SSブログ

#5304 定冠詞theの使い方:"I play the piano."  Oct. 14, 2024 [49-4 英作文トレーニング]

 I play the piano.
 この文の定冠詞theの使い方がわかりません。納得のいく説明を見たことがないのです。

 冠詞類を専門的に解説している本は少ないのです。貴重な一冊である、津森光太著『aとtheの底力』から引用してみます。
 「これら、楽器のtheは、「全体の一部」を表すtheである、という説明がしばしばなされます。楽器というものは楽団の中で他の楽器とアンサンブルで使われますから、全体の一部という意味でtheをつける、という説明は非常にわかりやすいものです。」p.185

 ピアノソナタがあるくらいですから、オーケストラやアンサンブルを前提としない場合には定冠詞のtheはつかないかというと、そうでもなさそうです。とても納得できる説明ではありませんね。

「play the piano, play the guitarというのは、ピアノとか、ギターとか言った、モノと戯れていることを意味するのではありません。「楽器を演奏する」とは、「楽器を使って音楽を創り出す」ことであり、このときには、「楽器=音楽」です。play the piano , play the gutarといった表現は、play music(音楽を演奏する)のmusicの代わりに楽器を置いた表現です。楽器に込められた「音楽」というエッセンスを、theをつけることによって、話している相手にわかるように抽出する、と考えることができるのではないでしょうか。(楽器に付くtheについては「いつも同じ自分の楽器を演奏する」のでtheをつける、という説明をすることもあります)」同書p.186

 わかりましたか?さっぱりわかりませんよね。この説明は著者の妄想や屁理屈の類、と言ってもいいくらいです。わからぬものはわからないと書けばよろしい。
 もちろんわたしも解説できません。

 ところで、ドイツ語では、次のように無冠詞で書きます。piano=Klavier(中性名詞)です。
 Ich spiele Klavier.
  ドイツ語は無冠詞のことが多い傾向はありますね。たとえば、I am a doctor.は、ドイツ語ではIch bin Arzt.ですから、英語のように不定冠詞がありません。Ich bin ein Arzt.とはいわないのです。(この場合はフランス語も同じですね、無冠詞です。Je suis medecin.)

 フランス語では、次の文のように、「前置詞+定冠詞」付きです。
 Je joue du piano.
   duは「前置詞de+定冠詞le」の短縮形です。ドイツ語でもそうですが、フランス語と英語の前置詞は「多対:多対応」になっていて、仏英辞典を引いてもその機能がよくわかりません。pianoは男性名詞です。

 イタリア語では、定冠詞つきです(pianoは男性名詞です)。
 Io suonare il piano.
 "il"は単数で子音字で始まる名詞につく定冠詞ですから、英語と一緒です。

 英語もドイツ語もフランス語もイタリア語も、冠詞という機能をもった言語ですが、「わたしはピアノを弾きます」というそれぞれの言語表現をみると、定冠詞付き(英語とイタリア語)、無冠詞(ドイツ語)、前置詞+定冠詞(フランス語)という具合に、バラバラなのです。
 英語のI play the piano.という文のピアノに定冠詞theがついているという理由を説明するには、どうやらドイツ語の文では無冠詞になり、フランス語の文では前置詞+定冠詞つきになる理由を明らかにすることでもあるように思えてきました。

 冠詞類にはaと anと theと 無冠詞という4通りありますが、この"I play the piano."という文のpianoに定冠詞がついている理由と意味がわたしには解らない。こんなに簡単なことがちっともわからないのです。

