#3415 年金積立金運用報告書を読む④ Sep. 18, 2016 [94.年金]
今日の根室は秋刀魚祭りである。会場では4kg・2500円で秋刀魚が売られている。一尾130-150gくらい、根室市民にとっては小ぶりの秋刀魚である。ebisuは秋刀魚が大好きで、毎年この旬の時期が待ち遠しい。今朝も焼き秋刀魚だ、自宅で食べるのは140-150gくらいのもので十分。台風が去って獲れだしたから一尾50円ほどで手に入る。わかさぎもおいしい。鮮度のよい小型のものがおいしい。6cmほどの小さいものだと60尾ほどで290円だそうだ。天麩羅に揚げて食べている。玉葱と人参の天麩羅を一緒にするとなお結構。主産地の北見が台風の洪水で大被害を受けたので、値段が高騰している。今朝7時の気温は12度だった、秋が深くなってきた。
さて、今回は年金積立金にかかわるインプットとアウトプットをチェックしてみたい。年金積立金が過去12年間に渡って毎年3兆円取り崩され続けていることが前回までの分析で判明したから、毎年の両方の収支バランスがどうなっているかが気になる。
51ページに「(3)年金特別会計 厚生年金感情と国民年金勘定の合計」があるので、その表から収入と支出を書き出してみる。金額単位は兆円である。
<収入> H13年 H20年 H26年
保険料 21.8 24.4 27.9
国庫負担 5.2 7.2 10.7 ◎
運用収入 4.0 1.8 3.2
基礎年金交付金 3.9 3.3 1.3
積立金取崩し 0.0 3.5 0.0
その他 0.9 1.6 2.7
収入合計 35.8 41.8 45.8
<支出> H13年 H20年 H26年
給付費 22.1 24.1 23.9
基礎年金拠出金12.5 17.4 19.6
その他 0.4 3.1 0.4
支出合計 35.2 41.9 44.0
国庫負担金がH13年に5.2兆円であったものが、H26年には2倍の10.7兆円にもなっていることにも注意したい。すでに歳入の1/5を占めている。H26年度の数値で総収入に占める割合を計算すると、厚生年金が21.2%、国民年金が40%である。少子高齢化で生産年齢人口が減少していけば国庫負担金が加速的に増大する恐れがあるので、それも次回シミュレーションしてみたい。
基礎年金拠出金が基礎年金交付金の3-15倍あるが、その理由がわからないので、「疑問-2」としてマークしておく。これだと基礎年金積立金が年間15兆円ほどたまっていくような計算になる。どなたかメカニズムをご存知の方がいたら、投稿欄へコメントをいただけたらうれしい。年金制度は面倒くさそうだ。面倒くさいほど、胡散臭くなるものだ。シンプルに理解したい。
積立金取崩額は「積立金より受入」と表示されているが、年度によってバラツキが大きい。最大値はH17年の6.7兆円、ついでH22年の6.3兆円である。取り崩しはH17年からスタートしているが、H26年までの10年間で40.67兆円、年平均4.1兆円。
収入合計データをつかって線型回帰分析ができるが、妥当ではない。社会保障・人口問題研究所の年齢別人口推計によれば、生産年齢人口が今後20年間で15%減少する。要するに、推計計算は臨機応変にやればよい。
同様に老人人口の推計値も20%増加するので、支給開始年齢や平均支給額を現状のままとすると、給付額は老人人口増加分だけ増えることになる。
気になるのが、非正規雇用割合の増加である。厚生年金に入らない人口が増えれば、年金保険料収入が減少する。1990年代に次々になされた労働法制の規制解除は年金制度に破壊的に作用している。
推計には中学3年生でもわかるような簡便な計算法を考えたい。数学の問題を解くときには、答えがだいたいどれくらいになるのか見当をつけてからやる場合が多い。計算や計算式にうっかりミスがあれば予想した値からかけ離れたものになるので、計算精度や式の妥当性のチェックになる。20年未満で年金積立金がゼロになるだろう。
その次の問題は、どうすれば年金制度の崩壊を回避できるかということになる。読者諸氏はebisuと一緒に考えてもらいたい。
*社会保障・人口問題研究所 年齢別人口推計値
http://www.ipss.go.jp/syoushika/tohkei/newest04/s-kekka/3-1.xls
*平成26年度年金運用報告書
http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/nenkin/nenkin/zaisei/ts
< 余談:危機感の喪失と過激派の台頭 >
年金積立金は共済年金基金が昨年10月にGPIFに統合されて200兆円ほどあるのだが、それでもそれが20年に満たないうちに枯渇するということに大きな危機感をもって見ている国民や国会議員がたくさんいる。
しかし、政府財政は50兆円の収入に対して100兆円の支出予算を組み、年間50億円もの赤字国債を発行し続けている。国債残高はすでに1000兆円を超えた。GPIFになぞらえて言えば、積立金が枯渇してしまっただけではなく、マイナス1000兆円もの積立を行ってしまっている。この現実に国民も国会議員も地方議員も危機感が薄いのはどうしたことだろう?
