ディーゼルエンジンの米国排ガス規制を逃れるために、VW社はエンジンコントロールソフトと排ガス装置に細工したようだ。「卑怯で卑劣」な行為である。問題はそれがなぜ可能になったのかということだろう。開発設計部門が課題を達成できずにインチキをしたとしても、VW社のような大企業で関連のある他部門が気がつかぬはずがないし、品管部門の権限も大きい。たとえば、排ガス装置をフル稼働させたら寿命が短いことはそれをつくっている部門自身が知らぬはずがない。
 おそらくトップを含む数人の上層部が関与していたのだろう。内部告発がなかったことも事態の深刻さをあらわす。

 米国で排ガス規制違反で2兆円の課徴金、そのほかにリコールで8兆円ほどの損失が見込まれているから、この事件でVW社が当面被る損失合計は3兆円。純利益の2年分だから損失額は大きいが、大幅な売り上げ減少が生じなければ十分に乗り切れる範囲だろう。2014年度の決算情報を検索したので、ご覧いただきたい。

日経新聞2月28日
http://www.nikkei.com/article/DGXLASGM27H68_X20C15A2FF2000/
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独フォルクスワーゲン(VW)が27日に発表した2014年12月期決算は、純利益が前期比20%増の108億4700万ユーロ(約1兆4500億円)だった。傘下の高級車メーカー、アウディとポルシェの販売が伸び収益性が向上した。営業利益は9%増の126億9700万ユーロと大きく伸び、過去最高を更新した。

 売上高は3%増の2024億5800万ユーロ、新車販売台数は4%増の1014万台と、これらも最高を更新した。会計上は金融収支に計上される中国事業も好調な販売が続き、利益に貢献した。
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 2014年度の純利益は1.45兆円あるから、2年分の利益でカバーできそうだがそうはならない。信用失墜による今期以降の売上げ減少の影響のほうが大きい。

 アウディやポルシェがVW社の傘下だが、この2社の持株が放出されるだろう。アウディは日本市場で人気が高い、そして品質の点でドイツと並ぶのは日本であるから、交渉しだいでアウディがトヨタグループ入りする可能性がある。しかしトヨタ側にはグループ全体の売上額が増える以外にメリットがあるだろうか?異質のラインが増えるのは面白いことではある。

 VW社会長が辞任を表明した。昨日事件が報道されたばかりだから、ずいぶんすばやい対応である。知っていたということだろう。
 株主代表訴訟によっれ、取締役は責任を問われ、取締役には巨額の賠償責任が生ずる。


<日本の商道徳> 
 ビジネスの倫理が問われている。日本には江戸期から商工業ビジネスのあるべき姿が伝わっている。
 「売り手よし、買い手よし、世間よしの三方よし」

 暇な方は、油井常彦著『都鄙問答』をお読みいただきたい。石田梅岩の「都鄙問答」の解説書である。「商人と屏風は歪めば立たず」、日本にはいい言葉が伝わっている。
 根室の企業家はこういう本を読んで勉強してもらいたい。25年後に人口が1.8万人になっていても、住みよい町になっているだろう。



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都鄙問答 (岩波文庫 青 11-1)

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