#4612 英語音読授業(高2):「説明ルール」と「指定ルール」 Sep. 8, 2021 [49.3 高校英語教科書を読む]
<最終更新情報>9/9朝9時 校正作業と一部内容の追加をしています。
水曜日はニムオロ塾は休みですが、四月から隔月で、高3と中3年生対象に英語の教科書の2時間の音読授業をしています。高3の生徒が今月は来られないので、今日は高2の生徒2名だけの参加。二人以上なら授業することにしています。
Lesson 5のタイトルは'Doctor in the Stomach'ですが、映画化されています。邦題名「ミクロの決死圏」という映画が1966年につくられています。高校を卒業して東京に来た年に見た映画です。
(中学生の時にSF小説大好きでした。『海底2万里』を光洋中学校の図書室から借りて読みました。図書室にあったSF小説はいくらもなかったと思いますがほとんど読んでいます。3年10組の学級文庫にも、薄っぺらい文庫本のSFが10冊ぐらいはありました。当時は岩波新書が150円の時代でした。地元の高卒の初任給が10000円くらいなものですから、本は高かったのです。)
part2からpart4の途中までやれました。5回読んで、スラッシュを入れ、チャンクごとに頭から日本語にしていきます。生徒二人に交替でやってもらいます。意味がつかめたら、それをイメージしながら3回速めに音読してイメージと英文をつなげます。
th[θ]の音とrの音がちゃんと出ていないところがあったので、個別に音の出し方をトレーニング。教え方がいいのか一人は最近発音がとってもよくなりました、わたしよりもいい。(笑)
読むスピードもいいんです、音読しながらCAさんの機内アナウンスを聴いている気分、役得ですね。(笑)
P-2はカプセル型の内視鏡の話です。直径11mm、長さ26mmのカプセル。呑み込むにはちょっと大きい。ゼリーのようなものと一緒でないと無理ですね。
授業での解説を少しだけ再現してみます。
In 1999, a Europian company did even better; it invented an amazing capsel, which has a tiny built-in camera.
カプセル型内視鏡の話ですから、「did (it) even better」はヨーロッパの会社が「さらにいいものにした⇒さらに(カメラ内蔵カプセルを)改良した」ということです。didはこの文では他動詞ですから省略された目的語を補って読みます。got (even) betterが頭にかんだ人がいたかもしれませんね。自動詞となってしまうので、ヨーロッパのある会社がさらに良くなったとの意味になってしまいますので、使えません。which以下は驚異的に改良されたカプセルの説明です。英文法では「非制限用法」といいますが、ようするに前の単語(先行詞)の説明です。
「それは小さな内臓カメラをもっている」、日本語としては「それは小さなカメラを内蔵している」の方がわたしには滑らかに感じられます。英語の単語の語順とはすこし違いますが、和訳でなく翻訳なら後の方の訳を選びます。受験英語ではあまり意訳しないほうがいいと思います。翻訳を求めているわけではありませんからね、素直にそのまま訳して意味が通じていれば、そのままでいいのです。
大西泰斗先生はこういう配置を「説明ルール:説明は後に置く」と呼んでいます。英文を読んだり作ったりするのにとっても大事なルールです。
昨年1月から、NHK英会話テキストをひたすらタイピングし、文例を2倍程度に増やして、7500題英作文問題とその解説をA4判で980頁作ったので、すっかり大西泰斗先生の教授法が身についてしまいました。どこまでが大西泰斗先生でどこからがわたしオリジナルなのかすでに境目がはっきりしなくなっています。生成文法での解説がわたしの付加した部分かな。昨年の高校3年生対象の音読特訓授業よりもそのあたりが進化を遂げてしまっています。ことしのニムオロ塾生は昨年の高3生よりも、その点では幸せだと思います。
If doctors can move the camera as they want to, they will detect deseses almost without fail.
