根室市議の中では元病院課長職であった本田市議が病院問題に一番詳しい。他の市議は必要な知識がないから具体的な質問ができない。5月15日午後7時から総合文化会館で説明会を開くようだから、市立病院の今後に関心のある方は押しかけて聞いてみたらいい。
(5月8日付の本田市議ブログによれば、活動報告会は5月14日に変更になった。時間と場所は同じである。たくさんの市民が押しかけて地域医療問題への関心の高さをアッピールしたいものです。そうして他の市議も動いてくれたら最高です。市議を動かすのは市民、そうありたい。)

 市立病院が診療所になったら困るでしょ?
 市側は市民説明会を開いて状況説明をしようとしないし、赤字の推計データや常勤医師の退職情報などさまざまな情報を隠蔽している。別に不都合は生じないから正直にありのままの現状を説明すればいいだけなのに・・・

 5月3日付本田市議のブログにデータが整理されているので、紹介方々、ざっくりと解説してみたい。

*「平成24年度の患者動向について」(本田市議ブログより)
http://nimuoro.typepad.jp/honda/2013/05/24-016f.html


 グラフから数字を拾って一日当たり外来患者数の推移を並べてみると、
   平成20年 556.2人
   平成21年 574.1
   平成22年 525.4
   平成23年 497.8

 497.8人/556.2人=89.5%(10.5%)
 3年間で外来患者数は10.5%減少している。では、この3年間に根室の人口はどれだけ減ったのだろう?

 29,015人/30,469人=95.2%(4.8%)・・・2008年からの3年間の実績値(2010年)
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  このデータは少し問題がある。2010年のデータが国勢調査データであるのに対し、2008年のデータは住民基本台帳のデータであって、国勢調査データではない。都会へ進学したした生徒たちのかなりの部分が住民票を移していないために住民台帳上は根室にいることになっているが、国勢調査の際には根室に住んでいないのでカウントされない。国勢調査データを使って減少率を出すと次のようになる。
 29,201/31,202=93.6% (6.4%・・・5年間の減少率)
  6.4%/3×5=3.8% ・・・3年間分の減少率  
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 23,494人/30,469人=77.1%(22.9%)・・・12年後(2025年)
 21,571人/30,469人=70.8%(29.2%)・・・17年後(2030年)

 根室の人口は4.8%減少したのに、病院の外来患者数は2倍の10.5%落ちている。なぜだろう?
 約30%が老人であるのに、医療療養型の病棟がないからその分の患者が市立病院に入院できずに市内外の他の施設へ行っていることも影響があるだろうが、それは外来患者減の理由にはならない。病人の割合が減っているわけではないだろう。
 人口に対する病人の割合が一定だと仮定すると、市内の医院や市外の大病院への通院が増えていることが想像できる。そうだとしたら、なぜそういうことが起きているのか適切な分析がなければ対策も打てない。
(コメント欄に指摘があったが、平均通院頻度が下がっても一ヶ月当たり患者数が減少するとはいえる。気をつけないと細かく分析すればするほど迷路にはまり込むことがあるのがデータ分析の落とし穴。ざっくり分析するほうが大きな流れをつかまえることができることもある。)

 減少の理由はともかく最近4年間の推移は分かった。ではこれからどうなるのか?
 つい最近、地域別人口推計データが公表された、もちろん根室市の人口推計値も出ている。

              0-14     総人口    14歳以下比率
 2010年 3,565    29,201    12.2%
  2015年 3,027    27,203    11.1%
 2020年 2,533    25,390    10.0%
 2025年 2,185    23,494     9.3%
  2030年 1,910    21,571     8.9%
 2035年 1,731    19,697     8.8%
 2040年 1,580    17,892     8.8%

 2020年には人口が25,390人になる。平成23年(2011年)の人口は29,139人だから、

 25,390人/29,139人=87.1%


 今後7年間で人口は12.9%減少してしまう。老人人口はおおよそ8,540人(33.6%)となる。このデータを元に外来患者数を計算してみたい。
 総人口減少率の2倍が外来患者数減少率だから、

