<最新更新情報>5/3追記「沈没の観光船 定点連絡怠る 「当社の落ち度」社長が規定違反認める」朝日新聞より

 26人が載った遊覧船が知床半島沿岸で4/23午後に沈没した(有)知床遊覧船という運航会社の2隻の船の内「KAZU 1」は昨年2度座礁事故などを起こし、亀裂が入ったままで修理がなされていなかったという人もいる。風が強くて4社のうち3社は出航を見合わせていたのに、一社のみ出航した。運の悪いことに救助用のヘリは他の仕事で出払っており、給油をするために釧路の基地へ戻ってから知床半島へ向かったので、3時間もかかって、救助が間に合わなかった。大事故はこうしていくつものハードルを乗り越えて起きる。
 10人が発見されたが全員死亡、16名は行方不明。水温は3度だから、30分も海水に浸かっていたら体はしびれて動かなくなるし、意識もなくなる。

 COVID-19パンディミックの影響で、2年間売上が半減していた。修理代も出せないほどの経営状態だったと仮定すると、内部留保が薄く、零細な企業ということになる。
 船に乗る従業員は船長のほか2名、2年間経営はじり貧でCOVID-19もいつ終わるかわからない。根室管内は最近SARS-CoV-2PCR検査陽性者が増え続けている。「30-40/人」の日があたりまえになっていた。
 船の修理代を稼ぐためにも、従業員に給料を支払うためにも、なるべくたくさんの客を乗せて遊覧をしなければならない事情があった
 こういうときに、内部留保の厚い企業は無理をしないですむ。企業経営者は1年間は売上がなくてもやっていけるだけ、内部留保を厚くしておきたい。そうでなければ、危険を承知でも出向せざるを得ないような状況が生まれてしまう

 安全な知床半島周回遊覧をするためにも、こうした遊覧船を運行する会社は内部留保を厚くする努力もしてもらいたい。では、どれだけ内部留保を積めばいいのだろう。おおむね1年分の売上高に等しい内部留保があれば、2年間は売上がゼロでも設備に手入れをして、従業員に給料を支払えるから、そこをめどにしてもらいたい。年間売上金額に等しい内部留保があれば、規模は小さくとも、内部留保は一流企業だなによりも経営基盤が安定し経営者も従業員も大きな不安なく仕事に専念できる
  一部の遊覧船事業会社の無謀とも思える運行の実態が明らかになると、他の遊覧船運行企業も影響を受けるだろうな。COVID-19は3年目に入ったが、今年も売上が半分のままになりかねない事態が発生してしまった。
 まことに痛ましい事故だ。沈没した船が発見されて、早く引き揚げられることを祈ろう。

<船尾喫水線>
 船尾喫水線とは船尾の底から水面までの距離で、これが大きいと高波を受けると浸水する。遊覧船は船尾喫水線から甲板上までは距離が小さく、高波を受けると簡単に浸水するから、波の高い時は出航しない。風が強かった一昨日は、他の3社は危険だと判断して船を運行していない。
 鉄製の船だったら少し事情がちがっていただろう。鉄製に比べるとFRP製の船は軽くて強度がない。船が走行を始めると船首が上がり船尾が下がる。だから風が強いと船尾の方から浸水しやすい。今回の船の場合は船首部分に10-15cmの亀裂があったそうだから、船が波をかき分けて進むときに船首部分に大きな圧力が加わわるから、船首部分の亀裂が広がり浸水したのかもしれない。安全にもう少し配慮ができたら、なかった事故だろう。
(続報では船首部分から浸水して沈んでいったようだ。やはりちゃんとした修理がなされていなかったのではないか)
 この船は昨年2度事故を起こしているのに、シーズン初日に無理な出航ができた。北海道や国土交通省の「行政指導」上の不手際も感じられる。じっさいに、修理が完全になされていないまま、遊覧客を乗せて出航している。査察が必要なのは道の関係機関や国土交通省自身もだろう。行政の仕事も事故が起きぬようにきちんとやるのはなかなかたいへんだ。公務員もよき仕事人であれ!

