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#3936 様変わりしつつある根室の塾事情 Feb. 23, 2019  [55. さまざまな視点から教育を考える]

<最終更新情報>
2月25日朝8時半

 今年になってから、ニムオロ塾への問い合わせが増えています。折り込み広告をいれなくなってから4年目だと思いますが、2月に何件も問い合わせがあったことはありませんでした。今年は様子が違います。
 そして4月には高校生の比率が6割を超えそうです。なぜこんなことになっているのか分析してみます。

 いくつかの事情が関わっているように思うので、思いつくところを箇条書したら全体の構図が見えてきそうです。
1. 根室西高校が3月で閉校になるので、2年前から入試が根室高校1校体制になったこと。
2.学力データを無視して統廃合をしたために不具合が生じていること。
3.高校1校体制は入試競争を消滅させ、学力下位25%の低学力層のなかにまるっきり勉強しなくなった生徒が増えていること。
 ⇒学力上位層が危機感を感じている
4.スマホによる学習習慣の破壊
 ⇒最近10年間でスマホの普及が進み、生徒たちの生活習慣に大きな影響を与えていること。学習時間と読書時間が減少している。
5.学力基礎技能「読み・書き・計算」の格差拡大
 ⇒低学力層の学習量が激減。
6.塾ビジネス市場の縮小 
 ⇒根室で中高生の数がこの15年間で半分に減少して、市場が縮小した。
7.収容能力の減少 
 ⇒私塾市場が半分になったことで高校生対象の塾が3つから2つになった。

 これら7つの要因がからまって、中学生の通塾率が減少し、高校生の受け入れ許容量が減ったのではないだろうか。各論を展開してみたい。

 根室では高校入試が1校体制になって3年目であり、実質的なことを言えば高校入試がなくなったようなもの。出願状況をみると普通科は5人定員オーバーしていますが、私立高校受験で滑り止めに根室高校普通科を併願している生徒がいるので、落ちる生徒はいないでしょう。
 2月1日付の道教委のデータでは、根室高校の出願状況は次のようになっています。

 根室高校普通科 128(120)
     商業科  24(40)
     事務情報科 9(40)
                *(カッコ内は定員..)
 http://www.dokyoi.pref.hokkaido.lg.jp/hk/kki/H31henkogonemuro.pdf


  事務情報科はわずか9人の応募、すでに存在価値がありません。花咲線と同じで利用客がいなくなれば廃線の憂き目。
 こういう状況だから、中学生の通塾率が減少するのは当たり前、勉強しなくても根室高校へ入学できます。だから、成績下位25%層にまるっきり勉強しない生徒が増えてしまいました。そういう負のスパイラルが進行中なので中学校の学力テストの平均点が下がり続けています。3年生で五科目300点満点で平均点が100点を切ることがめずらしくなくなりました。
 根室高校普通科の生徒の半数の入学時の学力は間もなく閉校になる根室西高校レベルの学力ですが、根室高校普通科の教科書を使うので、落ちこぼれます。卒業するときには30人くらいは根室西高校生以下の学力となるでしょう。西高校は生徒の学力レベルに見合った教科書を採択していましたから、大半の生徒たちが高校3年間で学力を上げられました、いまそれができなくなっています。
 根室高校の先生たちたいへんですね、数学だけは学力別に5クラスに分けて授業をして、定期テストの問題も3種類用意しているようです。各クラス40%は共通問題、残りは学力別の問題にようやく落ち着きました。学力別編成にしている数学ですら落ち着くまで2年かかりました。他の科目は手の打ちようがないのではと危惧しています。
 1月の進研模試の数学平均点は20点ジャスト、百点満点ですよ、おそらく史上最低点を記録。他の科目は学力別編成にはなっていませんから、授業のピントをどの学力の生徒にあわせるのか、先生たちも悩んでいるでしょう。学力格差が大きすぎて教える方は当惑しているでしょうね。今年の7月の新入生の進研模試は平均点20点割れが危惧されます。進研模試は各科目百点満点のテストです。

