23日夕刊に続いて、24日の北海道新聞朝刊に新年度の予算案が載っている。夕刊については前回ブログでコメントしたから、朝刊のほうに焦点を当てたい。
 担当の栗田記者は市側の主観的説明と担当記者の客観的解説を分けて記事にした。前者は自画自賛で都合のいい事実ばかり並べて、都合の悪い事実には触れていない。

【根室】長谷川俊輔市長は22日、2011年度予算案とあわせて長谷川市政2期目の地域活性化の「工程表」にあたる「根室再興政策プロジェクト」を発表した。14年度までの5年間で経済対策や子育て支援など全33事業に計8億1258万円を投入し、3万人を割った人口減少に歯止めをかける。(栗田直樹)

 このあと「新卒者の地元就職率90%(09年度83.8%)、合計特殊出生率1.7%(同1.61人)の実現を図る。根室に住み続けたいと思う市民アンケートの数値80%台(03年度63.3%)達成も目標に掲げる」と書いてある。

 市民アンケートは2009年6月に根室青年会議所が実施した数値があるが、なぜ古い2003年度の統計を使ったのだろう?
 2009年6月の市民意識調査によれば、あなたにとって根室は住みやすい街ですか」という問に対して、
 「とても住みやすい」⇒ 3.6%
 「住みやすい」    ⇒26.7%
 「普通」        ⇒46.9%
  「住みにくい」    ⇒17.7%
 「とても住みにくい」 ⇒ 5.6%

 「第3問 今後も根室に住み続けたいと思いますか」
 「ずっと住み続けたい」   ⇒13.8%
 「できれば住み続けたい」⇒46.1%
 「できれば住みたくない」 ⇒30.8%
 「住みたくない」           ⇒ 9.3%

 ラムサール条約の春国岱があり、これだけ自然が豊かな街であるのに「とても住みやすい」と思う人はたったの3.6%しかいない。住みたくないという人は40.1%もいるのである。中標津の同種の調査をみた記憶があるが、比べものにならない。日本で最高クラスの自然環境を有していながら住みにくい街というのは、その原因が人為的なものであることを示唆しているのだろう。
 住みにくい街にしているのは何か本気で考えたことがあるのだろうか?人口3万人の町でありながら、療養病床が1ベッドもない老人が住みにくい街を固定化しつつあるのはH市政だ。人口減少は数年前まで年間400人を切っていたが、最近の市の広報を見ると前年同月比で450~460人も減っているのではなかったか?H市長とわずか三百数十人の「オール根室」が根室の市政を壟断している。ごく小数の者たちが恣意的に街を運営していることに異を唱えない大多数の一般市民も不甲斐ないと言っては言いすぎだろうか。

 地元就職率09年度83.8%はどこでどのように計算したものだろう、にわかには信じがたい数値である。
  1月28日付の北海道新聞は根室管内の高卒就職内定率を報じている。管内内定者は17%減である。管内7高校の根室管内就職内定者はたった81人に過ぎない。1校当たり12人に満たない。これでは出生率の増加などあるわけがない。
 老人の死亡者数は増え、大学進学したものはほとんど戻ってこない。地元に職を得て残る者は管内全部あわせても100名に満たない。根室市内に限れば30名いるのだろうか?根室の人口は減る一方である。

*#1357 根室管内高卒予定者の就職内定率
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2011-01-28-1


 不都合な事実には一切目をつぶり、我田引水の「33事業に8億円投入」という見出し。「市長は「根室を活性化するビジョンが定まった。加速度的に事業を進め人口対策につなげたい」と語った」と書いてある。どこの街の話だろう?

