昨日夕方の記者会見で安倍総理が辞任表明をした。歴代最長の在任記録(2799日)を更新した8/24の4日後のこと。
 持病の潰瘍性大腸炎の悪化によるというのがご本人の説明であった。新しい薬剤があるようで、点滴で一日がかりの治療をようするから、隠してはおけない。にっちもさっちもいかなくなり、辞任表明に追い込まれたのだろうか。記者会見を額面通りに受け取れば、致し方なしである。

 潰瘍性大腸炎とクローン病がどう違うのかよくわからないが、どちらも特定疾患に指定された難病である。

 2006年7月にスキルス胃癌で釧路医師会病院へ入院(当時57歳)したときに、70歳の胃癌の人と60歳ほどの膵臓がんの患者さんと20歳くらいの人潰瘍性大腸炎の患者さんと同室になった。潰瘍性大腸炎は潰瘍を起こした大腸が壊死してしまうので、手術が必要だった。彼は二度目。病気のために学校も退学したと言っていた。大腸を一部切除するので、直腸に近い方をいじると、便の出る方向が以前とは変わってしまい、始末にこまる。家から外出するときはどこに洗面台のついたトイレがあるのか確認しないと落ち着かないと言っていた。若い人が潰瘍性大腸炎を発症するとその後の人生が長いのでさぞ大変だろう。当時は難病指定で、まだ有効な薬剤がなかった。患者数の少ない難病は、特効薬と開発しても大きな売上が見込めないために、製薬メーカが創らない。そういう薬剤をオーファンドラッグ(孤児の薬剤)という。難病指定の病気が対象の薬の開発には国から補助金が出ている。
 スキルス胃癌の1年後、元塾生がクローン病で釧路医師会病院へ入院したことを知った。3か月ごとの定期点検のときに、病室へ顔を出して、病状を確認した。さいわい、手術の必要がなかった。いま元気に働いているようだ。心配だった。

 病を得て、仕事をしていると、健常人のみなさんよりは、病状次第でいろいろ日常生活に制限が生じる。わたしも週に四日間だけ、授業をしているが、食事は6回に分けてしているし、昼寝も1時間している。12時間数学の問題を解き続けても、スタミナが切れるということはなかったが、スキルス胃癌の手術後は2-3時間で脳のスタミナが切れてしまう。やっかいだ。
 潰瘍性大腸炎もクローン病も完全に治るということはなさそうだ。薬剤による寛解導入療法(症状を和らげる)と壊死してしてしまえば除去手術しか手がない。
 安倍総理大臣もなにかと日常生活で病から来る不便に耐えていたのだろう。一番きついのはとつぜん襲う便意である。ほんとうにたいへんだ、はやくお辞めになって家でくつろいでもらいたい

 さて、8年間の仕事の評価は病気とは別の問題である。
 北方領土問題は、四島での共同経済活動が進んだとは思えないし、プーチンと27回も会談をしたが、結果はどうなったか。プーチンは憲法を改正して、第二次世界大戦で取得した領土は自国のものなので、返還できないようにした。国後島の戦車やミサイルは最新のものに更新されている。射程130㎞の地対艦ミサイルが配備されているが、根室まで70㎞だから、根室管内の四市町村はすべて射程圏内である。メドベージェフ首相も国後島を訪問し、自国領土は渡さないと国後島民へ公言するようになった。
 安倍総理の7年余の在任期間を通じて、北方領土問題のハードルは手の届かぬ高みへ上がってしまった。舐められたものだ。外交なのだから、相手の出方に応じて対抗措置が何かあっていい。


 北方領土関係者の意見が今朝の北海道新聞に載っているが、評価は厳しい。
「元島民、落胆 領土交渉進まず」…見出し
「首相は日ロ平和条約を締結したいと情熱を傾け、ロシアのプーチン大統領と27回も会談を重ねたのに」(千島歯舞諸島居住者連盟脇紀美夫理事長)
「領土問題に必ず終止符を打つと言っていたのに約束を守らず、まったく無責任だ」(択捉島出身者の岩崎忠明さん)

 石垣根室市長がただ一人、間の抜けたコメントを発表。
「元島民の気持ちに寄り添いながら、北方領土問題を外交の最優先課題として取り組んでいただいた。辞任後も、重鎮としてお力添えをいただきたい」8/29北海道新聞朝刊第2社会面

