SSブログ

根室で地域医療にかかわる市民運動は可能か(2):地域医療と市民意識 #950 Mar.13, 2010 [26. 地域医療・経済・財政]

 クラブナビさんがいい記事をコメント蘭で教えてくれたので紹介したい。とにかくお読みいただきたい。(3月11日読売新聞より転載)
 URL:http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/akita/news/20100310-OYT8T01075.htm

 無医化危機 揺れる村
  
上小阿仁唯一の医師辞意
 1通の辞職願で上小阿仁村が揺れている。村唯一の医療機関「上小阿仁村国保診療所」に勤務する有沢幸子医師(65)が「精神的に疲れた」と先月下旬、突然、退職表明し、61年ぶりの無医村になる可能性が出てきたのだ。関係者は必死の慰留を続けているが「辞職の意思は固い」という。休みは20日に1回という激務に耐え、地域医療を支えてきた有沢医師に何があったのか。(糸井裕哉)

 ■村の神様
 「死に水を取ってもらえた」「こんなに話しやすい先生は初めて」。村を歩くと村民から、有沢医師への感謝の言葉が聞こえて来る。有沢医師は昨年1月の赴任以来、午前8時30分~午後5時15分の定時診療のほか、早朝や夜間の往診も自発的に続けている。

 脳梗塞(こうそく)で倒れた母(88)の看病を続ける小林ユミ子さん(66)の元にも、有沢医師は診療時間の合間を縫って連日訪問。今月8日の流動食開始日には3度往診し、「鼻から胃へ液体を落とすのよ」と優しい口調で説明を続けた。

 小林さんは「分からないことは丁寧に教えてくれる。有沢先生は私たちの神様なんです」と話す。

 斉藤ヒサコさん(70)は昨年3月に他界した義理の母(享年92歳)に対する有沢医師の献身的な診療が忘れられない。

 ふりしきる大雪の中、深夜の午前1時でも3時でも容体が悪化すると点滴や酸素ボンベを持って夫と駆け付けてきた。嫌な顔一つせず、「少しでも休んで」と家族をいたわってくれた。

 「息を引き取る瞬間まで、『ばぁちゃん、早く元気になれ』と声を掛け続けてくれた。先生が居なくなったら私は生きていけない」と斉藤さんは声を絞り出した。

 ■心に傷

 辞意を表した理由を有沢医師は公にしないが、小林宏晨村長(72)は「言われ無き中傷により、心に傷を負わせてしまったことが最大の原因」と語る。

 村幹部らによると、有沢医師は昨秋、診療所向かいの自宅に「急患にすぐに対応できるように」と自費で照明を設置。だが、直後に「税金の無駄使いをしている」と言い掛かりを付けた村民がいたという。

 また、昼食を食べに行く時間が無く、診療所内でパンを買った際、「患者を待たせといて買い物か」と冷たい言葉を浴びせられたり、自宅に嫌がらせのビラがまかれたこともあったという。

 昨年、有沢医師の完全休診日はわずか18日。土日や祝日も村内を駆け回り、お盆期間も診療を続けた。しかし、盆明けの8月17日を休診にすると「平日なのに休むとは一体何を考えているんだ」と再び批判を受けたという。

 診療所の小嶋有逸事務長補佐(60)は「こんなに身を粉にして働く医師は過去に例が無い。無医村になったら村民が困る。自分で自分の首を絞めている」と憤る。

 ■翻意なるか

 村は、有沢医師の負担を軽減するため、土曜日の完全休診制や村の特別養護老人ホームへの往診免除などを申し入れ、交渉を続けているが結果は芳しくない。

 村民の中には有沢医師に「辞めないで」と懇願するために受診する人もいる。署名活動の動きもあり、旅館経営の高橋健生さん(62)は「一人でも多くの声を伝えなければ手遅れになってしまう」と話す。

 有沢医師は兵庫県出身で、海外や北海道の利尻島などで診療に携わった経験がある。村へは夫と共に移住した。有沢医師は後任が見つかるようにと辞職日を来年3月末にした。だが翻意しなければ、村は2~3か月後に医師募集し、後任探しをしなければならない状況に追い込まれる。

 小林村長は「一部の不心得者のために人格も腕も一流の医師を失うのは不本意。医師不足は深刻で、無医村になる公算は限りなく大きい」とため息をつく。

【コメント】
 同じ記事を昨日付けで本田市議も採り上げている。つい先日北海道新聞のN記者が転勤で根室を離れた。感動的な別れの場面の記事をブログ#940『根室を愛す』で転載した。「まだまだ根室にいたかった、根室が大好きです」と言ったとたんに言葉を詰まらせるN記者、病院問題でも丹念な取材でいい記事をたくさん書いてくれた。離任日を知らなかったので見送りにはいけなかったが、N記者を見送った市民が何人もいたことを知って嬉しかった。
 名誉院長の荒川先生が根室を去る日を長谷川市長は周知しなかった経緯が本田議員のブログに書かれている。人工透析でお世話になっていた患者さんは見送りたい人がいただろう。根室を離れる医者には一言ありがとうと伝えたいものだ。
 「医信伝心ネットワーク」なる団体があるが、荒川先生が根室を去る日を会員に連絡したのだろうか?それとも市長と同じような判断で知らせなかったのだろうか?会を運営する人は悩んだに違いない。

 道内のどの病院へ移られたのかについても新聞情報すらない。市民には「知らしむべからず」なのだろうか?市長答弁では「退任の周知を望まない医師も多いので」ということだった。

 他地域の実践例として、「柏原病院小児科を守る会」を紹介したことがある。
 http://mamorusyounika.com/
 コンビニ受診を控える啓発パンフレットを医師と協力して作り、小児科存続を支えた。丹波市の「小児科を守る会」と根室の「医信伝心ネットワーク」の活動は比べるべくもない。ベースの市民意識の差なのだろうか?

