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#3416 年金積立金運用報告書を読む⑤:シミュレーション Sep. 18, 2016 [94.年金]

 一通りデータを眺めて、ようやくシミュレーションの入り口にたどり着きました。ここからは這って進むことになります。(笑)
(中高生の皆さんは臨機応変なデータの取り扱い方を学んで下さい、中高生のときに学ぶ数学はとっても役に立ちます)
 元にしたデータは「平成26年度年金報告書」と社会保障・人口問題研究所の年齢別人口推計データの二つです。
 限られた資料からの推計だから、推計誤差は小さくありません。計算結果を先に言うと、年金積立金がH41年(2029年)にゼロになりますが、誤差を大きく見積もって±3.0年とると、推計値の信頼性は90%くらいあると考えます。したがって、枯渇が現実になるのは平成38年(2026年)から平成44年(2032年)の間に起こります。

 H36年の推計値を実績値と並べました。現状のまま放置すると推計値のようなことになりますが、政府は回避すべくさまざまな手を打つちます。後で述べますが、選択肢は四種類くらいに限られています。

                     ---------実績値--------  推計値
<収入>      H13年   H20年  H26年    H36
 保険料      21.8   24.4   27.9     25.6
 国庫負担      5.2    7.2   10.7      10.7
 運用収入      4.0    1.8    3.2         1.6
 基礎年金交付金 3.9    3.3    1.3         1.3
 積立金取崩し   0.0    3.5    0.0         8.8
 その他       0.9    1.6    2.7         2.0
  収入合計    35.8    41.8   45.8        50.0

<支出>      H13年   H20年  H26年    H36
 給付費      22.1      24.1    23.9    26.4
 基礎年金拠出金12.5    17.4    19.6       21.6
 その他       0.4       3.1       0.4         2.0
   支出合計   35.2     41.9     44.0        50.0
 年金積立金   147.3      131.7    112.1       48.1

 保険料収入と給付費が10年後、20年後にどれくらいになるか試算してみます。
 保険料収入は生産年齢人口と関連が強いし、給付費は老人人口との関連が強いので、年齢別人口推計値を利用します。
 社会保障・人口問題研究所の年齢別人口推計データは次のようになっています。

                     H26     H36      H46
 生産年齢人口 7780   7136    6349 
 老人人口    3308   3652    3720 
 総人口    1,2665 1,1973 1,1010

  生産年齢人口の減少は線型性がありますが、総人口と老人人口は10年単位で変化率の差が大きく20年を通してみたときには線型性がありません。

< 保険料の計算 >
 比例計算で10年後の保険料収入を求めると、
   27.9 : x = 7780 : 7136
             x = 25.6 ・・・H36年の保険料収入 2.3兆円ダウン
 同様の方法で20年後の保険料収入は、
  27.9 : x = 7780 : 6349
             x = 22.8 ・・・H46年の保険料収入 5.1兆円ダウン

< 給付費の計算 >
 比例計算で10年後の給付費を求めると、
  23.9 : x = 3308 : 3652
             x = 26.4・・・H36年の給付費 2.5兆円アップ
 同様にして20年後の給付費を求めると、
  23.9 : x = 3308 : 3720
             x = 26.9・・・H46年の給付費 3.0兆円アップ

< 年金積立金取崩額の計算 >
 H36年の取崩額は、
  4.0 + ( 2.3 + 2.5 ) = 8.8兆円
 H46年の取崩額は、
  4.0 + ( 5.1 + 3.0 ) = 12.1兆円

< 十年間の年金積立金取崩額計算 >
 基準年をH26年として、座標(0, 4.0)、(10, 8.8)を考えると、この直線の式は、
  y=4.8x+4
 取崩額は(0≦x≦10)の区間の台形の面積で計算できます。
  s1=(4+8.8)*10/2=64兆円

 同様にして、基準年をH36年に置き、座標(0, 8.8), (10, 12.1)を利用して計算すると、10年-20年後の間の取崩額は、x軸と次の関数の直線で囲まれた台形の面積を求めればいいわけですから、
  (    y = 0.33x  + 8.8
 ⇒高校3年生はこの関数を0-10の間で積分してくれたらよい)

  s2=(8.8+12.1)*10/2=104.5兆円
 これなら、1次関数と台形の面積の問題ですから中学2年生でも計算できます。

 平成26年度末の簿価ベースの年金積立金合計額は112.1兆円ですから、H36年度末の年金積立金残高は次のように計算できます。
   (112.1 - 64) = 48.1
     
   基準年がH26年度だから、このラフな試算では、15.2年後のH41年(2029年)に年金積立金はゼロになります

< 推計から除外した要素 >
 この推計値は非正規雇用の増加分を考慮していません。人工知能の高性能化と低価格化によって、これから20年の間にたくさんの職種の単純労働が機械やシステムに置換わることを考えておかなければなりませんが、このシミュレーションにはそういう要素を入れていません。きわめて限定した推計です。

 公務員共済を含めるとどうなるかはまた別途試算してみる必要があります。とくに国庫負担額への影響があると思われます。

〈 年金財政の破綻を避けるにはどのような方策があるのか 〉
 年金制度を破綻させないためにどのような方法があるのでしょう。
 現在進行中の①受給年齢の引き上げ、そして②受給額の引き下げ、③年金保険料の引き上げ、④国庫負担の増大など。
 これらを全部やることになるのでしょうね。受給額の引き下げは、1世帯当たりとか1人当たりとか最高限度を設けると同時に、何割の切り下げをやったほうが効果的です。このシミュレーションはそういう議論の土台になりえます。

【基礎年金拠出金の計算メモ】
 19.6*(3652/3308)=21.6兆円・・・H36年基礎年金拠出金
  19.6*(3720/3308)=22.0兆円・・・H46年基礎年金拠出金

*基礎年金拠出金の推計については、弊ブログ#3411投稿欄にZAPPERさんからこれでは大雑把過ぎるとコメントが寄せられています。ZAPPERさんは社会保険労務士で専門家ですから、わたしの理解が違っている可能性が高いので、基礎年金拠出金の推計値については保留しておきます。
 いま議論しながら確認していますが、結論が出次第ここに追記します。専門家の協力で精度のよい推計方法が見つかることを期待しています。

 【9/19朝9時追記】
 コメント欄での議論が終わりました。受給者数が増えれば、基礎年金拠出金も比例して増えますから、おおむねこの推計方式で差し支えありません。そして他に簡便な方法が見つかりません。   


*社会保障・人口問題研究所 年齢別人口推計値
http://www.ipss.go.jp/syoushika/tohkei/newest04/s-kekka/3-1.xls
 
*平成26年度年金運用報告書
http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/nenkin/nenkin/zaisei/ts

*#3417 年金積立金運用報告書を読む⑥:定量的に考えよう Sep.19, 2016 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2016-09-19

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