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病院建て替え:問題点の整理 #966 Mar.21, 2010 [32. 市立根室病院建て替え]

  小数の市民が病院建て替え問題と市の財政問題に関心をもっているようなので、わたしはこのカテゴリー「市立根室病院建て替え」を書き続けようと思う。

 本田市議のみが市立根室病院事業会計案に反対したが、新年度予算案は可決*された。相変わらず市政チェック機能も提案機能も担えない市議が大半であるようだ。このような有様なら市議定数は半分でも多すぎる。好い加減な市議たちを支持している市民にも責任があるが、定数が多すぎて20人の定数に対して21人の立候補では市民は実質的に市議を選ぶことができない状態が2期続いている。定数を半分にすれば好い加減なことはやっていられなくなるから、まずは市議定数を減らし競争原理が働くような状態を現出すべきだ。
 さて、問題が解決したのではなく、長谷川機関士が運転する根室市政が財政破綻へ向かっていよいよ暴走を始めたから、とめるならいましかない。あとから、あのときに何とかしておけばというような後悔はしたくない。
 わたしは問題を整理して提示するのみ。

 問題点を次の4点に絞ってみた。
(1)療養病床の問題
 根室はゼロである。精神科が225ベッド(根室共立病院124ベッド、江村精神科内科病院101ベッド)がこれを代替している。「新・市立根室病院新築基本構想」(以下「新構想」と略記)P17によれば、根室管内では中標津にある樹恵会石田病院が唯一療養病床(120ベッド)の病院である。
 3年前に療養病床75ベッドを有する隣保院が閉院して以来、根室市内には療養病床がない。老人の受け皿になっている精神科225ベッドは後継者の問題から10~20年先にはなくなるものと考えて対処しなければならないから、根室の医療はいま重大な岐路に差し掛かっている。
 市立病院職員アンケートでも療養病床のないことを医療スタッフが危惧している。グループホームや老健施設では介護度4や5の老人が増えており、次のステージは医療型療養病床でのケアであるが、1ベッドもないまま現市長は既存の「介護施設を拡充する」としか市議会で答弁していない。

 かくして、医療型療養病床は市内に一つもないのである。市長が言うように介護型を拡張しても、介護度4や5のお年寄りが医療が必要になったときの受け入れ先にはならない。こんなことは子どもでもわかる理屈であり、老人人口が昨年7700人に達した根室の町には医療型の療養病床が100~200ベッド必要であるが現在1ベッドもなく、このままでは老人人口が1万人に達するかもしれない10年後にも1ベッドもないことになる。さらに後継者問題で精神科の病院や特別養護老人ホームがなくなる可能性がある。何の準備もないままこうした事態を迎えたら根室は年寄りの住めない町になるだろう。
(ちなみに最近2日前に根室の人口は3万人を割ったと報じられている)

 介護度4や5のお年寄りが医療が必要になったらどうしたらよいのか、根室の地域医療の今日や明日を市長や市議たちは正直に語ってもらいたい。

 療養病床の増設を考慮すれば、現地建て替えはとんでもないミスジャッジとなる。敷地が狭すぎて療養病棟を増設できないから、成央小学校を花咲小学校へ統合し、現成央小学校跡地で新病院を建て替えるべきだ。この検討を最優先すべきだ。

(2)建て替え総費用の問題
 市が招聘した病院コンサルタント長隆氏は1年半前に年間売り上げの範囲内での建て替えを提言した。全部ひっくるめて30億円でできると言い切っており、経営上もその範囲内に収めるべきだと。
 ところが、市側の概略予算は80億円台から59億円へといったん縮小しながら、今月になり3億円増えて62億円となっている。これはコンサルタントの提言の2倍の金額である。市長は自ら招聘したコンサルタントの提言をどのようにかんがえているのか市民へ説明すべきだ。招聘した病院コンサルタントへも失礼な話だ。病院コンサルタントの長隆氏は著名な方のようだし、経緯は市のホームページやコンサルタントの関係する機関のホームページで閲覧できるから、根室市の信用が失墜する。
 「新構想」はどこにも病院コンサルタントの提言への言及がない、おかしな話だ。1章をこれに充てて、市民へきちんと提言を無視した経緯を説明すべきだろう。
 こうして具体的な動きを追って整理すると、市長と病院事務局は病院建て替え予算カットの努力をまったくしていないといわざるを得ない。専門家の提言に従い、総予算30億円で計画を作り直すべきだ。

