年金保険料収入額と給付額のバランスがどうなっているのか確認したくて、ネット検索をしていたら、ようやくお目当てのものが見つかった。「平成26年度年金積立金運用報告書」の中にお目当ての数字があるようだ。
 バランスが崩れ、保険料収入よりも給付額等の方が多くなったら、運用資産を売却して給付に充てなければならない。保有株式を長期にわたり株式市場で売却し続けたら、株価が下がり続ける。それがいつの時点から始まり、どれほどの損失発生の可能性があるのかシミュレーションしてみたいのである。政府主導で運用資産のポートフォリオを変更し、株式割合を2倍に増やしたが、将来リスクについては言及することがない。アベノミクスに利用された年金資産がどれくらいのリスクを抱えることになったのかは専門家がちゃんと議論すべきだが、素人にもある程度の見当はつけられる。手に入れられる資料を丹念に読んでみたい。

 p.46にある「厚生年金・国民年金の収支状況」表の平成26年度欄に次の数字が載っている。

 総収入 42.3兆円
 総支出 39.5兆円
 収支尻  1.7兆円

 収支尻がプラスなら、取り崩しは起きないが、これがマイナスになると年金運用資産を取り崩して給付に充てなければならない。
 内訳を見ると、興味深い事実が浮かび上がるが、それは次回取り上げたい。 

 ① 年金保険料収入>給付額等
 ② 年金保険料収入<給付額等

 ①なら心配要らないが、②の状態になると、足りない分を国庫から補うか、それでも足りなければ運用資産の取り崩しが恒常的に生ずることになる。②に状態が長期的・恒常的に生ずるなら、すでに買い入れた国内株式31兆円は市場で大量の売却圧力にさらされ、株式市場は長期下落が避けられない。海外株式も30兆円ある。
 
 安部総理が運用益が三十数兆円あるから、四半期で5兆円とか年額で10兆円を超える損失があっても大丈夫だと言っているが、はたして本当だろうか?
 第2次安倍内閣の成立が平成24年12月26日だったから、アベノミクスで株価操作をした結果の運用益をそれまでの運用益とは切り離して考えるべきで、そうしてみたときにどうなのかということも、この資料を基にして考えることができる。
 今月中に平成27年度版が出るので、それも見てみたい。マイカテゴリーに「年金」を設定したので、シリーズで「年金積立金運用報告書」を皆さんと一緒に読み解きたいと考えている。

(商業高校あるいは商業科3年の簿記知識程度で「報告書」は十分読める。「公民」を習っている中学校3年生や「政治経済」を選択している高校生にも読んでもらいたい。年金積立金の運用を通して見えてくる周辺の問題を含めて、中高生の未来にかかわる重大な問題でもあるからだ。)


*「平成26年度年金積立金運用報告書」
http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/nenkin/nenkin/zaisei/tsumitate/tsumitatekin_unyou/dl/houkokusho_h26_01.pdf

*#3416 年金積立金運用報告書を読む⑤:シミュレーション Sep. 18, 2016 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2016-09-18-1


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