」だとか「社会教育」に力をいれ、学力問題に正面から取り組まなかったために、子どもたちの学力が低下し続けており、地元経済に将来たいへんな影響がでることを覚悟しなければならない。
 ③マチを支える人材層が根室高校普通科の学力中間層(全国レベルでは偏差値38前後、下位15%層)で、このマチが抱える問題に対処できなくなり、あちこちで問題の先延ばしが頻繁に起きている。全国レベルでみれば低学力層に支えられた根室市政は広い視野と戦略思考を欠きいまや優先順位の判断すらできないテイタラクだ(市立病院建て替え問題や消防デジタル無線、学校・青少年センター・市立図書館の耐震工事など具体的な事柄を何度も取り上げたので、過去ログを見てほしい)。大人の劣化を止めなくては子どもたちの学力低下も止まらない。
 そういうわけで生活保護率は今後ますます増え続けることが予測される。

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根室市 
 
生活保護率が過去最高
  3月末現在 不況が再就職阻む

 【根室】市内の生活保護需給世帯の増加が止まらない。受給者の割合を示す生活保護率は、3月末辞典で人口千人当たり16.3人()16.3パーミル)で、過去最高を更新した。2011年度平均も15.4パーミルで過去最高。背景には、解雇や失業が原因で受給する中高年が急増した反面、景気英明で再就職先が見つからない現状がある。(栗田直樹)

 市は受給者がさらに増加することを見込み、12年当初予算に、前年度比1億1200万円増で過去最大の8億7200万円の生活保護費を計上。1世帯当たりの月額支給額(医療費除く)は、単身世帯の約8万5千円~6人世帯の約27万円。
 3月末時点で受給しているのは365世帯(前年同期比31世帯増)。内訳は高齢世帯が202(同11増)と最も多く、次いで傷病世帯69(同2減)、「その他」世帯34(前年同期と同じ)、母子世帯17(前年同期比7増)の順だった。
 解雇や失業が原因の需給は「その他」に分類され、障害世帯を上回った。
 市社会福祉かは「働き盛りの世代が働きたくても働けず、預金も取り崩して受給申請に来るケースが目立つ。特に、50歳以上の雇用はどこも厳しい」と指摘する。
 市はケースワーカー4人に加え、11年度から就労支援専門員1人を配置して受給者の自立策を強化。30代~60代の男女19人に水産加工や警備などを紹介して短期の日雇いの就労に結びつけたが、常用雇用となった受給者はいなかった。

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 高校を卒業して地元に就職がなく専門学校へ進学しても就職はむずかしい。札幌には企業が少ないから就職のチャンスも少ないところへ全道から就職にあぶれた者たちが集まってくる。札幌には働き口が少ないから卒業後も仕送りを続ける親たちは多い。その子どもたちが30~40になるころには仕送りを続けた親たちは退職である。公務員でなければその時点で仕送りが困難になる家庭がほとんどだろう。
 非正規社員でアルバイトで食べている20代30代が増えており、かなりの割合で将来生活保護対象となるだろう。就職氷河期の時代の初め頃の大学卒業生が30代半ば、彼ら彼女たちはキャリアを積むことすら不可能であり、なかなか正規社員の職にありつけないのが実情だろう。

 若者たちすらたくさん余っているのだから、記事の中にもあるように根室に限らず道内では50代の人たちの就職口はほとんどない。

 学力低下の実情を俯瞰しておこう。中学生の三人に一人は五科目合計点が150点に満たない。簡単な学力テストであるにも関わらず3割しか正解できないのだから、高校を卒業しても自立できないだろう。市内の中学生を1学年250人とすると80人がそういう生徒たちである。この学力層は小数分数の加減乗除算ができない、日本語のテキストを音読させると小学4年程度の読みしかできないのが半分はいるだろう。飽きやすく、しなければならない勉強を辛抱強くやることができない。
 たとえば、野球。小学生の野球は親が野球好きのケースが多く、親が子どものブカツをけしかけているようにもみえる。子どもは小学校でブカツに明け暮れ勉強をしない、親は野球には夢中になるが家庭学習習慣をまったく躾けられない、そういう家庭が増えている。ことは野球に限ったことではない。バレーボールだってバドミントンだって同じだろう。もちろん、その中には例外的に文武両道で勉強とブカツを両立させる子どももいる。しかし、大半は中学校になってますますブカツに励むから、勉強よりもブカツ中心の生活スタイルになってしまう。
 職人になるのも辛抱強く一心に修行できるしっかりした性格を高校卒業までに形成しておかないとムリだ。辛抱力を鍛えておかなければ修行半ばで仕事を放り投げることになる。5人に一人くらいしか育たぬのが職人の世界で、勉強する方がよほど楽だろう。