前回書いたので簡単に触れる。米軍基地移転問題で工事を強行したい国が沖縄県を訴えた裁判の判決が昨日でた。国の完全勝訴である、裁判官が国の主張をそのまま認めた。安倍政権はこの訴訟に勝利するために、福岡地方裁判所那覇支部の担当裁判官を入れ替えた。シナリオどおりにことが運んだ。安倍総理に地方裁判所の人事権はないが、こういう風に恣意的な異動が実際には可能なのである。やれてもやってはいけないことは当然だ。三権分立の牽制機能、なかんずく司法と行政の牽制機能が失われている。
GPIFは政府から独立した機関のはずだったが、人事権を行使してその投資政策を変更させることはできる。国内株式への投資割合を12%から25%にアップして、株価を操作するのを容認する理事を任命すればいいだけ。
日銀も同様、ゼロ金利政策継続に反対だった白川元総裁を外し、黒田総裁に変えて「異次元の金融緩和」をはじめた。反対と目された理事を外して、金融緩和容認派の理事を送り込んだ。日銀の独立性がこうして失われた。
日銀が350兆円も国債を買い入れることで、債券市場の金利調節機能が麻痺して久しい。
健全な保守主義の立場からはこれら四つの事象はどれも容認しがたい。しかし、自民党国会議員や地方議会議員からは反対の声が聞こえてこない。自民党は過激派になったのか?
健全な保守主義の対極にあるのは急進主義(=過激派)である。1960年代後半の全共闘世代のわたしですら、びっくりするくらい安倍政権のやり方は過激である。45年後に自民党が過激派に変貌するなんて予想のできた者は団塊世代には一人もいないだろう。もっと不気味なのは自民党内部に健全な保守主義を唱える者がいないということだ。ふるさとよりも国よりも、わが身が大切という価値観(エゴイズム)が蔓延してしまっている。
*#3416 年金積立金運用報告書を読む⑤:シミュレーション Sep. 18, 2016
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2016-09-18-1
70% 20%
さて、今回は年金積立金にかかわるインプットとアウトプットをチェックしてみたい。年金積立金が過去12年間に渡って毎年3兆円取り崩され続けていることが前回までの分析で判明したから、毎年の両方の収支バランスがどうなっているかが気になる。
51ページに「(3)年金特別会計 厚生年金感情と国民年金勘定の合計」があるので、その表から収入と支出を書き出してみる。金額単位は兆円である。
<収入> H13年 H20年 H26年
保険料 21.8 24.4 27.9
国庫負担 5.2 7.2 10.7 ◎
運用収入 4.0 1.8 3.2
基礎年金交付金 3.9 3.3 1.3
積立金取崩し 0.0 3.5 0.0
その他 0.9 1.6 2.7
収入合計 35.8 41.8 45.8
<支出> H13年 H20年 H26年
給付費 22.1 24.1 23.9
基礎年金拠出金12.5 17.4 19.6
その他 0.4 3.1 0.4
支出合計 35.2 41.9 44.0
国庫負担金がH13年に5.2兆円であったものが、H26年には2倍の10.7兆円にもなっていることにも注意したい。すでに歳入の1/5を占めている。H26年度の数値で総収入に占める割合を計算すると、厚生年金が21.2%、国民年金が40%である。少子高齢化で生産年齢人口が減少していけば国庫負担金が加速的に増大する恐れがあるので、それも次回シミュレーションしてみたい。
基礎年金拠出金が基礎年金交付金の3-15倍あるが、その理由がわからないので、「疑問-2」としてマークしておく。これだと基礎年金積立金が年間15兆円ほどたまっていくような計算になる。どなたかメカニズムをご存知の方がいたら、投稿欄へコメントをいただけたらうれしい。年金制度は面倒くさそうだ。面倒くさいほど、胡散臭くなるものだ。シンプルに理解したい。
積立金取崩額は「積立金より受入」と表示されているが、年度によってバラツキが大きい。最大値はH17年の6.7兆円、ついでH22年の6.3兆円である。取り崩しはH17年からスタートしているが、H26年までの10年間で40.67兆円、年平均4.1兆円。
収入合計データをつかって線型回帰分析ができるが、妥当ではない。社会保障・人口問題研究所の年齢別人口推計によれば、生産年齢人口が今後20年間で15%減少する。要するに、推計計算は臨機応変にやればよい。
