市立根室病院のホームページの運営方針に変化が感じられる。
 着任情報と退任情報が載っている。とくに、退任情報が事前に載ったことはなかったように記憶する。病院運営も変わりつつあるようでエールを送りたい。骨のある管理職がいれば病院は変わる。

【着任】
平成23年3月1日付 産婦人科 橋 爪 毅 昭 医師
平成23年4月1日付 外科 竹 山 茂 医師
             外科 山 口 浩 司 医師
             麻酔科 熊 谷 展 国 医師

【退任】
平成23年3月31日付 内科 矢 野 昭 起 内科部長
              内科 小野寺 馨 内科医長
           整形外科 佐 藤 千 尋 整形外科部長
              外科 小 川 宰 司 外科医長
*病院のホームページ
http://www.city.nemuro.hokkaido.jp/dcitynd.nsf/image/fde217d7ec2c7fe94925749f0016c254/$FILE/zenka.pdf



< 収益への影響 >
 この情報に接した知り合いのドクターから、病院経営を心配するメールを戴いた。「これではよくはならんだろう、(経営は)悪化する」との見方だった。私もそう思うから、いつも通りに理由を書いておく。
 常勤産婦人科医が一人着任するが、産科病棟を再開するわけではないから売り上げ増はない。非常勤医の手配の仕方によって経費に違いが出るだけだろう。
 常勤麻酔科医と外科医2名が来て外1名去り外科医2名体制になる。おおよそ外科の売上は昨年並みだろう。外科手術後の入院患者もあるから、外科関連の入院患者数も徐々に元に復していく。収益的には昨年並みを維持することになるだろうか。
 内科医が2名減である。内科の患者は多いから派遣医で賄うかどうかだが、派遣医のコストは高いから収益的には大きなマイナスとなるだろう。派遣医が見つからなければ、市内の開業医へ患者が流れて売上が減る。派遣医の要請は開業医との共存共栄を考慮に入れて判断すればいい。
 整形外科医は患者が多いから常勤医の退任にともない派遣医を補充せざるをえないから、収益的には悪化の方向だ。
 外科の先生は昨年来流れていた街の噂どおりの退任であるから、想定内。

 着任・退任医師の担当分野をみると総じて経営改善にはならないことがわかる。2011年度は経営がさらに悪化するだろう。13.5~15億円程度の赤字補填をせざるをえなくなるだろう。一般会計からの赤字補填予算(一般会計繰出金)は11.2億円だったから、来年の今頃は2.3~3.8億円の補正予算を組まざるを得なくなるだろう。
 建て替え後はさらに償却負担増等で2.5億円増える。一時的に特別損失(既存建物の除却)が3.5億円出るがこれは一般会計からの繰出金がいらない。

 このままでは建て替え後は毎年17億円の一般会計繰出金が必要になる。職員給与の大幅カットは避けられない。職員給与は総額で31億円*だから20%ですむのか30%になるのか、退職金までカットになるのか、予測がつかない。すべては一般会計の歳入がいくらになるかにかかっている。
 放漫財政で2011年度の根室市の予算は160億円にまで膨らんでしまっているが、破綻に瀕している国家財政は早晩地方交付税交付金に大鉈を振るわざるをえないし、道財政は2011年度財政早期健全化団体指定が予定されている。近い将来根室市の予算は140億円以下で組まざるを得なくなると先を読むべきだろう。
 そういう状況下にあるのに、市が招聘したコンサルタントの意見(25億円での建て替え)を無視して62億円もの総事業費をかけた建て替えを進めつつある。
*2011年度「予算の概要(一般会計)3ページより
http://www.city.nemuro.hokkaido.jp/dcitynd.nsf/image/90f544667780cf46492570c700066ba3/$FILE/H23yosangaiyou.pdf

 もう手を打つべき時機を失したから、結果を待つしかない。H市長やH市長の提案に賛成した市議たち、そしてわずか三百数十名の「オール根室」=地元経済諸団体は責任をとれない。ツケは市職員と市民に回ってくるのみである。病院の建て替えが終わると同時に、その存続が危うくなるような状況に陥ることになるだろう。
 ブログ上でリスクの具体的な説明もしてきたし、地域医療の崩壊を防ぐために少しは具体的な経営改善提案をしてきたつもりだったが、無駄だった。
 あとは結果がでるだけだから、あまりこの問題をとりあげたくない。ふるさとの衰亡を呆然と眺めるのは健康にも害があってパトリオットには辛いのである。

 閑話休題、着任・退任情報が早く掲示されるようになったことは歓迎したい。前にも書いたが掲示板には発信年月日を入れてもらいたい、パトリオットの管理課長殿よろしくお願いする。

*patriot:辞書には"愛国者"とあるが日本語のこの語とはニュアンスが違う。"自分の生まれ育ったところに敬愛の念を有し、(多少の不利益を省みることなく)ふるさとのためになすべきことをなす者"
とでも定義しておきたい。ナショナリズムのように思想的なものではなく、パトリオティズムは「ふるさとへの素朴な心情と義務」とでもいうべきものだ。

 手元にある英英辞典2冊をみるとナショナリズムとパトリオティズムは次のように定義されている
Nationalism: 2 a great or too great love of your own country
Patriotism: When you love your own country and are proud of it
     (Cambridge Advanced Learners Dictionary)
Nationalism: 2 the belief that your nation is better than other nations
Patriotism: strong feelings of love, respect, and duty towards your country
     (Macmillan English Dictionary)



#1030 nationalism とpatriotism :遠藤利國訳・幸徳秋水『帝国主義』May 17, 2010 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2010-05-17





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