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#3954 ハラリと大数学者岡潔 Mar. 30, 2019 [44-3. 原書講読講座 Sapiens]

 毎年2週間ブログやFBから離れることにしています。習慣性が強くなるのでね、お休みというわけ。(笑)

 東京へ行っても電車に乗るのは一度だけ、根室へ戻るときに羽田へ向かうのに電車を利用しました。羽田から聖跡桜が丘駅前までは直行便のリムジンバスです。体力がないので電車に乗って移動するのはきついのです。
 京王線の電車でふと向かい側の席へ目をやると、6人全員がスマホをいじっていました。スマホはいまや人間の身体の一部と化したようです。これを人類の進化とみるか、AIの端末化するトレーニングとみるかは意見の分かれるところでしょう。

 本屋へ行ったら、平積みされた数学者岡潔先生の本が目に入りました。森田真生編『数学する人生』(新潮文庫)、何か呼ばれた気がしたのですぐに買いました。こういうときはあとから理由がわかるから、勘に従うことにしています。
 中を見たら、大数学者岡潔先生(1901-1978)が1971年春に京都産業大学でやった「最終講義」のテープを遺族から借りて原稿を起こし編集したもの。

 最近、ハラリの著書『Sapiens』を弊ブログで3回とりあげましたが、ハラリはこの著書を四つのパートに分けています。
 ①認知革命
 ②農業革命
 ③人類の統一
 ④科学革命

 こうして並べると三番目に違和感が湧きますが、人類史を考察するうえで、③は不可欠な視点であることが読めばわかります。英文の部タイトルは
「Part Three The Unification of Humankind」

 (ハラリのこの著作はkoderaさんが提唱する四項目箇条書法の構成になっています)

 二番目の農業革命によって、畑が広がっていっただけでなく羊や豚そして牛、鶏などの家畜化も進みました。これらの動物には知能もあるし、感情もこころもある。農業革命は人間以外の動物を家畜と野生動物に分けたということになるでしょう。
 同様のことが、人類に対しても行われています。Sapiensというラテン語の元々の意味は「賢い者」という意味であり、Neanderthal「野蛮な者」と対置されます。遺伝子解析の結果から現生人類はホモサピエンスとネアンデルタールの混血です。日本人にはネアンデルタール人の遺伝子がいくぶんか濃いというのは興味のわく事実ではありませんか?岡潔先生は日本列島に人がすみ始めてから30万年と言ってます。東アフリカでホモサピエンスが進化し始めたのが7万年前です。


 ところで、鶏は狭いゲージに閉じ込められて、ベルトコンベアで運ばれてくる餌をついばみ、運動することなく肥育され、卵を産み続け、屠殺されています。羊や豚や牛も似たり寄ったりの肥育がなされています。これらの動物は人類総数よりも数が多い。感情や心をもつ哺乳類がこういう劣悪な環境下で飼育され、屠殺されて人間の食料となっています。具体的に飼育をみていくと、乳牛がとってもかわいそうです。この部分はハラリの本をお読みください。
 いずれ、野生動物はいなくなり、動物園でしか見れなくなりそうです。森は畑や果樹園、ゴルフ場と化し、これからも野生動物の生息環境は次々と消滅していきます。地上には人類と家畜ばかりということになれば、そういう単純な生態系で人類が生き残れるだろうかという疑問がわくのは当然でしょう。生態系の維持には「生物多様性」が不可欠です。

 農業革命以前は狩猟採集生活だから、人間はたくさんの種類の食べ物を採集して食べていました。農業革命以後の食卓は様変わりして、栽培した穀類や野菜や果物と家畜の肉がほとんどを占めています。

 岡潔は動物本能である自他弁別本能や無明の表れである自我本能を抑止すべきだと強く主張しています。企業経営では「売り手よし、買い手よし、世間よしの三方よし」という商道徳で日本人は自我本能を抑止してきました。取引相手も従業員も同じ人間、関係者それぞれが幸福になるような利潤追求に理想を見ていたのです。
*『日本の国という水槽の水の入れ替え方』p56-58「向上の折り返し点」参照

 欧米の経営とはまったく思想が違います。20年間で日産から380億円もの収入をほしいままにしたカルロ・スゴーンのやり方は日本の伝統的な経営思想とはまっこうから対立するものでした。カネ、カネ、カネ、自分さえよければいい、日本人の大企業経営者にもそういう自我意識に抑制のきかないタイプが増殖しています。どうやらカルロス・ゴーンは日本の大企業経営者に禁断の扉を開いてしまったようです。
 官民ファンドの「産業革新投資機構」の社長に三UFJ菱フィナンシャル・グループの副社長であった田中正明氏を予定していましたが、報酬がⅠ億円であることがすっぱ抜かれて、世耕経済産業大臣は大慌て。報酬を3000万円に減らしたら、役員全員が辞任し振出しに戻っています。20年前までは大企業でも社長の報酬は3000万円が相場でした。強欲な経営者が増えたということです。
*毎日新聞ニュース:「役員報酬3000万円前後に抑制 経産省が官民ファンドの新運営方針公表
http://mainichi.jp/articles/20190326/k00/00m/020/268000c

 自他の区別はあって当たり前だが、そこには感情をもつ動物への共感もなければならぬということになります。岡潔先生はそういう智慧を平等性智と名付けています。

<言語と無意識>
 西欧の言語には冠詞があるが中国語にも日本語にも冠詞はありません。不定冠詞aの役割は自他を区別するもので、袋のような役割をしています。袋の外と中を区別する機能であると同時に他の袋と区別する役割も果たしています。どうやら冠詞はインド・ヨーロッパ語族に共通の機能のようですね。英語にもフランス語にもドイツ語にもイタリア語にもスペイン語にもロシア語にも冠詞はあります。
 言語を利用するときに常に袋の中と外を区別することで、他の袋との共通点への意識が薄くなってしまうのではないでしょうか?
 憐憫の情とか惻隠の情は他者への共感をベースにしなければ生まれない感情です。日本人は野や山にも神社の杜にも、動物たちにも自然に共感をもつようにできています。
 家畜の飼育環境を告発するハラリには平等性智が働いている、西洋人には稀有な人です。