 お父さんとお母さん、自分の子供の将来を本当に考えているのだろうか?財産がたくさんあり、60歳になっても子供に仕送りを続けられる家庭ならいいだろう。そうでなければ、小学生のうちからいつ自立させるのかよく考えてブカツと勉強のバランスを変えなければならない。中学生になってからでは打てる手が狭くなり挽回が困難になるから、小学校でのしつけがカギだ。家庭学習習慣を小学校低学年のうちになんとしても躾けよう。

 高校3年生になり、行くところがなくて専門学校や偏差値40以下の大学に進学を決めてからでは多くは手遅れ。日本の大企業の本社は98%は本社が東京にあるから、北大生ですら、東京へ行って就活しなければ就職がおぼつかない。運よく書類選考を通過して30社も40社も入社試験を受けると交通費や宿泊費がすぐに百万円を越してしまう。就活もたいへんなお金がかかる。道内の専門学校や大学へ進学させたらそのあたりは覚悟をしなければならない。
 子どもが少学生のうちからよく考えて計画的に物事を進めないと、いまの世の中、正規社員の就職口を見つけるのはたいへんなのである。卒業時に就職できなければ翌年からは新卒ではないから就活が格段にむずかしくなる。

 そういうわけで、大卒ですら非正規社員や未就職組みが増えているから、専門学校や高卒の就職が格段にむずかしくなっている。お父さんやお母さんたちの時代とは就職事情がまるで違ってしまっていることに気がつこう。

 塾経営者として、そしてパトリオットとしてこのままだと心配な現象がある。この数年間根室の子どもたちの学力が著しく低下し続けているのだ。学力テストで5科目合計点が400点を超える生徒が市街化地域の3校だけで5年前は50人を軽く越えていたが、現在の中学生は同じ3校で少ないときには4人なんてことがあった。生徒数は5年前に比べて3割減だから比例計算だと35人ほどいればレベルが維持できていると判断できるが、実際はその三分の一ほどになっている。そして学力最下位層が急激に増えている。子どもたちの学力の急激な劣化は、大人の劣化を反映している可能性が高い。家庭学習習慣すら小学校低学年で躾けられない親が増えていると推測される。このマチで学力に関心がないのは市長や教育長や市教委や市議たちだけではないようだ。これは仮説であるが、子どもたちの学力の低下はその親たちの年齢層の劣化の結果であるとわたしは推測する。
 学力不足から就職できずに自立できない子どもが増えれば、生活保護率はとめどなく上昇することになるだろう。2年連続で記録更新だが、10年後20年後に振り返ってみたときに、平成24年度の生活保護率が底だったと思い知ることになるのではないだろうか。心配とはそのことなのである。いま手を打たぬと・・・市教委も教育長も市長も市議会も学力問題に関心がないように見える。

 マチと地域経済の活性化は子どもたちの学力向上と地元企業の経営改革からと言わざるを得ぬ。子どもたちの学力がいくら高くなっても魅力のある地元企業がなければ優秀な子どもたちから都会へ出て戻らぬことになる。

 日本は人口減少がはじまっており、GDPが毎年縮小していく。経済はいまがピークで「成長路線」など夢のまた夢。ソニーもナショナルもNECもシャープも家電メーカーは一社当たり数千億円もの赤字を計上している。大量のリストラがこれから行われ技術者は韓国や中国のメーカーに雇われ、日本の家電メーカーは赤字で開発費が捻出できない。韓国メーカーとの差はますます開く。日本経済の衰退現象が家電メーカー各社に象徴的に現れたとみるべきなのだろう。彼らを支えているのも日本の技術であり日本人の技術者だが、あと5年もすればそれも必要がなくなる。
 正規社員の職に就けなかった若者たちは、スキルの磨きようがないから、国内労働力の質も低下せざるを得ない。日本経済は2000年あたりを境にして質と量の両面から衰退がはじまっている。わずか10年後に円相場が倍以上に低下しても不思議ではない。変化はおそらく短期間に急激に生じる。ガソリンも冬の燃料である灯油も値段は2倍になっている可能性が大である。