<4/25夜10時半追記>
 知床遊覧船の会社の実態が今日になってからニュースで流れ始めました。
 ●昨年2度も座礁事故を起こしている
 ●経営者が変わり、ベテラン船長以下5人を解雇してしまった
 ●資金繰りに追われていた
 ●座礁した船を今年の3月まで修理していなかった
 ●無理な運航をしていた
 ●新しい船長は知床の海に不慣れだった
 ベテラン船長の解雇理由がふるっている。ベテラン船長だと30-35万円かかるから、経験のない船長だと経費が安くて済むという理由のようだ。こんな悪天候でも出航したことから、わたしは内部留保が薄く資金繰りが火の車であると推測、売上確保のために無理な操業をしたと、仮定した通りの経営の実態が今日になって明らかになりました。
 乗客はそんなことわかりません。運営会社や船長そして甲板員を信用して載っています。他の遊覧船運行会社はそれにこたえることのできる安全管理と経営の安定をしてもらいたい。商売は信用が一番大切です。

<4/26追記>
 経営者は旅館業を営んでいる人のようです。こちらの経営もコロナの影響でとっても厳しいでしょう。一度だけ遺族の前に出てきたようですがそれっきりです。こういう事故が起きたときは経営者が出てきてマスコミにも遺族にも謝罪と説明をするのが常識です。
 しかし、それすらできないように見えます。事故の経緯すら詳細につかんではいないのかもしれませんね。テレビで数人のコメンテータが一体どうなっているんだと言ってましたが、首都圏の常識が全く通用しないと思った方がいい。オフィシャルな対応ができないレベルの経営者ということ。
 顧問弁護士のいる企業なら、まず弁護士と事実関係を整理しながら対応を協議します。言ってはいけないことと、言うべきことを確認してから記者会見の望むでしょう。しかし、顧問弁護士はいません。どうしたらよいか相談できる人が周りにはいない。言い訳を考えているのでしょうが、右往左往しているうちに時間だけが経って行きます。
 
<4/27午前0時半追記>
 (有)知床遊覧船の社長は桂田精一氏。元陶芸家で旅館業も遊覧船業もやったことのない人です。この企業は(有)知床村(宿屋)のグループ会社。株式会社武蔵野の小山昇代表取締役がコンサルタントをしています。「数字は人格」をキーワードに経営コンサルをしていたようです。桂田社長は小山氏の言いなりになっていたようですから、安全面への配慮のないコンサルをしていたとすれば、小山氏の責任も問題になるやもしれませんね。
 桂田氏はこの人に連絡を取っていま事故への対処の指南を仰いでいるのでしょう。これから出てくる言い訳は、このコンサル企業の指導に沿ったものとなるのでしょうね。どういうコンサルか、桂田社長の言い訳に如実に表れると思います。
 経営コンサルティングはその会社の業務内容を熟知していないとできるものではありません。遊覧船の運航会社ですから、運航に関わる法律や実務を知らないでコンサルティングができるはずがないのです。「数字は人格」なんてことを言っていたようですから、コロナで赤字になってからも、業務もわからずに安全上削ってはいけない経費まで削るようなコンサルティングをしたのでしょう。桂田社長もどうかしています。こんなコンサルタントの言うままに遊覧船の運航会社を経営していたのですから。

 遊覧船に乗る前に、運行会社の経営状況まで調べないといけない時代になったようですね。

*情報ソース
知床遊覧船KAZU1の会社はどこで社長は桂田精一?経歴を顔画像付で紹介|ナナカマドおすすめ情報雑記 Blog (nanakama

4/1付のダイヤモンドオンラインの掲載記事です。
なぜ、世界遺産知床の「赤字旅館」は あっというまに黒字になったのか?(2018年4月1日)|BIGLOBEニュース

<4/29追記>
 ●会社の無線のアンテナが壊れたのは1月か2月のこと。桂田社長は4/23事故の起きる日の朝9時過ぎに船長から壊れていることを聞いて修理依頼をしたと説明。修理依頼された会社は普段取引がないので断ったと証言。つまり修理依頼は出されていない。そういう中での出航でした。
 ●衛星携帯電話は故障中。国の検査は書類のみで衛星携帯電話が使えるかどうかは実地検査していないとのこと。国の検査が書類のみででたらめだということも判明している。
 ●携帯電話は予定航路周辺エリアでは通じないauのもの。