 西洋の人々は家畜を屠殺することに痛痒を感じないのに、野生の哺乳類を捕まえ殺して食材とすることには強い嫌悪感を表明します。クジラやイルカが好例ですが、日本人には不思議です。家畜と野生動物を弁別しているからでしょうが、じつはどちらも感情をもった同じ動物なのです。クジラやイルカ漁に反対している人々には平等性智が働いていません、無明から生ずる自我本能や動物本能である自他弁別本能に操られているように見えます。


 生き延びたいという自我本能や自他弁別本能から平等性智への向上は、岡潔の視点からは人類の精神やこころの向上という階梯だが、そういう視点からsapiensを読み返したら、また違う景色が見えてきそうです。数英の偏差値が80を超える高校生用の教材に夏ころから取り上げますが、そうした平等性智の視点からsapiensをどのように読み解けるのか議論できたら楽しそうです。対象の生徒は五年間の音読トレーニングですでにそういう議論ができる準備が整っています。だから、Sapiensを読むのです、外諸講読授業が楽しいはず。

 岡潔の説明には仏教用語がでてくるので理解がむずかしい。道元の『正法眼蔵』にでてくる用語を使用したり、芭蕉の俳句で平等性智の説明がなされるので、ある程度の修行を積まないと理解できない部分が随所にあります。そしてところどころに数学的な証明が織り込まれています。直感的に捕まえたものを説明するにはそうした論理に頼らざるを得ないところがありますが、論理ですべてが説明できるわけでもありません。生命や情緒は論理の彼方にありますから比喩を使うしかないようです。このように数学者岡潔の発言は奥が深くて凡人には理解が届きません。岡潔先生が頻繁に引用する道元の『正法眼蔵』は30代になってからなんどかチャレンジしましたが、いくら読んでもわからない本です。ハラリの言説と突合してみて、凡人のわたしにも岡潔先生のいうことが少しだけわかったような気がし、嬉しさがわいてきます。


*#3949 Sapiens と Homo Deus(1):ハラリの視界  Mar.10, 2019
https://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2019-03-10

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#3950 Sapiens と Homo Deus(2):不定冠詞の役割  Mar.13, 2019
https://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2019-03-13


#3952 ゲノム編集技術の発展と人類の進化 Mar. 14, 2019
https://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2019-03-14


#3960 英語の教科書を読むトレーニング Apr. 12, 2019
https://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2019-04-12-1




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#3953 北構コレクションの常設展示:オホーツク文化 Mar. 15, 2019 [89.根室の過去・現在・未来]

 根室市の歴史と自然の資料館(花咲港)で北構先生が収集したオホーツク文化の発掘品がようやく常設展示される。わたしはオホーツク文化についてはほとんど知識がない。もう少し暖かくなってから見学に訪れるつもりだ。
 先生は国学院大学院の時代だろうと思うが、文部省の依頼でベトナムの王族に日本語を教えていたことがある。日本語を教えながら、フランス語を覚えたという。フランスの植民地だったベトナム独立を視野に入れた国策だったのだろう。米国と戦って勝利したベトコンは、終戦後にベトナムに残って独立運動を指導した日本人将兵が訓練して育てた。

 北海道新聞3/15朝刊記事を紹介する。
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オホーツク文化期の針入れ、骨角器など60点
根室在住考古学者
 北構氏の発掘品 常設展示

 市歴史と自然の資料館

【根室】市内の考古学者北構保男さん(100)が発掘し、市に寄贈したオホーツク文化期などの埋蔵文化財「北構コレクション」の一部が市歴史と自然資料館(花咲港)で常設展示される。北構さんが長年情熱を傾けてきた研究の成果を知る貴重な資料だ。(今井裕紀)

 北構さんは1918年(大正7年)根室町(現根室市)生まれ。14歳のころ、根室港の港口にある弁天島で捕鯨の様子が掘られたオホーツク文化期の針入れを発掘。超1級の資料として考古学会を驚かせた。国学院大に進み北千島でオホーツク文化やアイヌ文化の遺跡発掘調査に従事。戦後は根室に戻り印刷会社を創業し、町議や市議を務めながら発掘調査を続けた。「古代蝦夷の研究」で70歳の時に文学博士号を取得。
 2017年2月、「故郷に役立てたい」とこれまで自身が発掘した土器や石器、骨角器などの埋蔵文化財約13万点を市に寄贈し。常設展示に向け、資料館の学芸員らが資料の台帳づくりを進めてきた。
 今回公開されるのはコレクションを代表する役60点。針入れやアザラシなどをかたどった骨角製品といったオホーツク文化期の出土品のほか、17世紀ごろのものとみられる北千島のアイヌ民族の内耳土器など千島関係の資料も含まれている。…
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 膨大なコレクションのほんの一部が公開される、根室の小中高生に見学してもらいたい。

