ところで12月号の20ページに標記の文が出てきた。これは生成文法でないと説明のつかない文である。大西先生の解説は次のようになっている。
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1文目は、to以下の動詞impressの目的語がなく、「~印象付ける」となっていることに注意しましょう。目的語が空所(□)になっているのです。この空所と主語が一致して「my bossはimpressするのがたいへんだ」、つまりimpress my boss の意味関係となるのが、この形のミソ。toughだけでなく、hard、easy、difficult、impossibleなど難易を表す形容詞に特有の形です。また、この例では「難しい⇒アドバイスを求める」のフローとなっています。難易の判断からはさまざまなフローが生み出されます。
大西先生は英語は配置の言葉と繰り返し解説している。主語の位置におかれたら主語である。ところが、この文のように、原則からから外れてしまう文がある。
「英語は「配置の言葉」。文には各要素の配置を示した設計図(基本文型)があり、独自の意味が付随しています。基本文型を理解しなければ英会話学習は始まりません。」
俎上に載せた文は、表層構造と深層構造に大きな違いのある文で、文法工程指数が大きい。チョムスキーの生成文法では次のような説明になる。
① I impress my boss.
② It < I impress my boss > is tough.
③ It < for me to impress my boss > is tough.
④ It is tough for me to impress my boss.
⑤ My boss is tough to impress.
シンプルセンテンス(deep structure)まで戻すと、my boss は動詞impressの目的語なのです。それが表層構造では主語の位置におかれているので、「わたしの上司はタフだ」なんて珍訳をしてしまいます。こういう文章がすらすら書けるようになったらいいですね。
大西泰斗先生の訳文は「わたしの上司は感心させるのがたいへんなんです」となっています。
もちろん誤訳です。正解は、
「わたしの上司を感心させるのはたいへんなんです」
主語は分かり切っているから省略されています。つまり、表層構造からドロンと煙となって消えてしまった。
1年間大西先生のテクストと解説を利用させてもらって、問題があると感じた解説はこれひとつだけ。すばらしい講座です。目から鱗が落ちる思いで、勉強させてもらっています。
感謝! m(_ _)m
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