釧路ロータリークラブの創立80周年を記念し、「数学は実社会で役に立たない?」というタイトルの講演会が催されました。ロータリークラブ会長の木下さんは、鳥取神社の宮司でもあります。昨年、釧路の教育を考える会の三木さんの紹介で訪問しました。鳥取藩士であったebisuのご先祖の名前を記念碑で確認することができました。カテゴリー「ルーツ」にそのときの様子を書いてあります。
 わたしは講演会を聴くことができなかったので11月6日付の北海道新聞記事を読んだだけです。記事の中で強く共感した部分があるので、そのことだけ書いておきます。

数学は知識で問題を解くのではない。自分で理解し、わかった瞬間が楽しい。」

 数学は本来は解き方を暗記する科目ではないのです。難関大学への合格はイージーな道を選択すれば、さっさと答えを見て解法を覚えてしまうのが無駄が無くていいのですが、じつは無駄こそが力を蓄えるために不可欠な滋養なのです。
 数学教育に関する著作の多い遠山啓先生は『数楽』というタイトルの著書があります。「音楽」に対して「数楽」、数を楽しむ、数学する本質を表すいいネーミングです。
 「わかった瞬間が楽しい」経験をした生徒は、もう一度体験したくて、難易度の高い問題にチャレンジします。そうした歓びを重ねているうちに頭がよくなってしまいます。社会人になってからもぐんぐん能力が伸びます。解法を覚える勉強のしかたをしてきた者はそれが癖になってしまいます。解けない問題にぶつかるとすぐに答えを見るような勉強が癖になれば、社会人になってから副作用が出ます。企業で持ち上がる問題は文系・理系の両方にまたがっていますが、「解答」はありませんから、独力で考え続けるしかないのです。
 #3451の「余談-3 学問と仕事」にいくつかの事例を書いておきました。数学する楽しみを知った人は企業人になったときに絶大な力を発揮します。理系はもちろんですが、文系出身者が数学ができると仕事の守備範囲が一気に拡大します。
 経済学でも同じことです。カテゴリー「資本論と21世紀の経済学」をお読みいただければわかります。経済学の公理の章をお読みください。

< 数学の勉強が辛い生徒の反応 >
 昨日も中3のある生徒から質問のあった方程式の問題を解かずに突き放しました。もう少し自力で考えれば大きな山を越えられるのです。歓びはそこにあります。わたしが問題文を線分図に表して、式をつくってしまえば、理解は簡単になりますが、力はつきません。同程度の難易度の問題にぶつかれば、また質問です。自力で解けてこそ歓びがあります。15分間考えた挙句ついにちゃんとした図が描けなかったので、描いて見せました。
 本を読まないから日本語読解力が貧弱で、意味がつかめないのです。音読トレーニングを昨年までしていましたが、家で練習してこないのでスキルがあがらず、あきれて中止しました。中学生で一年間試してみて、それでもやる気の無いものに付き合うつもりはありません。半分大人ですから、反省を求めたのです。本を濫読するくらいの努力をしなければいけないのですが、本を読まないからいつまでたっても濫読するだけの力がつかないのです。レベルの高い本を、わからない語彙を辞書で引きながら読むしかありません。

 「言われていることを家でやらないから、文章題がいつまでたっても解けない、やるべきことはわかっているだろう。後は君の問題だ。」

 この生徒は数学の問題が解けた瞬間の歓びがわからないのです。いつもつらそうな顔でやっていますが、本当につらいのだと思います。抜け出す道は示したし、途中まで伴走もしました。ここから後は自分の問題です。

< 数学の勉強が楽しい生徒の反応 >
 明日が学力テストです。2年生で学年トップの生徒は3年生に追いついたので2次関数をやっています。テスト直前なので、1年前にやった2年生の1次関数の問題で印をつけてある「できなかった問題」を復習していました。
 塾用教材も学校のワークもやってしまったので、1次関数の難しい「動点問題(図形の辺を点Pが動く問題)」はありませんか、とかわいいことを言いました。そういうわけで『ハイクラス徹底問題集中2数学』の「レベル3難関攻略」問題をやらせました。63ページに載っている「182」の問題です。(2)が解けずに20分位したところで、手を上げて「先生教えてください」というので、見ると複合問題です。3年生で相似比をやった後でも根室の学年トップレベルの生徒で半数は無理でしょう、こういうレベルの問題は学力テストでも出てきませんから。1年生の比例が図形で応用できるか否かを見ている問題でした。わたしの基準では難易度Cです。難易度Cレベルの問題を中学校のときに体験しておいた生徒は、高校生になって難関大学受験用問題集「赤チャート」にチャレンジできるでしょう、同じく難易度Cですから。
 難易度Cの問題が出題されない北海道の学力テストで数学百点取れても意味はありません。学年トップでも難易度Cの問題が90%以上解けませんから。難易度Cの問題に自力でチャレンジできるかどうかが難関大学合格への分かれ道です。

 「先生、わかった、この問題とっても面白い、なるほど難易度Cはいまの僕にはできません、学力テストで数学100点でも意味は無いといっている先生の言うことがいまわかりました。」

 素直なものです、次回は自力で解くでしょう、楽しみにしています。
 学年一位で天狗になっている生徒諸君はぜひ『国立・難関私立高校制覇 ハイクラス徹底問題集 高校入試 数学』にチャレンジしてみてください。頭から冷や水を浴びることになるでしょう。(笑)
 全国レベルを知ってください。

< ブログ「情熱空間」の記事紹介 >
 ブログ情熱空間が取り上げているので、その記事のURLをアップします。実際に講演会に出向いて書いています。新聞記事の写真はそこからコピペしました。
http://blog.livedoor.jp/jounetsu_kuukan/archives/8647769.



2016.11.06、北海道新聞記事と釧路新聞記事です。



































































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 気になったことがひとつあります。志田さん、研究者の道はあきらめたのでしょうか?
 もったいない気がします。塾講師と研究者の両道、やれませんかね?
 一日24時間、寝ても醒めてもひとつの問題を考え続けなければならないから、普通の生活はむりですね。きっと人と話すことすらできなくなります。そういう集中力を数年続けなければとても業績を上げることなど覚束ないのでしょう。それもわかります。


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