学力テスト総合Aは9月実施、柏陵中学校は釧路根室管内で入手できた18中学校では最下位だった。
*#4099 学力テスト総合A18校科目別データ Oct. 11, 2019
https://nimuorojyuku.blog.ss-blog.jp/2019-10-11


 10月に実施された学力テスト総合Bの結果データは次のようになっている。




柏陵中
5教科
国語
社会
数学
理科
英語


総合A
107.3
36.6
23.0
15.8
17.6
15.8


総合B
108.8
31.1
24.9
13.3
18.9
20.8


B-A
1.5
-5.5
1.9
-2.5
1.3
5.0




 国語と数学が前回よりも下がっているが、これは両科目の問題の難易度が総合Aよりも高かったためだろう。高いと言っても、道内の公立中学校で実施されている学力テストは、問題の難易度が低い。

 各科目60点満点、五科目合計点は300点が満点である。
 国語は20点以下が65人中18名で、27.7%を占めている。四人に一人が20点以下だということ、この得点層は、授業を聴いても内容理解に支障が生じている学力層である。語彙力不足で、先生が使う語彙を頭の中で適切な漢字に変換できない。「形容詞は名詞をシュウショクする」と先生が言っても、「就職?」どこへ?ってな反応になる。適切な漢字に脳内で自動変換できなければ、意味は伝わらない。
 この層は本を読まない生徒層と重なっている。小学校低学年では週に9時間国語の時間が配当されている。先生たちは時間が多すぎて持て余し気味だと聞く。ぜひ、毎週3時間、ルビの振ってある良質の日本語の作品の音読トレーニングに充当していただきたい。ルビが振ってあれば、斉藤孝『音読破シリーズ・坊ちゃん』でも古典の朗読でもいい。『論語』でも『往生要集』の中からピックアップしてもよし、中島敦の重厚な語彙がふんだんに出てくる作品でもいい。意味は分からなくていいのである。ようするに、正確に速く読めたらいい。文学作品なら、声音を使い分けてやってみるのもいい、言葉が体になじんでくる、そして知っている語彙数が数倍に増える。

<学力崩壊のメカニズム>
 数学が13点というのは2002年に東京から戻ってきて、11月に小さな私塾を開いてから、2度目に見た平均点だ。2017年に啓雲中学校の学力テスト総合Bの数学の平均点が13.3だった、弊ブログ#3630に書いてある。同じ年(2017年)の学力テスト総合Cの数学の平均点は10.9点、これがこの十数年間で最低記録だろう。今回の柏陵中学校の13.3点はおそらく釧路根室管内の18校中最低。まだ、5校しか集まっていないので、集まり次第アップする。
 5点以下が25人、38.5%もいる。三人に一人は5点以下ということ。入試は裁量問題だから、得点源で20点ほど配点されている「大問1」は出題されないから、5点以下の生徒たちは全員0点となる。20点以下は50人いて、76.9%を占める。定員割れで根室高校へは全入だから、生徒たちは来春から高校1年生だ。20点以下では、普通科の標準的な難易度の教科書は理解できない。四人に3人は数学の授業についていけない。だから、今年の2年生から、数Ⅱは選択科目になっている。来年は数Ⅱと数Bを選択する人数がさらに減りそうだ。点数の低い生徒へ数Ⅱを選択しないように「科目選択指導」を強めている。どうやら根室高校の数学担当の先生たちは匙(さじ)を投げたのだ。この学力低下と数Ⅱ選択科目化は何を意味するのだろう?根室高校普通科の生徒の半分以上がかつての根室西高校と同等かそれ以下となるということだ。廃校になった根室西高校では、数Ⅱ授業は必修科目でやっていたのではないか。根室高校では1年生の選択科目である数Aを2年生でやっていた。根室高校普通科卒業生の半数は2年後から、数学に関しては根室西高校生の学力以下ということになるだろう。選択科目となって新登場するのは「ベーシック数学」だそうだ。生徒たちの話では、中学数学の復習程度の内容だという。先生たちがそう説明しているのだろう。根室高校では、いま来年度の科目選択調整をしている。
 数Bを選択する数学力を仮に学力テスト35点以上とすると、65人中3人しかいない。根室市内全体でも15人前後だろう。35-40点はゼロ人、41-45点が2人、45-50点が一人である。50点以上がいない。50点以上がいないのがあたりまえになってきた。

