10時ころに学校へお邪魔した。2ヶ月連続のフリー授業参観に感謝。

 今日のテーマは国語の授業で、1年生の授業をまず見た。文節と単語の区切り方を文例を書いて黒板でやってみせていた。文法専門用語は使わず、区切り方の説明のみだから、分かりやすい説明だった。

 「体が音を聞いている」
 「聞いて」は「聞い」と「て」に区切ることができる。前者は「聞く」、後者は「て」だが、「手」ではないよ、「た」だよと区切りのところに黄色いチョークで線を入れながら説明したが、生徒は「?」のはずだが質問が出ない。「なぜ「て」が「た」になるの?」と疑問が出てほしいところだ。でなかったということは生徒が理解していないというサインである。文法嫌いにさせないために先生は解説を避けたようだが、意見の分かれるところだろう。
(国文法はかなりファジーで、「て」の品詞が助動詞か接続助詞かという根本的な問題もあるから、そういう事情にも配慮して「た」というだけにとどめた?ebisuにはよくわからなかった。)
 生徒は動詞の終止形は理解していたようだから、助動詞という語彙の説明をすればいいだけだが、「脱線」はしなかった。踏み込んで教える"チャンス"だったかもしれぬ、"間合いの感覚"を意識して磨けば技が"進化"するのではないか。
 こういう語彙はことあるごとに繰り返し説明したほうがいい。そうでないと2年生になってから「形容詞は名詞を修飾する」と英語の授業で説明したときに、「先生、シュウショクするってなに?」なんて間抜けな質問が複数の生徒からでてしまう。比較級、最上級のところで形容詞や副詞の説明をしなければならないが、国文法の基礎用語がしっかり学校の授業で教えられていないと生徒は英語の文法説明が理解できない。
 授業中に生徒からの質問が少ないのは気になる。塾では生徒たちはよく質問するからだ。自分が予定している「上手な授業」に神経を使いすぎてはいないだろうか?もっと脱線していい。

 副教材を開かせてアンネフランクとヒットラーの説明を始めた。独裁者という説明はそれはそれでいいのだろうが、ヒットラーは公正な選挙で選ばれている。ファシズムは民主主義という母親から生まれたということやユダヤ金融資本と第一次世界大戦という時代背景を国語で解説しようとするのは無理がある。国語の授業としてはアンネフランクをどのようにとりあげたらよいのかピントの絞り方をもっと突っ込んで考えておくべきかもしれない。消化不良の感アリ。

 昔と違うなと思ったのは、教壇のないこと。そのせいか先生の生徒に対する言葉が丁寧になっている。「ちょっとお話しさせてください」は教壇のあった時代には先生の口からでたことのない言葉である。わたしは生徒に勘違いを起こさせるのでよくないと思う。生徒と先生はお友達でもないし、生徒のほうが目上でもない。生徒が社会人となってから弊害が生じるからよすべきだろう。何か意図があってのことであれば、これも意見が分かれるのかもしれない。
 教壇がないことでメリットも生まれた。生徒に作業をさせている間、机の間を巡回しやすい。段を下りなくていいから、バリアフリーのようなもので、すーっと見て回れる。じっさいにそうしている先生が多い。

 3年生の国語も参観させてもらった。どの授業でもやっているようだが、最初と最後はきちんと規律して挨拶をするのはけじめがついてとてもいい。途中から15分ほど先生がルイスキャロル『不思議の国のアリス』の朗読を始めた。朗読が上手だったせいもあり、このときは静かでざわつきなし、生徒は授業に集中していた。しかし、欠点もある。生徒一人一人がどのようなレベルの音読をするのかわからない。案外読めない生徒が多い。4人に1人は小4レベルだろう。生徒は拝聴するだけで、音読トレーニングをする機会がない。自分で本を選んで読む「朝読書」は二重の意味でほとんど効果がない。「乳歯レベル」のテキストを自分で選び「永久歯レベル」の読書に移行しないこと、そして「黙読」だからだ。3年続けたって読む力は上がらない。音読させてみればすぐに了解できる。先生だってたくさん本を読み音読をしたからこそ、あんなに上手に朗読ができるのだろう。きっと「朝の10分間読書」で技を磨いたわけではないよ。
 「読み・書き・そろばん」というぐらいだから、国語力の源は読みの力である。だから、江戸時代は6歳から素読を徹底した。小学校1~3年生は社会や理科の時間を削っても毎日1時間は音読のみの授業時間を確保してほしいと思う。総ルビの本なら低学年でも3年間で50冊読める。読みの力が強ければ国語はもとより、社会も数学も理科も英語も伸びる。小学校では読みの力と書く力と基礎計算力を徹底的につけてほしい。

 不思議の国のアリスを先生が朗読した後で感想文を書かせていた。感想文がいけないと斉藤孝が『読書力』の中で強調している。ただひたすら読ませるのがいいと主張している。感想文を書くよりも、要旨をまとめさせるトレーニングをすべきだとも言っている。面白かったのは感想文の末尾に「面白かった」と「続きが読みたかった」の2項目を挙げ、五段階評価をつけるという指示である。こういう風に具体的な指示があると生徒は作業がしやすい。
 本棚に"Alice's Adventures in Wonderland"があった。冒頭7ページを1年生の人数分コピーした、朗読を聴いた塾生にあげたらどんな反応が起きるだろう?