 事実と自分の意見を混同したコメント。東京でのデモ行進でも根室市内の関係者集会でも「島を返せ!」って叫べなかった年すらあったのだが、もうお忘れか。


 アベノミクス三本の矢については稿を改めて評価してみたい。

<余談:病状に関する疑惑報道>
 唐突な潰瘍性大腸炎の悪化を言い訳にした辞任には、「7月の首相の動向=会食履歴」を丹念に追って、疑念を報じている記事もあります。6月に潰瘍性大腸炎再発の兆候があることを知った、7月中頃には悪化していたと記者会見で述べているのだが、事実と矛盾する。口は重宝なものだ。
*安倍首相が会見で語った「病状」が矛盾だらけ!「潰瘍性大腸炎の兆候」「体調異変」と説明した時期に連日会食、しかも仏料理にステーキ

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7月21日には松濤のフランス料理店「シェ松尾 松濤レストラン」で長谷川榮一首相補佐官、前秘書官の鈴木浩外務審議官、秘書官らと食事し、翌日22日には銀座のステーキ店「銀座ひらやま」で二階幹事長、林幹事長代理、自民党の元宿仁事務総長、野球の王貞治氏、俳優の杉良太郎氏、政治評論家の森田実氏、洋画家の絹谷幸二氏と会食。


 さらに、7月30日には、丸の内の「パレスホテル東京」内の「和田倉」で自民党の岸田文雄政調会長と会食している。和田倉は日本料理店だが、新聞各紙の報道によれば、安倍首相はここでもステーキを注文。鶏の生姜焼きを注文した岸田政調会長とビール、ウイスキーの水割りを酌み交わしたという。


 これがほんとうに「潰瘍性大腸炎の再発の兆候」があり、「体調が悪化」した人の食生活なのだろうか。潰瘍性大腸炎の活動期は、消化しやすく、高たんぱく・低脂肪の大豆製品や鶏肉、魚類などが推奨され、脂肪の多い食品や、油を使用している料理、アルコール類は控えめにするよう指導されるはずなのだが……。


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 長く続けたマイナス金利で金融政策は行き詰まり、河井元法相とその夫人の選挙に関しては安倍事務所の秘書が陣頭指揮をしていたことから、何が出てくるかわからない。なにより、新型コロナに関しては有効な具体策が見いだせない。東京オリンピックも中止の可能性大である。点滴による薬が効いて本人は元気だと明言しているから、現状、体力的な問題で辞任する理由がない。嫌気がさしたのだろう。第一次安倍内閣のときと状況が似ているとこの記事が指摘している。

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当時、第一次安倍政権では、次々と大臣の「政治とカネ」問題が噴出して“辞任ドミノ”が起こり、さらには「消えた年金」問題が追い打ちをかけ、2007年7月29日の参院選で安倍自民党は惨敗。与野党勢力が逆転する「ねじれ国会」となって、様々な法案審議がストップした。すると、それからわずか約1カ月半後の9月12日、安倍首相が唐突に辞意を表明するのだが、この辞任会見で安倍首相が語った理由は、テロ対策特別措置法に基づく海上自衛隊のインド洋での給油活動を続けるために「私が辞することによって局面を転換したほうがよいだろうと判断した」というものだった。…


ところが、翌2008年1月発売の「文藝春秋」に安倍首相は「わが告白 総理辞任の真相──突如、襲った体の異変。今、初めてすべてを明かす」と題した手記を発表。そこで「潰瘍性大腸炎」という持病を抱えていることを告白して、辞任を正当化。これが復活の狼煙となって、最終的に政権に返り咲くわけだ。


 今回は辞任発表と同時に「潰瘍性大腸炎」を持ち出したという違いはあるが、やり口はこのときと同じなのではないか。辞任の本当の理由は政治的に追い詰められ、嫌気がさしたからにすぎないのに、政権投げ出しを正当化するために潰瘍性大腸炎を持ち出す──。


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 事の真偽のほどは、安倍総理の動向を見ていたらわかる。
 共同通信社が2019年11月に実施した世論調査では、「桜を見る会」に関する安倍晋三首相の発言を信頼できないと答えた人は69%、信頼できると答えた人は18%だった。モリカケ問題以降、首相の言は国民に信頼されていない。それでも自民党支持率は落ちていないから、首を挿げ替える必要があるのだろう。



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