(3)経営計画が示されていない
 「新構想」にも「収支計画」がない。基本設計時に明らかにするというのが昨年の市長の議会答弁で市議会への約束だったはずだが、1月に2度目の基本設計が発注されても説明がない。誠実で正直な仕事をしてもらいたい。
 「新構想」に拠れば平成21年度は20年度に比べ4月時点で常勤医師が6名増員になったはずだが、実質赤字は12億円と拡大している。常勤医が増員になっても病院経営はまったく改善されていない。これでは「新構想」で示している損益分岐点分析もまったく信頼できないものとなるから、原因を調べ、市のホームページ上で公表すべきだ。
 今年度をベースにすれば、病院建て替えで4.5億円負担が増すというから、年間実質赤字は16~17億円に急拡大する。そして道や国からの派遣医師が引き揚げるH24年、25年に市独自で補充できなければ4名の常勤医が減員となるから、病院売上は5~6億円減少する。こういう事態が起きれば、病院事業の年間実質赤字額は最大22億円を予測しておかねばならない。
 根室市の財政はもつのだろうかという疑問がわきあがらざるを得ない。試算は簡単にできるから、財務課に指示すればいい。彼らは専門家だから3日もあれば正直な答を出すだろう。市議は具体的に質問をすればいいだけである。

(4)市財政への影響懸念
 病院事業の年間赤字額が20億円に膨らむような事態になれば、おそらく根室の財政は持たない。病院は診療所となり医療スタッフは三分の二解雇、市職員も半数リストラ、小中学校は各1校といj事態を迎えることになる。何年で夕張市と同様の状態になるのか、財政課に試算させるべきだろう。どんなに少なくても年間16~17億円の実質赤字を一般会計からの繰出金で補填しなかれ場ならず、年間実質赤字最大20億円超も現実の脅威と化しつつある。
 新年度予算について言えば、平成21年度と同様。実質赤字額は12億円になるだろうから、8.7億円の一般会計からの繰入金では補填できない。可決された病院事業の新年度予算は「赤字粉飾予算」である。本田市議以外の市議たちの能力と議員としての適確性を疑わざるを得ない。
 決算時に赤字補填のため4億円の予算外繰入をするか、それができなければ累積赤字で先送りになる。関係者はインチキ予算をやめて正直に・誠実に仕事をしてもらいたかたかった。これで根室市は税制破綻へ向かって暴走を始めた。

 具体的な話しを少し追加たい。病院事業会計は私が見てもよくわからないから、民間ベースの損益計算書に組み換えて公表すべきだ。市の決算資料も事業会計ごとに予算・実績対比損益計算書を作って公表すべきだ。今のままでは情報開示をしたことにはならない。専門家が見ても理解できない資料しか公表しないのは、情報を公開せずに実質的に秘匿していることになる。市民や市議が理解できる形で情報を公開しないと、根室市の個々の政策について判断ができない。
 年々歳々、アカウンタビリティ(説明責任)がやかましくなっているから、市民の意見を取り入れて、情報公開のあり方を変えるべきだ。
 根室市を財政破綻の道から引き戻すためには、情報を公開して市民が適切に判断できる環境をつくるべきだろう。
 根室市はすでに財政破綻へ踏み出してしまっている。今年度中に何とかできなければもう後の祭りで、夕張市と同じになるだろう。
 すべてのツケは市民に回ってくるから知らないではすまされない。長谷川市政に賛成した人も反対した人もひとしくツケを支払うことになる。
 根室の町は30年間いちじるしい衰退の道に自ら踏み込むのだ。とめることのできるのは、わたしたち、根室に住む人間である。
 

*3/19#962『市立根室病院事業会計予算可決成立 反対論あり』
 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2010-03-19

*3/17#958『市立病院産婦人科 医師確保へ最終調整』
 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2010-03-17


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