 假定の話しをひとつさせてもらいたい。最前列で横座りして後ろの生徒にずっと話しかけている生徒がいて、周りの生徒の集中力が切れてしまって授業の妨げになっていたとしよう。
  こういうときは本気で叱っていい。わたしなら2度注意をして分からなければ問題集を丸めて頭を叩くところだ。こういう生徒を昔の先生たちは容赦なくひっぱたいた。体罰禁止といっても、こういう場合はひっぱたいていい、ことは体罰の問題ではなくシツケの問題なのだから。
 座り方の問題は案外大きい。姿勢の悪い生徒はしょっちゅう体がふらつき集中力が切れている。背筋を伸ばして勉強するのが一番疲れないし、集中できる。27人中、きちんと座れない生徒が6人いた。座り方の指導が小学校でなされていないようだし、家庭でもなされていない、そういう生徒が約20%もいる。鉛筆のもち方にいたっては80%がまともではない。日本人に受け継がれてきた型の文化が崩れてしまっている。姿勢や鉛筆のもち方は家庭でしっかりしつけよう。

 先月参観させてもらった先生とは別の先生の1年生英語授業を30分ほどみた。
 What do you ×× ? I ×× ~.
  この疑問文で"××"の部分にlike study eat drink を入れ、表を印刷した用紙を渡して"~"の部分に動詞の種類ごとに対応する名詞を5個書かせた、これがビンゴゲームの始まりだった。プラスチック製の生徒のネームプレートを用意して、その中からランダムに札を取り出し、指名して答を言わせ、自分のリストにあったらその欄に斜線を引かせる。また札を引いて次の人を指名し、前の人が質問文を読み指名された人が答える。6人ビンゴーになるまでやって、名前を先生は記録していた。まさかこれが成績評価のデータにはならないだろうと思うが、どうなのだろう。
 わたしの目の前にいた男子生徒はさっと全部書いたが、ビンゴーにはならずだった。
 なるほど会話中心の英語授業の実態とはこういうものか。しかしこれで教科書が消化できるのだろうか心配になる。20分ほども時間をとっていた。しょっちゅうこんなゲームをやっていたら教科書を消化できるわけがないだろう。教科書の積み残し、すっ飛ばしが起きる原因の一端を見た気がした。教科書をきちんと消化しないと学力テストの点数がとれなくなる。

 たとえば、3年生になって学力テスト総合A・B・Cをやっている時期に、こういう「ビンゴ遊びの授業」をしたら受験生たちは気持ちが焦る、「こんなことをしていてなんになる、点数が上がるわけがない」、そういう不安な気持ちで授業を受けているのを知っているのだろうか?

 話題を変えよう、ある教室に貼られていた学級目標を紹介したい。
 ■あいさつ
 ■感謝
 ■あきらめない
 
 好い評語だと感じた。そしてまず先生たちがデキの悪い生徒(成績下位25%)の指導をあきらめず、放課後補習をやってほしいとも思った、率先垂範。私は個別補習を毎週何度も繰り返している。
 「あいさつ」と「感謝の心」はニムオロ塾でもことあるごとに言っている。「入退出時には大きな声できちんと挨拶する」、「親には感謝の心をもて」、「嫌いなと同級生がいたらありがとうと思え」、「何かしてもらったらその都度ありがとうと言え」、「姿勢が悪い、背筋を伸ばせ」「・・・」。
 感謝の心がないと素直に知識が入っていかないから不思議だ。生徒を観察していると、こころのもち方が変わると、知識の吸収や学習内容の理解の仕方に大きな変化が訪れることがわかる。感謝の心は人を素直にする、そして受け入れやすい身体(脳)をつくるようだ。心と身体はつながっているものだ。

 一方的な観察を書いたが、先生たちにも各自指導方針があり、言い分があるはずで、ebisuは各教科担当の先生たちの意見を聴いてみたい。匿名でコメント欄に書き込んでいただけたらありがたい。



*#1940 職人技という視点から授業力を考える:C中学校フリー授業参観感想記  May 19, 2012 
 http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2012-05-19

 #1935 フリー授業参観に行こう:啓雲中学校  May 14, 2012 
 http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2012-05-14 


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