午後七時の気温は6.1度、めっきり寒くなり、庭のもみじは紅く染まっている。北の勝「祭り」を飲みながら、皿にのった焼き秋刀魚を突っつく。根室の秋はおいしい。ふるさとは酒も肴もありがたや。

 統合後の名前は現在のままだと新聞で知った。古い名前をそのまま維持するのが当たり前だから、その点では褒めておきたい。弊ブログでも名前を変えてはいけないと何度も書いてきた。小学校は道内3番目に古い花咲小学校の名称を残せばよい。まもなく統合が予定されている中学校は、元の根室中学という名称を復活させればいい。

 ところで、塾生たちから統合後の根室高校について断片的な情報が入ってくる。噂によれば全科が単位制になるらしい。商業科も普通科も両方共に「単位制」である。自分でプログラムして単位を選択できるらしいが、科目選択には授業時間の割り振りの関係からさまざまな制約が生ずるのは当たり前で仕方がない。単位制でないときよりも選択がいくぶん自由になるくらいの感覚だろう。

 驚き桃の木山椒の木だったのは普通科に定員40名の「特進コース」ができること。入試の得点で上位40名を拾い上げるらしいが、大学進学の意志の有無を確認するという。まさか、就職を希望する生徒は特進コースには入れないということではないだろうな。そんなことをすれば、成績優秀で、地元に残る貴重な人材の芽を摘むことになる。
 商工会議所や中小企業家同友会などに説明を行ったようだが、異論は出なかったのが不思議だ、自分たちの首を絞めたことにすら気がつかぬ。理由は本稿で次第に明らかになる。
 根室はこういうところが閉鎖的で愚かである。一般市民の預かり知らぬところで町の未来に関わる重要問題を決めてしまい、仕事はチョンボだらけになる。そういうやり方が根室をダメにしていることに地元経済界は気が付くべきだ。

 さて問題はいろいろあるが、特進コースの入れ替えはあるのだろうか、あればどういうタイミングで何回あるのか、そんな疑問もわく、生徒たちにとっては大事な情報である。
 特進コースに40人だが、中学時代の学力テストで5科目合計点で400点以上の生徒は、市内全部で一学年あたり4-10人程度しかいなくなり、成績上位層が絶滅しかかっている。10年前の1/4以下だろう。
 特進コースの対象は中学時代学力テストで五科目合計点が400点以上の学力の生徒が最低限の学力とすると、特進コースの本来の定員は10名で十分ということができる。あとの30人は「お客様」で足を引っ張ることになる。
 具体的にいうと、教科書準拠問題のB問題まで特進コースの授業ではやることになるだろうが、これを自力で解ける生徒は10名ほどしかいないということで、あとの30名はオチコボレルことになる。オチコボサナイためには授業の難易度も定期試験のそれも下げざるをえない。せっかく「特進コース」を設定しても、すでにそういう学力の中学生が絶滅しかかっているのである。だから、そこに手を入れなければ、根室高校特進コースは裁量問題同様に有名無実となるだろう。
 最初の1年間が勝負である。それで特進コースの中身が決まってしまう。レベル低下を防ぐには特進コースは7時間授業とする手がある、指導技術のない部活顧問の常套手段である長時間練習である、急場しのぎに過ぎないが、ことここにいたっては他の妙案はわたしにはない。

 だいたい、偏差値42-45の高校に裁量問題などまったく必要ない。道立高校の80%が定員割れの状態である。裁量問題は定員割れを起こしていない高校が実施すべきものだ。
 根室高校は入試で裁量問題を課しているが単なるミエだろう。市内の中学校の数学の授業で裁量問題対応しているところはひとつもない。それはふだんの授業が基本のA問題に限定され、定期テスト問題もA問題のみから構成されていることからも言いうる。7回の授業参観で確認したが、そのことは市街化地域の3中学校に共通している。
 中学校の先生たちはとっても苦労しながらやっているのだろうと思うが、結果は厳しいものといわざるを得ない。

 特進コースを設定することで大きなマイナスが生じることは考慮したのだろうか?残りの普通科クラスが学力水準が極端に落ち、学級崩壊状態になりかねないのである。その中には高卒で根室で就職する者や専門学校へ進学して根室へ戻ってくるものが多い。地元企業経営にとって一番大事なところなのである。
 小学校の学級崩壊の後遺症や中学校での学級崩壊状態の現出によって、その学年の学力テストの平均点が顕著に低下することはこの13年間の道文協学力テストデータから知られた症状である。それが、根室高校へ「感染」することになる。
 仕事は「段取り8分」と言われるが、そこに重大な瑕疵があったのではないか?
 有効な対策を考えずに、決めてしまったのだから、もう行くところまで行くしかない。元仕事人のebisuの見るところでは、事態の収拾は大ごとになりつつある。仕事のできない者が権限を振り回して仕事をしようとすると、得てしてこういうことが起こる。
 