 五科目合計点の学年トップは261-280点の間に一人、次が221-240点の階層に1人、201-220点の階層が4人いる。201点以上の得点は6人である。成績上位層が枯渇しつつある。五科目合計点が80点以下は27人、41.5%を占めている。60点以下に絞ると18人、27.7%である。四人に一人強が60点以下。
 こんなに成績下位層が膨らんでしまったのは、根室西高校が廃校になって3年がたち、成績下位層の生徒たちが「全入」であることを知ってしまったこと、そして根室高校で落第がないことを中学生が学習してしまったからだろう。学習意欲のない生徒が4割を超えてしまった。高校統廃合のしかたを間違えるととんでもない学力低下を引き起こしてしまう。わたしが古里に戻ってし私塾を開いてから16年たつが、この学校の一番よい時の五科目合計平均点は160点台であったいま100-110点の間であえいでいるように見える。昨年は100点を切ったことが数回あった

 学力の基礎をなすのは「読み・書き・そろばん(計算)」だから、国語と数学の得点が低いことは、それも釧路・根室管内で最低レベルということは由々しい問題である

 英語だけは問題の難易度が前回よりも下がったようで、5点アップしている。中標津広陵中は3.3点アップ、釧路市美原中は3.7アップ。18校平均値はこんなにアップしないだろうから、英語の地域間格差は少し縮んだらしい。それでも20点以下は31人、47.7%を占めている。英語が苦手の生徒には有効な対策が打たれていない。それは根室高校へ進学してからも変わらない。わたしは、英語が苦手な高校2年生5人に、毎週水曜日2時間の特訓補習授業を10回やっている、9回目が今週終わった。アレルギーはとれたようだ。英語の勉強を進んでするようになったから、いずれ効果は出てくるだろう。学校で同じことを放課後補習でやってくれたら、たくさんの英語が苦手の生徒たちを救える。小さな私塾が面倒みられる生徒数はたかが知れている。

 釧路で社会保険労務士事務所を運営し、明光義塾の教室5つを釧路と中標津で展開し、1年ほど前から「夕緋」という社名でイチゴ栽培事業を始めているM木さんは、五科目合計点が80点以下では、まともな職に就けないだろうと言っている。わたしも同じ意見である。理由は明快、上司の指示が理解できない、必要な資格がとれないからで、それではいくら人手不足になっても正規社員として雇われるのはむずかしい。非正規雇用で職を転々とせざるを得なくなる。子どもたちの将来にとっても、低学力化のこれほどの進行は脅威になる。非正規雇用から正規雇用に這いあがれなくなる。もちろん、地域の子どもたちの学力が下がると、そこから人材を採用している地元企業の体力も弱る、弱るだけならいいが、人材難からつぶれるところも多くなる。

 根室の大人のみなさん、子どもたちの低学力化の進行にもっと関心をもってもらいたい。
 教育講演会が二つ行われるので、ぜひ出かけてください。生徒たちも行って、大人の意見を聴いてみたらいい。

 #3630 学力テスト総合B:学力向上をどうやるか Oct.23, 2017
https://nimuorojyuku.blog.ss-blog.jp/2017-10-21-1


*#4107 教育講演会10/22・4時から市総合文化会館:鶴羽佳子 Oct. 19, 2019
https://nimuorojyuku.blog.ss-blog.jp/2019-10-19


**#4097 教育講演会開催10/28案内:大越拓也 Oct.8, 2019
https://nimuorojyuku.blog.ss-blog.jp/2019-10-08



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