 北構先生は根室商業のご出身。作詞をよくされた歯科医の田塚源太郎先生とは根室商業の同期である。田塚先生は国後島のご出身、「国後の大漁師の息子」と北構先生はおっしゃっていた。田塚先生はビリヤードの常連のお客様だった、男のお子さんがいなかったのでずいぶんかわいがってもらった。二女とは小学校、中学校、高校と同級生だった。北構先生も田塚先生も背の高い人だ、田塚先生には根室商業時代に武勇伝がある。線路に仁王立ちして列車を止め、乗せたもらったことがあるようだ。当時は蒸気機関車である、止まらなければ轢かれる、同級生と度胸試しでもやったのだろうか。「根室商業の生徒」ということでお咎めなし、おおらかな時代だった。根室商業は道東では輝いていたのである。総番長制度もそのころに元気のよい根室商業の生徒がヤクザともめごとを起こして、その収拾のためにできたものだろう。「お控えなすって、手前生国発します所…」という切り口上が5年先輩まで総番長に代々伝わっていた。総番で野球部のキャプテンだった5年先輩から小さく折りたたんだ紙をもらったのだが、机の中にしまったままなくした。そのときにやってみせてくれたよ。ヤクザ屋さんともめごとがあったときは、総番が交渉することになるので、仁義の切り方は知らなきゃ話にならないと云った。話をつけるためには向こうの流儀で挨拶するのが筋、総番は命懸け、責任が重かったのである。だから、金刀比羅神社のお祭りの時は、総番が前を歩き、一歩下がって総番グループが連れだって練り歩いていた。あれは一種の儀式だったのだろう。普段と違っておっかない顔してた。
 北構先生は市議を何期かやったあとに、市長選挙に出たことがある。ebisuが高校1年生のとき、選挙期間と東京オリンピックが重なっていた。オヤジが応援していたので記憶にある。残念ながら落選した。根室の町は漁師町でインテリが嫌い、歯に衣を着せずにずけずけモノを言う北構先生が煙たかったのだろう。それを境に北構先生は政治の世界から足を洗い、印刷業と考古学研究の二足の草鞋でいくことに決めたのだそうだ。「なにをやっても根室の町は変わらんよ」、ある日印刷会社の応接テーブルで雑談をしていたときに大きな声でそうおっしゃった。「同期はみんな逝っちゃった、昔話ができるのはもう君くらいなものだ」と笑っておっしゃった。先生は40代で政治の世界をあきらめた。
 市長選挙に当選していたら、北構先生が国学院大の文学博士号を取得することはなかったかもしれぬ。市長選挙に敗れ、幸いなるかな。根室のエスタブリッシュメント(=当時の”オール根室”)のアホウどもにかまっていてもしょうがないと達観したのだろう。いまも根室の町は変わらない。
 平成3年にお亡くなりになった歯科医の福井先生は根室新聞に連載小説を書いていた。お亡くなりになる3か月ほど前にたまたま帰省していてビリヤードをしていたら、「トシボー」と呼ばれて誰かと思ったら福井先生だった。周りにいい大人がいた。
 三人の「大人」は皆さんご近所さん、歩いて5分以内の距離。そういえばテニスの大坂ナオミのお母さんの実家も右向かい側にあった。あんな家、高校生の頃にあったかな?記憶にない。
 信金本店の裏に「大坂屋」というアイスクリーム工場があったのは覚えている。小学生のころ、断面積が一辺2㎝の正方形の直方体の形をしたチョコレートでコーティングされたステック・アイスの保管温度が上がって形が悪くなって売り物にならなくなると安く売ってくれた。味は変わらない、結構喜んで食べていた。中学生のころにはその小さなアイスクリーム工場はなくなっていた。

 根室の町に吹く風もその向きが変わりつつあるようにわたしは感じている。「勉強しなくても船に乗れば飯が食える」、そういう時代ではとっくになくなっている。根室は否応なしに変わらざるを得ない。わたしがブログで発信している具体的な提言の三つに一つは時代の変化でゆっくりと実現することになるかもしれない。直球を投げ続けているうちにバターボックスに立ってみようと思う若者がきっとでてくる。ケセラセラ。

 今日は風がなくて陽射しがとってもあたたかい、11時の気温はマイナス0.2度だが、春が来たようだ。雪解け水が下水溝に落ちていく音が心地いい。

 北構先生は、おおらかにご自分の道を歩かれ満百歳になられたご様子、おめでとうございます。




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#3952 ゲノム編集技術の発展と人類の進化 Mar. 14, 2019 [4. 人工知能]

 #3949と#3950で「SapiensとHomodeus」をとりあげたが、ゲノム編集技術が何をもたらすのか概観しておきたい。

 遺伝子の編集はすでに農産物や遺伝子治療として現実化しているが、次のステップはヒト受精卵のゲノム編集である。ゲノム編集とは部位特異的な酵素を用いて標的遺伝子を改変する操作であるが、現在の技術で受精卵のゲノム編集を行えば、標的遺伝子以外にも改変を起こしてしまう可能性が高い。しかもそうしたミスを検出できない。
 技術は進化を続け、いずれ正確に標的遺伝子を操作できる時代がやってくれば、ゲノム編集の目的が変わる。受精卵の遺伝子をデザインできるようになる。AIでデザインし実際にデザイン通りにゲノム編集された受精卵から人間が誕生する可能性が拓ける。

 たとえば、寿命を決めているテロメア領域を2倍の長さにできたらその人間の寿命は2倍になるかもしれない。いったん2倍にする技術が確立されたら、3倍が可能になるだろう。3倍ができれば4倍に、…そう簡単には行かない、どこかで別の不都合が生じる。

 ゲノム編集で変えられるのは寿命だけではない。ゲノムをデザインしそのデザイン通りにゲノム編集することで、sapiensの亜種が誕生する可能性がある。

 ネアンデルタールはヒト種の亜種であるサピエンスの出現によって滅びたが、同じことがサピエンスに起きる可能性がある。

 人間に技術進化が止められないのはなぜだろう?
 技術進化は人間本能に深く関係しているのではないか、だからとめられない。
 たとえば生存本能。医学技術の進歩は人間の生存に大きな貢献をしている。飽くことのない便利さの追求や人の欲望の肥大化も人間本能に根ざしているように感じる。

*#3949 Sapiens と Homo Deus(1):ハラリの視界  Mar.10, 2019
https://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2019-03-10

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#3950 Sapiens と Homo Deus(2):不定冠詞の役割  Mar.13, 2019
https://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2019-03-13





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#3951 定期テストで学年トップを競ってはいけない Mar.14, 2019 [65.a 成績上位層にかかわる問題]

