これも生徒が貸してくれた本の中の一つで、時雨沢恵一という作者の作品である。川原礫のSAO(ソードアートオンライン)の枠組みをそっくりいただいて、別の主人公がフルダイブ型のオンラインゲームを楽しむ物語である。内容も日本語語彙も文章表現も小学生高学年レベルの本である。
 ゲームの中身が人対人の殺し合いをいうところがSAOとは異なる。こういうゲームが開発されたら、兵士のトレーニング用に使われるだろう。

 この本(シリーズ)は完全な娯楽本で読解力や語彙力強化にはまったく寄与しない、ほとんど漫画の本に近いレベル。面白いことは間違いないが、深みのない面白さといえば伝わるだろうか。
 中学生がこういうレベルの本しか読んでいないとしたら、日本語語彙力が貧弱で高校生になって全国模試を受験したときに、国語・数学・英語はともに偏差値40(全国レベルで百人中84番)以下になるだろう。数学の問題は文意を捉えられない。国語の論説文はスピードと難易度の両方で手も足も出ないということになる。日本語ができなければ、まして英語は・・・ということになる。正答できるのはネイティブの小学生レベルの日常会話文に限定されることになるだろう。

 ところで、表紙に主人公がP-90というピンク色に塗られた銃が描かれているが、生徒がの一人がたまたま偶然にもっていた。スマホから銃を構えた写真を引っ張り出して見せてくれたが、同じ型の銃だった。電気銃で色はクロ。
 大正10年生まれだったオヤジのアルバムの中に、落下傘部隊に所属していたときの写真が何枚かあったが、よく手入れされた真っ黒い機関銃に二本足をつけて地面に固定して構えているものがある。黒い外套を着て映画のシーンのような写真だった。銃を構えた若いころのオヤジは映画俳優のようなイケメンで精悍な顔つきをしている。さすがは陸軍最強の秘密部隊のメンバー。

 この物語ではさまざまなタイプの銃がでてきて、その都度説明がなされているが、オヤジが構えていた真っ黒い機関銃のような凄みや重みが文章からはちっとも伝わってこなかった。所詮はオンラインゲームの世界の創りごとだから、現実感が薄くてよいのかもしれないが、文章表現次第ではなかっただろうか。オンラインゲームであろうとも、毎日十分に手入れされた銃の凄みを伝える文章表現力をもってもらいたいと思った。

<新潮社の百冊>
 1976年から毎年公表されているが、年々レベル低下しているような・・・、「2014年版新潮社の百冊」を紹介する。2番目のURLはウィキペディア。37年間で25回以上選ばれた作品22冊のリストがあるので、高校卒業までにこちらは全部読み、使われている語彙の幅の広さを体験してもらいたい。
http://100satsu.com/

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%96%B0%E6%BD%AE%E6%96%87%E5%BA%AB%E3%81%AE100%E5%86%8A

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その他、2012年までの37年の間に25回以上選出された作品は、以下の通り。


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<余談> ・・・4日7時追記
 わたしはこの本を小学生や中学生の皆さんに薦めているわけではない。好奇心をもっていろんな本を読むこと自体はよいが、新潮文庫の22冊に挙げられている本くらいは中学生の内に全部読み切ってもらいたい。
 koderaさんがわが意を強くする投稿を寄せてくれたので紹介したい。
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 私なら子供にこんな本やゲームは買わせません。お小遣いをあげないからです。もっとも今でも孫にお年玉もあげません。
 私は、私に将棋で勝ったときにあげます。二枚落ちプラス香桂落ちですが。いい勝負なのです。孫は貯金しています。
 娘には、嵐が丘や小説十八史略や、漫画でもキャプテンやプレイボールなら買ってあげました。
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 孫と飛車角桂香落ちで将棋が指せるというのはアマ2段以上、おそらく4段クラスの棋力だろうから、定石と基本手筋は一通り教えられる。こういうお祖父さんがいたら将棋好きな孫は幸せ者。
 じつは家に電気銃「P-90」がある生徒も将棋が大好きだ。お父さんにはぜんぜんかなわないと言っていたが、4枚落ちではなく2枚落ち。将棋好きでも本を読まない子どもは棋力がなかなか上がらないし、定石や基本手筋に習熟することができない。学力の高い生徒は将棋の解説書を読むから、読み出すと急激に棋力が上がってしまう。理論研究をする者は上達が速い。
(将棋が好きな生徒には将棋の本を貸してあげたり、あげたりすることがある。私はビリヤードが趣味だから、書き溜めたセミプロの技術ノート(配置図面とコツを描いたもの、中にはスリークッション世界チャンピオンの小林先生に教わったものもある、昭和天皇のビリヤードコーチだった吉岡先生の短クッションを折り返すアメリカンセリも)を体育系の部活をやっている生徒にみせることがある。理論研究の大切さを知ってもらいたいからだ。)

 漫画の本にも名作は数が多い。koderaさんが挙げたものの他に、手塚治『鉄腕アトム』『釈迦』『不死鳥』『ブラックジャック』等々、斉藤タカオ『ゴルゴ13』(高校同級生の神田猛が斉藤タカオの一番弟子)、『タッチ』などがすぐに思い浮かぶ。日本の漫画の本はレベルの高いものが多いので、それらを読むことは否定しないし、私自身もスキルス胃癌で入院したときまで漫画の週刊誌をずっと読み続けたきた。中学1年生のときに少年マガジンと少年サンデーが発売された、そのとき以来44年間週刊漫画誌のファンであった。いまの子供たちは、ゲームや漫画の本に夢中になるとそこからレベルを上げていくものが少ないので心配している。好奇心が旺盛で、学力が上がってくれば日本語語彙の貧弱な本は飽きてくるというのが自然だ。ところがいつまでもレベルが上がらない者が多い。そういう子どもたちは、精神的にもひどく幼児化している。読む本のレベルを上げて精神の成長を育んでもらいたい。

*#2882 ソードアートオンライン007 マザーズロザリオ Nov. 26, 2014 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-11-26

 #3051 『ソードアートオンライン・プログレッシブ』001~003を読む May 31 2015 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-05-31



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