*青年会議所「市民意識調査アンケート」
http://ameblo.jp/nemurojc-b/entry-10283985445.html



 さて、担当記者の客観的な解説を転載する。昨日の私の解説"#1394"もあわせてお読みいただければ幸いである。

 新年度予算 財政硬直が深刻化
<解説>根室市の2011年度の一般会計予算案が「積極型」になったのは、市長最良の政策的経費が増えたからだとは単純に言えない。予算規模が膨れ上がった最大の理由は借金返済や赤字状態の病院会計への繰り入れにあり、ここに市税制の深刻さがある。=22日夕刊11面参照
 一般会計は本年度当初比5億9500万円増えた。05年度に低利借り換えした市債の返済が始まり、元利償還金の3億3600万円を計上したのが影響した
 一方、市は新年度、総額約60億円に上る市立根室病院の改築を本格化させる。市の負担は「35%」(長谷川俊輔市長)とはいえ財政難の市には巨額な出費になる。その病院の赤字補填で、11年度には病院会計に一般会計から11億2330万円の繰入を予定する。多額の借金返済と将来の展望が見えない大型事業の推進。「二兎を追う」予算編成は自由度を失った。市長が地域活性化を託した根室再興政策プロジェクトに、5年間で8億円しか盛り込めなかったことに財政硬直化が端的に現れている
 病院会計への繰入額は市税収入の3分の1に匹敵する異常事態市全体でこの危機を直視しなければ、新しい病院が完成しても、財政の「アキレス腱」になる。(栗田直樹)

 最初のアンダーライン部分は、国からの借金を大地みらい信金へ借り換えて、返済を一時棚上げし、問題を先送りしたものである。ツケは回ってくるのだから編成の一時棚上げはやってはいけないことだった。H市政の性格がよく現れている。いまさえ凌げればよい、後は野となれ山となれ。大地みらいへの借換にさいして返済の一時棚上げに反対した市議も一人もいない。市議会は市政の翼賛機関に堕しているというのはこういうことをいう。市民の立場で市の財政問題に目を光らせる市議が一人もいなかったということだろう。
 2番目のアンダーラインは、今年度着地見込みが13億円の赤字なのに、来年度予算ベースで11.2億円では足りなくなる。今年度も4.5億円以上当初予算から見込み違いが出ているのは、予算編成時に数字の辻褄合わせをするからだ。一般会計で許容できる赤字の幅を計算しておいて、それにあわせて収入を計算するという方式だ。その収入確保のために医師の人数も逆算されるが、毎年何の根拠もないから、当初予算と決算では4~6億円もの差異が出てしまう。チェックできない市議会もどうかしている。予算案に反対する市議が共産党を除いて一人もいないというのも不思議だ。ふるさとの街の財政状態が気になるような郷土愛をもった市議は一人もいないらしい。情けない。
 栗田記者は太字で引用した部分で結論を述べている。
病院会計への繰入額は市税収入の3分の1に匹敵する異常事態
 毎年膨らみ続ける病院事業赤字を前にして、病院建て替えの総事業費を削らなかった市議会建設特別委、市議はどなたも異常事態だとは思っていないのだろう。

【別海町立病院建て替え総事業費は10億円】
 別海町立病院建て替えに関する予算記事が今日(2月25日)の北海道新聞朝刊根室地域版に載っている。
「町立病院事業会計では新病院建設に10億3400万円を計上した。骨格予算とはいえ、水沼町長は「町民の安定、安心が図れるように編成した」と説明した」
 予算額を先に決めて建築仕様等を優先順位をつけて絞り込む、こういう仕事の仕方をすれば総事業費は小さく出来るのである。根室市の仕事は別海町に劣るということだ。ほとんど仕事の体をなしていない。根室は62億円の総事業費。別海町はコンサルタントの提言に従い、協力してコスト削減に努めているのに対して、根室は市長自らから招聘した経営コンサルタントの提言を無視して、2倍に総事業費を膨らませた。この際だから補助金事業になんでも入れてしまえというわけだ。地域エゴや強欲さがむき出しで、みっともない。
 別海町立病院建て替え基本仕様については昨年10月31日にブログで取り上げたからそちらの記事を併せ読んでもらいたい。

*#1264 建て替え顛末記(1):別海病院基本計画との比較
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2010-10-31



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