この文のmoveを生徒は「ドクターが動く」と訳しましたが、moveは自動詞と他動詞の両方があります。目的語が後ろにあれば他動詞ですから、「ドクターが(カプセルに内蔵されている)カメラを思い通りに動かせたら」ということ。asの原義は「=イコール」ですから、「思っているのと同じように⇒思い通りに」ということ。
問題は青字のalmostです。生徒は「ほとんどの病気」と訳しました。
ここは「指定ルール:指定は前に置く」なのです。これも大西泰斗先生の用語ですが、英語は配置の言葉、配置のルールを知れば英文の読解も作文も両方がとっても楽になります。判断に迷いがなくなり、読解精度と速度が同時にアップします。
almostは次に続いているwithout のレベル指定。どういうレベルで「失敗なしに」病気を診断(detect)できるのかを指定しているんです。「病気をほとんど失敗なしに診断する」ということ。意味がまるで違ってきます。
こういうところをきちんと読む癖をつけておかないと、「気分屋読み」「妄想読み」になってしまいます。これはわたしの用語ですよ、大西先生はそんなことは言いません、視聴者がかわいそうですから。そのあたりがわたしの指導はちょっと違いますね。元の文から離れて、意味を妄想しているだけと厳しく指摘します。そういう読み方が癖になっているので取らなきゃなりませんから。悪い癖をとらないといつまでもいい加減な読み方から抜け出せません。まずはどこでそういうことをやっているのかを自覚するところから始めたらいいのです。そのために個別指導の塾がある。
英文理解は一度「精読」という段階をへる必要があることが理解いただけたのではないでしょうか。大事なところはカチッと読めなければいけません。
国内のトップレベルの文系学部のゼミではテクストのそういう読み方が要求されます。残念ですが北海道にはそういうレベルのゼミをもった大学はなさそうです。高校生だって大事なところはちゃんと読めたほうがいいのです。弊ブログへ一時期よく投稿してくれていたハンドルネーム「後志のおじさん」がそういうレベルでした。早稲田大の政経学部の出身者で、ゼミでマックスウェーバー『プロティスタンティズムの倫理と資本主義の精神』を読んだと言ってました。話題はだいたい英語の分野でしたが、議論していると相手が過去にどれくらい論理的に厳密な議論の経験があるのかはよくわかります。指導教授がどなたであったのかは聞きそびれました。
(高校教科書だからdetect(見つける)という一般的な単語を使っていますが、診断するは医学用語ではdiagnoseです。こうした医療の最先端分野を扱ったものでも、使用語彙数に制限があるので一般的な単語を使うしかないのでしょう。detectは意味が広いのでピンときませんね。わたしには仕事で馴染みの多かったマイクロ波計測器やミリ波のdetectorや臨床検査機械のRIカウンターや液体シンチレーションカウンター、酵素標識ビーズ用の検査機器のdetectorなどが頭に浮かんでしまいます。それぞれdetectする周波数が違っています。)
ほかには、allowとpreventという動詞を含む文が出てきたので、日本語にするのがむずかしいので、主語を副詞句に訳すやりかたと、頭からスラッシュリーディングでチャンクごとに読んでいく読み方の両方を教えました。
without failもpreventもどちらも否定を含む表現です。一緒に括(くく)って覚えちゃいます。
もう一箇所面白い文があったのでそれを採り上げて、こちらから質問を投げてみました。
Thus, the stomach and intesteines are now like a frontier where doctors can do pioneerring work.
水曜日はニムオロ塾は休みですが、四月から隔月で、高3と中3年生対象に英語の教科書の2時間の音読授業をしています。高3の生徒が今月は来られないので、今日は高2の生徒2名だけの参加。二人以上なら授業することにしています。
Lesson 5のタイトルは'Doctor in the Stomach'ですが、映画化されています。邦題名「ミクロの決死圏」という映画が1966年につくられています。高校を卒業して東京に来た年に見た映画です。
(中学生の時にSF小説大好きでした。『海底2万里』を光洋中学校の図書室から借りて読みました。図書室にあったSF小説はいくらもなかったと思いますがほとんど読んでいます。3年10組の学級文庫にも、薄っぺらい文庫本のSFが10冊ぐらいはありました。当時は岩波新書が150円の時代でした。地元の高卒の初任給が10000円くらいなものですから、本は高かったのです。)
part2からpart4の途中までやれました。5回読んで、スラッシュを入れ、チャンクごとに頭から日本語にしていきます。生徒二人に交替でやってもらいます。意味がつかめたら、それをイメージしながら3回速めに音読してイメージと英文をつなげます。
th[θ]の音とrの音がちゃんと出ていないところがあったので、個別に音の出し方をトレーニング。教え方がいいのか一人は最近発音がとってもよくなりました、わたしよりもいい。(笑)
読むスピードもいいんです、音読しながらCAさんの機内アナウンスを聴いている気分、役得ですね。(笑)
P-2はカプセル型の内視鏡の話です。直径11mm、長さ26mmのカプセル。呑み込むにはちょっと大きい。ゼリーのようなものと一緒でないと無理ですね。
授業での解説を少しだけ再現してみます。
In 1999, a Europian company did even better; it invented an amazing capsel, which has a tiny built-in camera.