 成績上位層の内でも学年トップレベルの生徒には、定期テストで学年トップはどうでもいいとふだんから言っている。

 難易度の低いテストでトップをとっても意味がないからだ。難易度の低いテストでは成績トップ層の得点分布は高いところで団子状になる。高得点層の分布の範囲が狭くなるのである。500点満点なら450点以上のところに集中する。ケアレスミスがすくない生徒が学年一位となるだけで、学力とはあまり関係がない。「神経戦」で消耗するのは生産的ではない、トップレベルの生徒たちの学力の差は難易度の高い問題をやらせたときにはっきりと点数に現れるから、そういう場裡での戦いに力を注ぐべきだ。
 たとえば、道立高校入試問題で9割得点できても、東京都立高校入試問題では8割程度の得点となる。ましてやさらに難易度の高い有名私立高校入試問題では7割の得点だっておぼつかぬ。だから、ケアレスミスの有無はほとんど関係がなくなる。トップ層の得点分布が広がるから、難易度の高い問題が解けるか否かで勝負がつく。標準問題を高速で解き、新傾向の難易度の高い問題に時間を割く、そういう戦術も大事になってくる。
 英語の問題は道立高校裁量問題の3倍量の長文問題が出題されるのがあたりまえで、語彙の難易度もずっと高くなる。時間内に読み切るためにはしっかりトレーニングを積む必要がある。道立高校入試問題レベルとは世界が違う。
 たとえば、都立高校進学校の入試問題は3000語ほどになっている。道立高校裁量問題の3倍ある。数学については昔、桐朋高校がいい作問をしていた。
 開成や慶応や早稲田高等学院は言うに及ばず、難関大学入試は都立の進学校やこういう私立の有名高校のトップレベルの生徒たちとの競争なのである。

 1月半ばに入塾してきた中1の生徒が、学年2位がチャンピオンデータだと言っていた。入塾の目的は学年トップになりたいからだろう、抜けない生徒が一人いると聞いた。四月の学力テストで学年トップになるために、難易度の高い問題集にチャレンジしている。短期間でも一生懸命に勉強する生徒の学力はアップしてしまうから、学年末テストでは学年トップといい勝負になると踏んでいたら、一昨日表情がよさげなので、結果を訊いてみたが、五科目485点で学年2位、トップとの差は1点。以前抜けなかった生徒を抜いてしまった。学年トップが入れ替わったのだ。
 予想したよりもいいできだ、四月の学力テストでは予定通り学年トップに躍り出るかも。学力テストでは学力差が点数にはっきりでる。(笑)
 なかなか負けん気の強い生徒である。当面の目標は四月の学力テストで450点を超えられるかどうかが勝負どころだ。そこをクリアできたら学年トップ、「ニムオロ塾プログラム」で2年生の内には480点台へ飛躍できるだろう。誰もがやれるプログラムではない、やる気があって基礎力がしっかりした者でなければ登ることのできない険しい山道に挑むのである。最優先すべきは先取り学習である、大学受験の1年前に数英国は終わらせておかねばならない。中学校の内に数ⅠAを終了しておかないと、大学受験がきつくなる。英語は何とでもなる。
 最近は学年によっては学年トップの五科目合計点が400点を超えられないケースがでている。十年前と比べると学力上位層の数が激減して、枯渇化現象を起こしている。根室の市街化地域の3中学校では、いまや学力上位層は絶滅危惧種なのである十数年前の1/10に減ってしまった
 学力テストの五科目合計点が400点以下では学校の定期テストでいくら高得点をとっても、高校生になって受ける進研模試の偏差値は50以下(公立高校普通科の全国平均点)である。

 この生徒も難関大学への進学を考えているので同級生と競っても意味がない。全国区での勝負ができなければならない。高校1年生になって進研模試を受けたときに全国偏差値が75を超えられたらいい。そのあたりを目標にして数学と英語を教えている。負けん気の強い生徒は学力に応じた難易度の問題集をやることで学力が伸びる、わたしは生徒のさまざまな質問にその都度答えることで背中を押すだけ。質問への答えは生徒の好奇心と学力に応じたものとなる。最終目標は独力で学習できるようになることだから、塾への依存心が起きないように注意して教えている

<余談:進研模試偏差値70超の生徒数>
 首都圏と同じように小学4年生から鍛えればの話だが、市街化地域の3中学校だけで、2~6人毎年そういう能力の生徒がいるようだ。同じ中学校で3~5人同時に出現するケースもある。郡部を合わせると3~8人というところだろう。
 今年の高校1年生で見ると全国偏差値70を超えている生徒は2人のみ。2~6人育てそこなった、もったいない気がする。そんなに偏差値70以上の生徒がいれば、医学部に進学する生徒が毎年いても不思議ではない。こういうレベルの学力で心根が真っすぐな根室っ子が東京でしばらく働いてから根室へもどってこれるようになれば、根室の町もずいぶん違ったことになる。
 たとえば、市立根室病院の常勤医不足は長期的にとりくめば解決できる問題なのである。医学部進学の生徒がが毎年でるようになれば、そのなかから戻ってきて地域医療を支える人がかならずでてくるし、優秀な人材が戻ってくれば市役所もまともな総合政策が立案できるようになる。
 子どもたちの学力低下問題や地元企業の経営改革という基本的な問題に目を背け、目先のことばかりに追われていたら市の政策を誤ることになります。現にそうなっているじゃありませんか。




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#3950 Sapiens と Homo Deus(2):不定冠詞の役割  Mar.13, 2019 [44-3. 原書講読講座 Sapiens]

 ハラリの著作のタイトルには2冊とも不定冠詞 a がついている、面白そうなのでまな板に挙げてみよう。

 Sapiens  A Brief History of Humankind
 Homo Dedeus  A Brief History of Tomorrow

  邦訳書のタイトルは、『サピエンス全史』『ホモデウス テクノロジーとサピエンスの未来』となっている。
 邦訳書のタイトルのニュアンスからは不定冠詞ではなくて、定冠詞がふさわしい。
 Sapiens  The Brief History of Humankind

