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#4900 まんぞくまんぞく:女剣士小説のドラマ化 Dec. 31, 2022 [44. 本を読む]

 昨日、NHK衛星放送で「まんぞく、まんぞく」という池波正太郎の小説が放映された。7000石の旗本の娘が主人公で、石橋静河という女優さんが主人公を演じていた。
(あらすじと主人公のプロフィールは青字部分をクリックしてください)
 当時の道場での稽古は木刀である。型の稽古を積んでからでなと速い動きでの打ち合いはかなり危険で、そうしたシーンを撮るには、振付師がついて相当練習しないとぎこちなく撮れてしまうはずだが、女剣士は流れるような美しい打ち合いを演じて見せていた。
 2段突き、3段突きのシーンがあったが、2段目や3段目はつんのめってしまうものだが、剣先がするすると伸びるので、相手の男優さんがおろおろして見えた。脚がついていっているのだ、足さばきというのだろう。膂力のある突きや振りにはなっていないが、体さばきがとってもよく、美しい。打ち合って交差して、ターンするときも重心がしっかり座っている。振付師がいたとしても、こんな動きが素人にできるわけもない。ところが剣道の有段者には見えない、動きが違う、流れるようにきれいなのだ。いや、偉い女優さんを見つけたものだなと、しきりに感心しながら、剣劇シーンに見入った。
 敵討ちのシーンが秀逸だった。格上の使い手に対して、脚を切られてびっこを引きながら押しまくられ、転び、あわや一刀両断のところで、婿入りすることが決まっていた男が駆けつけてきて手裏剣を投げる。振りかぶった敵役の左手の甲に刺さるが、その手裏剣の柄を口で噛んで引き抜く。右手で引き抜いたら、怪我をした左手では剣を構えることはできないからだ。その隙を女剣士は逃さない、そういう剣の遣い手だ。手の甲から手裏剣を口で引き抜くシーンはどうやったのだろう?ほんとうに手の甲に刺さった手裏剣を引き抜いたように見えた。撮影の細部も凝っている。
 そのあと女剣士は何度か打ち合って、剣先が折れ飛んでしまう。剣先が飛んでしまったので2/3ほどの長さになり、絶体絶命である。ところが女剣士は、迷わず敵役の浪人に間合いを詰めて打ち込んでいく。
 普通は打ち込めない、長さが違うから相手の間合いに入ったら自分の剣が届かぬうちに切られてしまう。まさか、そんなはずがと浪人が慌てた一瞬に、素早い動きで身体を交わしながら背中から体当たりをした。死中に活を求めるとはこういうことを言う。後ろ向きのまま自分の肩越しに浪人を刺す。
 切っ先が折れているから、刺さるはずがないところはお愛嬌だが、間合いを詰めるために飛び込むその勢いはとても速かった。あれではからだをかわせない。なんであのような動きができるのかと不思議に思った。

 気になるので、石橋静香さんのプロフィールを検索したら、クラッシックバレーのプロということが分かった。どうりで足さばきがいいわけだ。配役を決めた人がすごいね、女剣術とバレリーナが頭の中で結びついたのだから、ひらめきがすごい!このドラマは剣技が見ものです。

 池波正太郎の小説は30冊は読んでいるだろうが、この原作は読んだ覚えがない。江戸の人情を描くのが実にうまい作家である。このドラマの見どころの一つも人情だ。7000石の旗本の一人娘の外出は籠が原則だろう。おつきの家来の金吾が護衛に当たって外出した。お寺から近道で帰ろうとわがままを言って、人通りにない近道に入ると、浪人数人が強盗を働いている現場にでくわし、目撃者として命を狙われる。金吾が追い付いてきてあわあというところで、2人を切り捨てるが、残った一人が手練れ、娘をかばって後ろから刺されて絶命してしまう。その敵打ちがしたくて、剣術道場に通い始めたのだ。めきめき腕を上げるが、その剣筋には殺気が宿っている。道場では師範代になり、だれも彼女には勝てない。
 父親に自分よりも強い男でないと結婚しないと宣言するが、彼女より強い男は現れない。旗本の三男坊・織田平太郎に白羽の矢が立つが、立ち会うもなかなか勝てない。律儀な男でなんども立ち合いを所望する。浪人を切ったことで、間合いの見切りがさらに一段と磨きがかかってしまうので、そのあと道場で立ち合いをしても、やはりかなわない。
 女剣士は「勝ち負けなんてどうでもいい」、そう言うが、律儀な男は納得がいかない。
 私はあんたに惚れたんだから、もう私より強い男なんてこだわりがなくなりましたということ。律儀で野暮な男はそんな女心の変化にちっとも気がつかないところも頓珍漢で愉しい。

 最後のシーンもよかった。満開の桜が咲いているお寺の前の茶店で二人で甘酒を飲んで笑い合っていた。再放送されたら、たくさんの人に見ていただきたい。

 さて、これが今年最後の記事になります。
 ことしも弊ブログをお読みいただきありがとうございました。
 来年もよい年でありますように、お祈り申し上げます。


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