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#1402 "患者様"と呼ぶことの副作用  Mar.1, 2011 [40. 医療四方山話]

  患者様と呼ぶのが良いのか悪いのか、医師の側の「副作用」にかかわる話しを聞いてみたい。

「患者様??」(m3.comより)
今一番hotな話題です。先ずは新聞記事をご覧ください。

 重体患者より「先に診ろ」…院内暴力が深刻化
   11/02/21記事:読売新聞提供:読売新聞
香川県内の医療機関で、職員が患者から暴力や暴言を受ける被害が深刻化している。先月には県内で、傷害や暴行の疑いで逮捕される患者も相次いだ。
これらの「院内暴力」に対処するため、ここ数年、専門部署を設置したり、警察OBを常駐させたりする病院も増えている。県も今年度、暴力の予防に重点を置いたマニュアルづくりに乗り出しており、医療現場での対策強化が進んできている。
 ◆深刻化
「何で俺を先に診察せんのや」。先月初旬、ある病院の救急処置室。路上で倒れ、救急車で運ばれてきた男が声を荒らげ、男性医師に突っかかった。病院には当時、心肺停止状態の別の患者がおり、その処置を優先したことに激高した。職員や看護師6人が取り押さえようとしたが、男は医師の胸を数十回突き飛ばし、病院が警察に通報。男は暴行容疑で逮捕された。
別の病院でもその数日後、「質問が気に入らない」と、職員の顔を殴った男が傷害容疑で逮捕された。
「早く処置をしろと言って胸ぐらをつかんだり、備品を蹴ったりするのは日常茶飯事」「看護師の首を絞め、殺すぞとすごむ患者までいる」……。複数の病院の担当者がそんな現場の現状を明かす。ある病院が職員約100人を対象に院内で調査したところ、4割が「患者から、身体的暴力を受けた」との結果が出た。
県によると、県立の4医療施設では、2-3年前から医師や看護師への暴言が目立ち始め、次第にエスカレートしているという。最近では、被害に悩んで辞職した看護師も出ている。担当者は「理不尽な暴力にじっと耐えている職員も多く、把握できているのは氷山の一角。本当の被害は計り知れない」とため息を漏らす。
 ◆対策
院内暴力の深刻化を受け、ここ数年、対策を本格化させる病院が出てきている。県立中央病院では2008年、マニュアルをつくった。騒いだり、必要のない治療を強要したりした患者には、院長が退去を命令できることなどを盛り込んだ。昨年には初めて、警察官を講師に、院内暴力の対処法講座も開いた。
 高松赤十字病院は05年、院内暴力などのトラブル対策を担う「医療安全推進室」を設けた。各科の待合室には「脅迫的言動をした患者は診療を断る」などと書いたポスターを張り出した。
両病院と、香川大医学部付属病院では、3-5年前から、県警OBの職員が常駐。警察とも緊密に連絡を取れる態勢を整備した。
 ◆予防へ
県は今年度、予防に重点を置く県立病院共通のマニュアルづくりも進めている。「見せる警備」を行う▽待ち時間を短縮し、待合室を静かにして、患者をいらだたせないようにする--といった内容で、3月末までに完成させ、来年度から県立の各医療施設で運用することを目指している。県立病院課は「院内暴力がこれ以上ひどくなれば、医療が崩壊しかねない。先手を打ち、食い止めたい」としている。

救急車で搬送されてきた患者が医師を始めとした7人に暴力を振るった・・・どう考えても可笑しいシチュエーションです。そんな元気な人間が救急車で搬送?きっと救急隊も収容現場で途方に暮れていたのでは。
この事件に対して多くの医師がコメントを寄せています。その大部分が、医療機関が「患者様」と呼ぶようになってから横暴な患者が増えて来た、と感じているそうです。何故「患者さん」から「患者様」に変わったのか。色々な説が有るようです。一説には千葉県鴨川市にある、何かと話題の提供に事欠かない「K総合病院」の院長が使い始めたとの事。とにかくマスコミ的にも派手な病院で、1泊何万どころかホテルのペントハウスのスイートルームのような超豪華病室を持っている所ですので、そりゃあ確かに「患者様(お客様)」でしょう。(笑)。それと最近何処でも接遇云々が取り沙汰されています。勿論基本的には職員教育は良い事と思いますが、しかし物には程度があります。患者を大事にするという事と、こちらが遜ることは違います。まして「患者」と言う状態は好ましくない状態なのに、それに「様」を付けるのは日本語として滑稽でさえある様に思われます。「患者様」と呼ぶべきだとの主張には、「医療はサービス業で、患者様はお客様なのだ!」と言う考えが見え隠れしています。この考えは看護師を束ねる組織や現場の婦長連中、そして病院事務方に強いようです。難しい本質を考えようとせず安易な表面上の取り繕いで誤魔化そうとすれば、それを相手に利用されるだけです。「そうだ、俺達は患者様だ。お客様だ。何でも俺達の言うことを聞け!」。