 ではどのように違うのか。定冠詞theだとこれが人類史の決定版だという強いメッセージが伝わってくる。不定冠詞 a だと、人類史に言及した本はあまたあるが、これはその中の一つであるというメッセージが伝わってくる。

 ホモデウスのほうは、人類の未来に関する本はあまたあるが、これはその中の一つ、一つの可能性に言及したものであるというニュアンスが伝わる。人類の未来は絶対的でも確定しているわけでもないという著者のメッセージがタイトルの不定冠詞 a に込められているという風に読める。

 ところで、Deusとはなんだろう?辞書CALDを引くと次のようになっている。
 deus ex machina : an artificial or very unlikely end to a story or event, which solves or removes any problems too esily.


 「デウス・エクス・マキナ」、ラテン語である。マキナは機械を意味する。ギリシア劇で機械仕掛けの神がでてきて、人間が抱えている厄介な問題をいとも簡単に、ありえないやりかたで解決してしまう、そういう存在がdeusである。
 人工知能がそういう存在として人類の上に君臨する時代が間もなく来るのだろう。

 ところで、deusとは次のような方法でつくられた語ではないのか?
 devil+zeus=deus …ペケ

 デウスは魔王と全能の神ゼウスの両義性を有した存在のように感じる。うまいタイトルをつけた。AIは全能の神ゼウスなのかそれとも人類にとって悪魔の親玉である魔王なのか。
  でもね、deusはラテン語だから、英語のdevilとの合成語だという解釈は無理がある。ラテン語で悪魔や魔王のことをなんというのか、わたしにはわからない。
 ネットで検索してラテン語のオンライン辞書を引いてみた。魔王はないが悪魔はあった。diabolus、デアボルスと読むのだろうか。
 diabolus+Zeus=deus

 さらに検索したら、ギリシア語の全能の神zeusはラテン表記ではdeusであることがわかった。deusはまぎれのない神であり、魔王の意味はない
 このように、「推論⇒仮説a⇒チェック⇒推論⇒仮説b⇒…」こういう過程を繰り返しながら真実に近づくことが「思考」である。試行錯誤というではないか。(ダジャレ)


 話を元に戻そう。サピエンスは四つのパートからなる。
1.認知革命
2.農業革命
3.人類の統一
4.科学革命

 四つのパートからハリスのサピエンスが構成されているが、三つのパートで人類史を扱うこともありだし、五つもありうるのである。同じ四つでも項目が異なるケースもありうる。不定冠詞の a はそういうことを物語っているのだろう。ここでまた疑問が一つ増えた。1・2・4には「…革命」revolutionがついているが、3番目だけついていない。「人類の統一」ってどういうこと?本文を読めばわかるのだろう。疑問が一つ増えれば楽しみも一つ増える。
随時随所楽しまざるはなし。


 さて、これらを考慮してタイトルをつけるとすれば、『四つの視点から人類史を読み解く』、ちょっと長すぎるか。悪乗りして、ついでだからもう1冊のほうもやってみる、『ホモデウス:AIは神か?ありうる人類の未来』
 
 書き手がイメージした事柄を語彙を選んで文章にする、読み手は文章や語彙から書き手が脳に描いたイメージを自分の脳内に再現し、それを母国語で表現する、それが文章読解の妙である。
 冠詞は日本語にはない機能なので、それを短い日本語にのせるのはかなり厄介、翻訳者も迷ったのだろうか。
 この授業の対象者はいま1年生だが、読み始める7月には高校2年生、不定冠詞、定冠詞、無冠詞についてもこれまでと同じようにニュアンスに気を配って読むことになる。冠詞を的確に理解しないと書き手のイメージの的確な再現ができない。冠詞の理解が進むにつれて文章解釈に冠詞類という奥行きのあることがわかってくる。

*#3952 ゲノム編集技術の発展と人類の進化 Mar. 14, 2019
https://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2019-03-14

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#3949 Sapiens と Homo Deus(1):ハラリの視界  Mar.10, 2019 [44-3. 原書講読講座 Sapiens]

  ハラリの著作 Sapiens を高校生の個別指導英語授業で採り上げると前回#3948で書いた。対象の高校生は現在1年生、英語の進研模試の全国偏差値が75-80の間で、1月に初めて英検を受験している。中学時代は英検受験の経験なし、だからいきなり準2級だったが「英検バンド」(1次:GP+7、2次:GP+4)から判断するとすでに2級合格レベルをクリアしているようす。このペースで勉強していればこの生徒は1年以内に準1級にチャレンジしそうだ、好きにしたらいい。英検準1級なら東大医学部の入試英語でも大丈夫だ。
 英語の指導の仕方については前回書いておいた。
 この生徒は数学のほうが偏差値ははるかに高いが、じきに英語の偏差値も80を超えることになる。文法語法問題とアクセント問題はこの生徒に合うものを、高校の先生が選んでくれることになっている。なにかをきっかけにいろんな先生とコミュニケーションしたほうがいいのである。

 小中高生のいる医師が根室へ赴任してきても、子どもの教育はしばらくは心配いらない状態と言ってよいだろう。都会の進学校や進学塾並の受け皿がある。

 さて、本のタイトルだが、なぜ homo sapiensとせずに、sapiens としたのか、著者に何らかの意図があるはず。好奇心とか何かおかしいという違和感は感覚に属するのだが、同じものを見てもそういう感覚の働く人とそうではない人がいる。ある程度は感覚を磨くことはできる。わたしの違和感がどこから来ているのか追体験しながら読んでもらいたい。