 497.8人×(1-0.129×2)=369.3人

 7年後の2020年には一日当たり外来患者数は2011年度の74.2%である。ラフな見積もりだがりだがおおよそ病院売上は四分の一が失われる計算になる。わずか3年間で一日当たり外来患者数が50人も減ったのだから、どんなによくても400人前後にはなるだろう。370~400人くらいに減少すると見ておくべきだろう。人口が減るのだから外来患者数が減るのはあたりまえ、だからこの数字は遠からず当たっている。
 『改革プラン(当初計画)』では2010年以降は売上が29.5億円と見積もられている。これは非現実的な売上見積もりだ。実績値としてもこんなに巨額の売上は例がない。そして人口が加速的に減少すれば病院売上も減少して当然だから、24億円から20億円へ向かって減少していくという前提で作るべき。
 根室の人口が減少していることを病院事務局や市の財政課が知らないはずがないから、知っていてこのようなインチキともいえる辻褄合わせの非現実的な『病院改革プラン』を作成したのは、国から補助金をせしめるための詐欺行為ともいえる。こういう恥ずかしいことはしてほしくない。仕事は正直に誠実にやるのがあたりまえだ。

 では現在の病院の損益状況がどうなっているかを見てから、7年後におおよそどれくらい病院経営が悪化しているのかを試算してみたい。
 本田市議のブログに「患者動向及び月平均診療収入の推移」というグラフがあるので、入院売上と外来売上を合算してみたい。ついでに各年度の経営赤字額を表示する。『広報ねむろ』では病院事業の決算数字は黒字と掲載されているが、これは公的会計基準でまったく実態を表していない。民間の会計基準ではここに表示した数字が損益計算書の純損失として計上される。根室市は病院事業会計を民間会計基準で公表すべきだ。市議会が民間基準での公表を決議すればいい。財政課が1日で組換えをやってくれるだろう。事務作業としては実に簡単なことだが、財政課が勝手にやるわけには行かぬ、手続き上は市議会が決議すればいいだけ。ふるさとの町の市立病院を守るために市議たちにやる意思が在るかないかが問われている。

        月平均   年間売上高  年間赤字額(一般会計繰出金)
平成20年 1.93億円    23.2億円   11.5億円
平成21年 2.21億円    26.5億円   11.8億円
平成22年 2.10億円    25.2億円   11.7億円
平成23年 1.95億円    23.4億円   13.0億円
平成24年 1.83億円   22.0億円    17  億円
     合計                 120.3
     平均                   24.1

 常勤医数が変わらないのになぜか平成24年度は17億円へ赤字が急拡大している。市議会では赤字急拡大の原因の具体的な説明はない。

 年間費用は新築と設備の更新で年額2億円くらい増えて約40億円である。2020年(平成32年)に先の推計のように四分の一の売上が失われるとしたら、7年後の2020年の病院経営赤字はおおよそ次のようになる。

 23.4億円×0.75-40億円=-22.4億円

 藤原元市長時代が年額おおよそ8億円の赤字だったが、その後長谷川市長に変わって毎年のように記録を更新し、平成24年度は17億円の赤字となった。赤字の天井が見えない。
 このままでは今後も赤字額が拡大する一方のような気配が漂う。根室市の一般会計から補填しなければならない病院経営赤字額は7年後には22.4億円に拡大するかもしれぬ。天井はこのあたりにある。
 こういう試算はざっくりと行うのがコツで、ストライクゾーンを外さなければ十分なのである。

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 正反対のことを書いておく。きっちりやるなら、基本的な経営管理の仕組みのあることが前提になる。市立根室病院では診療科別・病棟別の部門別損益計算がなされていないのではないか?経営管理は部門別損益計算書による予算・実績管理が基本である。それがなけれ誰にも確かな分析などできはしない。管理部門にこうしたことをやれる人材がいままで一人もいなかったのではないか。
 
水産関係部署から異動してきたりたったの一年とか二年でまた異動していくのではそういう仕事ができるようになるはずもない。
  こういう経営管理の基本的な仕組みは医事会計システムと会計管理システムを統合することだから、高度な会計の専門知識(公認会計士相当)とコンピュータシステムの専門知識や経験が必要である。いままでそうした人材がいなかったのは無理のないことなのである。そういうことがやりうるのは東京の大きな企業の本社経営管理部門でそういう特殊な仕事の経験を積んできた者だけだろう。
 人材面を考えれば、根室は根室の外でしっかり修業して経験を積んだ者たちと協同しないといろんなところが維持できなくなっている。
  病院建て替えでも根室市が招聘した病院コンサルタントの意見すら無視して、2倍以上の総事業費をかけてしまった。
 町の発展を願うなら狭い了見と私利私欲を棄て、耳に痛い外部の意見を素直に聞くべきだ。