今の日本は何処かが狂っています。特に医療機関に対する世間の無理解にはほとほと参ります。例えば今度の香川の暴力患者の件にしても、世間の人々はあまり病院に同情しません。ところが、これが逆に医療側が患者に暴力を振るった」なんて事にでも成れば、もう非難の嵐でしょう。
医師が当直などでどんなに疲弊してもお構いなし。「だって医者だろうが。患者を診るのは当たり前だ。患者は何時でも医者を呼び出す権利がある。大体あいつらは普段から法外な給料を貰ってるんだから出てくるのは当然だ」。
診療費を払わずに逃げても全く反省無し。またしつこく請求しない医療機関。
「病院は散々儲かっているんだから別に俺が払わなくたって構わない。大体患者は病人で弱者なんだ。弱者は守られる権利があるんだ。何だったらマスコミに投書してやる」

これは余談ですが、札幌の大手の病院(精神神経科)の看護師に聞いたことがあります。「患者が暴れた際にはどうやって大人しくさせるの」「それは後ろから両腕を掴んで動きを静止させます」「例えば掴まえて投げ飛ばすとか蹴りをいれるとか、柔道や空手の技は」「そんなことしたら家族から訴えられます。過剰防衛で警察沙汰になっちゃいます」「じゃあ相手が刃物を持ち出して切り掛かって来た場合は」「それでも駄目です。剣道やってるからって棒の様な物で小手を打って刃物を落とすのも駄目です」「それじゃあ、下手したら刺されちゃうじゃない!」「ええ、まあそうなんですが・・・」。
どこかの知事が聞いたら、即座に「何馬鹿なこと言ってんだよ!自分の身を守るの、当たり前じゃないか」と激怒しそうですが(笑)。残念ながら何故か日本では、医療機関の中は外国に対してでなく自国に対して治外法権のようです。


by 医療四方山裏話 (2011-02-28 17:24) 


例えばebisuさんが消化器内科医で当直に当たっていても、結構何とか成ります。仮に直ぐに臨時手術に成るような急性腹症や臓器出血なども診断は内科も外科も一緒です。また脳梗塞や脳出血の患者が来ても、診断はCTやMRIで出来ます。むしろもっと小さな事の方がやり難いかも知れません。板前さんが包丁で指を切って出血を抑えて飛んで来て「縫ってくれ!」。何とか出血部を消毒・圧迫止血して局所麻酔の注射針を縫う部位に刺してナイロン糸で連続縫合する手順ですが、場数を踏んでいないと頭で考える程手際良く行きません。慣れからくる度胸が多少必要ですね。多分ebisuさんが困惑するのが妊産婦でしょう。これは産婦人科以外の何科の医師でも敬遠し勝ちです。ほとんどの医師はお産を実習で見たことは有る筈ですが、当事者になって実際にお産を取り上げた経験は殆ど無いでしょうから、即産婦人科医を呼ぶか、居なければ最寄りの産婦人科医の居る病院に搬送ですね。その搬送の手段として、道東にもドクターヘリがスタンバイしていますので、日中ならば以前よりは搬送が楽に成りました。
基礎的な部分ではどの科もそれ程大きな違いは有りませんので、経験が有る医師であれば一人で当直していてもまあまあ最低限のレベルでは役に立つと思います。(眼科医にとってはちょっときついかも知れませんが)。
by 通行人 (2011-02-28 23:30) 


【言葉は時と場所と機会に応じて使い分けよう】
 アンダーライン部はずいぶんと横柄な主張です。患者の側も節度を心得なければなりませんね。テレビでどこかの町で医師との会話集会で「医者だから24時間患者を診るのは当たり前だろう」と言い張っていた住民がいましたが、あんな街へ赴任したいと思う医者は稀でしょうね。どこの街にもそうした人は小数ながらいるでしょう。たくさんいたらたまりません。