 市議については、本田市が昨年市議に当選してからはじめて病建設問題を議論できる市議が誕生した。いままでは、市側の作った案をそのまま追認するだけの器官に過ぎなかったから、ニホロ80億円の予算でと言えば、市議会病院建設特別委はろくな議論もせずにそのまま了承し、現地建て替えだと言えばまたそのまま追認というお粗末さだった。

 市長は助役のときになぜかニホロ移転をしたくて、商工会館で開かれた市民への説明会で駒場町の候補地に関する買収金額について虚偽の説明をした。5年間10億円を超える実質赤字を出し続け、病院組織をいじるだけで経営改善はまったく進まなかった。病院事業の赤字を赤字特例債で先延ばしし、病院事業の採算をさらに悪化させてしまった。
 市民整備委員会も市側の案をそのまま追認してきて、決算での10億円を超える赤字を問題として採り上げたことはなかった。いまごろになって市側の「最大12億円の赤字」説明に驚く始末だ。ほんとうのところは赤字の最尤値は16億円、札幌医師支援センターからの派遣医師4名が引き上げ、交代要員が派遣されず、根室独自で補充できなければ、病院事業赤字は年間最大で22億円にもなることが予想される。そして、療養型病床をつくる財源も枯渇してしまう。
 病院建て替え問題の処理を誤ると、根室の地域医療は崩壊し、市財政は破綻の危機を迎えかねない。

 市議も市民整備委員会も市政のチェック機能を果たしているとはいいがたい。市と市長はやりたい放題で、根室市の財政を破綻に導きつつある。

 根室の市民意識とは何だろう?何も言わない、だだじっとしているだけ、それが戦後六十数年変わらぬ根室市民の在り方だ。在って無きがごとし、それが根室市民気質というものだろう。
 だが、新しい芽はある。市議定数削減問題で三市民団体が動いた。その後市議たちの動きは伝えられてこないが、「検討中」なのだろう。
 一度も議会で質問をしていない市議様もいらっしゃるようだ。やはり定数が多すぎるのではないか。副業も問題だから、副業市議はボランティア扱いで、報酬は三分の一に・・・などという市民運動は無理だろうか?

 市民運動がなかなか盛り上がらない一方で、市議と行政と水産業界が相互批判をせずに癒着してやりたい放題では根室の町が一貫して衰退し続けるわけだ。
 健全な批判精神を育み、そろそろふるさとを住みよい町に変えようではないか。変えたいと願う人は、コメント蘭に「チェンジ!」とでも書いてほしい。


*本田市議のブログ
 
http://nimuoro.typepad.jp/honda/2010/03/post-50a9.html

*#944『根室で地域医療にかかわる市民運動は可能か(1)』
 http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2010-03-10


nice!(0)  コメント(6)  トラックバック(0) 

nice! 0

コメント 6

クラブナビの叙情詩

彼はたくさんの人を見送り続けてきた
笑顔の退院を見送り,また悲しい最期も見送ってきた

しかし自身の時は
誰にも見送られなかった

彼の背中を押す春の東風は
さぞ冷たかっただろう
by クラブナビの叙情詩 (2010-03-13 21:39) 

ebisu

朝から風が強い
時折雲間から強い陽射しが道路に注ぐ

南風と強い陽射しに雪が溶け、小さな川となって道路わきの排水溝の暗闇に落ちていく

夜になった
道路わきに投げ捨てられた雪をバックした車がバリバリ踏み潰す
根室湾に流氷の姿は見えないが寒さが戻ってきた

かれはグラスを片手に何を思い出すのだろう

by ebisu (2010-03-13 22:16) 

TWITTER

We Can Change!
by TWITTER (2010-03-14 16:25) 

ebisu

TWITTERさん、ありがとう、うれしいね。
晩酌の味がよくなりそうです。
by ebisu (2010-03-14 18:51) 

クラブナビ

どうやらキナ臭い話が出ています
http://d.hatena.ne.jp/Yosyan/20100313

村長選挙の僅差激戦を良いと考えるか
村長の医師政治利用を悪と考えるか

いずれにしても,平穏ボケのどこかの市とは違って
死に物狂いの活気があることだけは間違いないようですが


ただ…いつも弱者は被害者となります
by クラブナビ (2010-03-14 21:13) 

ebisu

クリックして読んでみました。
小さな村でもずいぶんドロドロとしているようですね。
人間の欲が絡む政治はうんざりです。

いい歳をしているのに関係者は私欲を棄てることができない。
話しが半分でもほんとうなら、気の毒な村、情けない村としか言いようがない。
結局はそこに住んでいる人次第ですね。
村民意識が低ければそれに見合った村になる。

市長選挙で対立候補すらいない根室は大丈夫?
それともにたようにひどい状況か?

ふるさとはおおらかでありたいものです。
人間60歳を過ぎたら、私利私欲はひとまず棄ててじっくり考えたいものです。
by ebisu (2010-03-15 00:03) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0