 現在の根室高校普通科は、定員割れすると偏差値42、定員オーバのときで45である。これがさらに下がって、学級崩壊すれば、「教育困難校」に転落しかねない。現在の中学校の状態を見るとじつに危ういのだ。高校生は「大人」ですから、先生たちが抑えきれると思いますか?小学校や中学校だって抑え切れていませんよ。学級崩壊や教育困難校への転落が現実にならずに杞憂であって欲しい。もう祈るだけです。

*教育困難校 ウィキペディア
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%95%99%E8%82%B2%E5%9B%B0%E9%9B%A3%E6%A0%A1

<余談>
 釧路の15中学校の学力テストAの結果を#3442に載せました。釧路15中学校最下位は学区内に児童養護施設を抱える地区にある桜ヶ丘中学校ですが、根室のC中学校の五科目平均点は、その中学校よりも10点よいだけで、他の釧路の14中学校を下回っています。教える先生たちのたいへんさがわかります。自制できない生徒や小学校で家庭学習習慣の躾けに失敗した生徒たちが多いのです。それでも何とかしなけりゃいけないのが先生たちの仕事。
 数学については桜ヶ丘よりも平均点が3.1点も低かった。総合BでもC中学校の数学の平均点は16点で動かず。
 60点満点の学力テストで12点(2割)以下が49人中19人、38.8%もいます。18点(3割)以下は30人、61.2%。百点満点に換算すると30点以下が61.2%いますが、この得点層で一人でも現在根室高校普通科で使っている問題集のB問題をこなせる生徒を想像することができません。A問題すら半分も解けない生徒が大半です。B問題にチャレンジできるのは得点が7割以上の生徒ですが、49人中2人のみ、わずか4%。
 これだけ学力差があれば、同じ単位制の普通科といっても、同じ教科書は使えません。無理を通したら道理が引っ込むので、ここにも大きな問題があります。教科書を別にするために科を分けることを考えるか、何か別の代替案を検討すべきだった。閉鎖的な検討をするからこういうことになる、「後の祭り」です。
 普通科定員160人、商業科定員80人だから、普通科が66.7%を占めることになる。学力テストで数学の得点が半分以下という生徒がC中学校では9割を占めている。大雑把に見て、特進コースの半数弱の生徒が数学の学力テストで5割以下の得点ということ、残りの普通科は数学の得点が5割以下の生徒ばかり、3割得点層が主体ということです。現行の教科書は学力に比してレベルが高すぎて不適です。これがどれほど深刻な問題かお分かりいただけますか?
 とにかく、数学の点数が1割以下でも、要するに零点でも全員が根室高校へ入学可能なのです。五科目合計点が100点未満(300点満点)は不合格でよいのです。勉強しなおしてから再度受験すればよい。それくらい厳しくてよい。総合Aで判定すると、C中学校の生徒49人中、25人(51.0%)が不合格です。合格ラインが示されたら、残りの期間は死に物狂いで勉強するでしょう。

 他の2校がC中学校よりも上なのか下なのか、データを持ち合わせていないのでわかりません。大きな差はないでしょう。C中学校は一昨年と昨年度と2年続けて全国学力テストで全国平均を達成していますが、来年も再来年も現在以下の学力水準になります。そういうことはふだんの学力テストの結果から、先生たちはよくご存知です。だから、今後三年間は苦難の道を歩むことになることも覚悟しているでしょう。実に厳しい学力状況が待ち受けています。
 C中学校の現在の三年生に限っては根室高校普通科特進コースの数学の授業になんとかついていけるのは得点7割超の階層(43-48点)の二人だけ
 先生たちにしてみれば他にもいくつか理由を挙げたくなるだろうが、A問題のみの授業とA問題のみの定期試験を三年間続けるとこういうことになる学力テストで点数が取れなくなることがデータではっきりしている。だから、特進コースの授業がどういうものになるか、わたしには想像がつきます。

 統合検討委員会はこうした具体的なデータに基づいて議論したのだろうか。データを見ずに、検討を重ね結論を出したのではないことを祈ります。
 閉鎖的なやり方をさまざまな問題で繰り返し、そのことで根室の町が蝕まれ、衰退が加速する。いつものパターンです、市立病院建て替え、明治公園再開発、そして高校統合問題、どれをとっても同じ。
 若い人たちが異を唱え、ふるさとを住みよい町に変えたらよい。


*統合委員会活動報告書
http://www.nemuro.hokkaido-c.ed.jp/?action=common_download_main&upload_id=1448


*#3442 学力テスト総合A:釧路と根室の比較  Oct. 22, 2014 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2016-10-21



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