 一方で、高校生対象の塾は根室市内に2つのみですから、中学生が減少して高校生が増えるということになっているのでしょう。中学生の通塾が減って高校生が増えるというのは自然な流れなんですね。
 ところが普通科の各学年に60名ほどいる低学力の高校生を受け入れられる塾がありません。ひとつは入塾試験を課していますから、希望しても無理でしょう。ニムオロ塾では下位25%層は1学年2名くらいしか受け入れられません。収容能力がないというのはそういうことです。根室高校普通科の低学力層は行き場がなくなっています。放置して困るのは地元企業と根室市です。多くは親に寄生し、地元企業で非正規雇用で働き、生活保護予備軍とならざるを得ません。こういう状態が10年、20年と続いたら重大な問題が起きます。


 個別指導をしているのと、週4日間だけの授業だから、ニムオロ塾で受け入れのできる生徒数は総数でおおよそ20人が限度です。
 スキルス胃癌と巨大胃癌の併発で、2006年に大きな手術をしているので体力に余裕がないのです。無理のない範囲でやってます。

 入塾後3か月は「仮登録」にしています。それまで部活三昧で本は読まぬ、スマホし放題、家庭学習習慣もない生徒の中には、塾へ通いだしても、まったく家で勉強して来ない生徒がいます。習慣の力というのはそれほど強いものなのです。部活が終わって家に帰りご飯を食べた後はスマホし放題。生活習慣が改まらなければ授業料をドブに捨てるようなもの。翌週教えるときには前の週にやったことが頭から消えています。3か月間様子を見て改まらないようなら、時間とお金の無駄だから、本気で勉強する気になったときにまた来てもらいます。

 ここからは根室の子どもたちの学力の現状について「読み・書き・計算」の3基本技能に絞って参考程度のことを書いておきます。
 「読み・書き・計算」の基本技能に関する速度格差はあんがい知られていません。読みの速度は1:5、書く速度は1:3、計算速度は1:30、一つのクラス内でビリとトップはこれくらい読み・書き・計算速度に差があります。もう少し具体的にいうと、30人のクラスで上位3人と下位8人の平均値を比べるとこれくらいの差があります。
 そこに目を向けた指導があると低学力の下位25%層の底上げができますが、とっても手間がかかります。
 この層の生徒は塾にはあまり来ません、数人だからなんとかやれてます。魔法はありませんからたくさんきたらアウトです。入塾制限せざるを得なくなります。

 ニムオロ塾は個別指導ですから、中学校の百点満点の学力テストで数学が20点前後の生徒も入塾してきます。正月に入塾した生徒がそうでしたが、2月の学力テストで68点をとってます。そのうちに8割を超えるでしょう。数学が好きになったと言ってますので、そろそろ嫌いな英語の指導に重点を移します。家で勉強して来ない生徒は点数が上がりません、この生徒は勉強するのが楽しくなり、家でもやっているのです。努力する者は偉い、そして勉強を楽しめるように変われる生徒はもっとえらい。
子曰く、これを知る者はこれを好む者に如かず。これを好む者はこれを楽しむ者に如かず(論語)

 高校生で進研模試で英数の偏差値が80を超える生徒もいます。全国偏差値で80は全国レベルで1000人中トップということです。
 ニムオロ塾で勉強している生徒の学力差は大きいですが、個別指導ですからそれぞれの学力に合わせて適切な指導をしています。同じ学年でも学力差が大きければ使う問題集が違います。簡単にいうと、道内No.1の進学校である札幌南高校の成績上位層の生徒たちと比べても遜色のない偏差値の生徒がいます。大学受験のために親元を離れて札幌の中学校や高校へ進学するのはリスクもあります
 札幌南高や札幌北高は札幌以外の地域に居住している生徒には5%の15人にしか門戸を開いていません。受験では圧倒的に強いし、システムが出来上がっているので受験に有利です。学生寮がないので爺・婆が札幌に住んでいて、そこから通えるならリスクは小さい。そんな人はあまりいません。