(最近の老健施設への9億円補助金では国の十数倍もの補助金交付を市がやりつつある。人口が減少するのだから、明治公園の拡張や青少年のための建物も不要だろう。一々あげつらうのはやめておくが、ああだこうだと屁理屈をつけてどうしてこんなにハコモノをやりたがるのか不思議だ。唯我独尊がどんどんエスカレート、その一方で市政をチェックすべき市議会は機能不全に陥っている。)
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 市税収入を主体とする根室市の自主財源はおおよそ28億円である。人件費総額は30億円を少し越えているだろう。桃太郎が鬼からせしめたような打ち出の小槌はないから、補填できなければ市役所の職員人件費を削るしか手がないのが実情である。そういう事態になったら看護師が不足し、病院機能を縮小せざるを得なくなる。いまのうちに何とかしたいものだ。
 
 さて市財政はいつまでもつのだろう?市議会では市の財政課がこのままでは市財政がもたぬと正直に答弁している。時間はあまり残されていないようだ。
 年間18億円の病院経営赤字が続いたら職員給与のカットはいつからなされることになるのか、財政課の試算結果を市議会で質問してみたらいい。仕事だから財政課長はいついつからと正直に答えるだろう。

 根室市の財政破綻が迫っているようだが、市といろんなところで取引のある業者が集まる経済諸団体は物言わず、医信伝心ネットワークは市から補助金をもらっているから物言わず、市議もなぜかこの問題に迫れない。そしてほとんどの市民も物言えず。
 物言えば唇寒し秋の風と嘯いているうちに町が衰退し続けるという奇妙なことになっている。

 病院が診療所へ変わるとか、職員給与が20%カットというような事態になったらどうなる?
 働く人にも患者にもこれから病気になる人にも、たいへんな苦労が待ち受けている。市議会でも明らかにならぬ国基準の10倍を超える法外な補助金支出、明治公園の拡張なんてやる場合ではない。
 
 市長や一部の地元経済人が結託して市政を壟断し、恣意的な市政運営を繰り返せば、市財政が破綻することを夕張市の先例が教えてくれている。
 市民や大部分の地元経済団体が言うべきときに物を言わない、健全な批判精神が欠如している状態は非常にまずい、根室は夕張の轍を踏んでいないか?

 本田市議がデータを整理してブログにアップしてくれるのはありがたい。お陰で財政課へ行ってヒアリングすることも病院へ電話して問い合わせることもなくなった。職責を果たそうと努力する市議がいるのはありがたい。孤立することになるので一人で何もかもやるのは重いだろう、言いたくても言えぬこともあろうから、しがらみのあまりないebisuが言いにくいことは引き受けよう。
 現役を10年前に退いた団塊世代のebisuの役割はふるさとのために言いにくいことを言うこと、そしてふるさとの30年後を支えるために数人でいいからしっかりした基礎学力と高い志をもてるように中高生を教育すること。
 30年後のふるさとに、どんな状況でも言わねばならぬことは毅然と言える人間を何人か育て残すことができれば充分だ。30年前にそういうことをした根室人がいなかったのでいまのとんでもない事態が引き起こされている。
 言うべきことをはっきり言え、「敢為和協」は根室高校の校訓、いい言葉だ。

 こうして本田市議がアップした資料を基にブログを書くと、なにか一緒に行動していると思われて迷惑がかかってはいけないから一言申し添えておく。お互いにふるさとのことを考えてそれぞれの立場で信念にもとづき行動しているだけ。ブログを見たって意見が一致しているわけもないことは明らか。かれは市議としての職をまっとうすればいいし、わたしは30年後に向けて基礎学力があり志の高い人間を数人育てようと努力する。立場が違うから、やっていることはまったく別だし意見も異なる。
 本田市議とは挨拶程度のおつきあいで、ブログで病院関係資料を拝読させてもらっているだけのこと。つまりは、本田市議ブログのあまたいる読者の一人、そう私のブログを読むあなたのようなものです。(笑)


*#2297 地域医療対話(5): 旧弊の再生産とは?
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 #2296 地域医療対話(4): 経営の問題点がよくわかる一覧表
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 #2295 地域医療対話(3):非常勤医が増える仕組み
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  #2291 地域医療対話(2) 
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 #2290 地域医療対話(1)
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  #2287 「いまいる常勤医を大切にせよ」:市立根室病院の経営改善
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 #2286 市立根室病院『改革プラン(改訂版)』と実績対比
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 #2283 市立根室病院損益推計:7年後は年額22億円に赤字拡大か?
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