カプセル型内視鏡の話ですから、「did (it) even better」はヨーロッパの会社が「さらにいいものにした⇒さらに(カメラ内蔵カプセルを)改良した」ということです。didはこの文では他動詞ですから省略された目的語を補って読みます。got (even) betterが頭にかんだ人がいたかもしれませんね。自動詞となってしまうので、ヨーロッパのある会社がさらに良くなったとの意味になってしまいますので、使えません。which以下は驚異的に改良されたカプセルの説明です。英文法では「非制限用法」といいますが、ようするに前の単語(先行詞)の説明です。
「それは小さな内臓カメラをもっている」、日本語としては「それは小さなカメラを内蔵している」の方がわたしには滑らかに感じられます。英語の単語の語順とはすこし違いますが、和訳でなく翻訳なら後の方の訳を選びます。受験英語ではあまり意訳しないほうがいいと思います。翻訳を求めているわけではありませんからね、素直にそのまま訳して意味が通じていれば、そのままでいいのです。
大西泰斗先生はこういう配置を「説明ルール:説明は後に置く」と呼んでいます。英文を読んだり作ったりするのにとっても大事なルールです。
昨年1月から、NHK英会話テキストをひたすらタイピングし、文例を2倍程度に増やして、7500題英作文問題とその解説をA4判で980頁作ったので、すっかり大西泰斗先生の教授法が身についてしまいました。どこまでが大西泰斗先生でどこからがわたしオリジナルなのかすでに境目がはっきりしなくなっています。生成文法での解説がわたしの付加した部分かな。昨年の高校3年生対象の音読特訓授業よりもそのあたりが進化を遂げてしまっています。ことしのニムオロ塾生は昨年の高3生よりも、その点では幸せだと思います。
If doctors can move the camera as they want to, they will detect deseses almost without fail.
この文のmoveを生徒は「ドクターが動く」と訳しましたが、moveは自動詞と他動詞の両方があります。目的語が後ろにあれば他動詞ですから、「ドクターが(カプセルに内蔵されている)カメラを思い通りに動かせたら」ということ。asの原義は「=イコール」ですから、「思っているのと同じように⇒思い通りに」ということ。
問題は青字のalmostです。生徒は「ほとんどの病気」と訳しました。
ここは「指定ルール:指定は前に置く」なのです。これも大西泰斗先生の用語ですが、英語は配置の言葉、配置のルールを知れば英文の読解も作文も両方がとっても楽になります。判断に迷いがなくなり、読解精度と速度が同時にアップします。
almostは次に続いているwithout のレベル指定。どういうレベルで「失敗なしに」病気を診断(detect)できるのかを指定しているんです。「病気をほとんど失敗なしに診断する」ということ。意味がまるで違ってきます。
こういうところをきちんと読む癖をつけておかないと、「気分屋読み」「妄想読み」になってしまいます。これはわたしの用語ですよ、大西先生はそんなことは言いません、視聴者がかわいそうですから。そのあたりがわたしの指導はちょっと違いますね。元の文から離れて、意味を妄想しているだけと厳しく指摘します。そういう読み方が癖になっているので取らなきゃなりませんから。悪い癖をとらないといつまでもいい加減な読み方から抜け出せません。まずはどこでそういうことをやっているのかを自覚するところから始めたらいいのです。そのために個別指導の塾がある。
英文理解は一度「精読」という段階をへる必要があることが理解いただけたのではないでしょうか。大事なところはカチッと読めなければいけません。
国内のトップレベルの文系学部のゼミではテクストのそういう読み方が要求されます。残念ですが北海道にはそういうレベルのゼミをもった大学はなさそうです。高校生だって大事なところはちゃんと読めたほうがいいのです。弊ブログへ一時期よく投稿してくれていたハンドルネーム「後志のおじさん」がそういうレベルでした。早稲田大の政経学部の出身者で、ゼミでマックスウェーバー『プロティスタンティズムの倫理と資本主義の精神』を読んだと言ってました。話題はだいたい英語の分野でしたが、議論していると相手が過去にどれくらい論理的に厳密な議論の経験があるのかはよくわかります。指導教授がどなたであったのかは聞きそびれました。