 ずいぶん前のことになるが診察の順番で看護婦さんにクレームを言っている患者さんがいました。行き違いはあるから予約時と約束が違うという主張は理解できるが、言い方が気になった。
 還暦をとっくに過ぎた年齢の方だったが、家族に対するようなぞんざいな言葉づかいで看護師さんへくどくどと文句を並べている。看護師さんは赤の他人なわけだから、それなりの言葉づかいがあるはず、TPOで使う言葉を分けるのが大人の所作の一つであると私は思う。
 ご当人はざっくばらんでいいと思っているのかもしれないが、回りで耳にする者にとっては聞き苦しく、横柄に感じてしまう。こういう患者が根室には他の町よりすこし多いのかもしれない。そういう人を"患者様"扱いしたらどこまでゴンボホルかわかったものではない。数年前には夜間診療に来て「乱暴狼藉」を働いた大莫迦者もいたようだ。癪にさわるが、上にも(市政や地元経済団体)下にもこういう手合いの多いのが根室の欠点ではある。

 お互いに礼を失しないようなコミュニケーションをしたいものだ。症状を伝えてきちんと診察してもらう、それでうまくいく。
 家庭の躾や職場での躾の役割は大きい。躾の崩壊している家庭が増えていることは想像に難くないが、職場での躾もルーズなのではあるまいか。そもそもお手本を示せる大人が少ないのだろう。人材の枯渇はこうした躾面にも現れているような気がしてならない。

 

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「ベンツが欲しかった」(m3.comより)

駐車場に止めてあった高級外車「ベンツ」の車体に持っていた鍵で「ベンツ」と削り書きしたとして、千葉県警船橋署は3日、器物損壊の現行犯で、同県船橋市海神、開業医、八 木佳彦容疑者(58)を逮捕した。同署によると、八木容疑者は「自分もベンツが欲しかったが、買う金がなかった」と容疑を認めている。逮捕容疑は同日午後1時15分ごろ、 同市海神の市中央保健センター駐車場で、止めてあった面識のない歯科医師の女性(57)=東京都江戸川区=が所有するベンツに、自宅の鍵を使って一文字約20センチの大き さで「ベンツ」と削り書きし、傷つけたとしている。同署によると、八木容疑者が犯行に及んでいるところを、駐車場を利用していた男性(46)が発見し取り押さえた。

何とも身につまされる記事です(笑)。以前札幌でのキャンピングカー入手作戦失敗談を書きましたが、あの時「お前、医者なのに600万程度の金も持って無いのか!?」でした。Benzにも様々の種類が有り安いBenzなら同程度の金額位でしょうか。
知り合いにゲレンデバーゲンと言う4WD(BenzのGクラス)に乗っている医師が居ますが、その車は1000万を越えるそうです。

どうもBenzは金持ち度を計るバロメーターにされていますが、新車or中古車(中には盗難車を再生した物まで)、どのタイプか、何台目の車かなどで、単に「Benzに乗っているからあの人は云々・・・」とは言えないでしょう。ファラーリやリンカーン・コンチネンタル、ロールスロイスを乗り回すほうがむしろ金持ちに見えますが・・・。しかし思い返して見ると、小生が馬鹿にされた例の札幌の金持ちもそれらの車は持っていながら日常の乗用はやはりBenzでした。

この元ネタに対しての医師の反応は様々ですが、面白いのは「歯科医(女医)のBenzに開業医が嫉妬した」と言う構図に、「もうこれからは医者も終わりだな・・・」と言う書き込みや、「歯医者のほうが人数が余っているから収入が苦しい筈なのに、何故にBenz?」、「開業医の癖にBenzも買えないヤブ医者!」etc。
1人「どうして新聞社はこんな程度の事でも医者だと名前を出すんだ!?」と何時ものようにマスコミにキレた方が居ました。実際医療関係(特に医師)のトラブルに関する記事には、かなりの確立で早い時期から実名が晒されます。それに対する医師側の感想は、「医者や病院が叩かれる記事は読者に受けるから、マスコミは出来るだけ悪辣に表現する」と感じている者が多いようです。
by NO NAME (2011-03-04 11:30) 

医療四方山裏話

「マスコミの功罪」(m3.comより)