 これらのことから、いったん海に出てしまうと連絡の取れないことが判明した。
 ●桂田社長は船長へ天候が悪化ししたらすぐに戻って来いと指示したという。国土交通省側の説明では安全基準上そういう運用はありえないとの説明。しけたらあの船では戻ってくるのは不可能なので、海が荒れる予想があったら出航しないというのが国の安全基準でそれ以外は認めていない。どうやら安全基準遵守義務違反が恒常的に行われていた様子。4/23は午後から海が荒れるので他社の船は一つも出ていない。桂田社長は海が静かだったので出航させたと証言。午後から荒れるという情報を無視したということ。
 周辺の人や同業者の証言では、桂田社長は普段から海が荒れて他の会社が遊覧中止をしているのに、船長に出航を強要していることがあったという。そういう不都合な話は桂田社長からは一言もなかった。都合の悪いことは隠している。記者会見での説明は、責任を船長個人に押し付けようとしているように見えた。対応に誠実さがまるでない。今日初めて死者を安置している建物の外から手を合わせた。
 
<4/30追記>
 船は船首が30度傾いて沈没すると連絡があったカシュニの滝の近くの120m海底に沈んでいる。自衛艦掃海艇の潜水艇型水中カメラが発見し、船名を写真に収めた。船の引き揚げ方法はまだ見通しが立っていない。数か月では無理なようだ。

<5/1追記>
 今日5/1の北海道新聞によれば、Kazu-1の衛星電話は1年前から故障していてつかえなかった。昨年のシーズンも衛星携帯電話なしで操業していたということ。無線は機能していたから昨年は何とかなったのだろうが、その無線も事務所の方のアンテナが1月か2月には折れて使い物にならなかった。こちらも2か月以上あったのに、操業までに間に合わせて修理するつもりがなかったように見える。修理依頼の電話は事故当日4/23の9時半ころだ。それも取引のないところへ電話して断られている。そういう話も桂田精一社長は説明会で隠していた。
 「数字は人格」なんて指導をするコンサルタントに洗脳されて、経費をケチって利益をあげることばかり考えていたのだろう。

<5/2追記>
 有限会社知床遊覧船を業務上過失致死で強制捜査。海上保安庁が120mの海底から沈没船を引き上げられる飽和潜水技術をもったサルベージ会社へ仕事を依頼。

<5/3追記>
  朝日新聞記事より
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 北海道・知床半島沖の観光船沈没事故で、運航会社が事故当日、ルート途中の定点連絡を怠っていたことが分かった。安全運航のため、作成を法で義務づけられた規程に違反していた。また規程上、運航管理者も務める社長は原則として事務所で勤務する必要があったが、不在にしていた。同社のずさんな運航実態がさらに明らかになった形だ。

 観光船「KAZUI(カズワン)」の運航会社「知床遊覧船」(北海道斜里町)の桂田精一社長が、乗船者の家族に配った資料で明らかにした。桂田社長は資料で「当社(私)の落ち度」として規程違反を認めたうえで、「(規程通りの運航なら)事故の発生を回避できた可能性はあった」と述べ、謝罪した。
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 今までわかった範囲内では、どうやらこの会社は法で定められた「ルート途中の定点観測連絡」を普段からしていなかっただけではなく、運行管理者である桂田精一社長は事務所で勤務していなければならないのに、不在だった。周りの証言とあわせると年に数度しか事務所にはいなかった模様。運行上の安全確保に関する法令をまったく知らずに経営していた。
 周りの同業者3社は知っていたのだろうが、だれも国土交通省の担当部門へ告発していない。同業者のことは言いづらいのだろう。しかし、船に乗る人のことを考えたら、言うべき。安全運航上重要な事実を告げるのはチクるみたいで気分がよくない。類似のことが他地域で起きても同業者は管轄の役所には言わないだろう。だから、国土交通省は現場へ出向いて実地検査をしなければならないということ。そのために必要な人員を増やし、予算を割り振るべきだ。 

 運行管理者の資格要件は国家資格を有しているか3年以上の実務経験のあること、本件遊覧船運航の場合は船長または甲板員としての経験である。届け出をしているはずだからなぜ国土交通省が許可したのか、桂田社長とともに責任を問われるだろう。

 内航海運業法施行規則より引用
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第13条の2
【安全統括管理者の要件】
法第9条第2項第4号の国土交通省令で定める要件は、次のいずれにも該当することとする。
内航海運業の安全に関する業務の経験の期間が通算して三年以上である者又は地方運輸局長(運輸監理部長を含む。以下同じ。)がこれと同等以上の能力を有すると認めた者であること
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