 国語の学力を伸ばしたい生徒や高速音読ができない生徒にトレーニングの機会を用意しています。月に2回「日本語音読トレーニング」授業(90分×2回)をやっています。これは希望者だけ、ボランティアですから授業料はいただきません。この音読授業に参加している二人の男子生徒が国語の学力テストで60点満点で57点と58点とってます。読むスキルを身につけた生徒は国語の学力テストの点数があがります。音読をスムースにやるには先読みしないといけないので、慣れてくると文意の理解が格段に深くなります。これも家で繰り返し読んでこないと効果はありません。塾に来ていれば成績が上がるというものではありません。成績は一定量のトレーニングを積んだ後で上がってきます。塾でやるだけでは足りませんから、家でも音読トレーニングをやるつもりがない人は参加を認めていません。

*https://www.msn.com/ja-jp/news/national/言ってはいけない%ef%bc%81「日本人の3分の1は日本語が読めない」/ar-BBTESsV?fbclid=IwAR1UhocKE-ZakgkjkL8j-IVZUwdcgDJdQJLB770v0x4cdgh0mQiI2dtqtC0#page=2


 残念ながら根室の中学生の成績下位25-30%は「教科書を独力で読んで理解すること=予習」ができません。国立情報学研究所の新井紀子教授(同社会共有知センター長)によればこれは根室の子どもたちだけの現象ではなく、全国的な傾向のようです。部活三昧、本も読まない、スマホし放題、家庭学習の習慣がなければどこに住んでいようがそうなりますよね。
 「治療」するのはたいへんです。生活習慣病ですから大人にタバコをやめさせるのと同じくらいたいへんです。勉強しないこと、本を読まないことが毎日繰り返されて
、習慣となっています。それが3年間も続くと性格にまでなってしまいます。性格や生活習慣を直すのは容易なことではありません。
 だから、そういう生徒が来たときには週に1回補習することがあります。生活習慣を変えるためです。そのために部活を週1日休まなければなりませんが、本人が部活担当の先生に自分から申し出るというルールを課しています。こういう生徒は生活習慣が変えられなければ学力は上がりません。補習はボランティアでやっているのですが、部活が大事で来ない生徒もいます。

 部活をやっていても、文武両道でしっかり勉強している生徒もいます。そういう生徒は部活を言い訳にして勉強の手を抜くようなことはしません。子育てをしっかりやればそういう子どもに育ちます。「子育て名人」と言ってよいくらいの人も根室には1割くらいいます。子育てはむずかしいので失敗する人もすくなくありません。根室は教育に関心のない親が多いので、家庭学習習慣のない生徒や本を読まない生徒の割合が、都会に比べてとても多いのです。健全な家庭学習習慣や読書習慣の躾は中学生になるとなかなか成功しません。自我が育ってしまっているので、親の言うことも先生の言うことも素直に聞けなくなっているからです。
 小学校に入学するときにすでに大きな学力格差があります。ひらがな、カタカナの読み書き、足し算くらいは都会の親たちは小学校入学前に自分で教えています。子育てに時間と手間をかけているんです。就学前の家庭教育に手間と時間をかけましょう。

 ニムオロ塾にはルールがあります。決められた曜日に来られなかった生徒、あるいは部活や病気で休んだときには他の曜日に振り替えます。振り替えても来ないことが度重なると休塾勧告します。
 来たり来なかったりでは成績が上がりませんので、塾へ通う意味がないからです。お互いに時間の無駄。
 44年前のことですが、大学院生の時に3年間東京渋谷駅前の進学教室で教えたことがありますが、無断欠席とか来たり来なかったりというような生徒は一人もいませんでした、根室ではときどきそういう生徒がいて対応に苦慮してます。(笑)
 親も子どもも甘いんです。