 ハラリの別の著書のタイトルは「Homo Deus」である。こちらは homo という語がついている。homo の対義語は hetero である。卑近な例では、homosexualと heterosexual という語がある。
 homo はラテン語接頭辞で「均質」や「同じ」という意味をもつ。FB上で議論していたら、理化学研究所の職員のSさんが、リンネの学術分類で homo はラテン語で「人(名詞)」だという。
 wikiで引いてみたらなるほどそうなっている。
*https://ja.wikipedia.org/wiki/ヒト
**https://ja.wikipedia.org/wiki/生物の分類

 生物分類では、「哺乳サルヒトヒトヒトヒト」、ヒト属は homo、ヒト種が sapiens である。ヒト種には亜種があり現生人類は homo sapiens sapiens である。
 そこでハラリのもう一つの本のタイトルとの関係が気になってくる。Homo Deus だが、「機械仕掛けの神のごとき人」という意味だ。deusには神のほかに悪魔という意味もあるから、ホモサピエンスにとって悪魔の出現という意味合いも含まれている。sapiensはwise(賢い)という意味だから、それよりも格上で、悪魔かもしれぬヒト属の新種ということ。
 概念の整理は最初は試行錯誤であり、知識が広くないと方向を間違えて隘路に追い込まれて往きどまってしまうから、広い教養があったほうがよい。読解力はたぶんに読み手の教養の程度に左右される。

 neanderthal(ネアンデルタール人)の学名は「Homo sapiens neanderthalensis」であり、ホモサピエンスの亜種であるが、より優勢な亜種であるホモサピエンスに滅ぼされ絶滅したと言われている。日本人の遺伝子の中にはネアンデルタール人の遺伝子がほかの人種よりも高い割出で含まれているらしい。ホモサピエンスとネアンデルタール人は世界のあちこちで混血したのだろう。ネアンデルタール人は温和で平和的な種族で戦闘的な種族のホモサピエンスに絶滅させられたのかもしれぬ。
 世に戦乱が絶えぬのはsapiensの遺伝子に「他者支配遺伝子」が組み込まれているからというような学術的発見が将来なされたら遺伝子組み換え治療でもやるのだろうか?

 homo Deus はヒト属デウス種、つまりヒト属の亜種ではなくて新種ということになる。ネアンデルタールや現生人類というヒト属ヒト種とは異なるヒト属デウス種という新種の登場によってホモサピエンスが絶滅の危機に追いやられるとハラリは想定しているのか。ネアンデルタールにとってサピエンスの出現よりはるかに大きな影響がおきることは想像に難くない。亜種ではなく新種なのだから。
 AIやサイボーグの登場によって、現人類が大きな変化を受けるだろう。オーダメイドの遺伝子治療や皮膚や器官や臓器の培養技術の進化によって不老不死もある程度は実現できるようになる。技術が人間を進化させてしまう。
*#3952 ゲノム編集技術の発展と人類の進化 Mar. 14, 2019
https://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2019-03-14

 見方を変えるとホモサピエンスが進化して新人類「ホモデウス」が誕生してしまうということ。進化した homo deus の登場で、進化できない homo sapiens はどういう存在になるのか。新人類の homo deusからみたら、homo sapiens は動物園のチンパンジーや猿やゴリラのようなもの。それが人類の未来だ。
 AIの登場が経済社会のありかたを根底から変えてしまいかねないが、ハラリは旧人類史が終わり、新人類の歴史が始まることを、壮大な構想の中で論証してみせるのだろう。

 この本は480頁、16万語ある。高校3年の英語の教科書は7200語だから、およそ20倍の分量ある。そしてここに書いたような論理的な読解を一貫したやることになるから、英文読解スキルは飛躍的にアップするだろう。

 ハラリの論理構築のたしかさがどの程度のものか見てみたい。彼の本は3冊出ている。生徒と議論しながら読むことになる。
 じつに贅沢な授業だ、…わたしにとって。(笑)


<雑談:amadeus
 amadeusはサリエリがモーツアルトの才能をねたんで毒殺する映画のタイトルである。アマデウスには「神に愛された」という意味があるらしい。モーツアルトはWolfgang Amadeus Mozartと書くが、ミドルネームの中にdeusが含まれている。Deusが神なのか悪魔なのか定かではないが、英語のloveはフランス語ではamour、イタリア語ではamare、スペイン語ではamar、どうやらラテン系の言語ではamaが愛を意味するようだ。
 近江誠著『感動する英語』「第5章抗議する」に映画アマデウスのサリエリの独白が載っている。CDの音声を聴くとじつに迫力がある。サリエリはモーツアルトの才能をねたみ、神が自分ではなくモーツアルトを愛したことに抗議して叫ぶ、「カピスコ!アイノウマイフェイト」。
 Capisco! I know my fate. Now for the first time I feel my emptiness as Adam felt his nakedness...
 (なるほど! わかった!これがわたしの宿命か。アダムが自分の裸に初めて気がついたときのようにわたしは生まれて初めて、自分がいかに無意味で空虚な存在であるかに気がついた。)

 
*#3949 Sapiens と Homo Deus(1):ハラリの視界  Mar.10, 2019
https://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2019-03-10

**
#3950 Sapiens と Homo Deus(2):不定冠詞の役割  Mar.13, 2019
https://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2019-03-13


#3954 ハラリと大数学者岡潔 Nar. 30, 2019
https://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2019-03-31



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21 Lessons for the 21st Century

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感動する英語!