 理由があるはずです。明快な説明をお持ちの方がいらっしゃったら、投稿欄で教えてください。

*フランス語とイタリア語の文は英語の文をグーグル翻訳機能を使って、フランス語訳しました。イタリア語は明らかに語訳だったので、訂正してあります。

<余談-1:名詞の性>
 ドイツ語の名詞には三つの性、男性・中性・女性がありますが、フランス語とイタリア語の名詞の性は男性か女性のいずれかで、中性名詞というのはありません。スペイン語も男性名詞化女性名詞の2種類ですから、ラテン系の言語(ロマンス語派)に共通の特徴かもしれませんね。だとしたら、ポルトガル語も名詞の性は2種類ということになります。ところが、元々のラテン語の名詞の性は男性・中性・女性の三分類なのです。言語が枝分かれしたときにロマンス系言語から中性名詞が失われたのはどういうわけでしょう?ドイツ語を話す人たちの方がラテン語の名詞の性をそのまま受け継いだようです。ドイツ的合理精神というのは、こういうところにも表れているとみるべきなのでしょうか?
 言語学者ってとってもたいへんそうです。

<余談-2:不定冠詞のつくケース>
 ピアノのショールームに行って、十数台あるピアノの中からどれか一つを弾きたいときは、
 I would like to play a piano, wouldn't I?
  という風にいいます.
 十数台ある中のどれか一つを弾きたいという場合には、もちろん不定冠詞をつけます。特定のモノを指してはいませんからね。

 "I play the piano."は、どうやら、「状況から推して、弾くピアノが特定の1台に決まっていると話し手と聴き手が了解している」ということのように思えます。
 すると、ドイツ語はどうして無冠詞なのでしょうね。無冠詞はpianoの機能を表しますから、「メロディを奏でる」という意味合いでドイツ人は考えているのかもしれません。冠詞は話し手が頭の中で何をどのようにとらえているかで、その都度選択されます。ですから、使われた冠詞から話し手が頭の中で何を・どのように考えているのか推測するしかなさそうです。
 謎は謎のままで、しばらく熟成するのを待ちましょう。待つことも必要なのです。(笑)


*#2465 冠詞論 :目からうろこが落ちる解説  Oct. 25, 2013

#2447 仮定法とは何か(2): 概念規定と基本型 Oct.13, 2013

 
<10/17アクセスの多かった記事>
#4696 小1のとき吃音があった:母が音読につきあってくれた Jan. 19, 2022


にほんブログ村
 

aとtheの底力 -- 冠詞で見えるネイティブスピーカーの世界

aとtheの底力 -- 冠詞で見えるネイティブスピーカーの世界

  • 作者: 津守 光太
  • 出版社/メーカー: プレイス(Jbooks)
  • 発売日: 2008/12/01
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

nice!(0)  コメント(2) 

nice! 0

コメント 2

モクロー君

ごぶさたしております。音読トレーニングを楽しんでいらっしゃるようで。
もっとスピードの速いのをテキストなしでやってみると面白いですよ。大学受験レベルなんぞは完全に超えますけどね。でもメリットはあって、ぼんやりしていても、耳に入るCNNやらネイティブ同士の会話やらなんとなくわかってしまいます。もう10年近く前に貴ブログにコメントしたトレーニング方法です。

本稿「楽器名につくtheの働きは?」ですが
ご自身でも書いておいでです。
謎のままでいい

まだ後志にいた頃(私がコメント欄に投稿した5年程後)にも親しくなった米国出身者達(大学卒業の人達です)に
Why do you say,“play the piano,not play piano?I mean why do you say with the?”とかなんとか尋ねると、一様に首を傾げて、わからない。と答えました。

ネイティブでも自覚していないことに理屈を付けるのは一部の人に任せておいて、そういうものだでいいことだと思います。




by モクロー君 (2024-11-03 13:27) 

ebisu

モクローさん

play the pianoのtheはやはり理由は不明ですか。
英語だけで考えていてもわからないし、ドイツ語、イタリア語、フランス語と広げて比較しても、理由はやはり不明です。言語によって定冠詞の扱い方がpianoに関しては違います。
投稿ありがとうございます。

音読の方はアガサの小説朗読が178words/分ですから、こちらはNHK英会話ダイアログの1.5倍速。

映画を字幕なしでしばらく鑑賞してみます。
今は字幕を頼ってみてますので。
今日は、多摩川沿いのサイクリングロードを20㎞走ってきました。人が多い(笑)

だんだん寒くなってきました。
ご自愛ください。


by ebisu (2024-11-03 19:17) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。