<余談:学力格差の拡大>
 学習量=「読み・書き・計算」速度×思考速度×時間

 この等式の意味するところは、3基本技能の速度が標準の2倍あれば、3時間の勉強時間で標準的な生徒の6時間分の勉強量を確保できるということです。これら3基本技能速度が標準よりも大きければ、思考速度も大きくなる傾向があるので、3時間で他の人の9時間分の勉強量を確保できます。「読み・書き・計算」3基本技能と思考速度の大きい生徒は勉強量が大きくなるので、ますます学力格差が開いていくことになります


<雑談:都会の事情>
 44年前に教えていた東京渋谷駅前の進学教室の授業料は3万円、個別指導の草分けの塾でした。先生は学卒は東大、東京教育大、慶応大、早大率の4校のみ、それ以外は院生でした。1975年の大学の初任給は89300円ですから、いま20万円とすると現在価値に直すと授業料は6.7万円です。都会の塾の授業料ってとっても高いですね。渋谷駅前は場所代も高いですから。それでも生徒はいくらでも集まるんです。いい大学へ入れたい親、いい大学へ進学したい生徒が多い。学歴で就職先がまるでちがいます、キャリア官僚、一部上場企業の本社エリート社員、さまざまな研究所の職員…そういう現実を親も子どもも日々見ています。

 極端な例をひとつ例を挙げます。東京都八王子市には30を超える大学キャンパスがあり、街の中には学生がうようよしています。どこを歩いても若い人たちが多いことに驚きます。町の活性化とは若い人の人口割合と強い相関関係がありそうです。
 安い居酒屋は大学生で混雑していてうるさいので、おじさんたちはすこし値段の高いお店を利用します。八王子市民は毎日たくさんの大学生を目にしています。八王子東高校がこの地域のNo.1の都立進学校です。毎年東大に10名前後合格していましたが、2018年は東大合格ゼロ、様変わりしましたね。学区の縛りがなくなり都立日比谷が復活したので、東京で東大進学予定の生徒たちはそちらに流れているのかもしれません。
 中学生は高校入試でそれぞれの学校の学力レベルを知るわけです。自分の同級生がそれぞれの偏差値の都立高校や私立の有名大学附属高校へばらけますから、大学を卒業してどういうところへ就職しているかも主だったところは承知しています。教育熱が高くなるわけです。
 根室の町には大学がありません、一部上場企業の本社もありません、キャリア官僚もいません、だから高学歴のエリートがどういう生活をしているのか自分の眼で見る機会さえありません。教育や学歴に対するニーズが小さいのはそういう現実の影響も大きい。
*八王子にキャンパスのある大学一覧 
https://www.navitime.co.jp/category/0504004/13201/
**都立八王子東高校進路実績
http://www.hachiojihigashi-h.metro.tokyo.jp/hachihigaHP/pdf/shinro/18-shinrojisseki.pdf


 年々体力の衰えを感じています。2月はとくに体力の落ちる月でして風邪をひくとこじらせせます。20代のころの東京の大気汚染の影響で肺の機能が弱っていて、空気の温度が変化しただけで咳が出ることがあります。あと何年やれるかわかりませんが、ここはわたしのふるさとですから、まだしばらくがんばります。高校生対象の塾は二つは欲しいですね。個性的な塾がふたつあれば選べます。

 高校卒業の18歳まで根室で育ち、そのご東京暮らしが35年間、そして戻ってきて17年目、根室と取京暮らしがそれぞれ35年間という節目の年になりました。

 生きて仕事して、人様のお役にすこしでもたてるっちゅうのはこのうえない幸せよのう。天と地と来てくれる生徒と通わせてくれている保護者のみなさんに日々感謝せんといかんのう。
 ありがとう。
 

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