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#3948 学力トップ層への個別指導の実際 Mar. 9, 2019 [65.a 成績上位層にかかわる問題]

 英語の全国偏差値72の高1の生徒は、いま高3の教科書を使って精読&翻訳トレーニングをしています。滑らかな日本語を書くには日本語語彙が豊富なことと、英語の語彙の基本イメージがしっかりとらえられていなければできない技です。抄訳させてみたらどの程度の読解力があるかはっきりします。
 高3の英語の教科書を終了したら、ジャパンタイムズを読ませるつもりでいましたが、理化学研究所職員のSさんが、面白い本を読み始めたことをFBで知りました。それを原書で生徒と一緒に読もうと思います。
 はじめるのは高3の教科書が終わるのは夏休みころかもしれません、終わり次第 Sapiens にとりかかります。
 ’Sapiens’については稿を改めて#3949で扱います。

 この生徒はもうセンターレベルや進研模試レベルの難易度の問題は卒業です。1月に初めて英検を受験しました、準2級です。英検バンド(1次:GP-2+7、2次:GP-2+4)から判断するとすでに2級合格レベル
 どうやら勉強のやり方が功を奏しているようです。高校3年間の教科書を使って、「書き取り&精読⇒英文から受け取ったイメージをきれいな日本語文に変換してアウトプット⇒イメージ併用音読」を繰り返しただけ。代名詞や冠詞類にはとくに注意を払ってきました。目標は書き手が脳内にイメージしたことを自分の脳内に再現して、それを普段使っている日本語語彙を駆使して、なめらかに作文すること。読解が作文トレーニングにもなるように、複雑な文は生成変形文法を利用した構文解析も併用してきました。
 苦手の分野の文法語法問題集は高校の英語の先生が生徒のレベルにあった好いものを探してくれるそうですから、わたしは2次試験対策に重点をシフトします。大学3年次の「外書講読」レベルの授業を夏ころからやる予定です。

 学力トップクラスは好奇心が強い、そして理解力が大きいので、高校数学を超えた見通しがあったほうがよい。ベクトルは行列式と線形代数へつながる。ディープラーニングのプログラムは線形代数のお化けです。数学は現実の世界に深くかかわっています。
 複素数は複素関数へ、そして無限級数展開によって指数関数と三角関数が統一的に表現できるオイラーの公式へたどり着くわけです。複素数の世界は広大無辺です。こうした見通しがあって高校数学を学べば、学んでいることの意味が明瞭になります。
 教えるということは自ら学ぶということでもありますから、わたしはいま複素関数の本を読んで、自分の知識を広げています。
「随時随所楽しまざるはなし」
 弊ブログに投稿してくれるkoderaさんの口癖です。


 高校で学力トップ層を育てるというのは、大学教養課程でやるような内容のものを生徒の好奇心に応じて、広げて見せることでもあります。

 わたしはFB上でも教育に関する議論を何人かの人たちとしていますが、都立高校を卒業した方が次のようなことを教えてくれました。
 都立の進学校ではなかったのですが、物理は東大出身の先生がいて、物理の好きな生徒たちの求めに応じて、「7時間目の授業」をしていたというんです。そうしたことが都立高校ならあちこちである。そうした環境で育った場合と、田舎の教育環境で育った場合では、学力トップ層の学力の伸びは天と地ほども差ができるように思えます。

 ところで、弊塾には数学が得意だが英語がからっきしダメ、苦手という高1の男子生徒が4人います。進研模試で数学学年5位以内が3人います。一人は英語もずば抜けでできる、他の生徒がようやくやる気になりましたので、偏差値40前後の生徒4人を1年間で偏差値60超へアップするプロジェクトを開始しします。どういうことになるか楽しみです。英数の偏差値が60を超えれば、一般入試でそれなりの大学へ進学できます。
 国立大難関校の場合はZ会のタブレット端末をつかった勉強がいいようです。塾で教えていない科目、物理や化学や古典はそちらでやっているとNo.1の生徒が言ってました。

 極東の町だって、学校と私塾が協力することで、できることはたくさんあります。
   教育は町の礎



<今日届いた本です>
 この本を夏ごろから使います。480頁あります。20ページのword数をカウントしたら336語ですから16万語あります。高校3年の教科書の本文が7200語ですから、およそその20倍の分量です。1冊読み通したら、確固たる自信が生まれるでしょう。あ、偏差値40前後の4人の生徒はまったく別メニューでトレーニングします。個別指導のよいところです。
 高校教科書のword数については下記の弊ブログに記載があります。
*#3376 高3 受験生の夏 July 24, 2016
https://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2016-07-24


SSCN2600.JPG

https://www.amazon.co.jp/Sapiens-Humankind-Yuval-Noah-Harari/dp/0099590085/ref=sr_1_1?s=english-books&ie=UTF8&qid=1552104595&sr=1-1&keywords=sapiens


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#3947 個別指導塾の上手な利用のしかた Mar. 8, 2019 [71.データに基づく教育論議]

 ニムオロ塾は高校生の比率が増えています。四月から7割くらいになりそうです。
 高校入試が根室高校1校になってしまったので、塾で勉強する中学生が減少しました。低学力層の「底が抜けた」ような状況です。中学校で実施されている学力テストの得点分布から見ると、根室高校普通科の半数は15年前の根室西高校の生徒の学力です。1月に実施された進研模試の全国平均点と根室高校普通科の平均点は次のようになっています。念のために書いておきますが3科目とも100点満点です。

2019年2月進研模試平均点比較  
  国語 数学 英語 合計
a.全国  43.8 30.8 33.7 108.3
b.根室高校 36.4 20.0 19.6 76.0
a-b 差異 7.4 10.8 14.1 32.3

 大学入試は全国区ですからこのような学力状況では戦えません。今年度の大学入試の結果がまもなく根室高校ホームページに掲載されると思いますが、漏れ伝わってきたところでは国公立合格者はいまのところ室蘭工大と釧路公立大学のみ、推薦合格者かな。前期日程の合格発表がこれからですから、どうなりますか。道外大学はこの4年間で10人以下に激減しています。
  根室高校へ合格したからこれで安心という時代ではなくなったということです。

 ところで、入塾後の生徒の成績の変化を16年間観察した結果、成績向上についてわかったことがあるので、箇条書にまとめました。
 後半部の④と⑤と⑥は効果のないケースを挙げてあります。これらのケースでは成績が上がりません。