(高校教科書だからdetect(見つける)という一般的な単語を使っていますが、診断するは医学用語ではdiagnoseです。こうした医療の最先端分野を扱ったものでも、使用語彙数に制限があるので一般的な単語を使うしかないのでしょう。detectは意味が広いのでピンときませんね。わたしには仕事で馴染みの多かったマイクロ波計測器やミリ波のdetectorや臨床検査機械のRIカウンターや液体シンチレーションカウンター、酵素標識ビーズ用の検査機器のdetectorなどが頭に浮かんでしまいます。それぞれdetectする周波数が違っています。)
ほかには、allowとpreventという動詞を含む文が出てきたので、日本語にするのがむずかしいので、主語を副詞句に訳すやりかたと、頭からスラッシュリーディングでチャンクごとに読んでいく読み方の両方を教えました。
without failもpreventもどちらも否定を含む表現です。一緒に括(くく)って覚えちゃいます。
もう一箇所面白い文があったのでそれを採り上げて、こちらから質問を投げてみました。
Thus, the stomach and intesteines are now like a frontier where doctors can do pioneerring work.
文章自体は難易度が高いわけではありません、問題は中身の理解なのです。
「このように、胃と腸は医師が先駆的な仕事のできる未開拓の分野らしい」
直訳っぽくて嫌ですね。最後のところは「未開拓の分野と化している」あるいは「最先端分野となっている」くらいが滑らかでいい。likeの料理の仕方はいろいろですから、学術論文なら「このように消化器官は医師が先駆的な仕事のできる先端分野の様相を呈している」くらいに訳したい。
問題はなぜ未開拓の分野、未知の領域なのかということです。胃と腸は内視鏡検査ですでに隈なく観察されているではないか?
内視鏡は口や鼻から入れます。鼻から挿入できるくらいですからチューブはずいぶん細くなっています。胃の検査用の内視鏡は胃まで届きます。胃の出口付近までは見られます。それに対して大腸内視鏡は太いが、大腸は隅々まで観察できます。人間の消化管は全部で9mあります。口から胃袋の出口まで約60cmです。大腸が1.5m、通常の内視鏡で見れるのはここまで、両方で2.1mだけです。引き算すると7mの部分があります、小腸です。小腸は細いのと、畳み込まれて複雑に曲がりくねっているので硬いチューブである内視鏡が入れられませんから、観察できないのです。カプセル型でそれを体外から思うように動かせたら、小腸内壁が診察できます。そこが未知の領域なのかなと生徒と一緒に推測しました。
文章を読むとはそういうことなのです。英語の文章だって引き算もして考えてみなければ書いた人の言いたいことが理解できません。筆者のイメージにどこまで迫れるかが文章理解の面白いところです。そうすると筆者の考えが及んでいない部分も見えてきます。日本語の文章も英文も読み方は一緒です。
今日の授業のポイントは「説明ルール:説明語句は後に置く」と「指定ルール:指定は前に置く」の二つです。
生徒と三人でとっても楽しい英語音読授業でした。わたしも高校生になって授業に参加したい、こんな風に楽しんで音読してたら、英語が苦手な二人の英語力は勝手にアップし始めます。ただただ、2時間楽しむだけでいいのです。そのうちに、誰にも言われなくても家で自分で愉しみながら勉強するようになります。
『子曰、知之者不如好之者、好之者不如楽之者』
(子曰く、これを知る者はこれを好む者に如かず。これを好む者はこれを楽しむ者に如かず)
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2021-09-09 00:30
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