 昨年度の貿易赤字が4.4兆円という報道が今日なされた。史上最高額の貿易赤字である。貿易収支の基調が赤字に変わったことを読み取らねばならぬ。東北震災だけが原因ではない、それは家電メーカーの巨額赤字転落に象徴されている。日本の産業構造を揺るがすような変化が産業の基底部で起きていることに気がつけ。基底部で起きていることはじわじわと時間をかけて他産業へも広がらざるを得ないのだ。400年に一度、いやそれを超えるパラダイムシフトが日本で起きつつある。人口減少社会という局面は、縄文以来1万2千年間日本で起きたことのない社会現象なのである。たまたまそういう時代の転換点にわたしたちは立っている
 若者たちの柔軟な頭脳に期待したい。だからこそ、教育に力を注がなければならぬ。言い古された言葉だが、教育こそが国の礎である
 
*#1910 2022年根室と中標津人口逆転 Apr. 18, 2012 
 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2012-04-18

*#1911 釧根地域経済調査報告書(北海道新聞より) Apr. 19, 2012 
 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2012-04-19





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ZAPPER

子どもたちの学力の低下はその親たちの年齢層の劣化の結果である。

まさにまさに、おっしゃる通りです!
(個人的に一番ダメな世代は、我々世代、45歳±2歳だと思っています)
世代を超え、立場を超え、皆が一致団結して「子どもの劣化」を防がなくてはなりません。
それはまた、罪滅ぼしでもあります…。
しょーもないことばっかりやって、ゴメンなさい。^^
by ZAPPER (2012-04-20 16:14) 

ebisu

子どもたちを育てるためには大人が正直に誠実に自分の仕事をすることが必要条件のようです。

まっすぐに、愚直まっすぐに歩く大人が釧根の地に増えることを期待しています。
by ebisu (2012-04-21 00:38) 

Hirosuke

ドイツ心理学者エーリヒ・フロムによると、
      「大衆の自由権獲得⇒ファシズム台頭」
なのだそうです。

Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A8%E3%83%BC%E3%83%AA%E3%83%92%E3%83%BB%E3%83%95%E3%83%AD%E3%83%A0

詳細と真偽は本を読んで確かめようと思っていますが、
この一見すると「矛盾」に思える論は、
実は「表裏一体」と同意であり、
「The unexpected always happens.」
とも同意と考えられ、
すなわち「矛盾⇒存在可能」を意味します。

実際、
「うつ」と「そう」は相反する「矛盾」した病状ですが、
最新の精神医学では、
「躁鬱はセットである。」
との認識が優勢だそうです。

実際、
躁鬱が同時に存在する「混合状態」と呼ばれる症状があり、
最も自殺の恐れが高いと言われています。

僕も医者の眼前で「混合状態」に陥り、
即日「強制」入院となり←(正確な用語は忘れました。)
退院まで3ヶ月を要しました。

論を戻しますと、

大衆が自由権を獲得するために、
ごく一部の者が学識を重ねた結果、
学識のない大人達にも自由が与えられ、
無知で考える力のない大人達は、
権力を持つ雄弁なだけの無能者に対して、
反駁も論破も試みる事さえなく、
むしろ迎合歓迎して⇒ファシズム台頭

という図式なのかと想像しています。

つまりは、
「ゆとり教育」後の日本そのもの。

by Hirosuke (2012-04-22 21:29) 

Hirosuke

だから【バカ】が【権力】を持つ. 
[英文テクニカルライターとして]
http://tada-de-english.blog.so-net.ne.jp/2012-04-23

上↑のコメント欄の試論に関して、
Wikipedia等の参考資料も加え、
再考を催行して論を補強した結果、
最高の採光を採鉱するに至りました。

========================
【権力者】とは、【バカな無能者】である。
それを選んだ民は、【さらなる××】である。
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異論・反論ある方は、
ここではなくて、
当ブログまで。

by Hirosuke (2012-04-25 19:52) 

Hirosuke

ちなみに、
僕は選挙権の行使を、
とっくの昔に放棄しています。

by Hirosuke (2012-04-25 19:54) 

ebisu

さきほどもどりました。
滞在予定を3日間延ばしました。

>選挙権の行使を、
 とっくの昔に放棄しています。

投票したくなるような人が立候補してくれるとありがたいのですがなかなかいませんね。

by ebisu (2012-05-02 19:05) 

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