福島県立医大、医師を“玉突き”派遣 移動短く診察長く へき地医療支援システム
11/03/03記事:毎日新聞社提供:毎日新聞社

 福島県立医大(福島市)から2病院を通して医師を“玉突き”で医療過疎地の診療所に派遣する「へき地医療支援システム」が注目を集めている。都市部の大学病院から直接診療所に派遣する仕組みが一般的だが、県立医大方式は医師の移動時間が短くて済み、診療にじっくり取り組める利点がある。11日に開かれる文部科学省の医学部定員に関する検討会で、菊地臣一学長が全国的にも先進的な「福島モデル」として概要を発表する。
 システムは04年度に開始。
(1)県立医大の助手15人を県立会津総合病院に週   1回派遣
(2)会津総合は助手受け入れで診療時間が空く医師   を県立宮下と県立南会津の両病院に派遣
(3)同じく余裕ができた宮下から柳津町と金山町の   国保診療所に、南会津から只見町国保朝日 診   療所に医師を派遣する。

 これにより、柳津町で毎週月曜▽金山町で毎週火~金曜▽只見町で隔週木曜--に内科医と整形外科医の応援が受けられるようになった。 玉突きの元となる助手は、臨床研修が終わったばかりで、県立医大で研究しながら診療に当たる。県が1人当たり年間800万~1000万円の人件費を負担する。安くはないが、立場が不安定になりがちな臨床研修終了直後の助手を好待遇で迎えることで医師確保ができる。県立医大は助手枠を90人に増やし、別事業では地域の拠点病院に定期的に派遣するなど、地域医療再生に取り組んでいる。【種市房子】

以上が日本中の医師の間で毎度お馴染み”医師の敵”な毎日新聞の記事です。それに対して次のような書き込みがありました。

「こんなのうそです」
 当方は、この情報にある地域側に勤務する医師です。県からの補助が出て大学にお金が入り、大学からは県立会津に毎週派遣がありますが、県立会津はそもそも人的余裕がないので、応援は受けますが玉は突きません。 玉突き方式が県民に公表される前から、(玉突きがないころから)宮下病院から金山診療所・柳津診療所の応援は行われていたし、只見診療所ががたがたのときは県立会津から応 援はありませんでしたが、県立南会津病院から只見診療所への応援がなされていました。県および福島県立医大が地域医療に貢献しているような書き方ですが、事実は大きく違い ます。県立南会津病院・宮下病院・只見診療所は自治医大卒の医師で成り立っており、その病院間で助け合っているのが現状です。県立医大から月何回が応援が来ていますが、玉 が衝かれる以上にもっと田舎の診療所への応援が自治医大卒の医師によってなされ、玉が衝かれない分、南会津病院および宮下病院の自治卒の医師ががんばっている事実があるこ とを真実どおり
公表していただきたいです。

毎日新聞の記事と、この医師の書き込みを比べて戴きたい。皆さんはどのように理解されたでしょうか。

本来最初から大学から末端の診療所にワンステップで医師を送れば済む話を、何故に3ステップで? 
それぞれのステップで動くのは勿論常勤医ではなくアルバイト医です。勘の良い方はもうお気付きでしょう。時間当たりの給料が高いアルバイト医がA→B→C→Dと玉突き状態で動けば、1人で済むところを3人が動く事に成り、それぞれの移動で交通費、アルバイト代などの経費の増大が生じます。勿論事務的な手間暇も掛かります。 更に医師を送り出すA、B、Cの病院では、そのスケデュールに依ってはその医師が診ていた患者さんを他の医師が診なければ成らないケースも考えられます。何故こんなシステムを考えたのか・・・思うにA大学病院の医師はプライドが高いので僻地の診療所などには行かない。しかしせめてB県立病院なら我慢して行く。同様なドミノ倒しがB、Cについても起きるなら「末端のD診療所にも医師が来る」と言う理屈です。

しかし実際には、投稿された該当地域の医師のお話では違っている。確かにA→Bまでは有ってもそこから先は無い。C病院やD診療所は自治医大OBの医師が頑張って支えている・・・つまり福島県の発表は事実とは違う。もしその医師の言う通りだとすると、毎日新聞は何時ものように全く調べずに(裏を取らずに)意味も分からず提灯記事を書いていることに成ります。

因みに、医師の世界に(主にネットで)”聖域”と言う言葉が有ります。つまり”禁断の地”ですから「行ってはならない場所」と言うわけです。福島県はかって「大野病院」事件で”聖域”の仲間入りを果たしている地域です。あの時福島県当局は大野病院に対して不利に動きました。その事を日本中の医師たちは何時までも忘れません。(実際あれ以降産婦人科医たちの”お産離れ”が加速しています)

by 医療四方山裏話 (2011-03-04 13:32) 

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