同様に老人人口の推計値も20%増加するので、支給開始年齢や平均支給額を現状のままとすると、給付額は老人人口増加分だけ増えることになる。
気になるのが、非正規雇用割合の増加である。厚生年金に入らない人口が増えれば、年金保険料収入が減少する。1990年代に次々になされた労働法制の規制解除は年金制度に破壊的に作用している。
推計には中学3年生でもわかるような簡便な計算法を考えたい。数学の問題を解くときには、答えがだいたいどれくらいになるのか見当をつけてからやる場合が多い。計算や計算式にうっかりミスがあれば予想した値からかけ離れたものになるので、計算精度や式の妥当性のチェックになる。20年未満で年金積立金がゼロになるだろう。
その次の問題は、どうすれば年金制度の崩壊を回避できるかということになる。読者諸氏はebisuと一緒に考えてもらいたい。
*社会保障・人口問題研究所 年齢別人口推計値
http://www.ipss.go.jp/syoushika/tohkei/newest04/s-kekka/3-1.xls
*平成26年度年金運用報告書
http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/nenkin/nenkin/zaisei/ts
< 余談:危機感の喪失と過激派の台頭 >
年金積立金は共済年金基金が昨年10月にGPIFに統合されて200兆円ほどあるのだが、それでもそれが20年に満たないうちに枯渇するということに大きな危機感をもって見ている国民や国会議員がたくさんいる。
しかし、政府財政は50兆円の収入に対して100兆円の支出予算を組み、年間50億円もの赤字国債を発行し続けている。国債残高はすでに1000兆円を超えた。GPIFになぞらえて言えば、積立金が枯渇してしまっただけではなく、マイナス1000兆円もの積立を行ってしまっている。この現実に国民も国会議員も地方議員も危機感が薄いのはどうしたことだろう?
前回書いたので簡単に触れる。米軍基地移転問題で工事を強行したい国が沖縄県を訴えた裁判の判決が昨日でた。国の完全勝訴である、裁判官が国の主張をそのまま認めた。安倍政権はこの訴訟に勝利するために、福岡地方裁判所那覇支部の担当裁判官を入れ替えた。シナリオどおりにことが運んだ。安倍総理に地方裁判所の人事権はないが、こういう風に恣意的な異動が実際には可能なのである。やれてもやってはいけないことは当然だ。三権分立の牽制機能、なかんずく司法と行政の牽制機能が失われている。
GPIFは政府から独立した機関のはずだったが、人事権を行使してその投資政策を変更させることはできる。国内株式への投資割合を12%から25%にアップして、株価を操作するのを容認する理事を任命すればいいだけ。
日銀も同様、ゼロ金利政策継続に反対だった白川元総裁を外し、黒田総裁に変えて「異次元の金融緩和」をはじめた。反対と目された理事を外して、金融緩和容認派の理事を送り込んだ。日銀の独立性がこうして失われた。
日銀が350兆円も国債を買い入れることで、債券市場の金利調節機能が麻痺して久しい。
健全な保守主義の立場からはこれら四つの事象はどれも容認しがたい。しかし、自民党国会議員や地方議会議員からは反対の声が聞こえてこない。自民党は過激派になったのか?
健全な保守主義の対極にあるのは急進主義(=過激派)である。1960年代後半の全共闘世代のわたしですら、びっくりするくらい安倍政権のやり方は過激である。45年後に自民党が過激派に変貌するなんて予想のできた者は団塊世代には一人もいないだろう。もっと不気味なのは自民党内部に健全な保守主義を唱える者がいないということだ。ふるさとよりも国よりも、わが身が大切という価値観(エゴイズム)が蔓延してしまっている。
*#3416 年金積立金運用報告書を読む⑤:シミュレーション Sep. 18, 2016
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2016-09-18-1
70% 20%
2016-09-18 09:17
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