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  上手な塾の利用のしかた

 

塾へ通っても家で勉強しなければ成績は上がりません、あたりまえですね。

以下に、成績を上げる要点を箇条書します。

 

   個別指導ですから、家で勉強して、わからないところを質問してください。
 こういう勉強の仕方をする生徒が短期間で成績をあげています。

    家庭学習の目安は塾で勉強する時間の23倍です

家で勉強しない生徒は、翌週になると教えたことをすっかり忘れてしまう場合があります。そういうことを毎週繰り返すと、それが習慣となり、しまいにちゃらんぽらんな性格になってしまいます。好い習慣を身につけましょう。

   予習中心の勉強に切り換えましょう

学校の授業がとってもよくわかるようになります。予習して、わからないところを塾で質問してください。こういう学習スタイルの生徒のほとんどが上位20%圏内にいます。


   成績向上の阻害要因

    家で勉強して来ない生徒には休塾を勧めます

お互いに時間の無駄ですから。

    無断欠席が続いた場合も休塾勧告します

   スマホ依存症のケースは家庭で使用時間を制限するか、それができない場合は解約してください

 学習習慣がついて、成績が上がるまで使用時間の制限をするか、スマホをもたせないでください。

 

 家庭と塾が協力し、生徒自身に勉強しようという気があれば成績はしっかり上がります。やる気のない生徒はやる気が出るまで待ってあげたらよいのです。

 

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 休塾した場合でも、きちんと勉強する決心がついた場合は、優先的に受け入れますので、心配いりません

 



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#3946 部分最適は全体最適にあらず:カルロス・ゴーン保釈劇 Mar. 07, 2019 [8. 時事評論]

 作業着でご変装、ご丁寧にオレンジ色の反射材までついていた。弁護団の判断で、自宅を突き止められたくなかったのでやったようだ。ご本人も承諾したのだろう。背が小柄なうえに、あの変装ではまるで人間が小さく見えてしまった。スーツ姿で堂々と記者会見して自宅へ向かえば、住所は知れても、都落ちしてしまった印象はぬぐえたのでは。
 弁護士さん、すこしは頭のよい人が交代したのかと思ったら、あんな愚かな作戦を思いついて実行してしまった。それを了承したゴーンさん、もう判断力が正常じゃなさそうです。まともな経営者なら拘置所からあんな出方はしません。ビジネススーツで顔を晒して堂々と出る。
 こういうのを、「部分最適は全体最適にあらず」というのだろう。  元日産会長の威厳無し、最悪の作戦選択。
 従業員42000人の首を切り、私腹を肥やすことに一生懸命だった者の末路は哀れ。

*朝日新聞電子版より
https://www.asahi.com/articles/DA3S13922135.html
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マスク、眼鏡、作業着――。6日に保釈された日産自動車前会長カルロス・ゴーン被告(64)はカリスマ経営者の面影を隠すかのように、手の込んだ変装をほどこしていた。軽ワゴン車に乗り込み、逮捕から108日間を過ごした東京・小菅の東京拘置所をあとにした。
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**毎日電子版
https://www.msn.com/ja-jp/news/national/ゴーン前会長、鋭い視線変わらず-変装理由は「マスコミに住居知られたくない」/ar-BBUriLJ?ocid=spartandhp#page=2



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#3945 日米株価と円/ドルレートの推移から見えてくるもの Mar. 6, 2019 [91.経済]

 日米の株価の推移と円ドルレートをみていると、この2年間で大きな変化の生じていることがよくわかる。


 2017年3月7日(月)と2019年3月6日(火)の日米株価をダウ平均と日経平均で比べてみる。
  2017年    2019年     
 ¥19,379.14  ¥21726.28   差2347.14 
 $20,954.34  $25806.63  差4852.29
  113.92/$   111.89/$  差-2.03
 
 日経平均は2年間で2347.14しか上がっていないのに、ダウ平均は4852.29も上昇している。ドル/円レートはほとんど動いていないから、米国企業の評価額の半分しか日本の企業の評価額がアップしていないということ。
  日経平均とダウのポイントの差を見ても同じことがいえる。2017年にはその差は1575.2ポイントだったが、2019年には4080.35と差が2.59倍に広がった。

 米国企業の株価を押し上げているのはGAFA(google、Apple、FaceBook、Amazon)だろう。

 マイナス金利とGPIF(年金基金)の株購入と円安誘導による株価上昇に躍起になっても、米国の株式市場に比べて日本の株式市場は株価が半分しか上昇していない。長期的に日本企業が地盤沈下しつつあるように見える。日本企業の成長力が米国企業のそれに比べて弱体化しているのだろう。
 異次元の金融緩和や日銀による株式購入、ふるさと納税制度=合法的住民税脱税なんて馬鹿な政策をいつまでもとり続けていると、中小企業の経営力はさらに弱まる。小手先のごまかしをすればするほど、問題は複雑でややこしいものに化け、手に負えなくなり、膨らみに膨らんだ末にいつか破裂する。
 異次元金融緩和をやめたときに日本の株価は実態を表す。実態は現在の株価よりもかなり悪いのである。いまは金融緩和や円安誘導、そしてGPIFや日銀の株式購入で株価が膨らんでいる。
 2年後、3年後にこれらの数字がどのようになっているか興味のあるところだ。

 GAFAが上がりどまるあるいは大幅に下げるというリスクはないのか?
 そして日本企業の成長力はこのまま鈍化を続けるのだろうか?
 一律ではない、よくなる企業と悪くなる企業がある、業界も成長力をアップする業界とずるずるとダメになる業界に分かれてくる。人材次第だ。
 ブラック企業の行方も興味深いところだ、ブラックで人材難を抱えながらもしぶとく生き残るのはどういうビジネスモデルの企業なのだろう、世の中から悪がなくなることはないからそれもまた好奇心の対象となる。



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